Ⅲ. 経腸栄養も全うすること
患者が希望しない、もしくは自ら経口摂取できないために行う栄養療法を「強制栄養」と言います。日本老年医学会では、2012年に「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」を発表し、そこでは人工的水分・栄養補給法(Artificial Hydration and Nutrition:AHN)と定義されています。いずれにしても、在宅で施行される経腸栄養は、より生理的な栄養法として安全に全うすることが求められます。
1. 在宅経腸栄養法(Home Enteral Nutrition:HEN)の基礎
栄養管理における中心は経口摂取、経腸栄養であることは、周知の事実です。特に、“ If the gut works, use it! (腸管が使えるなら、使いましょう!)”は、世界共通のキーワードです。さらに、在宅における利点は、以下のようにまとめられ、在宅で安全かつ十分な経腸栄養管理をなし得た患者の予後やADLは確実に改善されます。しかし、最近は胃瘻のネガティブキャンペーンなど、在宅における経腸栄養が誤解されています。
この中で、在宅における一番のメリットは、⑨⑩と言われています。しかし、以前言われていたほど、在宅中心静脈栄養法(Home Pareteral Nutrition:HPN)に比較してすべてが安全というわけでなく、合併症も少なからずあり、慎重な管理が在宅経腸栄養法(Home Enteral Nutrition:HEN)にも求められています。経腸栄養の禁忌や適応などは、当HPのNSTマニュアルのⅢ.経腸栄養やPEGマニュアルを参考にしてください。
在宅経腸栄養(HEN)の実施条件ですが、以下に列挙します。
1) 患者の病態が安定している。
2) 栄養改善・維持のために長期の栄養管理が必要である。
3) 患者・家族の理解と協力が得られる。
4) 地域との連携が可能である。
5) 腸管が使用可能である。
6) 経口摂取のみでは、十分な栄養補強が困難である。
次に、在宅経腸栄養(HEN)の主な対象疾患は以下と考えられます。
・ 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)
・ 短腸症候群(腸管大量切除後)
・ 上部消化管通過障害(食道がん、咽頭がんなど)
・ 放射線性腸炎
・ 消化吸収不良症候群
・ 何らかの理由にて経口摂取が困難
何らかの理由で消化管機能・運動が低下 など
特に、炎症性腸疾患のクローン病は、緩解導入・維持に治療法として有効性が確認されています。
成人における在宅経腸栄養の保険適応、診療報酬を以下にまとめました。各地域で多少の差はあるようですので、担当の方にご確認いただきたいと思いますが、成分栄養剤を使用するような消化機能の低下した患者のための保険診療と間違えないようにしてください。半消化態栄養剤を使用した場合には、寝たきり患者またはそれに準じる特定疾患の患者対象の管理料で算定できます。最近は、各種栄養素を配合した半消化態栄養剤(エネーボ®)も発売され、保険診療(医薬品を使用)としての在宅医療の有用性も高くなっています。また、薬品としての半固形栄養剤(ラコール®)もあり、胃食道逆流の患者のみならず、患者のADL改善にも役立っています。
在宅成分栄養経管栄養法の保険適用
指導管理料: 2,500点/月
栄養管セット加算: 2,000点/月
* 栄養管セットとは、注入用バッグ・ボトル、延長チューブ、栄養カテーテル、カテーテルチップなど
注入ポンプ加算: 1,250点/月
* 注入ポンプを病院から貸与した場合
対象となる患者は、原因疾患の如何にかかわらず、在宅成分栄養経管栄養法以外に栄養の維持が困難な者で、当該療法を行うことが必要であると医師が認めた者とする。
1) 栄養剤: 栄養素の成分が明らかな医薬品
「成分栄養剤:アミノ酸」
エレンタール®
エレンタールP®
「消化態栄養剤:ジペプチド、トリペプチド」
ツインライン®
2) 投与経路: 経管的に投与する場合のみ
* 半消化態栄養剤を用いた場合には、在宅寝たきり患者処置指導管理料と薬剤料を算定することも可能
(但し 、濃厚流動食を使用した場合には全額自己負担)
在宅小児経管栄養法の保険適用
指導管理料: 1,050点/月
栄養管セット加算: 2,000点/月
注入ポンプ加算: 1,250点/月
栄養剤:
対象薬剤に定めはなく、未消化態栄養剤(エンシュアリキッドなど)や、薬剤ではない薬価未収載流動食でも可能。成分栄養剤を使用している場合は、在宅成分栄養経管栄養法が適用。
* 15歳未満または15歳未満から継続中(体重が20kg未満)の患者が対象
先ず、確認していただきたいことは、投与経路とその選択です。投与経路の選択は、患者に苦痛がなく介護者の負担にならないが基本ですが、逆流や誤嚥の状況によって変わるということが重要です。
さらに、胃がない患者や腹水のたまっているような癌の末期の患者にもPTEG(経皮経食道胃管挿入術)の使用が、栄養投与のみならず腸管内容の減圧(イレウスなどの嘔吐予防)に有用です(http://www.peg.or.jp/lecture/peg/07-01.html)。また、経胃瘻的に挿入留置するPEG-J(経胃瘻的空腸チューブ)も先端を小腸内におくことで逆流がなくなります(http://www.peg.or.jp/lecture/peg/product/peg-j.php)。
ちなみに、おすすめはしませんが、経鼻胃管による経腸栄養管理についても後述します。
次に、知っておくことは、必ず来る交換の時期と方法です。以下に、カテーテルのタイプを表示しますが、一般的な交換の目安は、バンパー型6ヶ月、バルーン型2-3ヵ月です。最近のカテーテルは非常に優秀で、場合によっては1年以上使用している施設もありますが、安全な交換には上記を目安にしましょう。
ちなみに、経鼻胃管の交換は、2-4週間とされています。
* 経腸栄養剤の種類と特徴
2015年現在で、約200の食品、薬品の経腸栄養剤があり、薬品扱いの経腸栄養剤は、薬として登録されている成分でつくられた製品で、その製品も治験という臨床試験を受けて認可されたものです。保険適応があるので、患者さんの負担は軽減され、在宅では、薬品の半消化態栄養剤が好んで使用されます。これに対して食品扱いの経腸栄養剤は、天然成分を配合してつくられることが多く、特徴のある配合が選べます(最近は、薬品のエネーボ®やツインライン®にはセレンが配合されています)。ただし、保険適応がないので、入院中は食費、外来では自費扱いとなります。
薬品扱いの経腸栄養剤一覧
エレンタール、エレンタールP 成分栄養
ツインラインNF 消化態栄養
ラコールNF、ラコールNF半固形 半消化態栄養
エンシュアリキッド、エンシュアH 半消化態栄養
エネーボ(セレン、EPA/DHA、食物繊維) 半消化態栄養
ヘパンED、アミノレバンEN(肝不全用)
2. 経鼻胃管による在宅経腸栄養法(HEN)の管理
やむを得ない状況で在宅経腸栄養(HEN)として経鼻胃管を使用する場合は、より慎重な管理とリスクマネジメントが必要となります。先ず、なぜ経鼻胃管による栄養法を選択されたかという経緯を十分に理解して、家族と綿密な打ち合わせ(胃瘻栄養への変更や事故抜去時の対応など)を行っておく必要があります。当院が対応した在宅患者さんでも、とにかく胃瘻が嫌だからというだけで、経鼻胃管のリスクを知らずに選択した方もみえ、HEN開始時には再度詳細に説明しています。
1)経鼻胃管経腸栄養の基礎
4週間未満の短期間の経腸栄養に用いる。誤嚥のリスクがある場合には、幽門後(十二指腸ではなく、絶対に空腸起始部)にチューブ先端を留置する。
利点:
✓ 簡便である。
✓ ほぼ非侵襲的に挿入できる。
✓ 抜去後には、障害を残さない。
欠点:
✓ 患者にとってすべてが苦痛。
✓ 鼻腔・咽頭刺激、鼻翼や鼻中隔の壊死、副鼻腔炎・中耳炎、食道潰瘍あり。
✓ 胃食道逆流、誤嚥のリスクを高める。
✓ 事故(自己)抜去の可能性あり。
✓ 短期間使用に限られる。
✓ 細いチューブで閉塞しやすく、粘度の高い経腸栄養剤は投与しにくい。
✓ 気道への誤挿入のリスクがある。
2)経鼻胃管の選択
材質:やわらかく、刺激が少ない、さらに表面や内腔に不純物が付着しにくい素材。可能であれば外径に比較して内径の大きいものが閉塞しにくい。また、X線非透過性のものが推奨される。
シリコン:やわらかく刺激が少ない、挿入にガイドワイヤーが必要、外径に対して内径が小さい。傷つきやすい。消化液にて変性しにくい。
ポリウレタン:挿入時にある程度固いが、体温にて柔らかくなる、シリコンに比較して強い、外径に比較して内径が大きい、消化液による変化が少ない。粘膜刺激や組織反応が少ない。
ポリ塩化ビニル:DEHPの溶出の問題があったが、最近は対応した製品もある。柔らかく適度な硬さもあり使用しやすくなっている。消化液に長く接すると硬化しやすいとされるが、先端を丸くするなど工夫されており、安全に使用できる。
* 現時点では、ポリウレタン製が最も好ましいかもしれませんが、管理者の慣れが重要と考えています。
形状:側孔、先端開口、多孔式、おもり付きなど、管理方法に応じて選択が必要です。
側孔式:薬物や食物残渣が先端にたまりやすく、蓄積すると側孔を塞ぐ可能性があり、十分なフラッシュが必要です。特に、タケプロンなどのPPI製剤を使用するときは注意が必要です。
先端開口:薬物投与の際に先端が粘膜などに接触していると、強い注入で粘膜損傷などの可能性があるとされているが、実際にあまりはみたことがないです。
* 現時点では、側孔式の多孔式が使いやすいです。おもり付きは、主に小腸内に留置するチューブで腸蠕動で先に送り込む目的で使用されます(抜け、たわみ予防)。
スタイレット、ガイドワイヤー:チューブ一体型のスタイレットタイプが、たわみなく挿入しやすい。また、位置の調整も容易です。
サイズ(外経):外径はよほど太くなければ(14Fr以上)、胃食道逆流には関与しないとされる。ただし、咽頭不快や鼻の不快感、さらには嚥下訓練の妨げになるので、なるべく細径のチューブの使用が好ましい(できれば内径も考慮に入れること)。ただし、材質にもよるが、あまり細くて柔らかすぎると、たわみや迷入の原因になり、ある程度のコシは必要になります。
* 成分栄養や消化態栄養・半消化態栄養剤なら8Fr、それ以外の食品栄養剤は10Frが推奨。
3)経鼻胃管の挿入、交換の実際
必要物品:
胃管
カテーテルチップ 30または50mL
潤滑剤
* 必ずしもキシロカインゼリーの必要性はないです。使用するならアレルギー確認も重要で、当院で経鼻胃カメラの前処置で呼吸困難になった患者さんもみえます)。
聴診器、SpO2モニター
水道水、色素
ガーグルベースン、シーツ、できれば吸引器
ディスポ手袋、エプロン、マスク
固定用テープ、はさみなど
挿入・交換手技:
先ず、患者または家族に十分な説明と、術者はマスク、手袋、エプロンを着用。可能であれば、口腔内をきれいにして、患者を十分にリラックスさせます。もし、吸引器などがあれば、スタンバイしておきます。単独で施行せず、必ず介助者をお願いします(上肢の抑制や頭部の保持などの協力とトラブル発生時の介助に絶対必要です)。
① まず、患者を仰臥位にし、ギャッジアップ30-45度。
意識のある患者さんは、可能であれば坐位になってもらい、ガーグルベースンを受け皿としてもってもらう。
* 交換の際には、まずカテーテルチップで胃内容を吸引します。栄養剤が多量に(200mL以上)引ける場合は、交換を延期しましょう。次に、エアーの入りを心窩部で聴取します。十分なゴボゴボ音が聴取されたら、できれば両側肺野でも同様に確認してください。肺野のエアー音の方が大きい場合は、気管支内の可能性があります。胃内にあることを確認できたら、あらかじめ用意した色素液を先ず10mLゆっくり注入し、この段階でムセや呼吸困難があれば、やはり気管支内です。大丈夫であれば、さらに色素液を30-40mL追加してください。交換時に同じ色素液がひけて来たら、交換完了です(スカイブルー法)。当院では、かき氷のブルーハワイシロップを使用しています。
② 挿入する鼻孔を決定しますが、交換の場合は使用していなかった鼻孔を使用してください。潤滑剤を使用する鼻孔およびチューブ先端に十分塗布します。
③ 胃管の挿入の深さは、多くの教科書では45~55cmとか、鼻孔-耳孔-剣状突起を計測などと記載されていますが、在宅管理の場合は抜けかけによる誤嚥性肺炎は致命的なので、+10cmくらいが適当と考えています。特に、後述するチューブ留置位置の確認のための胃内容吸引、経腸栄養の胃内停滞の確認のための胃内残量前吸引のためにも、やや深めの留置が必要です。従って、55~60cmが適当と考えています。
* 筆者は、スタイレットを使用して胃管を50cm挿入したら、胃管をそのままにして10cmほどスタイレットをぬいた状態でさらに約70cm挿入して一番胃内容がひけてエアー音が良好に聞ける位置までひいてきます。しょして、そこに固定するようにしています。
④ 胃管は、ゆっくり顔面に対して垂直で挿入していきます。咽喉頭に達したら、患者の嚥下を促す、または嚥下反射に合わせて食道内に挿入していきます。気管内に入りやすい場合には、頭部を前屈すると気管に入りにくくなります。可能であれば、咽頭を観察して、チューブが交叉したり、たわんでいないことも確認しましょう。チューブが咽頭正中線を交叉していると喉頭蓋の閉鎖が不十分になり、誤嚥を起こしやすくなります。左鼻孔から挿入したら咽頭部左側を、右鼻孔なら右側を通って食道入口部に誘導します。挿入しにくい場合には、挿入したい方向と反対に頭部を向けると挿入しやすいです。
* 筆者は、20cm前後に達して咳反射などがではじめたら、スタイレットを少し抜いてチューブのアダプターを耳に当てて呼吸音を聞きながら挿入しています。気管内に誤って挿入しても全く咳反射のない高齢者もいるので、呼吸音を聞きながら挿入することは非常に有用です。
⑤ 30cmを超えて、咳反射や呼吸困難がなければ、早く押し込んでチューブが曲がったり、ゆがまないように手ごたえを確認しながらゆっくり挿入していきます、ここは比較的スムーズです。45cm前後になるとやや抵抗があることがありますが、ここが胃-食道接合部(胃の入り口)です。ここで無理に押し込むと接合部を損傷したり、180度屈曲して戻ってくることがあるので、患者に再び嚥下を促し、嚥下に合わせて手ごたえを感じながら挿入してください。チューブ先端の留置位置は、前述の深さで仮固定しましょう。仮固定後に、スタイレットは、ゆっくり抜去してください。
⑥ カテーテルチップで胃内容を吸引します。楽に、胃液が引ける場合は大丈夫、逆にエアーがいくらでも引けてくる場合は気管内の可能性が高いです。胃内容が確認できれば、エアーを30-50mLできるだけ、勢いを付けて注入して、心窩部および両肺野でエアー注入音を確認します。心窩部が最強であることをさらに確認します。できれば、注入したエアーを引いてみて、その吸引音も確認する。
* 胃内容の吸引が悪い場合には、体位を変えたり、エアーを30-50mL注入してから、再吸引してみる(チューブ先端が壁にあたっている、または食道内)。
⑦ チューブを鼻孔のもとで目盛りがみえるように固定する。または、マーキングしてそのマークがみえるように固定します。固定は、粘着テープの固定で十分ですが、鼻孔から頬部の固定までのチューブのたわみは最小限にします(事故抜去予防)。その際に、鼻孔の粘膜に直接チューブがなるべく当たらないように、固定してください。
* 固定テープは必ずしも鼻の頭に毎回貼付する必要はなく、鼻の下や鼻翼側面など場所をかえて固定しましょう。
⑧ 一番確実なチューブ留置位置の確認方法は、X線透視下の入れ替え、または留置後のX線、内視鏡での確認が必要とされていますが、在宅では困難なので慎重に上記の手順を怠りなく行いましょう。
⑨ 適切な交換の時期は、2-4週間とされています(ちなみに添付文書には、材質によって2または4週間と記載されていますのでご確認ください)。
⑩ 最後に、両側の呼吸音、頸部のゴロゴロ音に加えて、口腔内を確認。バイタルも再確認して終了。
* 筆者は、交換直後に経腸栄養開始して、最初の滴下時に変化がないことを確認してから、訪問診療を終了することにしています。
4)経鼻胃管の注入手技
1) 患者の体位を整える(仰臥位、30-45度以上ギャッジアップ)。
必ずしも右側臥位は逆流予防にはならない。
2) 胃内容物を吸引し、食物残渣の有無を調べる。200mL以上あれば延期。
3) 胃部に聴診器を当て、カテーテルチップにて10~20mlの空気をチューブから送り込み、音を確認する。
追加で両側肺野は音が弱いことを確認。
4) 栄養剤の温度(室温で可)を確かめて、イルリガードル、経腸栄養バッグに流し込み、ルートを満たす。
できればRTH(Reay-to-Hang)製剤を感染対策として使用し、ルートに接続する。
5) 内服薬がある場合、先に簡易懸濁法にて注入しておく。
6) ルートとチューブを接続する。
7) クレンメで滴下を調節する(医師指示の速度に調節)。
もしくは経腸栄養ポンプを用いて注入。
8) 注入中も患者観察を継続。
注入速度: 胃200-500mL 空腸100mL 慣れてくれば、徐々にアップも可能
9) 全量注入後、患者の状況に応じて追加水分量の白湯をカテーテルチップまたはイルリガードル、経腸栄養バッグで注入する。経鼻胃管は十分にフラッシュしておく。
9) 終了後は、液体栄養剤の場合、30分間以上同じ体位を維持させる。
半固形栄養剤(ハイネイーゲルなど)を用いた場合は不要。
5)経鼻胃管栄養に伴う合併症と対策
1) 誤挿入
・ チューブ留置後は空気を少量フラッシュして送気音を聴取確認。聴取法の感度45%、特異度85%と不確実。
・ X線にてチューブ先端の位置確認とチューブの蛇行・屈曲がないことの確認。
(米国のガイドラインでは、24時間持続注入は8時間毎、間欠投与は毎回)
・ 体外へ出ているチューブの長さの確認、口腔内・咽頭内のチューブのたわみの確認
・ 注入前の胃内容物の吸引確認
・ 抜けかけている場合には、栄養剤投与中であれば中止。決して、確認せずに無理に押し込まない。
2) 鼻・咽頭部付近の合併症
・ チューブ圧迫による咽頭炎、咽頭部びらん、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、鼻翼の潰瘍・壊死、食道潰瘍
→ 細径の柔らかい材質を使用、鼻翼の固定具使用、固定場所の変更
3) 嚥下性肺炎(逆流した胃内容の誤嚥)
原因:胃食道逆流(GER)、胃内容の排出遅延・胃拡張・嘔吐、脳梗塞後の咽頭反射の低下、栄養剤の注入速度
頻度:多いところで66.6%
予防対策:適切な注入速度を守る
経腸栄養ポンプを使用
注入中から注入後30~60分、上体を30~45度以上挙上
幽門後にチューブ先端を留置(空腸)
半固形化栄養剤
口腔ケア
* Mendelson syndrome:胃・十二指腸内容物の気道内吸引(macroaspiration)によって発生するが、経腸栄養時には高濃度高浸透圧の経腸栄養剤と酸度の高い胃液が気管支・肺胞内に多量に流入するため、細菌性肺炎・化学性肺炎の病態を示す重篤な合併症
* 経鼻胃管から投与できる半固形栄養剤です。PPIなどの胃酸をブロックする薬の併用に気を付けましょう。
4)チューブ閉塞
チューブ内への経腸栄養剤の付着、胃酸による栄養剤の凝固などが原因
薬剤は、簡易懸濁法などでできるだけ液状にして注入
栄養剤注入後は必ず微温湯でチューブ内腔をフラッシュする。
酢水クランプ(十分な内腔フラッシュ、残渣があると酢と反応して沈殿物形成、10倍希釈の酢水5ml注入)
ガイドワイヤーによる再開通はチューブの破損の可能性があり、行わない。
スタイレットやガイドワイヤーで物理的瀬閉塞解除(つつく)は行わない。
5)チューブによる消化管穿孔
硬いチューブの使用
側孔のないタイプの使用
乳児や炎症性腸疾患の合併
消化管蠕動が著しく低下