日本版重症患者の栄養療法ガイドライン(要約)
日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会 日集中医誌 2016;23:185-281.
- 栄養療法の開始
- 栄養管理の必要性
CQ1: 重症患者に対して栄養管理は必要か?
A1:重症患者の病態や病期に応じた栄養管理を行うことを強く推奨する。(1D)
- 栄養状態の評価
CQ2:栄養評価に適した指標はあるか?
A2:栄養療法開始前にスクリーニングによる栄養障害やリスクを同定するべきだが,信頼性の高い評価指
標がない。(1D)
✓SGAによるスクリーニングは有用だが、重症度の評価は総合的に判断すべき。
- 栄養投与ルート
CQ3: 栄養投与ルートは,経腸と経静脈のどちらを優先するべきか?
A3:経腸栄養を優先することを強く推奨する。(1A)
✓経腸栄養を行うという行為は,静脈栄養のそれに比べて最終的な転帰の改善には至らないが,感染症の抑制や病院滞在期間の短縮,医療費の面で優位性がある。
- エネルギー消費量とエネルギー投与量
CQ4-1: エネルギー消費量の推定はどのような方法で行うか?
A4-1:間接熱量計での測定結果,もしくは推算式による算出に基づいて設定することを強く推奨する。(1D)
CQ4-2: 目標エネルギー投与量をどのように設定す
るか?
A4-2:急性期の初期1週間は,エネルギー消費量よりも少なく投与することを弱く推奨する。(経腸栄養:2B)(静脈栄養:推奨なし,unknown field)
✓急性期の栄養はエネルギー消費量よりも少なく投与することが望ましいと考えられる。しかし,至適な投与量は未確定である。
- 蛋白投与量
CQ5:蛋白投与量はどのように設定するべきか?
A5:至適蛋白投与量は不明である。(unknow field)エネルギー投与量が目標量に達している場合は,1.2〜2.0 g/(実測体重)kg/dayの蛋白が喪失していることを考慮したうえで,蛋白投与量を設定することを弱く推奨する。(1C)
- 経腸栄養
- 経腸栄養の開始時期
CQ1:経腸栄養の開始時期はいつが望ましいか?
A1:重症病態に対する治療を開始した後,可及的に24時間以内,遅くとも48時間以内に経腸栄養を開始することを推奨する。(1B)
- 不安定な循環動態
CQ2-1:不安定な循環動態での経腸栄養は可能か?
A2-1:高容量の昇圧薬投与,大量輸液,大量輸血が必要な場合など,循環動態不安定な患者に対しては,蘇生されて血行動態が安定するまでは経腸栄養の開始を控えることを弱く推奨する。(2C)
Q2-2: 循環不全時の経腸栄養投与時の注意点は何か?
A2-2:投与する場合は,栄養投与中のショックあるいは非閉塞性腸管壊死などの発症に留意し,その徴候
を認めた場合には経腸栄養を中断することを強く推奨する。(1D)
- 栄養チューブの留置位置の選択と経十二指腸チューブの挿入法
CQ3-1: 経腸栄養施行の際,経胃投与よりも,十二指腸以遠から投与されるべきか?
A3-1:誤嚥のリスクがある症例では幽門後からの経腸栄養を考慮することを弱く推奨する。(2C)
CQ3-2:十二指腸以遠への栄養チューブ挿入法は?
A3-2:内視鏡ないし造影下にて行う十二指腸以遠への栄養チューブ挿入はどちらも有効であり,各施設で慣れた方法で行うことを弱く推奨する。どちらでも選択できる場合は細径の内視鏡による留置を挿入時間が短時間である点から推奨する。
成人で盲目的に行う場合は空気を注入する方法を弱く推奨する。(2D)
胃蠕動が低下している症例では胃蠕動促進薬の使用を弱く推奨する。(2D)
小児では胃蠕動促進薬を使用しないことを弱く推奨する。(2D)
- 経腸栄養の目標投与エネルギー量
CQ4: 入室後早期の経腸栄養の至適投与エネルギー量は?
A4-1:重症化以前に栄養障害がない症例では,初期の1週間は消費エネルギーに見合うエネルギー投与量
を目指さないことを弱く推奨する。(2D)
ただ,至適投与量に関しては,消費エネルギーの1/4程度,500 kcal/day程度の研究があるが,推奨で
きる結論は出ていない。(unknown field)
A4-2:重症化以前に栄養障害がある症例では,至適投与量は不明である。
しかし,エネルギー負債が大きくなり過ぎない程度の投与量は必要である。(unknown field)
✓エネルギー消費量の1/4もしくは500kcal/day程度(20kcal/hr程度) までの経腸栄養を投与する低容量経腸栄養の理論的背景としては,消費エネルギーに見合わない投与量であるが,腸管粘膜の保全効果,刷子縁での酵素の分泌を刺激する,免疫能を保ち,上皮細胞のtight cell junctionを保ってバクテリアルトランスロケーションを防ぐと言われている。
- 静脈栄養
- 静脈栄養の適応
CQ1:静脈栄養の適応患者は?
A1:重症化前に低栄養がない患者において,初期1週間に経腸栄養が20kcal/hr以上投与できれば,目標量達成を目的とした静脈栄養を行わないことを弱く推奨する。(2B)
✓初期1週間において,持続的な経腸栄養によるエネルギー投与量量が平均20kcal/hr未満の患者では,目標量達成を目的とした静脈栄養を行ってもよい。なお,経腸栄養を間歇的に投与する場合の静脈栄養併用に関する研究はない。
- 静脈栄養の開始時期
CQ2:静脈栄養の開始時期は?
A2:持続的な経腸栄養によるエネルギー投与量が平均20kcal/hr未満の症例での静脈栄養の開始時期は明確ではない。(unknown field)
- 静脈栄養の目標エネルギー投与量
CQ3:静脈栄養のエネルギー投与量は?
A3:急性期における静脈栄養の至適エネルギー投与量は明確ではない。(unknown field)
- 静脈栄養の組成
CQ4:静脈栄養時の組成はいかにすべきか?
A3:静脈栄養を実施する場合にはブドウ糖輸液単独では行わないことを弱く推奨する。(1C)
- ビ タ ミ ン, 微 量 元 素, セ レ ン,refeeding syndrome
CQ5: ビタミン,微量元素の投与を重症度の高い集中治療患者に行うべきか?
A5:重症度の高い集中治療患者への総合ビタミン剤,微量元素製剤の通常量の投与を強く推奨するが,投与
推奨量を決定する十分なデータはない(1B)
Refeeding syndromeを起こすことが予測される患者には血中リン,マグネシウム,カリウムのモニタリ
ングを推奨する。(1C)
- 静脈栄養時の投与ルート(中心静脈,末梢静脈)
CQ6: 静脈栄養時に,中心静脈アクセスを使用すべき場合は?
A6:中心静脈ルートは,浸透圧比3以上の輸液製剤を用いる場合に使用することを強く推奨する。(1D)
✓)15%未満のブドウ糖液,アミノ酸製剤,脂肪乳剤の浸透圧比は3未満であり末梢ルートから投与可能である。また,ビタミン製剤,微量元素は希釈輸液剤の浸透圧比が3未満であれば末梢ルートからも投与可能である。
- 経腸栄養耐性の評価
- 腸管蠕動の確認
CQ1: 経腸栄養を開始の条件として腸管蠕動があることを確認するか?
A1:腸管蠕動の確認を経腸栄養開始の条件としないことを強く推奨する。(1B)
- 経腸栄養耐性の評価方法
CQ2: 経腸栄養に対する耐性(継続できるか?)のモニタリングはどのようにするか?
A2:患者の経腸栄養に対する耐性として,疼痛や腹部膨満感の訴え,理学所見,排ガス・排便,腹部X線
写真などをモニタリングする。経腸栄養の不適切な中止を避ける。
不耐性を示す他の徴候がない場合,随時確認した胃内残量<500mlであれば経腸栄養を中断しない。
不適切な栄養投与や麻痺性イレウスの長期化を防ぐために,診断や処置に伴う絶食期間を最小限にとどめる。
以上のことをすべて弱く推奨する。(2C)
- 経腸栄養投与量の増量の方法
CQ3: 経腸栄養を投与目標量まで増量するための方策は?
A3:目標量の達成度を高めるために,経腸栄養療法プロトコールを使用することを弱く推奨する。(2C)
✓:①目標注入速度の設定,②より早期の経腸栄養開始法,さらに③胃内残量,④チューブフラッシュの
頻度,⑤栄養投与を調節・中止する状態,⑥合併症の取り扱いに関する指示,を定めた看護師などICUス
タッフが運用するプロトコールを使用することで,投与される目標量の達成度が上昇することが示される。
- 経腸栄養と誤嚥
CQ4: 経腸栄養中の誤嚥の危険度を下げるために行うことは?
A4:経腸栄養施行中は逆流や誤嚥のリスクを評価し,逆流や誤嚥のリスクが疑われる症例ではリスクを低減
するための手段を講じることを推奨する。
A4-1:経腸栄養を行っている全ての気管挿管患者では,ベッドの頭側(上半身)を30〜45°挙上することを弱く推奨する。(1C)
A4-2:誤嚥のハイリスク患者や経胃投与に不耐性(行うことが困難)を示す患者に対しては,経腸栄養が間欠投与で行われている場合は持続投与に切り替えることを弱く推奨する。(2C)
A4-3:誤嚥のハイリスク患者や経胃投与に不耐性を示す患者に対しては,投与可能であれば,腸管運動促進薬(メトクロプラミドやエリスロマイシン)や麻薬拮抗薬(ナロキソン)などを開始することを弱く推奨する。(2D)
A4-4:誤嚥のハイリスク患者や経胃投与に不耐性を示す患者に対しては,幽門後経路による栄養投与への切り替えを考慮することを弱く推奨する。(2C)
A4-5:人工呼吸器関連肺炎のリスクを低減するために本邦で使用できる濃度の口腔洗浄用クロルヘキシジンによる口腔洗浄は行わないことを強く推奨する。(1C)
✓口腔洗浄に用いるクロルヘキシジンはグルコン酸クロルヘキシジンである。クロルヘキシジン洗口液の濃度について,欧米では0.12〜0.2%で有効性が報告されているのに対し,本邦で使用できる濃度は欧米の1/100の低濃度(0.002%以下)である(2015年4月現在)。本邦で使用できる濃度では,口腔内細菌に対する有効性はないといわれている。なお,口腔洗浄用のグルコン酸クロルヘキシジンと,消毒用として市販されているクロルヘキシジン(クロルヘキシジンアルコール)とを混同しないように注意が必要である。消毒用のクロルヘキシジンアルコールは欧米では2%,本邦では1%の濃度のものが市販されているが,いずれも口腔洗浄用のグルコン酸クロルヘキシジンに比べて高濃度である。
- 下痢の発生時の対応
CQ5:下痢が発生した場合に何をするべきか?
A5:原因の詳細な評価を行い,その結果に基づいて対応することを強く推奨する。(1D)
- 特殊栄養素
- アルギニン
CQ1: アルギニンを強化した免疫調整栄養剤を重症度の高い集中治療患者に対して使用してもよいか?
A1:アルギニンを強化した免疫調整栄養剤を重症度の高い集中治療患者に対して使用しないことを弱く推
奨する。(2C)
- グルタミン
CQ2: グルタミンを強化した経腸栄養の投与の適応は?
A2-1:グルタミンを強化した経腸栄養の投与を熱傷と外傷患者で考慮することを弱く推奨する。(2B)
A2-2:ショック,多臓器障害を呈する場合は,グルタミンを強化した経腸栄養の投与は控えることを強く
推奨する。(1A)
- n-3系多価不飽和脂肪酸
CQ3-1: ARDS 患者に対してn-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用を考慮するか?
A3-1:ARDS患者に関してはn-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用を弱く推奨する。(2B)
CQ3-2: Sepsis/severe sepsis/septic shockの患者に対して,n-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤の使用を考慮するか?
A3-2:Sepsis/severe sepsis/septic shockの患者に関してはn-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物
質を強化した経腸栄養剤の使用を考慮することを弱く推奨する。(2B)
- 食物繊維(可溶性と不溶性)
CQ4:食物繊維は投与するか?
A4:可溶性繊維は下痢で難渋する症例には使用を考慮することを弱く推奨する。(2C)
不溶性繊維は重症患者全般に使用を避けることを弱く推奨する。(2C)
✓食物繊維とは,人の消化酵素によって消化されない,食物に含まれている難消化性成分の総称で,大
きく可溶性食物繊維(soluble dietary fiber, SDF)と不溶性食物繊維(insoluble dietary fiber, IDF)に分けられる。期待される効果としては他のプレバイオティクス製剤と同様である。SDF には,ペクチン,グアーガム加水添加物,ポリデキストロース,グルコマンナンなどがあり,IDF にはセルロース,ヘミセルロース,リグニン,キチン,グルカンがある。
- 半消化態栄養剤と消化態栄養剤(ペプチド型栄養
剤)
CQ6: 重症患者に対して,ペプチド型栄養剤による経腸栄養と半消化態栄養剤のどちらが優先されるべきか?
A7:どちらを用いてもよい。(2C)
- 補足的治療
- 選 択 的 消 化 管 除 菌(selective digestive decontamination, SDD)および選択的口腔内除菌
(selective oral decontamination, SOD)
CQ1:SDDとSODを行うべきか?
A1:SDDとSODを行わないことを弱く推奨する。(2A)
- プ レ/ プ ロ/ シ ン バ イ オ テ ィ ク ス(pre/pro/synbiotics)
CQ2: プレ/ プロ/ シンバイオティクスを投与するか?
A2:プレ/プロ/シンバイオティクス製剤は使用を弱く推奨する。(2B)
ただし重症急性膵炎では投与しないことを弱く推奨する。(2B)
- 抗潰瘍薬
CQ3-1: 消化管出血予防はどのような患者に行うか?
A3-1:消化管出血予防は出血リスクのある患者に行うことを弱く推奨する。(2C)
CQ3-2: 消化管出血の予防目的で,抗潰瘍薬を使用するか?
A3-2:消化管出血の予防目的で,抗潰瘍薬を投与することを弱く推奨する。(2A)
CQ3-3:抗潰瘍薬の選択はどうすればよいか?
A3-3:
1)出血予防効果が副作用より高いと考えられる患者にはヒスタミンH 2 受容体拮抗薬あるいはプロトン
ポンプ阻害薬(PPI)の使用を弱く推奨する。(1A)
2)出血のリスクがあまり高くないと考えられる患者ではスクラルファートなどの胃粘膜保護薬の使用
を弱く推奨する。(1A)
3)出血リスクがなく,経腸栄養を行っている患者では予防投与をしないことを弱く推奨する。(2A)
- 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids,BCAA)
CQ4:BCAA richな静脈栄養の投与はするか?
A4:一般的に重症患者に対するBCAA richな静脈栄養の投与はしないことを弱く推奨する。(2B)
- 高脂肪/低炭水化物(high fat and low CHO)栄養剤
CQ5: 高脂肪/低炭水化物(high fat and low CHO)栄養剤は重症患者に投与するか?
A5:高脂肪/低炭水化物栄養剤(high fat and low CHO)を重症患者に対してルーチンに使用しないことを弱く推奨する。(2D)
- 脂肪乳剤
CQ6-1:脂肪乳剤の投与速度と投与量は?
A6-1:脂肪乳剤投与に関して,投与速度は0.1〜0.2 g triglycerides/kg/hrまで,投与量は0.7〜1.5g/kg/dayを超えないようにすることを弱く推奨する。(2C)
CQ6-2: 脂肪乳剤はいつ,どんな種類のものを投与するか?
A6-2:
1)経腸栄養が施行できていれば,大豆由来の脂肪乳剤の投与を控えることを弱く推奨する。(2C)
2)経腸栄養が施行できていない場合,静脈栄養が10日間以内であれば,大豆由来の脂肪乳剤の投与は控えることを弱く推奨する。(2C)
3)経腸栄養が施行できていない場合,静脈栄養が10日間以上であれば,大豆由来の脂肪乳剤を投与するべきであるが,至適な投与量に関する根拠は不十分である。(unknown field)
4)栄養不良が基にある重症患者では,大豆由来の脂肪乳剤を投与するべきであるが,至適な投与量に
関する根拠は不十分である。(unknown field)
- 東洋医学的アプローチ
CQ7-1: 消化管運動の改善のために漢方薬の投与を行うか?
A7-1:消化管運動の改善目的での漢方薬の使用に関する推奨は,結論を出すには充分なエビデンスがない。(unknown field)
CQ7-2: 消化管運動の改善のために鍼治療を行うか?
A7-2:消化管運動改善に鍼治療が有効である根拠は不十分である。(unknown field)
- 血糖管理
- 血糖目標値
CQ1:目標血糖値はいくつにすべきか?
A1:180mg/dl以上の高血糖を呈した場合,血糖値を低下させるためにインスリン投与を開始する。血糖値
のコントロールを行う際には, 目標血糖値は180mg/dl以下とし,血糖値を80〜110mg/dlに維持する強化インスリン療法は行わないことを強く推奨する。(1A)
- 血糖コントロール
CQ2:血糖値測定をどのようにすべきか?
A2:
1)経静脈的インスリン療法を受けているすべての患者は血糖値とインスリン投与量が安定するまで1〜2時間ごとに,安定したのちは4時間ごとに,血糖値を測定することを強く推奨する。(1C)
2)毛細管血を使用した簡易血糖測定法は血液ガス分析器による血糖測定と比較して測定誤差が大きく,正確性に欠けるため,血液ガス分析器による血糖測定の使用を強く推奨する。(1B)
3)血液ガス分析器による血糖測定でも測定誤差が生じるため,適宜中央検査室での血糖測定を行い,その正確性を確認することを強く推奨する。(1B)
- 経腸栄養療法中の患者管理
- 胃管の位置確認
CQ-1: 留置された胃管の位置確認はどのように行うか?
A-1:胃管を留置あるいは再留置した場合,X線による確認を行うことを強く推奨する。(1D)
- 胃内残量の管理
CQ2:経腸栄養を継続しても良い胃内残渣量は?
A2-1:胃内残量が500 ml以内であれば経腸栄養を中断しないことを弱く推奨する。(2C)
- 経腸栄養投与中の体位
CQ3: 気管挿管患者の経腸栄養投与中の体位はどのようにすべきか?
A3-1:経腸栄養中は30〜45°のセミファーラー位を維持することを強く推奨する。(1C)
- 経腸栄養の間欠投与と持続投与
CQ4: 経腸栄養は間欠投与と持続投与のどちらがよいか?
A4:重症患者への経腸栄養投与は可及的に持続投与で行うことを強く推奨する。(1C)
- 経腸栄養投与の開放式システムと閉鎖式システム
CQ5: 経腸栄養投与法として開放式システムと閉鎖式システムのどちらがよいか?
A5:開放式システムと閉鎖式システム両者いずれが栄養剤の感染による下痢の予防に有効であるかを示す
十分な根拠がない。(unknown field, D)
- 便失禁管理システム
CQ6: 経腸栄養管理中の激しい下痢に対して便失禁管理システムを使うか?
A6:経腸栄養管理中の激しい下痢に対しては,便失禁管理システムを使うことを弱く推奨する。(2D)
- 栄養チューブの口径と誤嚥
CQ7: 栄養チューブは,誤嚥防止のために,可及的に口径が小さいものを選択するか?
A-7:栄養チューブは,誤嚥防止のためには,可及的に口径の小さなチューブを選択することを弱く推奨する。(2D) ただし,胃内残量を測定する場合には口径の太いチューブが必要となる。
- 胃瘻の適応
CQ8: 長期間の経鼻経管栄養を必要とする患者に胃瘻を造設するか?
A9:長期間の経鼻経管栄養を必要とする患者に対し,胃瘻の造設をしないことを弱く推奨する。(2D)
- 静脈栄養療法中の患者管理
- 中心静脈カテーテル挿入時の感染防御
CQ1: 中心静脈カテーテル挿入時の感染防御に有効な方法は?
A1:中心静脈カテーテルの挿入時に,マキシマムバリアプレコーションを実施することを強く推奨する。(1A)
- 中心静脈カテーテルの留置部位の選択
CQ2: 中心静脈カテーテル挿入部位はカテーテル感染発生に影響するか?
A2:中心静脈カテーテル関連血流感染(catheter- related bloodstream infection)の発生率は,マキシマムプリコーションを行えば内頸静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈のどの部位を選択しても変わらない。(2B)
- 静脈カテーテルの交換
CQ3:静脈カテーテルの交換時期は?
A3:中心静脈カテーテルはカテーテル血流関連感染が疑われる場合のみ交換する。末梢静脈カテーテルは点滴漏れや感染など臨床的に問題がない限り,72〜96時間ごとの交換はしない。(2C)
第3章 栄養管理の実際:小児
- 栄養療法の必要性
- 栄養投与の必要性
CQ1:栄養不良の予後への影響と対処方法は?
A1:
1)栄養不良は予後に影響する可能性がある。(2C)
2)しかし、対処方法については未解決である(unknown field, C)
- 栄養評価
- 栄養評価の必要性
CQ1:栄養評価はどのように行うか?
A1-1:ICU入室前および,入室後経時的な栄養評価を行うことを弱く推奨する。(2D)
- 栄養評価指標の有無
CQ2:客観的な栄養評価指標として何を使うか?
A2:客観的な栄養評価指標はない。(unknown field,D)
- エネルギー投与量
- 栄養消費量の推定
CQ1:エネルギー消費量はどのように推定するか?
A1:間接熱量計を用いてエネルギー消費量を計測し,なければ予測計算式を使うことを弱く推奨する。(2C)
- 栄養投与量の決定
CQ2:エネルギー投与量の決定はどのように行うか?
A2:至適エネルギー投与量に関する十分なエビデンスはない。(unknown field, C)
- 三大栄養素(多量栄養素):炭水化物,蛋白質,脂質
- 三大栄養素の投与量
CQ1:炭水化物,蛋白質,脂質の投与量は?
A1:それぞれの各投与量を推奨する十分なエビデンスはない。(Unknown field, C)
- 栄養投与ルート
- 栄養投与ルートの決定
CQ1:経腸栄養,静脈栄養どちらを選択するか?
A1-1:腸管が機能しているならば経腸栄養を行うことを弱く推奨する。(2D)
A1-2:経腸栄養施行上の障害を取り除くことを弱く推奨する。(2D)
- 栄養投与ルート
- 栄養投与ルートの決定
CQ1:経腸栄養,静脈栄養どちらを選択するか?
A1-1:腸管が機能しているならば経腸栄養を行うことを弱く推奨する。(2D)
A1-2:経腸栄養施行上の障害を取り除くことを弱く推奨する。(2D)
- 免疫調整経腸栄養剤
- 免疫調整経腸栄養剤: immuno-modulating diet
CQ1:免疫調整経腸栄養剤の投与を行うか?
A1:免疫調整経腸栄養剤を投与しないことを弱く推奨する。(2B)
- 血糖管理
- 血糖の目標値
CQ1:血糖値の目標値はどのように設定するか?
A1:215 mg/dl以下を目標とし,強化インスリン療法は行わないことを強く推奨する。(1A)
- 経腸栄養投与プロトコール,チーム医療
- 経腸栄養投与プロトコール,チーム医療(NST)の
意義
CQ1: 経腸栄養プロトコールやチーム医療の意義は何か?
A1:より早く目標エネルギー投与量に達する手段として,栄養サポートチーム(nutrition support team,NST)の介在や,積極的な経腸栄養プロトコールの使用を弱く推奨する。(2D)