摂食・嚥下障害

嚥下障害患者にとって「食事」は喜びであるだけでなく、日々の訓練、ある時期からの自分らしく生きていくための人生の目標であり、時には誤嚥性肺炎や窒息などにつながる凶器、恐怖にもなりうるものです。患者さんが、「おいしく、楽しく、そしてやさしい雰囲気の中で食べる」ためには、患者さんそれぞれの嚥下・認知機能や嗜好に合わせた食事を、その時欲しいだけ適量摂取するのがベストだと私たちは考えます。そこには、医師、栄養士(管理栄養士)、調理師だけでなく、実際に食事を介助する看護師、介護士や施設スタッフ、さらにはよりよくサポートするための薬剤師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科医師・歯科衛生士、ケースワーカー等と多くの職種や家族が関わっているものです。また、嚥下障害患者は、基礎疾患や合併症などで入院や転院を余儀なくされることも多く、いろいろな施設や環境の中で、同じ食形態を同じ作法で提供される必要があります。ところが、嚥下食の現状は、一定の食形態の基準がなく、各施設が名称や形態を施設事情に合わせて設定しており、実際に転院などの際にトラブル等も発生しています。また、食事の摂取方法も、体位や介助の工夫など細かく設定されることにより、安全に嚥下食が摂取できるようになったにも関わらず、その連絡にもいろいろな困難があるのが現状です。

当院は、HEIWA(Hirabari Eiyou Information Working Association)プロジェクトとして、これらの嚥下食の地域連携の問題点を改善すべく、地域の病院、施設と定期的に学習連絡会を開催して統一の嚥下食基準や連絡票を作成しました。これらの活動の中で、いろいろな施設に従事する栄養士間の連携だけでなく、それぞれの環境での他の職種との連携の重要性を再認識しました。このページでは、平針、名古屋市、愛知県にとどまらず、より多くの地域、立場の皆様と摂食・嚥下について語り合える場になればと思い、今後も様々な情報を提供して行きます。

2012年12月29日 名古屋記念病院 副院長 武内有城