フレイルのまとめ(2019.09.15)

フレイルとは・・・
加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像
要介護になる前の可逆性の虚弱(老化現象)

1. フレイルの診断基準
項目      評価基準
体重減少   6か月で、2-3kg以上の体重減少
筋力低下   握力:男性<26kg、女性<18kg
疲労感   (ここ2週間)訳もなくつかれたような感じがする
歩行速度   通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動   ①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2ついずれも「週に1回もしていない」と回答

3つ以上該当:フレイル 1~2つ該当:プレフレイル    日本版CHS基準

* 簡易フレイル・インデックス
質問                         1点      0点
6か月で2-3kgの体重減少がありましたか?       はい      いいえ
以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?  はい    いいえ
ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?  いいえ   はい
5分前のことが思い出せますか?            いいえ   はい
(ここ2週間)訳もなく疲れたような感じがする     はい    いいえ
3つ以上該当:フレイル 1~2つ該当:プレフレイル     日本版CHS基準

2. フレイルの疫学
✓ フレイル高齢者の割合は、CHS基準またはそれに準じた基準で評価した我が国の調査では、地域在住高齢者の約10%前後と推計される(エビデンスE-2)。
✓ フレイル高齢者の割合は加齢とともに増加し、男性に比較して女性に多い(エビデンスE-2)。
65-74歳 4.0%、75-84歳 16.2%、85歳以上 34.0%
✓ 慢性疾患で外来通院中の高齢者や施設入所者におけるフレイルの割合は、地域在住高齢者における割合よりも高いと考えられる。
慢性疾患患者 21.6%、施設入所者 46.9%

3. フレイルの危険因子
栄養面:
偏った食事内容
タンパク質の摂取量、各食事ごとのタンパク質の配分不足
微量元素、抗酸化作用食品不足
ビタミンD摂取不足
身体生活面:
活動性低下、運動不足
慢性疼痛、難聴、ポリファーマシー
心理環境面:
アパシー(意欲低下)、抑うつ
配偶者のフレイル
各種疾患:
生活習慣病(特に糖尿病)、心血管系疾患など

4. フレイルの予後、疾患との関連性
✓ フレイルと死亡:   オッズ比 2.34  相対危険度 1.83
入院      1.2-1.8倍
施設入所   1.7倍
ADLの障害  1.6-2.0倍
身体的制限  1.5-2.6倍
転倒・骨折  1.2-2.8倍
✓ フレイルと認知症:  ハザード比 1.33
アルツハイマー型認知症    1.28
血管性認知症          2.70
✓ フレイルの合併で予後不良な慢性疾患:
起立性低血圧、心房細動、急性冠症候群、心不全、糖尿病、低血糖、COPD、CKDなど

5. フレイルと認知症の相関関係
✓ フレイルは認知症を合併しやすく、約20-50%に認知機能障害あり(エビデンスE-2)。
✓ フレイル高齢者は、認知機能が低下しやすく、認知症になりやすい。逆に認知機能低下者はフレイルになりやすい(エビデンスE-2)。
✓ フレイルと認知機能障害を合併すると、手段的ADL、基本的ADL、身体機能が低下しやすく、死亡率が高くなる(エビデンスE-1b)
✓ フレイルに対して運動療法を栄養、薬物、認知、社会的な介入と組み合わせることで、認知機能改善が期待できる(推奨B)

6. フレイルの予防
低栄養状態と肥満がフレイルには因果関係があり、栄養介入にて一定の効果は認められるが、運動療法との併用を推奨する(推奨A)。
栄養療法として・・・
ONS(経口補助食)摂取
タンパク質摂取(肉や卵を中心に 1.2~1.5g/kg/day)
野菜・果物摂取
ビタミンD補給( 6.5μg/day)
西洋型食事パターンの改善
運動療法として・・・
レジスタンス運動、バランストレーニング、機能的トレーニングなど多因子運動プログラム
中等度から高度の運動強度で、漸増的にアップ
適切なタイミングでタンパク質、アミノ酸の摂取

7. 高齢者のフレイル予防のための栄養学的アプローチ
✓ 必要エネルギー(身体活動レベルⅡ)
男性 2200kcal/日 女性 1700kcal/日
✓ タンパク質
70歳以上 男性71.9g/日  女性61.5g/日以上
毎食25-30g 均等に
ロイシンなどの必須アミノ酸 毎食10-15g
レジスタンス運動の複合
✓ ビタミンD
ビタミンD欠乏あれば、10-20μg/日
✓ 抗酸化物質(ビタミンA、C、Eなど)はそれなりに
✓ ω3系脂肪酸もそれなりに

8. フレイルのまとめ
フレイルは予後にも影響を与えるが、適切な介入で予防及び回復が可能である!

参考:
フレイル診療ガイド2018年版 荒井秀典 ライフ・サイエンス
日本人の食事摂取基準 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015版)」策定検討委員会報告書 第一出版
サルコペニアの摂食・嚥下障害 リハビリテーション栄養の可能性と実践 若林秀隆ら 2012年 医師薬出版