Ⅵ. 認知症の栄養管理

Ⅵ.  認知症の栄養管理

1. 認知症の基礎

認知症の定義:

「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患により生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能の障害からなる症候群」by ICD-10

認知症とは、一旦正常に発達した認知機能が持続性に低下し、複数の認知障害があるために日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言います。主に、記銘力障害、遂行機能障害、視空間認知障害、言語障害、人格と行動の変化の5領域を評価診断します。

具体的には、記憶障害に何らかの判断力低下や遂行機能障害(計画や段取りがわからない)状態が加わった場合に認知症を疑い、意識障害がなく、うつ病などの精神疾患や基礎疾患などがない場合を言います。

認知症の病態:

◆軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)

認知機能が正常ではないが、認知症の基準を満たさない病態。例えば、明らかな記憶障害があるが、一般的な認知機能は保たれた状態をさす。年間約10%が認知症に移行するとされるが、薬物療法で進行の抑制にエビデンスはない。しかし、リハビリテーションや体重を指標とした栄養療法、EPA/DHAなどの効果も、認知症への進行を抑制される可能性が指摘されている。最終的に約10%は認知症に移行しないとされている。

* 認知症の重症度分類:認知症の診断をみたした患者の重症度(MCIは含まれません)

軽度…基本的日常生活動作は自立しているが、社会的・手段的日常生活動作には支障がある状態で、かつその原因が認知機能低下によるものである。例えば、職業あるいは社会活動が明らかに障害されてはいるが、自立生活能力が残されており、身辺の清潔を保ち、比較的正常な判断ができる状態を指す。

中等症…基本的日常生活動作にも障害があり、日常生活を行う上である程度の介護が必要な状態で、かつその原因が認知機能の低下によるものである。例えば、自立した生活が困難で、ある程度の監督が必要な状態とされる。

重度…ほとんどの機能が失われ、常時介護を要する状態。例えば、日常生活が障害され、絶えず監視が必要で、身辺の清潔が保てず、言葉が支離滅裂か全くしゃべらないことを指す。

◆アルツハイマー型認知症(Alzheimer’ disease:AD) 最も多く、認知症の2/3との報告もある。

神経細胞が通常の老化よりも早く減少してしまうことにより、正常な脳機能が果たせなくなり、進行性に認知症をきたす病態。大脳皮質の萎縮は、記憶をつかさどるとされる海馬周辺から側頭葉内側にはじまり、頭頂葉・側頭葉に進行する。従って、脳MRIやCTなどで画像にて萎縮の進行度を評価することが診断の一助になる。近時記憶障害で発症することが特徴的で(遠隔記憶は比較的正常)、次に言葉の表出困難、理解障害などの言語障害、計算障害、書字障害を認めることが多い。進行すると、判断能力の低下や遂行機能障害をきたすようになる。これらに加えて、自発性の低下や無関心などのアパシーが認められ、妄想や徘徊、易刺激性に進行していく。重症度に応じた薬物治療があり、非薬物療法と組み合わせて対応していく。

参考:アルツハイマー型認知症の重症度 FAST(Functional Assessment Staging)

FAST  臨床診断    特徴                 MMSEでの目安    

1   正常     機能障害なし                28-30点

2  正常老化    物の置き忘れ、名前忘れの訴え

喚語困難

3  境界状態    他人が見て、仕事の効率低下、複雑な仕事は困難 24-27点

MCI      新しい場所への移動は困難

4   軽度     日常生活での複雑な仕事が困難、計画も無理  20-23点

社会性・対人関係でトラブルになる

買い物が必要なものを必要なだけ購入できない

金銭管理、服薬管理が困難

物盗られ妄想がある

時間の見当識障害があり

特定のところ以外は電話できない

5    中等症           日常生活にも支障をきたす             10-19点

TPOにあった適切な洋服が選べない

着替えや入浴の必要性が理解できない

場所の見当識障害があり

6  やや重度    独力では服を正しい順に着られない      0-9点

入浴に介助を要する、入浴を嫌がる

トイレの水を流し忘れたり、拭き忘れる

尿失禁・便失禁

人物の見当識障害あり

徘徊

7   重度     日常生活で常に介助必要

言語機能の低下

理解できる言葉が簡単なもののみ

同居家族もわからない

歩行能力・坐位保持機能・頭部固定機能の喪失

笑顔の喪失

◆血管性認知症(Vascular Dementia:VaD)

脳梗塞、脳出血などの脳血管障害によって脳が損傷されることよって発症する認知症の総称です。その診断基準は、①認知症がある、②脳血管障害がある、③両社に因果関係があるの3点ですが、因果関係については脳血管障害の発症時期と認知症の発現との時間的関係、病変部位と大きさが認知症の責任病巣として妥当かの専門家の判断によります。多発梗塞性、単一病変性、小血管病変性、低灌流性、脳出血性などがある。アルツハイマー型との症状の比較では、記憶障害が軽度で、言語障害のうち語想起、呼称、復唱の障害が特徴的とされる。また、うつ症状、不安、行動遅滞も多い傾向にあり、局所神経症状として歩行障害と尿失禁も早期から出現し、イベント発生のたびに段階的に増悪していく特徴がある。栄養障害や誤嚥性肺炎、心疾患の合併が多く、他の認知症に比較して予後不良とされる。コリンエステラーゼ阻害剤などの効果はエビデンスに乏しく、脳卒中予防と対症療法が主体の治療となる。

◆レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies:DLB)

大脳皮質、辺縁系、脳幹にびまん性にレビー小体を持つ変性神経細胞を認め、パーキンソン病とともにレビー小体病とされる。特徴は、認知機能の動揺、幻視、パーキンソニズム(振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害)のほかに、起立性低血圧や失神、頑固な便秘、尿失禁などの自律神経症状、うつや誤認、妄想などの精神症状をきたし、比較的急速に進行する。早期にうつ症状のみで始まる場合もあり、注意を要する。コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬が有効で、抗パーキンソン薬の併用も必要となる。

◆前頭側頭型認知症(FrontoTemporal Dementia:FTD)

比較的若年で発症する大脳の前頭葉、側頭葉を中心に萎縮が始まることに起因する認知症で、原因は多彩な病理学的特徴を呈するため症候群として扱う。臨床症状は、高度の性格変化と行動異常(脱抑制、性的逸脱行為、食行動異常など)に加えて、社会生活の喪失や注意、判断、実行機能などの能力低下が特徴的だが、進行とともに失語、語彙の減少が著明となる反面、知覚的認知力、空間的見当識、目的動作、記憶は比較的保たれる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効とされるが保険適応外。

 

2. 認知症の中核症状:

1)記憶障害(新しいことが覚えられない、以前に覚えていたことを思い出しにくいなど)

早期からの近時記憶の障害を認めるのはADの特徴

認知症では、エピソード記憶の障害が多く、手続き記憶は比較的保持される。

例)具体的には、すっぽり忘れるタイプの物忘れ

食事を食べたことを忘れる、もの忘れを指摘してもわからないなど

心理検査では3つの単語を思い出せない。

自転車の乗り方が分からない。

参考:

記憶の持続時間による分類

短期記憶(即時記憶)…約1分間記憶を保持する能力

長期記憶

近時記憶 …数分おぼえさせておく能力

遠隔記憶 …数日から数十年記憶を保持する能力

記憶の内容による分類

陳述記憶 …学習によって獲得された時事や知識に関する記憶

エピソード記憶 …自分の生活史や自分が経験した出来事などに関するもの

意味記憶 …日常生活に必要な一般的な知識の記憶

手続き記憶 …身体の動きで覚えている記憶、自動車運転や楽器演奏など

* 物忘れの比較

    加齢に伴う物忘れ           認知症の物忘れ            

体験の一部分を忘れる          全体を忘れる

記憶障害のみがみられる         記憶障害に判断や実行機能障害を伴う

物忘れを自覚している          物忘れの自覚がない

探し物を努力して探す          探し物はとられたという

見当識障害はない            見当識障害もある

とりつくろいはない           とりつくろいがしばしば

日常生活に支障がない          日常生活に支障をきたす

徐々に進行               比較的早く進行

2)見当識障害(時間、場所の検討がつかなくなる、人間関係などの基本的な状況把握が曖昧になる)

一般的に、時間、場所、人の順番で進行していく。

例)ゴミを出す曜日を間違える。

約束がいつかわからなくなり、不安で何度も確認してしまう。

病院の名前を間違える、自分のいる場所を間違える。

3)遂行機能障害(実行機能障害)(物事を論理的に考えたり、順序立てて考え、状況を把握して行動に移す思考・判断力の障害、並行作業も苦手になる)

例)料理ができなくなる(味付けが変わる、料理が単純化など)。

金銭管理ができなくなる。

一つのことしかできない。

段取りができない、状況に応じた変更ができない、目標設定ができない。

4)失語(聞く、話す、読む、書くなど、言葉を利用したコミュニケーションの障害)

ADでは健忘性失語、FTLDでは反響言語を特徴とする超皮質性感覚性失語が特徴的。

例)しゃべりたい言葉がうまく話せない。

言葉の意味が理解できない。

依頼に対して、正しい動作はできるが、正しい返事ができない。

参考:

健忘性失語 …喚語障害、語想起障害を呈するが、発話は流暢で言語理解は良好。

超皮質性感覚性失語 …他の人が言った語や句を繰り返す反響言語を特徴とし、言語理解は著しく障害されている。発話は流暢。

運動性失語 …非流暢な発話、発話量の減少、構音の障害、言語理解は比較的保たれる。

語義失語 …超皮質性感覚性失語に似るが、語の意味が理解できない。

5)失行(麻痺などの運動機能障害がないにもかかわらず、目的にあった動作や行動がうまく行えなくなった状態)

構成失行や着衣失行はADに多い。

例)箸が使えない、歯ブラシで歯が磨けない。

服をうまく着られない。

いつも行っていた作業が突然できなくなる。

参考:

構成失行 …空間的形態処理の障害、立方体の模写、積み木の組み立ての障害がみられる。

着衣失行 …衣服がうまく着られない、障害は着衣に限られる。検査時だけでなく、日常生活でもみられる。

肢運動失行 …動作の拙劣性、運動麻痺や錐体外路症状、運動失調はない。

観念運動性失行 …検者の口頭命令に従った動作や模倣がうまくできない。日常生活上の自発動作は行うことができる。意識しないときは行えるが、意図的に行おうとするとできなくなる。

観念性失行 …複数の対象物を用いたいくつかの運動からなる系列行為で障害が明らかになる。複数の行為が組み合わさった作業ができない。

6)失認(感覚機能に異常がないにも関わらず、人や物体の認識がうまく行えない)

進行性の視覚失認や地誌的失認はADに多い。DLBには、視覚性認知障害がよくみられる。

例)目で見ているものがわからない、もしくはわかるが何に使うか名前などがわからない。

机の上のはさみをみても、その形や名前、用途がわからない。

化粧を一部だけ忘れる。

病識がない、もの忘れを指摘すると怒る、間違えてもケロッとしている。

できないのにできるといって言い張る。

参考:

視覚性失認 …視力・視野が保たれているにも関わらず、視覚的に提示された物品がわからない。

視覚性認知障害 …物体の大きさや形の分別、錯綜図の同定ができない。

地誌的失見当識

街並失認 …熟知しているはずの場所や風景がわからない。

道順失認 …熟知しているはずの道順を説明できない、地図が描けない。

 

3. 認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptom of Dementia)

認知症患者にみられる認知、思考内容、気分および行動の障害を表すもので、原因として中核症状による外界認知に、患者の性格・素質・周囲の環境・人間関係・心理的状況などが作用して起こる。患者にとってはBPSDの症状は周りの世界に適合しようとした結果であり、患者の苦痛・苦悩を緩和する観点から関わることが重要です。

1)不安 …漠然とした恐れで、軽度の認知症患者では認知機能障害の悪化に対する不安が前面に出ることがある。

一人になる不安

自分の行動への不安

自分の財産、所有物への不安

自分の評判への不安

* これらの不安で、家族につきまとったり、同じことを質問したり、介護者への負担となる。また、本人の焦燥や徘徊などの問題行動につながる。

2)焦燥性興奮 …一般的にはいらだち、焦ることを意味するが、不適当な言語、音声、行動も含まれる。

文句を言う

奇妙な音を出す

無視する

物を隠す、集める

部屋の中をうろうろする

暴言、暴力 など

3)幻覚・妄想 …幻覚で最も多いのは幻視であり、DLBに多い。妄想は、DLBやADに多く、身近な人物を対象とした生活に密着した妄想が多い

人や動物、昆虫がみえる

声が聞こえる

物をとられた、だれかが侵入した

嫌っている、捨てられる

家族が他人にみえる、自分と他人が入れ替わる

性的不貞を働いている など

4)うつ症状・アパシー …ADの初期に病状不安からうつ状態の発症が多く、喜びの欠如や身体的不調感のような非特異的な気分変調のことが多い。アパシーは、これまで行っていた趣味や日常の活動、身の回りのことに興味を示さなくなり、意欲の喪失とかかわりを避けるようになること。

うつ症状 …やるきはあるができない。心的葛藤や、自責の念がある。

アパシー …自責の念がない、やる気もない、周囲が困っている

5)暴力・暴言 …認知症が高度な男性や、対人関係の苦手な患者に多い。FTDに多い。

大声で叫ぶ、怒鳴る

叩く、押す、ひっかく、蹴る、噛む

* 家族や介護者に患者自身の失敗を指摘されたり、非難されたり、行動を制止させたり時に認めることが多く、介護者の対応に考慮が必要。

6)徘徊 …どこともなく歩き回ること。外に出たり、目を離したすきにいなくなること。介護者の大きな時間的、心理的な負担がかかることが多く、自宅での介護が困難になる要因となる場合が多い。

* 睡眠障害から徘徊をきたすことも多く、睡眠コントロールも重要。

7)不穏 …落ち着かず、穏やかでない状態。環境変化などで発生することが多い。

8)性的脱抑制 …不適切な性的言動は認められても、行動に至ることは多くない。

* 夕暮れ症候群 …認知症において、夕方から夜間にかけて精神症状の悪化、行動障害の増悪がみられる現象。

 

4. 認知症患者のケア

認知症患者のケアには、先ず認知症を理解すること、そして認知症になった患者の気持ちをケアすることです。次に、認知症患者の家族のケアにつながっていきます。認知症の中核症状やBPSDの対応に重きを置くのではなく、認知症になってしまった患者のつらさや焦り、不安を理解し、BPSDに至る原因を思いやり、家族と一緒に長い目で対応策を考えていくことです。認知症になってもいつでも、どこでも、その人らしく、暮らせるようにすることが基本。BPSDは問題行動ではなく、認知症の人の心の表現としてとらえ、その症状の意味を患者本人の立場で理解して、対応しようとすることが重要です(Person centered care by Tom Kitwood, Dementia Reconsidered : The Person Comes First 1977)。具体的な方法は、あなたのことを私は大切におもっていますというメッセージを発信しながら、「見る」「話す」「触れる」「そばいにる」援助を4つの柱とします(ユマニチュード, Yves Gineste & Rosette Marescotti 1995)。

認知症のリハビリテーション栄養 若林秀隆編著 医歯薬出版株式会社 2015年 より引用

* 認知症高齢者ケアの原則 (認知症疾患治療ガイドライン 2010より)

1. なじみの人間関係(仲間)をつくって、安心・安住させる。

2. 高齢者の心や言動を受容・理解し、信頼・依存関係をつくる。

3. 高齢者の心身の動きやペースやレベルに合わせ、よい交流を。

4. ふさわしい状況を与え、隠れた能力(手続き記憶)の発揮を。

5. 理屈による説得よりも共感的納得をはかり自覚言動を促す。

6. よい刺激を絶えず与え、情意の活性化と生きがいを納得させる。

7. 孤独の放置や安易に寝たきりにしない。廃用性低下を防ぐ。

8. 高齢者は変化に弱いので急激な変化を避ける。また変化するものほど忘れやすいので、変化させずパターン化して教える。

9. 高齢者のよい点を認め、よい付き合いをして、生き方の援助を。

10. 高齢者は過去と未来がないので、今の安住を常にはかり、時間の観念がないので日課を与え、順序・時間づけを得させる。

* 認知症患者への対応の基本

1)認知症患者の意志や経験を理解しようと努力する

認知症患者の話に耳を傾ける

認知症患者の話を一緒に想像する

認知症患者に説明する

認知症患者の反応を見逃さない

認知症患者の感想を聞く

認知症患者の意見を尊重する

2)認知症患者に必要なケア

その人らしく存在していることを支援

「わからない人」とせずに、自己決定権を尊重

生活歴を知り、生活の継続性を保つケア環境

心身に加え社会的な状態など全体的にとらえたケア

家族やケアスタッフの心身状態にも配慮

社会復帰を視野に入れたケア

最期の時までを視野においたケア

3)認知症患者の行動は、援助者の鏡

かかりつけ医認知症対応力向上研修テキスト 名古屋市医師会より引用

 

5. 認知症家族のケア

認知症患者の家族にも目を配り、耳を傾けるケアが重要です。

家族が認知症になったことへの否定

他人には知られたくないとの否認

大切な家族がその人らしさが失われていく喪失感・悲哀

家族としての対応への不安・葛藤

介護への不安

BPSDへのとまどい

認知症患者からの感謝がない徒労感・無力感 など

これらに対する対応には、マニュアルはなく、臨機応変な対応と家族への敬意やパートナーとしての姿勢が家族への安心感・信頼感につながります。また、この関係はヘルパーなどの援助者・介助所にも同様です。援助者が疲弊すると、無理な抑制や介助の不十分、自己否定につながります。同じ環境でのチーム医療としての取り組みも重要です。

 

6. 認知症患者の栄養療法とリハビリテーション

◇認知症の栄養療法のエビデンス(ESPEN guidelines on nutrition in dementia 2015)

スクリーニング&アセスメント

1) 全ての認知症患者に栄養スクリーニングを施行すること。栄養不良を認めたら、栄養アセスメントを行い、適切な栄養療法を開始すること(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ 認知症の診断時にスクリーニングを行うこと

・ 3-6ヶ月ごとにスクリーニングは行うこと

・ スクリーニングとしては、MNA-SFを推奨する

・ 適切な栄養評価ツールを用いる

The Aversive Feeding Behavior Inventory(AFBI、Blandford scale)

The Edinburgh Feeding Evaluation in Dementia Questionnaire(EdFED-Q)

The Eating Behavior Scale (EBS)

2) 頻回の体重の測定と記録を勧める(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ エビデンスはないが、少なくとも3ヵ月ごとの測定と記録

経口摂取サポートの戦略

3) 楽しく、アットホームな雰囲気での食事の提供をすすめる(中等度のエビデンス、強い推奨)

・ 家での食事と同じ形態で摂取することで、食事量がアップし、栄養も改善する

・ 照明の工夫や音楽、みやすいテーブルクロスなどの視覚的アプローチも有効。

4) 個人の好みに応じた適切な食事の提供を勧める(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ 認知症患者の特徴的栄養不良パターンや推奨する総エネルギー量や栄養構成はない。

5) 食事を食べる気にさせ、そのサポートを行うことを勧める(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ 買い物から介入、食事時間にテーブルにつかせるなど。

・ 摂食介助や嚥下食の工夫など

6) 食欲増進薬物の使用は推奨しない(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ 大麻やホルモン剤の使用は推奨されない

7) 介護者への認知症患者の栄養に関する基礎的問題やその介入法を教育すること(低いエビデンス、強い推奨)

8) 栄養不良の原因をできる限り排除すること(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ 口腔ケア、歯科治療、嚥下訓練、基礎疾患、薬の副作用に注意

9) 食事制限はさける(とても低いエビデンス、強い推奨)

・ 腎不全など以外は、過度の減塩食、糖質制限、脂質制限は、高齢者、とくに認知症の栄養不良の原因となる。

経口サプリメント

 栄養素の欠乏に起因する認知症は、常にチェックして補充すること

10a) 認知機能低下の治療および進行予防目的でのω3系脂肪酸投与は推奨しない(高いエビデンス、強い推奨)

ただし、軽度認知機能障害には、有効な可能性はある。

10b) ビタミンB1欠乏のない認知症患者に、ビタミンB1投与は推奨しない(とても低いエビデンス、強い推奨)

10c) 欠乏症のない認知症患者に、ビタミンB6、B12、葉酸の投与は推奨しない(低いエビデンス、強い推奨)

10d) 欠乏症のない認知症患者に、ビタミンEの投与は推奨しない(中等度のエビデンス、強い推奨)

10e) 欠乏症のない認知症患者に、セレンの投与は推奨しない(とても低いエビデンス、強い推奨)

10f) 欠乏症のない認知症患者に、銅の投与は推奨しない(とても低いエビデンス、強い推奨)

10g) 欠乏症のない認知症患者に、ビタミンDの投与は推奨しない(とても低いエビデンス、強い推奨)

経口栄養剤(ONS)

11) 栄養状態改善のために経口栄養剤の使用を推奨する(高いエビデンス、強い推奨)

12) 認知症の治療または悪化予防のための経口栄養剤の使用は推奨しない(中等度のエビデンス、強い推奨)

13) 同様に特別食の認知症患者への使用も推奨しない(低いエビデンス、強い推奨)

ただし、副作用は最小限なので、個別の対応は議論の余地がある。

14) その他の栄養素も認知症患者には推奨しない(とても低いエビデンス、強い推奨)

人工栄養および水分補給

15) 認知症患者への人口栄養および水分補給は、個別の予後や選択に基づいて決定する(とても低いエビデンス、強い推奨)

16) 回復可能な限定的要因で合併している経口摂取不良に対して、軽度・中等度の認知症患者には期間限定の経管栄養は推奨される(とても低いエビデンス、弱い推奨)

17) 高度認知症患者には経管栄養を推奨しない(高いエビデンス、強い推奨)

18) 経管栄養の必要な軽度・中等度認知症患者で、経管栄養が禁忌または耐えられない場合には、静脈栄養も提案される(とても低いエビデンス、弱い推奨)

19) 水分摂取不良の認知症患者には、危機的状況を克服するための静脈栄養は提案される(とても低いエビデンス、弱い推奨)

20) 末期患者には、いかなる強制栄養も推奨されない(とても低いエビデンス、強い推奨)

 

7. 認知症の摂食嚥下障害

・ 認知症患者の摂食嚥下障害の有病率は、13~57%とされる。

・ 認知症患者は、病状の進行とともに摂食嚥下障害の合併が見られるようになる。

・ 老嚥の要因(摂食嚥下編参照)

・ 認知症の摂食嚥下障害の具体例

食べない、口を開けない

食べることを忘れる

食べるものが認知できない

食べるための準備(買物、調理など)ができない

食事に集中できない、中断する、停止する

他のものに気を取られる、固執する

他人の食事が気になる、とってしまう

食べ物以外のものを食べてしまう

食事の速度がはやい、口に詰め込む

お箸や食器が使えない、手づかみや直接口で食べる など

アルツハイマー型認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

初期:

嚥下障害はほとんどない。

遂行機能障害として、食事の準備や買い物ができない、段取りができない。料理ができない。

先行期(認知期)の問題として、偏食、過食、食べたことを忘れるなどがある。

嗅覚障害がある。

中期:

軽度の誤嚥も認められる。

空間認知障害や失認・失行により食物を食べる対象として認知できない、お箸や食器の使い方がわからない、食品の開封ができない、手で食べる、食べこぼしなど摂食行動の障害がある。この段階では、食事量がわからず詰め込みすぎて、ムセや誤嚥する可能性もある。一部には拒食症もある。

注意障害により、食器の模様に気を取られる、他のことに気を取られて食事に集中できない、他人の食事を食べるなどの行動もある。

後期・末期:

口腔顔面失行により、いつまでも咀嚼し続ける、口腔内に食物をため込むなどを認める。

さらに進行すると、嚥下障害から誤嚥性肺炎の合併を認める。

口腔乾燥も出現。

低栄養も合併し、サルコペニアもきたす。

レビー小体型認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

認知機能の変動:

認知機能の低下している時を避け、覚せい状態良好の時に摂食をすすめる。

パーキンソン症状:

上肢の振戦や筋・関節の拘縮による食事の困難

筋拘縮による摂食嚥下の協調運動障害

ドーパミンの低下による嚥下、咳嗽反射の低下

顔面・口腔の不随意運動によるムセ

幻視などにより、拒食や食事中断がある。

抑うつによる食思不振

抗精神病薬の過敏性による誤嚥、食思不振

前頭側頭型認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

初期:

大食いや偏食が起こることあり

常同行動により、いつも同じ時間に同じ場所で同じものを食べるなどへの固執があり

中期:

脱抑制や被影響性の亢進により、早食い、詰込みなどあり。何でも口に入れる口唇傾向もあり。さらに、立ち去りや中断などもみられる。

摂食介助への抵抗

後期:末期:

無為・無動の時間が増加し、開口困難やため込み出現

嚥下反射も低下しており、誤嚥のリスクが高い

血管性認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

皮質性血管性認知症(多発梗塞型):

注意障害、遂行機能障害、失行、麻痺による食事の口への取り込み、食塊の保持・形成困難、嚥下反射遅延

皮質下性血管性認知症(小血管病変型):

基底核症状によりドーパミンが低下し、嚥下・咳嗽反射の低下

局在病変型血管性認知症

障害部位による症状

 

8. 認知症に関するリハビリテーション

脳活性化リハビリテーションの5原則

*快刺激

快刺激により笑顔が生まれることで,脳内にドーパミンが多量に放出され,学習意欲・やる気の向上につながる.スタッフ側も笑顔になることで,笑顔が笑顔を生み出す.また,快適な環境の設定も重要である.

*ほめる

対象者をほめる・受容する.ほめられることは人間にとって最大の報酬であり,ドーパミン神経系の賦活により,意欲の向上につながる.他人をほめることも大切であり,自己効力感や尊厳を高める.

*コミュニケーション

他者と楽しい時間と場を共有することで,安心感が生まれる.特に進行と共に困難となる社会交流については,それを踏まえた上で受容的に関わり,非言語的コミュニケーションも含め社会的相互交流の場を維持する.

*役割

対象者が社会的役割を主体的に担うことができるようにかかわる.主体的役割の存在はその人が生きている拠り所となるものであり,疾患に関係なく人間として共通するものである.

*誤りを避けて正しい方法習得(errorless learning)

認知症では誤りを基に試行錯誤からの学習は困難だけでなく,混乱を招きネガティブな感情のみが記憶に残りやすく,学習の妨げにもなる.能力に応じたサポートで不要な失敗を避けつつ,正しい方法を繰り返し,成功体験とポジティブな感情で終わらせる.満点主義が基本.

◆エビデンスのあるリハビリテーション

バリデーション(是認)療法…現実を受容し他人の経験を自分にとっての真実と受け止めるという原則に基づき、認知症患者の混乱した行動や非現実的な言葉にも必ず理由があり、その背後にある意味を認め受容と共感の対応を示す手法。

アイコンタクト(真正面に座って、ひざがつく距離で同じ目線の高さで、目を見つめる)

ミラーリング(真正面に向き合って、相手と同じ動作、表情、姿勢をおこない、感情を分かち合う)

タッチング

友のタッチング(両肩をつつみこむようにして上腕部へなでおろす)

母のタッチング(掌で頬をなでる)

父のタッチング(頭頂部から後頭部を丁寧になでおろす)

子のタッチング(首の後ろを指先でなでる)

リフレージング(重要な言葉をオウム返し)

カリブレーション(共感手法を最大限に使用する)

リアリティ・オリエンテーション(RO)…認知症患者の現実見当識を強化することにより、誤った外界認識に基づいて生じる行動や感情の障害を改善することを目的とする。

クラスルームリアリティ・オリエンテーション  クラスルームリアリティ・オリエンテーションでは、少人数の患者が会合しスタッフの進行のもと決められたプログラムにそって個人および現在の基本的情報(名前、場所、時間、日時、人物など)が提供され訓練されます。

24時間リアリティ・オリエンテーション  24時間リアリティ・オリエンテーションでは、認知症高齢者とスタッフとの日常生活における基本的なコミュニケーションの中で、認知症高齢者に「自分は誰であるのか」「自分は現在どこにいるのか」「今はいったい何時か」といった事柄に対する現実認識の機会を提供する。例えば、着替えや排泄の介助などの日々のケアの中で、スタッフが意図的に認知症高齢者の注意や関心を天気、曜日、時間に向けたり、室内に飾られた季節の花、朝食のみそ汁のにおい、旬の魚を焼く香り、登校中の子どもたちの声などを用いて、見当識を補う手がかりを与える療法です。

回想法…過去の体験を振り返りその過程に対して共感的、受容的に対応することで高齢者の心理的安定や人格的統一を図ることを目的とする。

回想法はカウンセラーと認知症高齢者の1対1で行う個人回想法と、6人から8人くらいのグループで行うグループ回想法に大きく分けられます。個人回想法は、1対1で行い、構造化された面接として行う方法と、構造化されない自由な枠組みで行う方法があります。構造化された面接として行う際は、決められた曜日・時間に、場所を設定して行い、通常のカウンセリングに準じ、1週間に1回、50分くらいの面接を行います。構造化されない方法では、日常生活におけるさまざまな機会をとらえて、さりげなく高齢者の思い出にふれながら、コミュニケーションを図っていきます。

回想のテーマとしては人生の発達段階や歴史上の出来事の時系列的な側面を活用するもの、具体的には「子供時代」「ふるさと」「小学校時代」「中学校時代」「趣味」「交友関係」「旅」「出会い」「結婚」「出産」「子育て」「仕事」「孫の誕生」「定年」「今」「これから」などのライフステージを示すボードを準備し、キーワードを参考に話してもらうという方法です。また昔使用していた物や出版物、五感を刺激するものなどを用いて行うことも多い。回想法の効果については抑うつ感の改善、不安の軽減、人生満足度の向上、対人交流の促進などが報告されています。

音楽療法…音楽が人間の生理と心理に及ぼす機能的効果を利用して、心身の健康のために音楽を心理療法として応用すること。

実際の音楽療法には、音楽を受け身的に聞くだけの受動的音楽療法と参加者みずからが、歌を歌ったり、楽器を演奏したりして、積極的に音楽を行う能動的音楽療法があります。具体的には、受動的音楽療法は、懐かしい歌やクラッシクなどの音楽を、食事時間や日常の介護場面でバックグラウンドミュージックとして聴かせる療法です。それに対して能動的音楽療法は、参加者が、童謡、唱歌、演歌、フォークソング、軍歌などを歌ったり、また歌にあわせて、鈴、タンバリン、ベルなどの楽器を演奏したり、音楽にあわせて体のストレッチをしたり、歌体操や踊りなどを参加者自身が行う療法です。

認知刺激療法…情報処理過程に注目し、脳に刺激を与え認知機能そのものを改善させる方法。

言語や数字などを使ったゲームや簡単な計算で脳に刺激を与える。

運動利用法…身体機能や認知機能の維持、改善目的に身体活動や運動を行う。

運動機能と心肺機能の改善と維持を目的とする。寝返りや布団から起きるなどの基本的な動作や、歩行や散歩などの移動動作、関節を動かす運動や筋力を強くする運動、持久力を高める運動など、症状に合わせて行われる。

健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)より一部引用

 

9. 認知症の食事介助の実際

食事前の準備:

✓ 覚醒は良好か?

薬剤の副作用のチェック

環境、特に光環境の調節による覚醒の促し

コミュニケーションなどによる覚醒の促し

家族の訪問や介助などで覚醒の促し

睡眠・生活リズムの改善

✓ 体調不良や発熱はないか?疲れていないか?

バイタルサインの確認

視診、触診、聴診

✓ 排泄はすませているか?便秘や腹部膨満はないか?

便秘のチェック

✓ 食事であることが理解できているか?または、おなかがすいているか?

五感の活用

視覚…盛り付け、食器やテーブルクロスの色、「食べる」の文字、食べるイラスト、スタッフが一緒に食べる、スタッフのエプロン、マスコット、暖色系の使用

嗅覚…食欲をそそる香り

聴覚…揚げ物を上げる音、グラスの音など、心地よい音楽

味覚…濃い味

触覚…食材にふれる

好物の活用

記憶の継続性(なじみの食器やテーブル、いすなどの活用)

✓ 食べたい、または食べられるものが提供されているか?

食べたいものがあることで食事はすすむ

✓ 食卓に食べ物以外がおかれていないか?

シンプルに食事に集中

✓ 気になるものが周りにないか?食事に集中できているか?

注意を引く盛り付け、色彩

食欲をそそる香り

好きな仲間、スタッフ

食事前のルーティン

✓ 手洗いは大丈夫か?

✓ 口の中はきれいか?義歯は大丈夫か?

まず、食べる口をつくる

味覚障害、嗅覚障害はないか?

✓ 食事を嫌がっていないか?

かならず、一品は好物をいれる

思い出のある食事をとりいれる

食事の実際:

✓ 食べる姿勢はできているか?

足底はしっかり床につける

テーブルは肘の高さ

頸部はやや前屈

膝関節は90度屈曲

イスとテーブルの距離が適度

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認知症のリハビリテーション栄養 若林秀隆編著 医歯薬出版株式会社2015年 より引用

✓ どのように食べていいかわからない

✓ どれからたべていいかわからない

コース料理方式

ワンプレート方式

弁当箱の使用

✓ 食具(おはし、スプーンなど)の使い方がわからない

食具をいつも同じ場所におく

食具を手渡す

おにぎり、サンドイッチなど食具を使用しなくてもすむ食形態にする

✓ 食器がみえない、食べ物がみえない

✓ 食べるペースが違う人がいないか?

✓ 他人の食事を食べる、邪魔をする

✓ 食事で遊ぶ

✓ 嚥下に問題ないか?

✓ 詰め込み、過食はないか?

 

10. 認知症周辺症状(BPSD)の対応

BPSDには、何らかの意味があり、患者さんからのメッセージであるとして対応する!

✓ 身体疾患の有無のチェックと治療

✓ 薬物の副作用や急激な中断の有無

✓ 不適切な環境やケアのチェックと改善

✓ 介護サービスの利用

✓ 改善がなかなか見られない場合は専門医へ相談

かかりつけ医認知症対応力向上研修テキスト 名古屋市医師会より引用

◆アルツハイマー型認知症

初期のうつ状態や物盗られ妄想、見当識障害が進むと徘徊などがみられる。

◆脳血管性認知症

脳血管障害の場所で症状が異なる。アパシーのようなうつ状態、または脱抑制、感情失禁も多い。急性の発症をすることが多い。

◆レビー小体型認知症

独特の生々しい幻視、意識レベルの変動に伴うせん妄。向精神薬に過敏に反応し、パーキンソン症状を生じやすい。

◆前頭側頭型認知症

認知機能の低下よりも精神症状が先行する。性格変化、うつ状態などを生じる。脱抑制、自分中心の行動、常同行為があり、犯罪につながることもある。

非薬物療法の要点:

1)幻視・幻聴

✓ 幻視・幻聴に対して安心できるような声掛けを行う(もうすぐいなくなる、何もしないよなど)。

✓ 別の行動を行い、気をまぎらわせる。目線をそらす、目をつぶらせる、耳をふさぐなど。

✓ 薄暗い、物音がする、静かすぎるなど不安をあおる環境を変える。

✓ 幻視・幻聴になれさせる。スタッフがあわてない。

✓ ストレスや環境への不慣れなどを考慮し、軽減するようにケアする。

✓ 薬物の副作用や病状悪化(特にレビー小体型認知症)、体調不良をチェックする。

2)易怒性・焦燥

✓ 穏やかに静かに冷静に対応する。

✓ 介護の目的をわかりやすく説明する。

✓ 怒りがおさまるまで待つ。

✓ 認知機能に合わせた対応を行う。

✓ 患者の安心できる環境にする。

✓ 安心できる家族やスタッフを呼ぶ。

✓ 注意をほかのことに向ける。

✓ 決して、無理して距離を近づけようとしない。

✓ 薬物の副作用や病状悪化、体調不良をチェックする。

3)徘徊

✓ 目的があるなら、聞き出して解決する。

✓ 疼痛や不快などの身体的理由があるなら、解決する。

✓ 一緒に歩く、親しい家族に付き添ってもらう、

✓ ほかのことで気をまぎらわせる(お菓子、音楽、テレビなど)。

✓ 不安を和らげる介入を継続する。

✓ 名札を付ける、GPSを装着などの対応。

4)昼夜逆転、夜間せん妄

✓ 夜間の過剰な介入やストレスを軽減。

✓ 昼間にリハビリなどの介入を強化し、外出や日光浴などを取り入れる。

✓ 頻尿、疼痛や不快などの身体的理由があるなら、解決する。

✓ 入眠までの付き添いなど

✓ 薬物の副作用や病状悪化、体調不良をチェックする。

5)ものとられ妄想

✓ とられたことを頭から否定せず、一緒に探すなど共感する態度を示す。

✓ とられても安心できるように、説明する。

✓ 物がとられない、すぐに探せるような環境にしておく。

✓ 毎日の日課にものの確認を取り入れる。

✓ ほかのことで気をまぎらわせる、妄想ができないように介入する。

✓ 不安を和らげる介入を継続する。

6)抑うつ、意欲低下(アパシー)

✓ ストレス軽減、環境改善。

✓ 生活リズムの改善。

✓ 過剰にならない範囲での積極的声掛けと介入。

✓ 積極的リハビリテーションや集団療法の導入。

✓ 家族や親しいスタッフとの交流をふやす。

認知症・BPSD介護マニュアル 葛飾区医師会版 参照

薬物療法のまとめ:

不安・焦燥性興奮・幻覚・妄想…

リスパダール(リスペリドン)0.5~2.0mg/日 分1~2 DMに第一選択 DLBに注意

ジプレキサ(オランザピン)2.5~10mg/日 分1 DMに禁忌

セロクエル(クエチアピン)25~100mg/日 分1~3 DLBに第一選択 DMに禁忌

* 焦燥性興奮に

エビリファイ(アリピプラゾール)3~9mg/日 分1~3 DMには慎重投与

うつ症状…

SNRI(無動、無気力)

トレドミン(ミルナシプラン)15~60mg/日 分1~3 前立腺肥大に注意

サインバルタ(デュロキセチン)20~40mg/日 分1 夕食後 高齢者に慎重投与

SSRI(情動行動・食行動異常)

ルボックス(フルボキサミン)25~100mg/日 分3 高齢者に慎重投与

パキシル(パロキセチン)10~40mg/日 分1 夕食後 10mg/週増量 消化器症状

ジェイゾロフト(セルトラリン)25~50mg/日 分1 高齢者は慎重投与

レクサプロ(エスシタロプラム)10mg/日 分1 夕食後 QT延長症候群

NaSSA(食欲改善、睡眠改善)

リフレックス(ミルタザピン)7.5~30mg/日 分1 就寝前 高齢者は慎重投与

暴力・徘徊・不穏など…

リスパダール(リスペリドン)0.5~2.0mg/日 分1~2 DMに第一選択 DLBに注意

抑肝散 7.5g/日 分3 食前

性的脱抑制などの異常行動…

パキシル(パロキセチン)10~40mg/日 分1 夕食後 10mg/週増量 消化器症状

セロクエル(クエチアピン)25~100mg/日 分1~3 DLBに第一選択 DMに禁忌

レスリン(トラゾドン)25~100mg/日 分1~3 就寝前

睡眠障害…

リスパダール(リスペリドン)0.5~2.0mg/日 分1~2 DMに第一選択 DLBに注意

抑肝散 7.5g/日 分3 食前

ベンゾジアゼピン系(1/2~1/3で、短時間型を推奨)*なるべく使用しない

ワイパックス(ロラゼパム)0.5~1.5mg/日 分1~3

セレナール(オキサゾラム)5~30mg/日 分1~3

デパス(エチゾラム)0.5~3mg/日 分1~3 中断反発に注意

リーゼ(クリチアゼム)5~30mg/日 分1~3 中断反発に注意

睡眠導入剤

マイスリー(ゾルピデム)超短時間 5mg/日

ルネスタ(エスゾピクロン)超短時間 1~2mg/日

アモバン(ゾピクロン)超短時間+α 7.5mg/日

ドラール(クアゼパム)長時間・中途覚醒 15mg/日

不随意運動…

ミオカーム(ピラセタム)36mL/日 分3 1回3mLずつ増量/半週 MAX 63mL

イーケプラ(レベチラセタム)1000~3000mg/日 分2

けいれん…

デパケン(バルプロ酸)0.4~1.2mg/日 分2~3

テグレトール(カルバマゼピン)200~400mg/日 分2

ガバペン(ガバペンチン)600~1800mg/日 分3 アルミニウム、マグネシウム併用注意

ラミクタール(ラモトリギン)25~200mg/日 分1~2