在宅栄養管理マニュアル2019(2019.09.15)

胃瘻:
1. 在宅での胃瘻による経腸栄養に最適なカテーテルは?
在宅経腸栄養に用いる胃瘻のタイプは、バルーン型を使用することで、交換時の再入院や受診が必要なくなる。家族のレスパイトも兼ねて、定期的に入院する計画の場合には、バンパー型でも可能である。
チューブ型とボタン型の選択は、患者のADLに影響しないものを選択する。半固形栄養を行う場合には、ボタン型はコネクターで内腔が極端に細くなるのでチューブ型の方が注入しやすく、接続部が破損してもチューブ型はリペア可能である。また、メーカーによって、同じ外径のものでもコネクターの内径やチューブの耐久性にも差があるので、確認しての使用をすすめる。
2. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、カテーテルの交換の目安は?
保険適応上は、バンパー型4か月以上、バルーン型24時間以上経過したら可能となっているが、それぞれ6ヶ月、2か月で交換という在宅施設が多い。ただし、バルーン型は1か月で交換と添付文書に記載されているものもあり、注意を要する。バルーン型の交換時期に関係する重要なポイントは、バルーン水の量や引き具合であり、定期的にチェックすることが推奨される。
3. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、安全な交換方法は?
内視鏡、X線透視下での交換が推奨され(交換手技に保険請求点数200点)、在宅でも専用の内視鏡を使用することが推奨される。ただし、在宅での内視鏡の使用には保険点数として認められない場合もあるので注意を要する。カテーテルの交換セットに付属するスタイレットは固く、胃壁や瘻孔を損傷する可能性があり、演者は血管造影用のガイドワイヤー(ラジフォーカス®0.035、100cm アングル)を使用し、安全かつ簡便である。
また、スカイブルー法も有用である。
4. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、事故抜去した場合の対処方法は?
在宅の場合は、無理せず、すぐに医師または看護師に連絡し、指示に従う。演者は、細い(8-12Fr)吸引カテーテルを応急的に瘻孔に無理なく挿入するように指導している。
5. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、ルートの交換や使用物品の交換は必要か?
経腸栄養に必要な物品は、ライン、栄養ボトル、コネクターなどであるが、経腸栄養ラインやボトルは、基本は単回使用である。しかし、在宅では、中性洗剤で洗浄後、次亜塩素酸ナトリウムで十分に消毒し、乾燥させて再使用することも多い。交換頻度は、汚染・破損時は必須だが、2~4週間ごとに交換する在宅施設が多い。基本は、食器と考えて、なるべく清潔なものを使用する。
6. 在宅での胃瘻による経腸栄養の感染管理・合併症管理で重要なことは?
経腸栄養剤は、感染対策としてRTH(Ready-To-Hang)製剤の使用が好ましく、希釈しない。栄養ボトルを使用して経腸栄養を行う場合には、開封後8時間以内に使用する。
ミキサー食などを注入する場合には、より細菌感染に注意して行う。
7. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、閉塞などの予防法は?
胃管閉塞の原因のほとんどは、薬剤による凝固・閉塞または感染・汚染である。経腸栄養剤投与前後の十分な白湯によるフラッシュが有効である。薬剤は、簡易懸濁法による投与が推奨され、粉砕のみでは側孔式のカテーテルでは閉塞しやすく、マグネシウムやプロトンポンプインヒビターなどの薬剤は投与に注意が必要である。感染や汚染が経腸栄養剤と反応を起こして閉塞する場合もあり、酢水(食酢を10倍希釈)や重層水によるクランプなども有効である。
8. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、閉塞が疑われた場合の対象方法は?
白湯をフラッシュして、閉塞が解除できなければ、交換になる。カテーテルの内腔のブラッシングは、内腔が損傷する可能性があり、やむを得ず行った場合は再開通しても早めに交換する。
9. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、安全な栄養剤の投与は?
基本は、上半身を挙上(30~45度)して、適度な速度と温度で投与することである。小腸内投与や、ダンピング症候群疑いなど場合は、経腸栄養ポンプの使用が推奨される。投与速度は、胃内であれば200~500mL/時間、小腸内100mL/時間であるが、徐々に慣らしていけばより早い速度でも可能である。
必ずしも温める必要はないが、下痢した場合などは栄養剤の温度にも配慮する。
さらに、投与後も上半身挙上を患者の状態に合わせて30分以上維持する。右側臥位は絶対ではなく、患者の体型や胃の形を考慮して決定する。また、半固形栄養剤の場合、終了後に必ずしも上半身挙上は必要ないが、在宅では念のため30分程の挙上が必要と考える。
10. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、うまく管理するコツは?
在宅経腸栄養をうまく行うコツは、患者の状態を観察し、安全に家族・患者が安心して施行し、継続することである。入院患者のように、1日の必要量を無理して投与しなければならない、時間がおしているので早めにすませなければならないなど、医療者の都合は全く優先されない。ある一定期間での効果を体重増加や創傷治癒などで確認しつつ、無理のない栄養管理計画のもとに行う。

経鼻胃管:
1. 在宅での経鼻アクセスによる経腸栄養に最適なカテーテルは?
材質:やわらかく、刺激が少ない、さらに表面や内腔に不純物が付着しにくい素材がよい。可能であれば外径に比較して内径の大きいものが閉塞しにくい。また、確認のためにX線非透過性のものが推奨される。現時点では、ポリウレタン製のやわらかいものが最も好ましいが、DEHP非使用ポリ塩化ビニル製でも先端の形状が工夫されて使用しやすいものもあり、コストや医療者の慣れが重要なポイントである。
形状:側孔式で多孔式のものが安全で使いやすい。おもり付きは、主に小腸内に留置するチューブであり、腸蠕動で先に送り込む目的で使用される(抜け、たわみ予防)。
スタイレット、ガイドワイヤー:チューブ一体型のスタイレットタイプが、たわみなく挿入しやすい。また、位置の調整も容易である。
サイズ:外径は12Fr以下であれば、胃食道逆流には関与しないとされる。ただし、鼻・咽頭不快感、さらには嚥下の妨げになるため、より細径のチューブの使用が好ましい(内径も考慮に入れること)。あまり細くて柔らかすぎると、たわみや迷入の原因になり、ある程度の硬さは必要になる。成分栄養や消化態栄養・半消化態栄養剤なら8Frで十分で、食物繊維が多いなどの食品栄養剤は10Frが推奨される。
2. 在宅での経鼻アクセスによる経腸栄養で、カテーテルの交換はいつか?
2~4週間での交換が推奨されるが、添付文書に2週間と明記されているものもあり(ポリ塩化ビニル製など)、注意を要する。基本的には、閉塞や損傷があれば交換し、再利用はできない。カテーテルの交換にはリスクを伴い、患者の苦痛もともなうので、在宅ではスタッフと患者の了解のもとに最小限の頻度で交換する。
3. 在宅での経鼻アクセスによる経腸栄養で、安全なカテーテルの交換方法は?固定する長さは?
安全管理のためには、X線による位置確認は必須とされるが、在宅では困難であり、エアー注入法は確実ではないことを考慮して、色素注入法(スカイブルー法)による交換は必須である。最近は、カテーテル先端に胃内pH測定機能がついているものや、接続使用できる炭酸ガス検出装置などもある。しかし、在宅での安全確認で最も有効なことは、経腸栄養を開始して訪問中に患者状態を確認することである。
また、固定する長さは、45~55cmや鼻孔-耳孔-剣状突起を計測などとされているが、在宅 管理の場合は抜けかけによる胃食道逆流は致命的なので、+10cmくらいが適当である。特に、カテーテル位置の確認のためや経腸栄養剤の胃内停滞の確認のための胃内残量前吸引を容易にするには、やや深めの留置が有用である。従って、55~60cmが適当と考える。
カテーテルの固定テープによるスキントラブルは必発なので、貼付する位置の変更やテープの材質の工夫、保護テープの工夫などが必要である。また、挿入する鼻腔の左右も、ほとんどの施設で変更している。

在宅経腸栄養法における注意点:
1. 気候によっては脱水に注意して、水分管理が必要。特に、下痢などを合併していれば、水分も栄養量も不足となり、追加の補給方法が必要になる。尿量だけでなく、色やにおいなど五感を使う。
2. 寝たきりなどの患者の場合に、体重などの測定が困難なこともあり、栄養評価に工夫が必要。
3. 基礎疾患の病勢が栄養状態に関与するので注意が必要。
4. 必ずしも計画通りに栄養投与が行われるとは限らないため、慎重なモニタリングが必要。過栄養にも注意が必要。
5. トラブルがあれば、経腸栄養やめるのではなく、必ず原因を究明して継続することを検討する

在宅中心静脈栄養:
1. ポートのセプタムは、穿刺場所を変えつつ使用する
2. ヒューバー針を使用する
3. 穿刺部位は必ず消毒する
4. ポートのフラッシュは、グローションカテーテルは生食10mL以上で行う
* グローションカテーテルでない場合には、ヘパリンロック
5. ドレッシングは汚染があればその都度、なくても週1(~2)回交換
6. カテーテル感染や真菌感染に最大限の注意を払う
7. 輸液ラインの交換は、週1(~2)回
* 輸血や脂肪乳剤使用時は、24時間以内に交換
* 脂肪乳剤は、ルート交換時に週1-2回の定期投与が推奨
8. 側注はなるべく使用しないが、やむを得ない場合にはフィルターより患者側から投与
* 脂肪乳剤は、クリーミング現象や陽イオンとの反応にも注意
9. ルートからの採血は好ましくないが、やむを得ない場合には生食10mL以上でフラッシュ
10. 高カロリー輸液製剤は28時間以内に投与完了する
11. 肝機能悪化やヘモクロマトーシスに注意する
12. セレン欠乏やマグネシウム過剰など微量元素に注意する
13. 交換時の空気塞栓に注意する
14. 末期患者には、必ず中止や減量の同意を確認して開始