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在宅医療における新型コロナウイルス感染症対策 リンク集 2021.11.06

1. 在宅医療における新型コロナウイルス感染症対策 リンク集 2021.11.06 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第5.3版 厚生労働省

https://www.kyoto.med.or.jp/covid19/pdf/45.pdf

2. 在宅医療における新型コロナウイルス感染症対応Q&A(改定第4版) 日本在宅医療連合学会

https://www.jahcm.org/assets/images/pdf/covid19_v4.pdf

3. 新型コロナウイルス感染症 訪問看護師による自宅療養者への対応マニュアル(第2版) 日本訪問看護財団

https://www.jvnf.or.jp/corona_manual/corona-manual-1_2_2.pdf

4. 訪問看護事業所向け対応ガイド COVID-19在宅医療・介護現場支援プロジェクト 日本看護協会

https://covid19hc.info/hvnguide/

5. 介護現場における感染対策の手引き 第2版 厚生労働省老健局

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000814179.pdf

6. 新型コロナウイルス感染症に対応する介護施設等の職員のためのサポートガイド(第1版) 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000757739.pdf

7. 介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン 厚生労働省老健局

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000817384.pdf

8. 医療施設内での新型コロナウイルス感染症対応 ~看護補助者、医療専門職以外のため~ 日本環境感染学会

http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/doga-slide.pdf

9. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言 日本臨床栄養代謝学会COVID-19対策プロジェクトチーム

https://www.jspen.or.jp/wp-content/uploads/2020/04/938ab602b38080b3cd648b33649985dd.pdf?fbclid=IwAR2_s7elto4h_QLTL3AyRHbEsdBzneXy_9rd6F8FCG2bLtbehEWnj4s3X_s

 

リンク集の掲載について問い合わせがあれば、たけうちファミリークリニックまでお願いします。

東海摂食栄養フォーラムオンラインセミナー2021.11.21 第一部「在宅訪問診療におけるコロナ対策」 たけうちファミリークリニック 武内有城

東海摂食栄養フォーラムオンラインセミナー2021.11.21

第一部「在宅訪問診療におけるコロナ対策」 たけうちファミリークリニック 武内有城

 

2020年1月16日国内で第1例目の新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が報告されて以来、現在までに第5波にわたる国内流行を経験し、およそ700日にもおよぶ新規感染症との戦いが継続しています。その間、未知のウイルスに対する畏怖や誤った情報の流布などで、医療関係者は多大な精神的、身体的ストレスにさらされてきました。PCR検査や迅速検査などの開発、抗体カクテル療法の在宅導入や内服治療導入の可能性と、めまぐるしく変化する新型コロナ対策に翻弄されながら、皆さんは、いかに患者さん、ご家族に、安全で有効な在宅医療を提供できるかについて日々お悩みのことと思います。今回、私の担当は、在宅訪問診療における新型コロナウイルス対策について、日本在宅医療連合会のステートメントを参考にして、当フォーラムのスタッフへのアンケート結果などをお示しして、現状についてのコンセンサスができればと考えています。

 

新型コロナウイルス感染症の中で在宅ケアを守るために(対処方針)

日本在宅ケアアライアンス 2020年6月

① 在宅療養者の命を守ること

② 本人の願いと生活を守ること

③ 本人の願う最期を実現すること。

そのため支える医療の実践をチームで実践すること

 

在宅医療におけるCOVID-19対策の原則

日本在宅ケアアライアンス 2020年6月

① 在宅医療の現場にウイルスを持ち込まない、持ち込ませない

② 在宅医療にかかわる人はCOVID-19にかからない

③ 発熱した療養者に対する臨床推論の力を高める

④ 関係者間で迅速に情報共有を行う

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言 日本臨床栄養代謝学会

1. 栄養評価の実施

2. 低栄養患者の栄養状態改善とNST活動の推奨

3. エネルギーと蛋白・アミノ酸投与の強化

4. 微量栄養素の適正投与

5. 隔離・待機状況における継続的な運動と感染対策

6. 経口的栄養補助食品の勧め

7. 経口摂取不十分症例に対する経腸栄養の勧め

8. 経腸栄養不可症例に対する経静脈栄養の実施

9. 経腸栄養+静脈栄養の重視

10. 気管挿管症例に対する適正栄養管理の実施

11. 感染症例に対するNST活動の注意事項

12. 社会栄養学の実践-予防が最大の治療

 

ESPEN在宅経腸栄養ガイドライン 2020.01.20

ESPEN在宅経腸栄養ガイドライン 2020.01.20
*日本にはない概念、材料、訳語は著者の判断で日本語訳しています   武内有城

推奨1:在宅経腸栄養(以下、HEN)は栄養不良のリスクのある、または通常の食事摂取では必要な栄養量が充足できない栄養不良患者で、消化管機能が正常かつ急性治療中ではない患者に適応がある。そのためには、体重や身体機能、QOLを改善する目標に向かって、在宅経腸栄養管理を行うことに患者の同意が必要である(コンセンサス強、同意97%)
推奨2:栄養学的リスクのある退院患者(例えば、神経疾患や頭部外傷、頭頚部がん、胃消化管及び他の悪性疾患、消化吸収不良症候群のある他の非腫瘍性消化管疾患など)には、経口サプリメントやHENを考慮すべきである(強、96%)
推奨3:もし、生命予後が1か月未満の場合には、HENは適応がない(中、78%)
推奨4:上下部消化管閉塞や消化管出血、重症の消化吸収障害や代謝障害による重症の機能障害のある患者には、HENは禁忌である(中、84%)
推奨5:もし、患者本人または介護者がHENに同意しなかったり、諸処の社会環境問題が克服できなければ、HENを提供すべきではない(強、97%)
推奨6:4-6週間の短期間のHENが必要な患者に対しては経鼻胃管の使用は許容される(中、90%)
推奨7:長期間のHENに対してはPEGまたはPEJが推奨される(強、93%)
推奨8:PEGは外科的胃瘻造設に比較して、合併法が少なく、経済的で手術時間も短いために推奨される(強、100%)
推奨9:PEGが長期HENに対して困難場合には、腹腔鏡手術による胃瘻造設(PLAG)が安全であるかもしれない(強、93%)
推奨10:腹腔鏡による胃瘻造設が困難な場合には、放射線透視下に胃瘻を増設する方法(RIG、PRG)が代替法として検討する(強、97%)
推奨11:PEG造設後4週間以上経過していれば、予期せぬ脱落や定期交換に対して、再手術しなくても直接交換可能である(強、93%)
*可能であれば、PEG造設後の最初のカテーテル交換は、造設した病院で交換をすすめる
推奨12:PEGが完成して創が治癒したら、毎日の創部管理を消毒処置にて術後5-7日まではクリーンでドライに行う(強、100%)
推奨13:術後最初の1週間は、消毒の代わりに創傷被覆材で被覆することもかまわない(強、97%)
推奨14:創が治癒したら、1週間に1、2回創部を石鹸と水道水で洗浄するのみとする(強、90%)
推奨15:創の治癒後は、創傷被覆材は不要で開放創とすることも可能である(強、92%)
推奨16:PEG造設後は、外部バンパーは緩めで皮膚を決して圧迫しないようにする(強、93%)
推奨17:胃瘻造設後1週間くらい経過して瘻孔が完成していれば、カテーテルは毎日回転を確認し、1週間に1回は少なくとも2-10cmの範囲で瘻孔内に挿入可能であることを確認する(強、93%)
推奨18:カテーテルの回転や深さの調節が可能であることを確認したら、皮膚と外部バンパーの間隔が0.5-1cmの遊びがあるように固定する(強、93%)
推奨19:PEGJカテーテルは回転を確認しない(強92%)
推奨20:瘻孔周囲の消化管内容の漏れに対しては、皮膚保護軟膏または保護剤を使用する(強、93%)
推奨21:PPIは瘻孔周囲もれに胃酸分泌を減少させるため有効であるが、使用するなら定期的に評価が必要である(強、96%)
推奨22:過剰肉芽は一般的なPEGの合併症で、予防するとともに適切な処置(瘻孔や周囲皮膚の保護、硝酸銀やステロイド軟膏使用など)を行う(強、93%)
推奨23:カテーテルは、損傷、閉塞、脱落や劣化があれば交換をすべきである、定期的交換は必要ない(強、93%)
*バルーンタイプのPEGカテーテルは、1週間に1回バルーンの蒸留水の量をチェックする
推奨24:瘻孔感染が疑われたら、抗菌薬軟膏を瘻孔及び周囲皮膚に塗布する必要があるが、この治療が⒮法構しなければブロードスペクトラムの抗菌薬を内服する(強、93%)
推奨25:上記の方法でも瘻孔感染が改善しなければ、カテーテルは抜去すべきである(中、86%)
推奨26:HENは病状の安定した患者に施行され、カテーテルの位置が正しく、使用する経腸栄養剤の量および内容が患者に適しており、さらに患者及び医療者がHENについて適切な知識と管理スキルにたけていることが必要である(強、100%)
推奨27:経鼻胃管でHENを施行する患者は、カテーテルの位置が適切な位置にあることが確認されたら、事前に設定した栄養管理プランに従ってすぐに経腸栄養が開始できる(強、96%)
推奨28:成人の場合、胃瘻カテーテルが造設されて2-4時間たてば使用できます(強、93%)
推奨29:空腸栄養は以下のレジメンで開始することを推奨する(強、93%)
*開始第1日目…生食10mL/h
第2日目以降…経腸栄養剤10mL/hで開始し、6日目までに20mL/hにアップ
*術後第1日目に1.0kcal/mLの経腸栄養剤を30mL/hで開始し、第3日目までに84mL/hまでアップなど
推奨30:HENの管理計画は、多職種からなるNSTで、基礎疾患、アクセスルート、栄養剤の忍容性、患者の嗜好などを考慮して決定される(強、100%)
推奨31:ボーラス投与、間欠的持続投与、ポンプを用いた持続投与のどの方法を使用するかは、医療的必要性と安全性、注入速度の制度の必要性から決定される(強、92%)
推奨32:カテーテル閉塞を予防するために使用前後の水によるフラッシュは重要であり、患者及び介護者の指導に不可欠である(強、100%)
推奨33:経腸栄養ルートから投与することで効果がある薬剤は、経腸栄養ルートから投与することができる(強、92%)
推奨34:もし、経腸栄養ルートから薬剤を使用する場合には、患者及び医療者にその薬剤の適切な投与方法を薬剤師から説明する(強、100%)
推奨35:経腸栄養ルートから薬剤を投与する場合には、誤接続予防のシリンジ(ISO)やコネクターを確認して使用する(強、100%)
推奨36:正しい薬剤投与量を注入できるように注意する(強、100%)
推奨37:使用する薬剤の体内での吸収動態や、経腸栄養剤やカテーテルとの相互作用にも気を付ける(強、100%)
推奨38:経腸栄養ルートから薬剤を投与する場合には、各薬剤ごとに注入し、投与前、中、後でそれぞれ30mLずつ水によるフラッシュを施行する(強、100%)
推奨39:混合食などの適応がなければ、標準の経腸栄養剤を使用する(強、92%)
推奨40:下痢の患者には、通常は食物繊維配合の栄養剤を使用する(強、92%)
推奨41:便秘の患者も、食物繊維配合の栄養剤を使用する(強、96%)
推奨42:糖尿病患者には、緩徐に吸収される糖質やMUFAを中心とした不飽和脂肪酸を豊富に配合する血糖上昇抑制効果のある経腸栄養剤が使用される(弱、60%)
推奨43:それ以外の患者は、専門家の指導の下に標準の経腸栄養剤を使用する(強、96%)
推奨44:HENを施行している患者は、定期的に効果や合併症などを多職種でモニタリングする必要がある(強96%)
推奨45:体重、体組成、体内水分量だけでなく、血清アルブミン値やトランスフェリン値などの血液生化学データをモニタリングすることは有用である、経腸栄養の合併症も(中、83%)
推奨46:HENは希望した体重に達したり、経口摂取が充足した段階で終了する(強、92%)
推奨47:HENの機械的合併症を減少させるために、4-6週間を超える長期の経腸栄養には経皮的消化管瘻孔アクセスを使用する(強、98%)
推奨48:在宅でのミキサー食は、標準の経腸栄養剤より効果が劣るので、使用しない(弱、63%)
推奨49:在宅でのミキサー食は、標準の経腸栄養剤より安全性に劣るので、使用しない(中、76%)
推奨50:HENを管理するチームは、合併症と再入院がなくなるように適切な経腸栄養管理を遂行する(強、100%)
推奨51:HEN施行中の患者は定期的にQOLを評価する(強、92%)
推奨52:HEN施行患者のQOL評価は、適切な質問票などで評価する(中、88%)
推奨53:多職種からなるNSTで管理したHEN患者は、QOLの向上とコスト削減に効果があった(強、96%)
推奨54:HENに関する情報は、口頭でつたえるだけでなく、文書にしたり、図にしたりして提供すること(強、100%)
推奨55:すべての医療者は、HENや適切な栄養管理についての規定を、あらゆる場面で自らの義務に関連して遂行できるように教育・訓練を受けるべきだ(強100%)
推奨56:医療者は、栄養管理の必要な全ての患者に多職種からなるNSTの治療が受けられるように努力すべきだ(強、100%)
推奨57:HENを行う予定の退院患者がいるすべての病院では、少なくとも一人の専門看護師や管理栄養士を雇うべきだ。このような病院は、医療体制の中でNSTも持つ必要がある(強、96%)
推奨58:HENを行う患者の環境は、合併症のリスクのない経腸栄養管理を安全に行うべきだ(強、100%)
推奨59:HEN関連感染合併症をなくすために、衛生環境を充実させる(強、100%)
推奨60:すべてのHEN患者は、特に合併症や緊急対応のできる専門家と連絡をもつべきである(強、%)
推奨61:最適なHEN管理は、NSTからなる(医師、管理栄養士、看護師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、薬剤師など)

在宅栄養管理マニュアル2019(2019.09.15)

胃瘻:
1. 在宅での胃瘻による経腸栄養に最適なカテーテルは?
在宅経腸栄養に用いる胃瘻のタイプは、バルーン型を使用することで、交換時の再入院や受診が必要なくなる。家族のレスパイトも兼ねて、定期的に入院する計画の場合には、バンパー型でも可能である。
チューブ型とボタン型の選択は、患者のADLに影響しないものを選択する。半固形栄養を行う場合には、ボタン型はコネクターで内腔が極端に細くなるのでチューブ型の方が注入しやすく、接続部が破損してもチューブ型はリペア可能である。また、メーカーによって、同じ外径のものでもコネクターの内径やチューブの耐久性にも差があるので、確認しての使用をすすめる。
2. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、カテーテルの交換の目安は?
保険適応上は、バンパー型4か月以上、バルーン型24時間以上経過したら可能となっているが、それぞれ6ヶ月、2か月で交換という在宅施設が多い。ただし、バルーン型は1か月で交換と添付文書に記載されているものもあり、注意を要する。バルーン型の交換時期に関係する重要なポイントは、バルーン水の量や引き具合であり、定期的にチェックすることが推奨される。
3. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、安全な交換方法は?
内視鏡、X線透視下での交換が推奨され(交換手技に保険請求点数200点)、在宅でも専用の内視鏡を使用することが推奨される。ただし、在宅での内視鏡の使用には保険点数として認められない場合もあるので注意を要する。カテーテルの交換セットに付属するスタイレットは固く、胃壁や瘻孔を損傷する可能性があり、演者は血管造影用のガイドワイヤー(ラジフォーカス®0.035、100cm アングル)を使用し、安全かつ簡便である。
また、スカイブルー法も有用である。
4. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、事故抜去した場合の対処方法は?
在宅の場合は、無理せず、すぐに医師または看護師に連絡し、指示に従う。演者は、細い(8-12Fr)吸引カテーテルを応急的に瘻孔に無理なく挿入するように指導している。
5. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、ルートの交換や使用物品の交換は必要か?
経腸栄養に必要な物品は、ライン、栄養ボトル、コネクターなどであるが、経腸栄養ラインやボトルは、基本は単回使用である。しかし、在宅では、中性洗剤で洗浄後、次亜塩素酸ナトリウムで十分に消毒し、乾燥させて再使用することも多い。交換頻度は、汚染・破損時は必須だが、2~4週間ごとに交換する在宅施設が多い。基本は、食器と考えて、なるべく清潔なものを使用する。
6. 在宅での胃瘻による経腸栄養の感染管理・合併症管理で重要なことは?
経腸栄養剤は、感染対策としてRTH(Ready-To-Hang)製剤の使用が好ましく、希釈しない。栄養ボトルを使用して経腸栄養を行う場合には、開封後8時間以内に使用する。
ミキサー食などを注入する場合には、より細菌感染に注意して行う。
7. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、閉塞などの予防法は?
胃管閉塞の原因のほとんどは、薬剤による凝固・閉塞または感染・汚染である。経腸栄養剤投与前後の十分な白湯によるフラッシュが有効である。薬剤は、簡易懸濁法による投与が推奨され、粉砕のみでは側孔式のカテーテルでは閉塞しやすく、マグネシウムやプロトンポンプインヒビターなどの薬剤は投与に注意が必要である。感染や汚染が経腸栄養剤と反応を起こして閉塞する場合もあり、酢水(食酢を10倍希釈)や重層水によるクランプなども有効である。
8. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、閉塞が疑われた場合の対象方法は?
白湯をフラッシュして、閉塞が解除できなければ、交換になる。カテーテルの内腔のブラッシングは、内腔が損傷する可能性があり、やむを得ず行った場合は再開通しても早めに交換する。
9. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、安全な栄養剤の投与は?
基本は、上半身を挙上(30~45度)して、適度な速度と温度で投与することである。小腸内投与や、ダンピング症候群疑いなど場合は、経腸栄養ポンプの使用が推奨される。投与速度は、胃内であれば200~500mL/時間、小腸内100mL/時間であるが、徐々に慣らしていけばより早い速度でも可能である。
必ずしも温める必要はないが、下痢した場合などは栄養剤の温度にも配慮する。
さらに、投与後も上半身挙上を患者の状態に合わせて30分以上維持する。右側臥位は絶対ではなく、患者の体型や胃の形を考慮して決定する。また、半固形栄養剤の場合、終了後に必ずしも上半身挙上は必要ないが、在宅では念のため30分程の挙上が必要と考える。
10. 在宅での胃瘻による経腸栄養で、うまく管理するコツは?
在宅経腸栄養をうまく行うコツは、患者の状態を観察し、安全に家族・患者が安心して施行し、継続することである。入院患者のように、1日の必要量を無理して投与しなければならない、時間がおしているので早めにすませなければならないなど、医療者の都合は全く優先されない。ある一定期間での効果を体重増加や創傷治癒などで確認しつつ、無理のない栄養管理計画のもとに行う。

経鼻胃管:
1. 在宅での経鼻アクセスによる経腸栄養に最適なカテーテルは?
材質:やわらかく、刺激が少ない、さらに表面や内腔に不純物が付着しにくい素材がよい。可能であれば外径に比較して内径の大きいものが閉塞しにくい。また、確認のためにX線非透過性のものが推奨される。現時点では、ポリウレタン製のやわらかいものが最も好ましいが、DEHP非使用ポリ塩化ビニル製でも先端の形状が工夫されて使用しやすいものもあり、コストや医療者の慣れが重要なポイントである。
形状:側孔式で多孔式のものが安全で使いやすい。おもり付きは、主に小腸内に留置するチューブであり、腸蠕動で先に送り込む目的で使用される(抜け、たわみ予防)。
スタイレット、ガイドワイヤー:チューブ一体型のスタイレットタイプが、たわみなく挿入しやすい。また、位置の調整も容易である。
サイズ:外径は12Fr以下であれば、胃食道逆流には関与しないとされる。ただし、鼻・咽頭不快感、さらには嚥下の妨げになるため、より細径のチューブの使用が好ましい(内径も考慮に入れること)。あまり細くて柔らかすぎると、たわみや迷入の原因になり、ある程度の硬さは必要になる。成分栄養や消化態栄養・半消化態栄養剤なら8Frで十分で、食物繊維が多いなどの食品栄養剤は10Frが推奨される。
2. 在宅での経鼻アクセスによる経腸栄養で、カテーテルの交換はいつか?
2~4週間での交換が推奨されるが、添付文書に2週間と明記されているものもあり(ポリ塩化ビニル製など)、注意を要する。基本的には、閉塞や損傷があれば交換し、再利用はできない。カテーテルの交換にはリスクを伴い、患者の苦痛もともなうので、在宅ではスタッフと患者の了解のもとに最小限の頻度で交換する。
3. 在宅での経鼻アクセスによる経腸栄養で、安全なカテーテルの交換方法は?固定する長さは?
安全管理のためには、X線による位置確認は必須とされるが、在宅では困難であり、エアー注入法は確実ではないことを考慮して、色素注入法(スカイブルー法)による交換は必須である。最近は、カテーテル先端に胃内pH測定機能がついているものや、接続使用できる炭酸ガス検出装置などもある。しかし、在宅での安全確認で最も有効なことは、経腸栄養を開始して訪問中に患者状態を確認することである。
また、固定する長さは、45~55cmや鼻孔-耳孔-剣状突起を計測などとされているが、在宅 管理の場合は抜けかけによる胃食道逆流は致命的なので、+10cmくらいが適当である。特に、カテーテル位置の確認のためや経腸栄養剤の胃内停滞の確認のための胃内残量前吸引を容易にするには、やや深めの留置が有用である。従って、55~60cmが適当と考える。
カテーテルの固定テープによるスキントラブルは必発なので、貼付する位置の変更やテープの材質の工夫、保護テープの工夫などが必要である。また、挿入する鼻腔の左右も、ほとんどの施設で変更している。

在宅経腸栄養法における注意点:
1. 気候によっては脱水に注意して、水分管理が必要。特に、下痢などを合併していれば、水分も栄養量も不足となり、追加の補給方法が必要になる。尿量だけでなく、色やにおいなど五感を使う。
2. 寝たきりなどの患者の場合に、体重などの測定が困難なこともあり、栄養評価に工夫が必要。
3. 基礎疾患の病勢が栄養状態に関与するので注意が必要。
4. 必ずしも計画通りに栄養投与が行われるとは限らないため、慎重なモニタリングが必要。過栄養にも注意が必要。
5. トラブルがあれば、経腸栄養やめるのではなく、必ず原因を究明して継続することを検討する

在宅中心静脈栄養:
1. ポートのセプタムは、穿刺場所を変えつつ使用する
2. ヒューバー針を使用する
3. 穿刺部位は必ず消毒する
4. ポートのフラッシュは、グローションカテーテルは生食10mL以上で行う
* グローションカテーテルでない場合には、ヘパリンロック
5. ドレッシングは汚染があればその都度、なくても週1(~2)回交換
6. カテーテル感染や真菌感染に最大限の注意を払う
7. 輸液ラインの交換は、週1(~2)回
* 輸血や脂肪乳剤使用時は、24時間以内に交換
* 脂肪乳剤は、ルート交換時に週1-2回の定期投与が推奨
8. 側注はなるべく使用しないが、やむを得ない場合にはフィルターより患者側から投与
* 脂肪乳剤は、クリーミング現象や陽イオンとの反応にも注意
9. ルートからの採血は好ましくないが、やむを得ない場合には生食10mL以上でフラッシュ
10. 高カロリー輸液製剤は28時間以内に投与完了する
11. 肝機能悪化やヘモクロマトーシスに注意する
12. セレン欠乏やマグネシウム過剰など微量元素に注意する
13. 交換時の空気塞栓に注意する
14. 末期患者には、必ず中止や減量の同意を確認して開始

摂食嚥下障害と老化(一般向け)(2019.09.15)

おもちを安全に食べるためには?
物を食べる、のみ込むと言う動作を「摂食嚥下」とよびます。われわれは、この動作を毎日くり返すことで生命を維持し、食べる喜びが生きる喜びに、そして自らの生活のリズムを維持しています。
食べること、のみ込むことがうまくいかず、それ自体がつらくなり、時には間違って気管に入ってしまうことを摂食・嚥下障害とよびます。食事が気管や肺に誤って入ることで誤嚥性肺炎をきたし、お餅などの窒息事故も引き起こしやすくなります。
食事中にのどがゴロゴロいう、咳が出る、ムセるというのは、誤嚥が最も疑われる症状です。食事中に苦しそう、赤ら顔になる、異常に汗をかくなども要注意です。また、食事に時間がかかる、食事をいやがる、食事の好みがかわった、食事後に疲れているなども嚥下機能低下を疑う所見です。
食後のチェックも大切で、口の中に食事が残っていることや口臭にも気を付けましょう。その他、痰がきたなくなる、風邪をひいていないのに熱が出るのも誤嚥を疑う症状です。
現在、日本人の死亡原因の第3位は肺炎です。肺炎で死亡する人の95%は65歳以上で、高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥性肺炎です。
高齢者の誤嚥性肺炎の特徴は目立った症状が乏しいので、発見が遅れ、重症となりやすいと言われています。摂食嚥下障害を早期に診断し、食事方法や食事内容の見直しを行い、可能であれば嚥下訓練にて、誤嚥性肺炎や窒息事故を予防する。それには、身近なご家族の気づきが本当に重要なのです。

原因は?フレイルとは?
私達は、咀嚼(摂取した食物を歯でかみ、つぶすこと)した食物を、舌を使って咽頭へ送り、気管に入らないように、逆流しないように、喉頭を通って食道内に送り込みます。この一連の流れを、摂食嚥下と言います。
これらの複雑な運動に関わる神経や筋肉に疾病や老化など何らかの原因により障害が生じた場合、摂食嚥下障害となります。特に、人間は食道の入り口と気管の入り口が並んで存在しているため、これらの運動が障害されると誤嚥性肺炎や窒息を起こします。
摂食嚥下障害の原因は、脳血管障害(脳梗塞や脳出血)、パーキンソン病や筋委縮性側索硬化症などの難治性神経・筋疾患、認知症、頭部外傷後遺症、精神疾患、頭頚部がんなどですが、全体の40%は脳血管障害です。また、向精神薬や睡眠薬などによる薬剤性の摂食嚥下障害も増えています。
最近、老化、虚弱、老衰などを意味する「フレイル」が原因として注目されています。フレイルとは、加齢とともに、心身の活力が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高くなった状態で、以下のうち、3つが当てはまればフレイルとされます。
① 体重が減った(6か月で体重が2-3㌔㌘以上減少)
② 疲労感を感じることがある
③ 筋力が低下
④ 歩くスピードが遅くなった
⑤ 身体活動性が低くなった
口腔や摂食嚥下機能に影響するフレイルのことを「オーラルフレイル」と呼び、適切なリハビリテーションやサポートで、機能の維持改善が可能で、早期からの診断、評価、対応が重要です。

オーラルフレイルの予防法は?
オーラルフレイル(摂食嚥下の老化)は、一般的に歯の喪失や会話の減少に始まり、加齢による摂食嚥下機能の低下(口腔乾燥、反射機能の低下など)が悪化要因です。これに脳血管障害や認知症などを発症することで、摂食嚥下障害となります。誤嚥性肺炎の繰り返しや、食事摂取量が減ることで栄養不良となり、筋力の低下、筋肉量の低下が始まり、全身性のフレイルへと進展していきます。
オーラルフレイルの予防法は、口腔ケアと摂食嚥下訓練があります。口腔ケアは、ブラッシングを中心とした口腔内清掃と保湿が主体で、口腔内乾燥や歯周病などの疾病予防だけでなく、口腔機能に関するリハビリテーションも含まれます。適切な口腔ケアを継続することで、健康の増進と日常生活の質の向上、誤嚥性肺炎の予防が期待できます。現在では、訪問歯科などで定期的に自宅にて口腔ケアを受けることも可能です。摂食嚥下訓練には、一般の方にもできる嚥下体操(深呼吸、首・肩・口囲・口唇・舌などのストレッチ、発声訓練など)がお勧めです。他には、仰臥位での頭部挙上訓練や、嚥下おでこ体操(自分の額に手を当てて後ろに抑え、それに抵抗する)なども簡単に自宅でできます。せき込みや腹式呼吸の訓練も窒息や誤嚥予防には有効とされています。これらの訓練は、嚥下を専門とする病院、在宅スタッフにて提供されます。
まずは内科、耳鼻科、歯科、リハビリテーション科などの検査・治療を行っている病院に相談しましょう。

摂食嚥下障害と認知症の関係は?
認知症とは、いったん正常に発達した認知機能が持続性に低下し、記憶や見当識、行動の障害をきたすために日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言います。脳の細胞が何らかの原因で障害され、今までできていたことが少しずつ難しくなる病気です。具体的には、新しいことが覚えられない、以前覚えていたことを思い出しにくいなどに始まり、時間や場所の見当がつかなくなり、思考・判断力の障害が出現して、料理や金銭管理ができなくなるなど社会生活の支障をきたします。また、発語やコミュニケーションの障害に加えて、箸が使えない、歯ブラシで歯が磨けない、服をうまく着られないなど日常生活に支障をきたすようになります。これらに関連して、本来の性格や本人を取り巻く環境などに影響されて、妄想、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下などの精神機能や行動の周辺症状も高い頻度で合併します。
認知症は数年から10年くらいの経過で徐々に悪化し、最終的に肺炎や臓器不全などで死亡しますが、その原因として摂食嚥下障害や栄養不良が大きく関わっています。現在、日本では65歳以上の高齢者の6-7人に1人に認知症があるとされ、生涯半数の方が認知症に罹患するとされています。摂食嚥下障害は、認知症の初期にはみられず、進行期に顕著になることが多いですが、認知症の病態をより深く知ることで予防や安全な介助が可能になり、フレイルとともに摂食嚥下障害の対応には重要な疾患です。

認知症の原因と摂食嚥下障害
アルツハイマー型認知症は認知症全体の2/3を占めて最も多く、記憶障害に始まり、日常生活に支障をきたしていきますが、嚥下の障害の頻度は少ないとされています。まず、食事をする、その意義などを忘れてしまう認知障害から発症するので、食事をする環境の調整や食事の動機づけが重要です。本人の覚醒状態を確認し、簡単な嚥下体操や口腔ケアを行い、今から食事するという準備を始めます。気が散らないような場所、環境音に注意し、認識しやすい食器や使い慣れたにぎりやすい箸、スプーンなどを用意します。食べ始めに簡単な食事介助を行い、食事をすることを思い出させることも有効です。食器はなるべく模様のない無地のもので色彩の濃いものの方が食事を認識しやすく、食器がすべらないようなマットなどをひきます。また、スプーンですくいやすいように工夫された食器などもあります。主食、副食、汁物などが置かれていることで混乱する場合は、食事のペースに合わせて一品ずつ配膳することも有用です。また、臭いや味が偏ったり(甘いものが好きなど)、一つの食事や食形態に固執する、または嫌うこともよくあり、柔軟に対応し、経口栄養剤などで栄養バランスを整えることも重要です。
レビー小体型認知症は、食欲低下や幻視が特徴的で、パーキンソン病の症状を合併するために姿勢異常や摂食嚥下障害、胃腸機能の低下も比較的早くから合併します。食事環境の調整、姿勢保持に加えて、誤嚥しない患者にあった食べ方の介助が重要です。

高齢者の食事介助の実際
高齢者の食事前にやるべきことは、覚醒は良好か?体調はいいか?食事を嫌がっていないか?の確認からはじまります。問題があれば、原因を確認して改善する、改善しなければ回復を待って食事にします。次に、食事開始がわかるように環境調整や呼びかけを行い、簡単なストレッチと口腔ケアを習慣付けておきます。
食事にあたっては、最適な着席姿勢のセッティングが重要で、下顎はやや引き気味で背すじは椅子に対して直角で、腰は十分背もたれにあてます。膝関節は直角で足底も床につけるのが理想的です。坐位が困難でリクライニング位の場合は、必ず枕などを頭にいれて頸部の前傾姿勢を確保し、ベッドのギャッチアップは30度以上にします。
疲れの程度やムセなどを確認して、本人のペースで食事を介助し、無理なペースや無理な量の食事は慎み、患者に合わせた一口量も守りましょう。介助者の立ち位置は利き手側が安全なことが多く、目線の高さも本人に合わせます。口腔内の食物残渣や咽頭部のゴロゴロ音などを確認して、無理なく食事を促すことで誤嚥は防げます。
介助するスプーンは小さめで平たくうすい、口腔の奥にも送り込めるように長めのものが使いやすいです。コップにも鼻にあたらないように切れ込みがあり、頸部を伸展しなくてものめるように工夫したものもあります。のみ込みにも誤嚥させないコツがあり、嚥下のタイミングや首の向き、固形物と液体を交互に食べるなど医師の指示を守りましょう。

嚥下しやすい食事と水分は?
のみ込みやすい食事は、内容が均一で適当な粘りがあってばらつかない、咽頭を通過しやすく、べたつかないものです。水分が少なくパサパサ、口の中でバラバラになる、水分と固形物に分かれる、口腔内や咽頭にはりつく、サラサラしすぎた液体などはのみ込みにくい食事です。日本では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が提案する「嚥下調整食」という嚥下しやすい食事の分類があります。これは、均一なゼリーが一番のみ込みやすい食事として、摂食嚥下障害に応じて段階的に食事形態を分類したものです。最近では、これに対応した市販品も販売され、宅配の給食業者で「やわらか食」「ソフト食」などとして見た目にも楽しい工夫された食事もあります。
水分もサラサラでむせる場合には、トロミを付けることで安全に嚥下できます。最近は、常温ですぐに溶けて、無味無臭のトロミ剤もあり、自宅で簡単にできます。安全に嚥下するためには、高齢者にあわせて常にトロミの具合(粘度)を統一する必要があり、作り方やスプーンからの垂れ方をメモしておきます(ポタージュ状、とんかつソース状など)。
最後に、嚥下障害の疑われる場合、錠剤はゼリーに混ぜて飲むことがお勧めですが、必ず薬はゼリーに埋没させて飲んでください。粉薬はゼリーに混ぜるか、少量のトロミ水に溶かしてのむことがお勧めです。
これらの工夫は、できれば高齢者の体調や基礎疾患の状況に応じて、こまめに調整して対応できることがお勧めです。

おいしく楽しく安全に食べる効果
人間は生きるために水分や栄養を口から摂取する必要があり、これを「摂食」といいます。これに対して、食事を楽しんでおいしく食べることを「喫食」といいます。「摂食」が確保できない場合には、点滴や胃瘻などの経管栄養でも生命を維持することが可能ですが、食事を口からおいしく食べる「喫食」の効果が現在は見直されています。食事をとることを手段や訓練と考えず、家族と楽しい雰囲気で、おいしさと充足感を堪能し、安全に食べることで、生活のリズムをとりもどすだけでなく、生きていく活力や動機づけにもつながります。
現在は、摂食嚥下障害に対する診断、治療の進歩によって、安全に食べる重要性から多職種による取り組みが評価されています。具体的には、医師は高齢者の摂食嚥下障害の病態と原因を確認し、必要な嚥下訓練や安全な食事摂取の方法の決定を行います。その指示に基づいて、看護師や管理栄養士は実際に食事介助を行い、食事の環境調整を行います。言語聴覚士や理学療法士は安全に食べるための訓練を、歯科医や歯科衛生士は口腔ケアと義歯の調整などを行います。今、これらの摂食嚥下を支える専門職の連携が、病院、地域を超えて広がっており、在宅や施設でも積極的に取り組むことができるようになりました。また、嚥下食を提供する飲食店もみられます。病気だから、認知症だからとあきらめずに、おいしく楽しく安全に食べるための可能性を、ご自分のため、ご家族のためにご検討ください。

高齢者の生理変化と低栄養対策(2019.09.15)

高齢者の生理機能のまとめ

1. 高齢者の定義:75歳以上
前期高齢者:65~74歳
後期高齢者:75歳以上
参考:日本老年医学会の提案
65~74 歳 准高齢者 准高齢期 (pre-old)
75~89 歳 高齢者     高齢期 (old)
90 歳~ 超高齢者 超高齢期 (oldest-old, super-old)

2. 加齢による一般的生理機能の変化
予備力(ストレス耐性)の低下
恒常性(ホメオスタシス)維持機能の低下
防御機能の低下
回復力の低下
適応力の低下
これらが、普遍性、内在性、進行性、有害性をもって存在

3. 高齢者の内在する問題点
複数の疾患を持つことが多い
個人差が大きい
症状が非定型的
水・電解質の代謝異常を起こしやすい
慢性疾患が多い
薬剤に対する反応が成人と異なる
生体防御が低下しており、疾患が治りにくい
患者の予後が社会的環境に影響される
基礎疾患と関係ない合併症を起こしやすい

4. 加齢による呼吸機能の変化 → 呼吸機能は、加齢とともに衰える
呼吸筋の筋力低下
胸壁の硬化
肺弾性収縮力の低下
→     1秒率・肺活量の減少
気管支粘膜の線毛運動の低下
→     気管支分泌物の貯留・停滞
肺胞拡張および肺胞数の減少
→     残気量の増加

5. 加齢のよる循環機能の変化 → 心臓はあまり老化せず、血管が老化する
左室壁の肥厚
→ 心肥大・高血圧
冠動脈硬化
→ 狭心症・心筋梗塞
大動脈硬化・弁の石灰化
→ 動脈瘤、弁不全
静脈壁の硬化・弁不全
→ 静脈うっ滞、静脈瘤
血液中の赤血球の低下
負荷時の心拍数低下
→ 運動耐用能力の低下

6. 加齢による体内水分量の変化 → 体液、特に細胞内液が少なく、調節できない
脱水の要因:
a. 体液量、特に細胞内液の減少
b. 腎臓の濃縮力の低下
c. 口渇感の減弱
d. 活動力の低下
高齢者の脱水の特徴:
✓ 高齢者は脱水になりやすい要因を多数もっている
✓ 生理機能が低下しているので、脱水への対応力がなく、悪化しやすく、疾患を合 併しやすい
✓ 自覚症状に乏しく、早期発見が難しい
◎ 食事1L+水分1L+喪失水分量/日を目標

7. 加齢による腎機能の変化 → 腎機能や排泄機能は老化の影響を強く受ける
糸球体の減少
腎血流量の低下
糸球体ろ過率の低下  →  腎機能予備力の低下
膀胱の萎縮により膀胱容量が減少し、頻尿
膀胱の弾力性が低下し、残尿が増加
膀胱の充満感が減少し、尿意を感じたら我慢できずに尿漏れしてしまう
男性は前立腺肥大により残尿増加と頻尿
排尿に腹圧が不足
過活動膀胱
→ 尿失禁、尿閉、尿路感染

8. 加齢による消化機能の変化 → 消化機能は加齢によりあまり低下しない
口渇と便秘に注意
a. 唾液腺・舌
加齢により萎縮・炎症はあるが、分泌の機能の低下は軽度
味覚に加齢性変化は少ない
b. 食道
蠕動運動は弱くなるが変化は小さい。
食道裂孔ヘルニアの発生は多く、逆流性食道炎を合併
c. 胃
萎縮性胃炎がなければ(ピロリ菌陰性)なら、胃酸分泌は低下しない
胃排出能の低下も小さい
d. 小腸
形態的には差がない(絨毛など)
小腸粘膜の増殖能も保たれている
神経細胞数のみ低下している
マルターゼやシュクラーゼ活性は保たれているが、ラクターゼ活性は低下
e. 膵臓
膵外分泌機能は低下しないが、ストレス時の予備力は低下
膵内分泌機能は諸々の意見があるが、インスリン分泌そのものは低下しない
f. 消化管ホルモン
ガストリン、ソマトスタチンは低下
コレシストキニン、モチリン、セクレチンは低下しない
g. 肝臓・胆道
線維化などがみられるが、機能的には問題ない
薬やアルコールの分解が軽度低下
h. 大腸
加齢によって水分などの吸収が低下し、通過時間が短縮することはない
腸管運動の低下、肛門括約筋の脆弱化、腹圧の低下が便秘の原因
腸内細菌叢の変化

9. 加齢による筋骨系の変化 → 筋骨系は使わないとさらに衰える
骨塩の減少
骨強度の低下      → 骨粗鬆症
筋弾力の低下
筋線維の変性・萎縮   → サルコペニア
腱・靭帯の硬化、脆弱化
関節液の減少
滑膜の弾性力低下
骨変形、骨棘形成    → 関節炎・変形

10. 加齢による内分泌機能の変化 → 多くのホルモンは加齢とともに減少する
減少:成長ホルモン、IGF-1、T3、レニン、アルドステロン、DHEA、DHEA-S、テストステロン、エストラジオール、レプチン、カルシトニン、メラトニン
増加:プロラクチン、LH、FSH、PTH、ノルエピネフリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド
不変:T4、ACTH、コルチゾール、抗利尿ホルモン、グルカゴン

11. 加齢によるその他の変化
視覚・視力:
角膜・水晶体の劣化による調節障害
瞳孔は縮瞳し、明暗順応低下
硝子体・網膜の劣化による視力低下
視野狭窄
聴覚:
高周波数の音が聞こえない老人性難聴
聴神経の劣化による難聴(65歳以上で30%以上)
耳鳴り
味覚:
酸味、苦味、甘味、塩味は変化なし(諸説あり)
嗅覚:
加齢による影響受けにくいが、副鼻腔炎で低下
皮膚:
皮膚弾力の低下
皮膚表在感覚の低下
皮膚深部感覚の低下
皮膚細胞間の資質や水分減少
→ バリア機能低下、ドライスキン
汗腺数の低下  → 外気温への反応性低下
薄毛、脱毛、白髪
爪変形・変色
血液系:
造血機能の低下     → 貧血
白血球・血小板は減少しないが、機能低下
→ 日和見感染、出血傾向
免疫系:低下
胸腺萎縮
骨髄萎縮
自己免疫疾患の増加
がん
神経系:鈍くなる反応
神経の情報伝達の速度低下(15%)
特に、交感神経の働き低下
* 中枢神経、認知機能は認知症の項目参照

12. 高齢者における低栄養の原因
<低栄養の多面的要因>
a. からだや食事に関する要因
・ 加齢による視覚、嗅覚、味覚などの感覚機能の衰え
・ 咀嚼力や嚥下力の低下
・ 疾病によるもの
(生活習慣病などの慢性疾患、後遺症など)
・ 栄養バランスの偏り
・ 活動量低下による食欲低下
・ 唾液、消化液の減少
・ 消化管運動の低下
b. 精神的な要因
・ ストレスや不安、うつによるもの
・ 認知機能低下
c. 環境的・経済的な要因
・ 一人暮らし、核家族化による孤食化
・ 経済的、マンパワー的原因
<栄養吸収障害に関する問題点>
◎ 第52回日本老年医学会パネルディスカッション4 2010:47;433-436
✓ 加齢のみでは、膵外分泌能は低下しない
✓ 加齢のみでは、タンパク質、糖質、脂肪の消化吸収障害はきたさない
✓ 高齢者の低アルブミン血症の原因は、タンパク摂取量の低下とタンパク食品として魚介類および植物性タンパクを比較的多く摂取し、消化吸収率の高い肉類の摂取量も低下していたため
参考:
タンパク質摂取量
60歳代まで            80g /日以上
70歳代               64.2g/日
80歳代               56.8g/日
食事性タンパク未消化率
鶏卵3%、肉類5-10%
大豆10-30%、魚介類10-20%
◎ 同化抵抗性:高齢者はタンパク質を食事で摂取しても筋肉合成などに利用される効率が悪い
十分なタンパク質を三食で一定量以上摂取し、欠食や偏食をなくす
消化吸収率の高い肉類や豆類、卵などを十分摂取する
吸収効率の高いアミノ酸(特にロイシンなど)も積極的に補給する
運動との併用が筋肉維持に有用なので、食後90分くらいで運動する、またはアミノ酸は運動中もしくは直後に摂取する。
<フレイル、サルコペニア予防に有用な食事基準>
✓ 必要エネルギー(身体活動レベルⅡ)
男性 2200kcal/日 女性 1700kcal/日
✓ タンパク質
70歳以上 男性71.9g/日  女性61.5g/日以上
毎食25-30g 均等に
ロイシンなどの必須アミノ酸 毎食10-15g
レジスタンス運動の複合
✓ ビタミンD
ビタミンD欠乏あれば、10-20μg/日
✓ 抗酸化物質(ビタミンA、C、Eなど)はそれなりに
✓ ω3系脂肪酸もそれなりに

参考:

フレイル診療ガイド2018年版 荒井秀典 ライフ・サイエンス
日本人の食事摂取基準 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015版)」策定検討委員会報告書 第一出版

健康長寿診療ハンドブック−実地医家のための老年医学のエッセンス 日本老年医学会 メジカルビュー社 2011年

北海道老人福祉施設協議会「心身機能の加齢性変化と日常生活への影響」2011年
サルコペニアの摂食・嚥下障害 リハビリテーション栄養の可能性と実践 若林秀隆ら 2012年 医師薬出版
看護師・介護士が知っておきたい高齢者の解剖生理学 野溝明子 秀和システム
高齢者診療マニュアル 日本医師会雑誌 138巻 特別号(2) 2009年

フレイルのまとめ(2019.09.15)

フレイルとは・・・
加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像
要介護になる前の可逆性の虚弱(老化現象)

1. フレイルの診断基準
項目      評価基準
体重減少   6か月で、2-3kg以上の体重減少
筋力低下   握力:男性<26kg、女性<18kg
疲労感   (ここ2週間)訳もなくつかれたような感じがする
歩行速度   通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動   ①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2ついずれも「週に1回もしていない」と回答

3つ以上該当:フレイル 1~2つ該当:プレフレイル    日本版CHS基準

* 簡易フレイル・インデックス
質問                         1点      0点
6か月で2-3kgの体重減少がありましたか?       はい      いいえ
以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?  はい    いいえ
ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?  いいえ   はい
5分前のことが思い出せますか?            いいえ   はい
(ここ2週間)訳もなく疲れたような感じがする     はい    いいえ
3つ以上該当:フレイル 1~2つ該当:プレフレイル     日本版CHS基準

2. フレイルの疫学
✓ フレイル高齢者の割合は、CHS基準またはそれに準じた基準で評価した我が国の調査では、地域在住高齢者の約10%前後と推計される(エビデンスE-2)。
✓ フレイル高齢者の割合は加齢とともに増加し、男性に比較して女性に多い(エビデンスE-2)。
65-74歳 4.0%、75-84歳 16.2%、85歳以上 34.0%
✓ 慢性疾患で外来通院中の高齢者や施設入所者におけるフレイルの割合は、地域在住高齢者における割合よりも高いと考えられる。
慢性疾患患者 21.6%、施設入所者 46.9%

3. フレイルの危険因子
栄養面:
偏った食事内容
タンパク質の摂取量、各食事ごとのタンパク質の配分不足
微量元素、抗酸化作用食品不足
ビタミンD摂取不足
身体生活面:
活動性低下、運動不足
慢性疼痛、難聴、ポリファーマシー
心理環境面:
アパシー(意欲低下)、抑うつ
配偶者のフレイル
各種疾患:
生活習慣病(特に糖尿病)、心血管系疾患など

4. フレイルの予後、疾患との関連性
✓ フレイルと死亡:   オッズ比 2.34  相対危険度 1.83
入院      1.2-1.8倍
施設入所   1.7倍
ADLの障害  1.6-2.0倍
身体的制限  1.5-2.6倍
転倒・骨折  1.2-2.8倍
✓ フレイルと認知症:  ハザード比 1.33
アルツハイマー型認知症    1.28
血管性認知症          2.70
✓ フレイルの合併で予後不良な慢性疾患:
起立性低血圧、心房細動、急性冠症候群、心不全、糖尿病、低血糖、COPD、CKDなど

5. フレイルと認知症の相関関係
✓ フレイルは認知症を合併しやすく、約20-50%に認知機能障害あり(エビデンスE-2)。
✓ フレイル高齢者は、認知機能が低下しやすく、認知症になりやすい。逆に認知機能低下者はフレイルになりやすい(エビデンスE-2)。
✓ フレイルと認知機能障害を合併すると、手段的ADL、基本的ADL、身体機能が低下しやすく、死亡率が高くなる(エビデンスE-1b)
✓ フレイルに対して運動療法を栄養、薬物、認知、社会的な介入と組み合わせることで、認知機能改善が期待できる(推奨B)

6. フレイルの予防
低栄養状態と肥満がフレイルには因果関係があり、栄養介入にて一定の効果は認められるが、運動療法との併用を推奨する(推奨A)。
栄養療法として・・・
ONS(経口補助食)摂取
タンパク質摂取(肉や卵を中心に 1.2~1.5g/kg/day)
野菜・果物摂取
ビタミンD補給( 6.5μg/day)
西洋型食事パターンの改善
運動療法として・・・
レジスタンス運動、バランストレーニング、機能的トレーニングなど多因子運動プログラム
中等度から高度の運動強度で、漸増的にアップ
適切なタイミングでタンパク質、アミノ酸の摂取

7. 高齢者のフレイル予防のための栄養学的アプローチ
✓ 必要エネルギー(身体活動レベルⅡ)
男性 2200kcal/日 女性 1700kcal/日
✓ タンパク質
70歳以上 男性71.9g/日  女性61.5g/日以上
毎食25-30g 均等に
ロイシンなどの必須アミノ酸 毎食10-15g
レジスタンス運動の複合
✓ ビタミンD
ビタミンD欠乏あれば、10-20μg/日
✓ 抗酸化物質(ビタミンA、C、Eなど)はそれなりに
✓ ω3系脂肪酸もそれなりに

8. フレイルのまとめ
フレイルは予後にも影響を与えるが、適切な介入で予防及び回復が可能である!

参考:
フレイル診療ガイド2018年版 荒井秀典 ライフ・サイエンス
日本人の食事摂取基準 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015版)」策定検討委員会報告書 第一出版
サルコペニアの摂食・嚥下障害 リハビリテーション栄養の可能性と実践 若林秀隆ら 2012年 医師薬出版

新しい便秘薬と便秘対策(2019.04.07)

◇慢性便秘症とは
慢性便秘症の診断基準(成人)慢性便秘症診療ガイドライン2017
1.「便秘症の診断基準」
以下の6項目のうち、2項目以上を満たす
・ 排便の1/4超の頻度で、強くいきむ必要がある
・ 排便の1/4超の頻度で、兎糞状便または硬便である
・ 排便の1/4超の頻度で、残便感を感じる
・ 排便の1/4超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
・ 排便の1/4超の頻度で、用手的な排便介助が必要である
・ 自発的な排便回数が、週に3回未満である
2.「慢性」の基準
6か月以上前から症状があり、最近3か月間は上記の基準を満たしていること

小児の慢性機能性便秘症の診断基準(小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン)
Neonate/Toddler
4 歳未満の小児では、以下の項目の少なくとも 2 つが 1 か月以上あること
1.1 週間に 2 回以下の排便
2.トイレでの排便を習得した後、少なくとも週に 1 回の便失禁
3.過度の便の貯留の既往
4.痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
5.直腸に大きな便塊の存在
6.トイレが詰まるくらい大きな便の既往
随伴症状として、易刺激性、食欲低下、早期満腹感などがある。大きな便の排便後、随伴症状はすぐ に消失する。
乳児では、排便が週 2 回以下、あるいは硬くて痛みを伴う排便で、かつ診断基準の少なくとも 1 つ がある場合、便秘だとみなされる。
Child/Adolescent
発達年齢が少なくとも 4 歳以上の小児では、以下の項目の少なくとも 2 つ以上があり、過敏性腸症 候群の基準を満たさないこと
1.1 週間に 2 回以下のトイレでの排便
2.少なくとも週に 1 回の便失禁
3.便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往
4.痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
5.直腸に大きな便塊の存在
6.トイレが詰まるくらい大きな便の既往
診断前、少なくとも 2 か月にわたり、週 1 回以上基準を満たす

◇日常生活からの便秘対策
食物繊維…食物繊維が不足していると考えられる場合には、1日当たり成人男子20g以上、成人女性18g以上の摂取を推奨(両てのひらにのる野菜を毎食)。ただし、過剰摂取は逆に便秘の原因になります。
発酵食品…ヨーグルトなどの乳酸菌食品で腸内細菌のバランス改善効果。
水分摂取…水分不足の予防により効果が期待できる。朝起きたときの副交感神経が優位な際の飲水はより効果的だが、過剰摂取に気を付けます。
運動…運動による腸蠕動の活発化などの効果が期待できます。
マッサージ…1日15分のマッサージ(へそを中心に「の」の字を書くように)が有効です。温罨法と言って温めるのも有効で、入浴中などにも定期的に施行します。
排便姿勢…ロダンの考える人(かかとをあげ、両肘は太ももの上に置き、前傾姿勢になる)がいいとされますが、転倒しないように気を付けましょう。
排便習慣…毎日、排便がなくても定時に便器に座り、排便を試みることも有効です。
シャワートイレ…排便なくてもシャワートイレで肛門に刺激を与えることも有効です。

◇便秘薬(当院で使用している薬)
1. 浸透圧性下剤
・塩類下剤…酸化マグネシウム、マグミット、硫酸マグネシウム
腸管から吸収されにくい水溶性無機塩類で、浸透圧作用によって腸内容の水分を維持し、腸の蠕動も促進するWの効果。効果は早く1-2時間で有効とされ、習慣性が少なく、長期使用も可能(腎機能障害には注意)。
・糖類下剤…ラクツロース、モニラック、D-ソルビトール
消化されない非吸収性の糖類の作用で、浸透圧により水分を保持するだけでなく、腸内細菌によって変化し、腸を活性化します。
2. 刺激性下剤
・アントラキノン系…プルゼニド、アローゼン、センノシド
大腸粘膜を刺激して蠕動を起こさせ、排便を促す。服用後6-15時間かかって排便させるため、就寝前に服用する。連用により刺激性が低下する可能性があり、依存性もあるので、短期使用が勧められる。
・ジフェニール系…ラキソベロン、ピコスルファートナトリウム
液体で量が調節しやすく、飲みやすい特徴がある。
3. 直腸刺激剤
・ビサコジル坐薬…テレミンソフト
直腸粘膜を刺激して、排便反射を誘発する。
・炭酸水素ナトリウム配合剤…レシカルボン坐薬
肛門から挿入後、体温で温められて、炭酸ガスを発生し、直腸を刺激する。
・グリセリン浣腸
グリセリン液で直腸壁からの水分吸収に伴う刺激にて蠕動を促進し、また、便を軟化・膨潤させて糞便を排泄させます。
4. 漢方薬
大建中湯、麻子仁丸、大黄甘草湯、大承気湯、防風通聖散など
5. 合剤
セチロ(ダイオウ、センナ、オウレン、マグネシウム)

◇新しい便秘薬
・アミティーザ(ルビプロストン)1日2回朝夕食後内服
小腸上皮頂端膜に存在するClC-2クロライドチャネルを選択的に活性化することで、腸管内への水分分泌を促進し,糞便の腸管内輸送を高めて排便を促進するという全く新しい作用の便秘薬です。
・リンゼス(リナクロチド)1日1回朝食前内服
腸管の上皮細胞に存在するGC-C受容体に作用し、腸管内への水分分泌を促進し、小腸運動を活性化して、便通を改善します。また、神経線維に作用して、腹痛や腹部不快を改善します。
・グーフィス(エロビキシバット)1日1回夕食前内服
大腸内での胆汁酸の吸収を抑制することで、大腸内の水分分泌を増加し、胆汁酸の刺激で大腸運動を促進します。効果発現まで5時間以上かかります。
・モビコール(ポリエチレングリコール製剤)1日1-3回水に溶かして内服
ポリエチレングリコールが水分を保持することで、便通を改善します。即効性はなく、1週間くらいで効果が安定します。小児に使用しやすい安全な便秘薬です。
・スインプロイク(ナルデメジントシル)1日1回朝食後 モルヒネなどを服用している患者のみ
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日本版重症患者の栄養療法ガイドライン(要約)2017年3月25日

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン(要約)

日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会 日集中医誌 2016;23:185-281.

 

  1. 栄養療法の開始
  2. 栄養管理の必要性

CQ1: 重症患者に対して栄養管理は必要か?

A1:重症患者の病態や病期に応じた栄養管理を行うことを強く推奨する。(1D)

  1. 栄養状態の評価

CQ2:栄養評価に適した指標はあるか?

A2:栄養療法開始前にスクリーニングによる栄養障害やリスクを同定するべきだが,信頼性の高い評価指

標がない。(1D)

✓SGAによるスクリーニングは有用だが、重症度の評価は総合的に判断すべき。

  1. 栄養投与ルート

CQ3: 栄養投与ルートは,経腸と経静脈のどちらを優先するべきか?

A3:経腸栄養を優先することを強く推奨する。(1A)

✓経腸栄養を行うという行為は,静脈栄養のそれに比べて最終的な転帰の改善には至らないが,感染症の抑制や病院滞在期間の短縮,医療費の面で優位性がある。

  1. エネルギー消費量とエネルギー投与量

CQ4-1: エネルギー消費量の推定はどのような方法で行うか?

A4-1:間接熱量計での測定結果,もしくは推算式による算出に基づいて設定することを強く推奨する。(1D)

CQ4-2: 目標エネルギー投与量をどのように設定す

るか?

A4-2:急性期の初期1週間は,エネルギー消費量よりも少なく投与することを弱く推奨する。(経腸栄養:2B)(静脈栄養:推奨なし,unknown field)

✓急性期の栄養はエネルギー消費量よりも少なく投与することが望ましいと考えられる。しかし,至適な投与量は未確定である。

  1. 蛋白投与量

CQ5:蛋白投与量はどのように設定するべきか?

A5:至適蛋白投与量は不明である。(unknow field)エネルギー投与量が目標量に達している場合は,1.2〜2.0 g/(実測体重)kg/dayの蛋白が喪失していることを考慮したうえで,蛋白投与量を設定することを弱く推奨する。(1C)

  1. 経腸栄養
  2. 経腸栄養の開始時期

CQ1:経腸栄養の開始時期はいつが望ましいか?

A1:重症病態に対する治療を開始した後,可及的に24時間以内,遅くとも48時間以内に経腸栄養を開始することを推奨する。(1B)

  1. 不安定な循環動態

CQ2-1:不安定な循環動態での経腸栄養は可能か?

A2-1:高容量の昇圧薬投与,大量輸液,大量輸血が必要な場合など,循環動態不安定な患者に対しては,蘇生されて血行動態が安定するまでは経腸栄養の開始を控えることを弱く推奨する。(2C)

Q2-2: 循環不全時の経腸栄養投与時の注意点は何か?

A2-2:投与する場合は,栄養投与中のショックあるいは非閉塞性腸管壊死などの発症に留意し,その徴候

を認めた場合には経腸栄養を中断することを強く推奨する。(1D)

  1. 栄養チューブの留置位置の選択と経十二指腸チューブの挿入法

CQ3-1: 経腸栄養施行の際,経胃投与よりも,十二指腸以遠から投与されるべきか?

A3-1:誤嚥のリスクがある症例では幽門後からの経腸栄養を考慮することを弱く推奨する。(2C)

CQ3-2:十二指腸以遠への栄養チューブ挿入法は?

A3-2:内視鏡ないし造影下にて行う十二指腸以遠への栄養チューブ挿入はどちらも有効であり,各施設で慣れた方法で行うことを弱く推奨する。どちらでも選択できる場合は細径の内視鏡による留置を挿入時間が短時間である点から推奨する。

成人で盲目的に行う場合は空気を注入する方法を弱く推奨する。(2D)

胃蠕動が低下している症例では胃蠕動促進薬の使用を弱く推奨する。(2D)

小児では胃蠕動促進薬を使用しないことを弱く推奨する。(2D)

  1. 経腸栄養の目標投与エネルギー量

CQ4: 入室後早期の経腸栄養の至適投与エネルギー量は?

A4-1:重症化以前に栄養障害がない症例では,初期の1週間は消費エネルギーに見合うエネルギー投与量

を目指さないことを弱く推奨する。(2D)

ただ,至適投与量に関しては,消費エネルギーの1/4程度,500 kcal/day程度の研究があるが,推奨で

きる結論は出ていない。(unknown field)

A4-2:重症化以前に栄養障害がある症例では,至適投与量は不明である。

しかし,エネルギー負債が大きくなり過ぎない程度の投与量は必要である。(unknown field)

✓エネルギー消費量の1/4もしくは500kcal/day程度(20kcal/hr程度) までの経腸栄養を投与する低容量経腸栄養の理論的背景としては,消費エネルギーに見合わない投与量であるが,腸管粘膜の保全効果,刷子縁での酵素の分泌を刺激する,免疫能を保ち,上皮細胞のtight cell junctionを保ってバクテリアルトランスロケーションを防ぐと言われている。

  1. 静脈栄養
  2. 静脈栄養の適応

CQ1:静脈栄養の適応患者は?

A1:重症化前に低栄養がない患者において,初期1週間に経腸栄養が20kcal/hr以上投与できれば,目標量達成を目的とした静脈栄養を行わないことを弱く推奨する。(2B)

✓初期1週間において,持続的な経腸栄養によるエネルギー投与量量が平均20kcal/hr未満の患者では,目標量達成を目的とした静脈栄養を行ってもよい。なお,経腸栄養を間歇的に投与する場合の静脈栄養併用に関する研究はない。

  1. 静脈栄養の開始時期

CQ2:静脈栄養の開始時期は?

A2:持続的な経腸栄養によるエネルギー投与量が平均20kcal/hr未満の症例での静脈栄養の開始時期は明確ではない。(unknown field)

  1. 静脈栄養の目標エネルギー投与量

CQ3:静脈栄養のエネルギー投与量は?

A3:急性期における静脈栄養の至適エネルギー投与量は明確ではない。(unknown field)

  1. 静脈栄養の組成

CQ4:静脈栄養時の組成はいかにすべきか?

A3:静脈栄養を実施する場合にはブドウ糖輸液単独では行わないことを弱く推奨する。(1C)

  1. ビ タ ミ ン, 微 量 元 素, セ レ ン,refeeding syndrome

CQ5: ビタミン,微量元素の投与を重症度の高い集中治療患者に行うべきか?

A5:重症度の高い集中治療患者への総合ビタミン剤,微量元素製剤の通常量の投与を強く推奨するが,投与

推奨量を決定する十分なデータはない(1B)

Refeeding syndromeを起こすことが予測される患者には血中リン,マグネシウム,カリウムのモニタリ

ングを推奨する。(1C)

  1. 静脈栄養時の投与ルート(中心静脈,末梢静脈)

CQ6: 静脈栄養時に,中心静脈アクセスを使用すべき場合は?

A6:中心静脈ルートは,浸透圧比3以上の輸液製剤を用いる場合に使用することを強く推奨する。(1D)

✓)15%未満のブドウ糖液,アミノ酸製剤,脂肪乳剤の浸透圧比は3未満であり末梢ルートから投与可能である。また,ビタミン製剤,微量元素は希釈輸液剤の浸透圧比が3未満であれば末梢ルートからも投与可能である。

  1. 経腸栄養耐性の評価
  2. 腸管蠕動の確認

CQ1: 経腸栄養を開始の条件として腸管蠕動があることを確認するか?

A1:腸管蠕動の確認を経腸栄養開始の条件としないことを強く推奨する。(1B)

  1. 経腸栄養耐性の評価方法

CQ2: 経腸栄養に対する耐性(継続できるか?)のモニタリングはどのようにするか?

A2:患者の経腸栄養に対する耐性として,疼痛や腹部膨満感の訴え,理学所見,排ガス・排便,腹部X線

写真などをモニタリングする。経腸栄養の不適切な中止を避ける。

不耐性を示す他の徴候がない場合,随時確認した胃内残量<500mlであれば経腸栄養を中断しない。

不適切な栄養投与や麻痺性イレウスの長期化を防ぐために,診断や処置に伴う絶食期間を最小限にとどめる。

以上のことをすべて弱く推奨する。(2C)

  1. 経腸栄養投与量の増量の方法

CQ3: 経腸栄養を投与目標量まで増量するための方策は?

A3:目標量の達成度を高めるために,経腸栄養療法プロトコールを使用することを弱く推奨する。(2C)

✓:①目標注入速度の設定,②より早期の経腸栄養開始法,さらに③胃内残量,④チューブフラッシュの

頻度,⑤栄養投与を調節・中止する状態,⑥合併症の取り扱いに関する指示,を定めた看護師などICUス

タッフが運用するプロトコールを使用することで,投与される目標量の達成度が上昇することが示される。

  1. 経腸栄養と誤嚥

CQ4: 経腸栄養中の誤嚥の危険度を下げるために行うことは?

A4:経腸栄養施行中は逆流や誤嚥のリスクを評価し,逆流や誤嚥のリスクが疑われる症例ではリスクを低減

するための手段を講じることを推奨する。

A4-1:経腸栄養を行っている全ての気管挿管患者では,ベッドの頭側(上半身)を30〜45°挙上することを弱く推奨する。(1C)

A4-2:誤嚥のハイリスク患者や経胃投与に不耐性(行うことが困難)を示す患者に対しては,経腸栄養が間欠投与で行われている場合は持続投与に切り替えることを弱く推奨する。(2C)

A4-3:誤嚥のハイリスク患者や経胃投与に不耐性を示す患者に対しては,投与可能であれば,腸管運動促進薬(メトクロプラミドやエリスロマイシン)や麻薬拮抗薬(ナロキソン)などを開始することを弱く推奨する。(2D)

A4-4:誤嚥のハイリスク患者や経胃投与に不耐性を示す患者に対しては,幽門後経路による栄養投与への切り替えを考慮することを弱く推奨する。(2C)

A4-5:人工呼吸器関連肺炎のリスクを低減するために本邦で使用できる濃度の口腔洗浄用クロルヘキシジンによる口腔洗浄は行わないことを強く推奨する。(1C)

✓口腔洗浄に用いるクロルヘキシジンはグルコン酸クロルヘキシジンである。クロルヘキシジン洗口液の濃度について,欧米では0.12〜0.2%で有効性が報告されているのに対し,本邦で使用できる濃度は欧米の1/100の低濃度(0.002%以下)である(2015年4月現在)。本邦で使用できる濃度では,口腔内細菌に対する有効性はないといわれている。なお,口腔洗浄用のグルコン酸クロルヘキシジンと,消毒用として市販されているクロルヘキシジン(クロルヘキシジンアルコール)とを混同しないように注意が必要である。消毒用のクロルヘキシジンアルコールは欧米では2%,本邦では1%の濃度のものが市販されているが,いずれも口腔洗浄用のグルコン酸クロルヘキシジンに比べて高濃度である。

  1. 下痢の発生時の対応

CQ5:下痢が発生した場合に何をするべきか?

A5:原因の詳細な評価を行い,その結果に基づいて対応することを強く推奨する。(1D)

  1. 特殊栄養素
  2. アルギニン

CQ1: アルギニンを強化した免疫調整栄養剤を重症度の高い集中治療患者に対して使用してもよいか?

A1:アルギニンを強化した免疫調整栄養剤を重症度の高い集中治療患者に対して使用しないことを弱く推

奨する。(2C)

  1. グルタミン

CQ2: グルタミンを強化した経腸栄養の投与の適応は?

A2-1:グルタミンを強化した経腸栄養の投与を熱傷と外傷患者で考慮することを弱く推奨する。(2B)

A2-2:ショック,多臓器障害を呈する場合は,グルタミンを強化した経腸栄養の投与は控えることを強く

推奨する。(1A)

  1. n-3系多価不飽和脂肪酸

CQ3-1: ARDS 患者に対してn-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用を考慮するか?

A3-1:ARDS患者に関してはn-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用を弱く推奨する。(2B)

CQ3-2: Sepsis/severe sepsis/septic shockの患者に対して,n-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤の使用を考慮するか?

A3-2:Sepsis/severe sepsis/septic shockの患者に関してはn-3系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化物

質を強化した経腸栄養剤の使用を考慮することを弱く推奨する。(2B)

  1. 食物繊維(可溶性と不溶性)

CQ4:食物繊維は投与するか?

A4:可溶性繊維は下痢で難渋する症例には使用を考慮することを弱く推奨する。(2C)

不溶性繊維は重症患者全般に使用を避けることを弱く推奨する。(2C)

✓食物繊維とは,人の消化酵素によって消化されない,食物に含まれている難消化性成分の総称で,大

きく可溶性食物繊維(soluble dietary fiber, SDF)と不溶性食物繊維(insoluble dietary fiber, IDF)に分けられる。期待される効果としては他のプレバイオティクス製剤と同様である。SDF には,ペクチン,グアーガム加水添加物,ポリデキストロース,グルコマンナンなどがあり,IDF にはセルロース,ヘミセルロース,リグニン,キチン,グルカンがある。

  1. 半消化態栄養剤と消化態栄養剤(ペプチド型栄養

剤)

CQ6: 重症患者に対して,ペプチド型栄養剤による経腸栄養と半消化態栄養剤のどちらが優先されるべきか?

A7:どちらを用いてもよい。(2C)

  1. 補足的治療
  2. 選 択 的 消 化 管 除 菌(selective digestive decontamination, SDD)および選択的口腔内除菌

(selective oral decontamination, SOD)

CQ1:SDDとSODを行うべきか?

A1:SDDとSODを行わないことを弱く推奨する。(2A)

  1. プ レ/ プ ロ/ シ ン バ イ オ テ ィ ク ス(pre/pro/synbiotics)

CQ2: プレ/ プロ/ シンバイオティクスを投与するか?

A2:プレ/プロ/シンバイオティクス製剤は使用を弱く推奨する。(2B)

ただし重症急性膵炎では投与しないことを弱く推奨する。(2B)

  1. 抗潰瘍薬

CQ3-1: 消化管出血予防はどのような患者に行うか?

A3-1:消化管出血予防は出血リスクのある患者に行うことを弱く推奨する。(2C)

CQ3-2: 消化管出血の予防目的で,抗潰瘍薬を使用するか?

A3-2:消化管出血の予防目的で,抗潰瘍薬を投与することを弱く推奨する。(2A)

CQ3-3:抗潰瘍薬の選択はどうすればよいか?

A3-3:

1)出血予防効果が副作用より高いと考えられる患者にはヒスタミンH 2 受容体拮抗薬あるいはプロトン

ポンプ阻害薬(PPI)の使用を弱く推奨する。(1A)

2)出血のリスクがあまり高くないと考えられる患者ではスクラルファートなどの胃粘膜保護薬の使用

を弱く推奨する。(1A)

3)出血リスクがなく,経腸栄養を行っている患者では予防投与をしないことを弱く推奨する。(2A)

  1. 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids,BCAA)

CQ4:BCAA richな静脈栄養の投与はするか?

A4:一般的に重症患者に対するBCAA richな静脈栄養の投与はしないことを弱く推奨する。(2B)

  1. 高脂肪/低炭水化物(high fat and low CHO)栄養剤

CQ5: 高脂肪/低炭水化物(high fat and low CHO)栄養剤は重症患者に投与するか?

A5:高脂肪/低炭水化物栄養剤(high fat and low CHO)を重症患者に対してルーチンに使用しないことを弱く推奨する。(2D)

  1. 脂肪乳剤

CQ6-1:脂肪乳剤の投与速度と投与量は?

A6-1:脂肪乳剤投与に関して,投与速度は0.1〜0.2 g triglycerides/kg/hrまで,投与量は0.7〜1.5g/kg/dayを超えないようにすることを弱く推奨する。(2C)

CQ6-2: 脂肪乳剤はいつ,どんな種類のものを投与するか?

A6-2:

1)経腸栄養が施行できていれば,大豆由来の脂肪乳剤の投与を控えることを弱く推奨する。(2C)

2)経腸栄養が施行できていない場合,静脈栄養が10日間以内であれば,大豆由来の脂肪乳剤の投与は控えることを弱く推奨する。(2C)

3)経腸栄養が施行できていない場合,静脈栄養が10日間以上であれば,大豆由来の脂肪乳剤を投与するべきであるが,至適な投与量に関する根拠は不十分である。(unknown field)

4)栄養不良が基にある重症患者では,大豆由来の脂肪乳剤を投与するべきであるが,至適な投与量に

関する根拠は不十分である。(unknown field)

  1. 東洋医学的アプローチ

CQ7-1: 消化管運動の改善のために漢方薬の投与を行うか?

A7-1:消化管運動の改善目的での漢方薬の使用に関する推奨は,結論を出すには充分なエビデンスがない。(unknown field)

CQ7-2: 消化管運動の改善のために鍼治療を行うか?

A7-2:消化管運動改善に鍼治療が有効である根拠は不十分である。(unknown field)

  1. 血糖管理
  2. 血糖目標値

CQ1:目標血糖値はいくつにすべきか?

A1:180mg/dl以上の高血糖を呈した場合,血糖値を低下させるためにインスリン投与を開始する。血糖値

のコントロールを行う際には, 目標血糖値は180mg/dl以下とし,血糖値を80〜110mg/dlに維持する強化インスリン療法は行わないことを強く推奨する。(1A)

  1. 血糖コントロール

CQ2:血糖値測定をどのようにすべきか?

A2:

1)経静脈的インスリン療法を受けているすべての患者は血糖値とインスリン投与量が安定するまで1〜2時間ごとに,安定したのちは4時間ごとに,血糖値を測定することを強く推奨する。(1C)

2)毛細管血を使用した簡易血糖測定法は血液ガス分析器による血糖測定と比較して測定誤差が大きく,正確性に欠けるため,血液ガス分析器による血糖測定の使用を強く推奨する。(1B)

3)血液ガス分析器による血糖測定でも測定誤差が生じるため,適宜中央検査室での血糖測定を行い,その正確性を確認することを強く推奨する。(1B)

  1. 経腸栄養療法中の患者管理
  2. 胃管の位置確認

CQ-1: 留置された胃管の位置確認はどのように行うか?

A-1:胃管を留置あるいは再留置した場合,X線による確認を行うことを強く推奨する。(1D)

  1. 胃内残量の管理

CQ2:経腸栄養を継続しても良い胃内残渣量は?

A2-1:胃内残量が500 ml以内であれば経腸栄養を中断しないことを弱く推奨する。(2C)

  1. 経腸栄養投与中の体位

CQ3: 気管挿管患者の経腸栄養投与中の体位はどのようにすべきか?

A3-1:経腸栄養中は30〜45°のセミファーラー位を維持することを強く推奨する。(1C)

  1. 経腸栄養の間欠投与と持続投与

CQ4: 経腸栄養は間欠投与と持続投与のどちらがよいか?

A4:重症患者への経腸栄養投与は可及的に持続投与で行うことを強く推奨する。(1C)

  1. 経腸栄養投与の開放式システムと閉鎖式システム

CQ5: 経腸栄養投与法として開放式システムと閉鎖式システムのどちらがよいか?

A5:開放式システムと閉鎖式システム両者いずれが栄養剤の感染による下痢の予防に有効であるかを示す

十分な根拠がない。(unknown field, D)

  1. 便失禁管理システム

CQ6: 経腸栄養管理中の激しい下痢に対して便失禁管理システムを使うか?

A6:経腸栄養管理中の激しい下痢に対しては,便失禁管理システムを使うことを弱く推奨する。(2D)

  1. 栄養チューブの口径と誤嚥

CQ7: 栄養チューブは,誤嚥防止のために,可及的に口径が小さいものを選択するか?

A-7:栄養チューブは,誤嚥防止のためには,可及的に口径の小さなチューブを選択することを弱く推奨する。(2D) ただし,胃内残量を測定する場合には口径の太いチューブが必要となる。

  1. 胃瘻の適応

CQ8: 長期間の経鼻経管栄養を必要とする患者に胃瘻を造設するか?

A9:長期間の経鼻経管栄養を必要とする患者に対し,胃瘻の造設をしないことを弱く推奨する。(2D)

  1. 静脈栄養療法中の患者管理
  2. 中心静脈カテーテル挿入時の感染防御

CQ1: 中心静脈カテーテル挿入時の感染防御に有効な方法は?

A1:中心静脈カテーテルの挿入時に,マキシマムバリアプレコーションを実施することを強く推奨する。(1A)

  1. 中心静脈カテーテルの留置部位の選択

CQ2: 中心静脈カテーテル挿入部位はカテーテル感染発生に影響するか?

A2:中心静脈カテーテル関連血流感染(catheter- related bloodstream infection)の発生率は,マキシマムプリコーションを行えば内頸静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈のどの部位を選択しても変わらない。(2B)

  1. 静脈カテーテルの交換

CQ3:静脈カテーテルの交換時期は?

A3:中心静脈カテーテルはカテーテル血流関連感染が疑われる場合のみ交換する。末梢静脈カテーテルは点滴漏れや感染など臨床的に問題がない限り,72〜96時間ごとの交換はしない。(2C)

第3章 栄養管理の実際:小児

  1. 栄養療法の必要性
  2. 栄養投与の必要性

CQ1:栄養不良の予後への影響と対処方法は?

A1:

1)栄養不良は予後に影響する可能性がある。(2C)

2)しかし、対処方法については未解決である(unknown field, C)

  1. 栄養評価
  2. 栄養評価の必要性

CQ1:栄養評価はどのように行うか?

A1-1:ICU入室前および,入室後経時的な栄養評価を行うことを弱く推奨する。(2D)

  1. 栄養評価指標の有無

CQ2:客観的な栄養評価指標として何を使うか?

A2:客観的な栄養評価指標はない。(unknown field,D)

  1. エネルギー投与量
  2. 栄養消費量の推定

CQ1:エネルギー消費量はどのように推定するか?

A1:間接熱量計を用いてエネルギー消費量を計測し,なければ予測計算式を使うことを弱く推奨する。(2C)

  1. 栄養投与量の決定

CQ2:エネルギー投与量の決定はどのように行うか?

A2:至適エネルギー投与量に関する十分なエビデンスはない。(unknown field, C)

  1. 三大栄養素(多量栄養素):炭水化物,蛋白質,脂質
  2. 三大栄養素の投与量

CQ1:炭水化物,蛋白質,脂質の投与量は?

A1:それぞれの各投与量を推奨する十分なエビデンスはない。(Unknown field, C)

  1. 栄養投与ルート
  2. 栄養投与ルートの決定

CQ1:経腸栄養,静脈栄養どちらを選択するか?

A1-1:腸管が機能しているならば経腸栄養を行うことを弱く推奨する。(2D)

A1-2:経腸栄養施行上の障害を取り除くことを弱く推奨する。(2D)

  1. 栄養投与ルート
  2. 栄養投与ルートの決定

CQ1:経腸栄養,静脈栄養どちらを選択するか?

A1-1:腸管が機能しているならば経腸栄養を行うことを弱く推奨する。(2D)

A1-2:経腸栄養施行上の障害を取り除くことを弱く推奨する。(2D)

  1. 免疫調整経腸栄養剤
  2. 免疫調整経腸栄養剤: immuno-modulating diet

CQ1:免疫調整経腸栄養剤の投与を行うか?

A1:免疫調整経腸栄養剤を投与しないことを弱く推奨する。(2B)

  1. 血糖管理
  2. 血糖の目標値

CQ1:血糖値の目標値はどのように設定するか?

A1:215 mg/dl以下を目標とし,強化インスリン療法は行わないことを強く推奨する。(1A)

  1. 経腸栄養投与プロトコール,チーム医療
  2. 経腸栄養投与プロトコール,チーム医療(NST)の

意義

CQ1: 経腸栄養プロトコールやチーム医療の意義は何か?

A1:より早く目標エネルギー投与量に達する手段として,栄養サポートチーム(nutrition support team,NST)の介在や,積極的な経腸栄養プロトコールの使用を弱く推奨する。(2D)

がん悪液質のまとめ その2

がん悪液質のまとめ その2

がん患者の栄養療法の利点と限界

・ 悪液質は、重度の体重減少と同義であると考えられている。ただし、これは複雑な病因の重層的、多角的な症候群であると認識することが重要

・ 悪液質の中核は、腫瘍の進行と従来の抗癌剤治療による副作用を含む。これら2つの現象は、神経内分泌系の活動変化と炎症サイトカインの産生、さらに腫瘍放出因子の上昇に影響を与える。これらのメディエーターは、順次、食品の摂取量の減少、異常代謝(クリーゼを含む)を発生する。その結果、エネルギーと窒素バランスのマイナスと様々な臓器の機能変化を誘起し、がん終末期のQOLと予後の低下をきたす。

<低栄養状態は手術、化学療法や放射線治療の結果に関連するか?>

手術患者では、術前の栄養不良は術後合併症罹患率と死亡率と、入院期間とのコストが増加する。これに対して、周術期の栄養療法は、手術のコストを増加させない。また、術後は、通常であれば栄養状態は数カ月低下することも判明している。

化学療法を受けるがん患者は、治療時点で体重減少が多く存在し、生存期間の延長、治療反応性の低下、生活の質の増悪、PSの低下と相関する。治療によって、体重減少が回復した患者は、回復しない患者に比較して予後が延長する。<従来の栄養サポートは抗癌治療の転帰を改善するか?>

<手術>

重症の手術患者 (主に上部消化管がん患者) に基づく最近のメタ分析は、TPNは術後合併症や死亡率に有用性はなかった。

・ 術後患者が、自発的に摂取する経口栄養サポリメント(oral nutritional supplement:ONS)は、安価、安全で合併症がないとされ、術後の効果が証明されている。

・  周術期のONS投与は、最近では入院前から退院後も継続することで、術後の体重減少だけでなく、術後合併症も予防する。また、術前の免疫強化サプリメントの使用で、術後の感染性合併症が減少し、コスト削減も証明されている。
・ これらの集大成として、ERAS(enforced recovery after surgery)プロトコールが効果をあげている。

<化学療法と放射線療法>

化学療法患者は、TPNを行うことで、抗癌剤の耐性が増加して生存率が改善するどころか、敗血症などの重篤な感染性合併症が増加した。ただし、骨髄移植(BMT)患者のみで、栄養状態を改善することが示されている。さらに、分岐鎖アミノ酸を補ったTPN がBMT患者の内臓タンパク質の維持に有効とされている。

・ 積極的な化学療法患者においては、侵襲が大きくコストの高いTPNは、外来化学療法患者に施行する栄養カウンセリングやONSに比較して予後の向上は期待できない。ただし、経口摂取で100-300 kcalと10-15 g タンパク質を1日あたり追加するONSなどのみでは、全身および消化管毒性の後遺症後に体重を完全に回復させるのには限界がある。

・ 栄養カウンセリング (ONS投与も含む)が、化学療法や放射線療法に伴う症状 (例えば食欲不振、吐き気、嘔吐と下痢) とQOLの改善を含めた大腸がん患者のアウトカムを向上させることが証明された。これらの研究は、栄養サポート – が、従来の合併症発生率・死亡率重視から患者中心のアウトカムとして身体活動(physical activity level:PAL)とQOLの向上を目標とすることへのシフトを意味している。これらは、栄養と治療がそれぞれ別々に評価されるのではなく、看護サポートも含めた複合的に再評価されるべきである方向付けとなった。

・ 6週間以上のTPNで増加した体重は、脂肪組織と水分がほとんどであり、一部の骨格筋蛋白であった。これに比較して、ONSのみでは体重増加も蛋白質の増加も乏しいため、特に進行がんの栄養療法においては考慮する必要がある(この場合のONSは、サプリメントのみの補給のこと)。

・ 体重減少を認めた栄養不良患者において、がんと非がん患者のTPNによる全身蛋白質の代謝動態を検討したところ、がん患者は非がん患者に比較して蛋白代謝が改善されないことが証明された。

・ 同様に、経腸栄養を 6週間継続したところ、非がん患者には体重増加、血中アルブミン濃度上昇、さらに脂肪組織と筋肉量の増加を認めたのに対して、がん患者では軽度の体重増加と体脂肪の増加は認めたものの、アルブミン濃度や蛋白量は増加しなかった。

<栄養療法による腫瘍増殖の危険性>

・ 動物実験においては、栄養補給による腫瘍増殖刺激は疑う余地がない。

・ 人間では、経腸栄養(経口も含む)による腫瘍の増殖については確認されていない(C)。

・ 手術直前の24時間TPNを施行した大腸がん患者で腫瘍のタンパク合成が促進された報告はあるが、長期間のTPN管理が、腫瘍の増殖・進展に関与した報告はない。

・ 全体として、がん患者の栄養療法を考慮する際に、腫瘍への影響は考えな くてよい(C)。

<がん患者の蛋白代謝の再確認>

① 炎症性サイトカインによる蛋白代謝の再編成

低アルブミンを示すがん患者において、アルブミン合成は抑制されておらず、むしろアルブミンもフィブリノゲンも合成は著しく刺激されている。これは、健康な場合に食事によってアルブミン合成は刺激されるが、フィブリノゲン合成は刺激されないのとは対照的である。がん患者は炎症性サイトカインによって持続的に急性反応蛋白の生成が刺激され、アミノ酸が骨格筋から内臓蛋白合成にまわされるためと考えられている。

② 加齢

加齢による、食事から摂取したアミノ酸の同化能の低下も指摘されている。患者の年齢を増加性アミノ酸の貧しい同化応答のさらなる原因です。高齢患者は必須アミノ酸からの蛋白合成の反応性の低下だけでなく、アミノ酸センシング/シグナル蛋白質の筋肉内発現と活性化が低下している可能性も指摘されている。これらの効果は、インスリン シグナル伝達に依存しておらず、したがって高齢者に増加するインシュリン抵抗性による影響はなく、著明に増幅したNFκβが影響している。

③ 患者の身体活動(PAL)の減少

体重減少したがん患者は著しくPALのレベルが減少しており、悪液質で見られる筋萎縮のさらなる悪化を引き起こす。食後の運動においても、筋肉の活動性もアミノ酸の蛋白合成刺激と連動する。適度な筋肉負荷を組み合わせないと、栄養療法のみでの蛋白質合成の改善は困難。

参考:サルコペニア

定義: 加齢に伴う筋力の低下 「sarco=筋肉」+「penia=喪失」のギリシャ語の造語 by Rosenberg 1988

病態: 速筋線維優位(2型)の萎縮と筋線維数・筋サテライト細胞数の低下

主にIGF-1(insulin-like growth factor-1)の加齢による低下が原因

診断: European Working Group on Sarcopenia in Older People:EWGSOP

1) 低筋肉量(low muscle mass)

2) 低筋力(low muscle strength)

3) 低動作機能(low physical performance)

重症度:

presarcopenia      1)のみ

sarcopenia        1)+ 2)または3)

severe sarcopenia 1)+ 2)+ 3)

評価:

① DEXA・・・SMI:skeletal muscle index  SMI=LBM(除脂肪体重)/身長2

男 7.26 kg/m2未満    女 5.45 kg/m2未満

② バイオオンピーダンス法

中等度 男 8.51~10.75 kg/m2 女 5.76~6.75 kg/m2

重症   男 8.50 kg/m2以下   女 5.75 kg/m2以下
がん悪液質の薬物治療・その他

<悪液質の診断、ステージ>

・ がん悪液質の管理は、リスクのあるがん患者に対して、腫瘍専門医、主治医(かかりつけ医)、専門看護師、作業療法士、栄養士などの医療チームが常に繰り返し再評価することが重要である。このチームの目的は、できるだけ早くがん悪液質を認識し、腫瘍の進行とともに悪液質を減衰するための予防である。

・ 残念ながら、進行した悪液質の段階では、栄養療法も含めていかなる介入も無効である。

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・ 悪液質の早期介入の指標として、5%以上の体重減少、食事摂取量低下、炎症反応高値が推奨される。

・ がん悪液質の管理は、リスクのあるがん患者に対して、腫瘍専門医、主治医(かかりつけ医)、専門看護師、作業療法士、栄養士などの医療チームが常に繰り返し再評価することが重要である。このチームの目的は、できるだけ早くがん悪液質を認識し、腫瘍の進行とともに悪液質を減衰するための予防である。

・ 残念ながら、進行した悪液質の段階では、栄養療法も含めていかなる介入も無効である。

・ 悪液質の早期介入の指標として、5%以上の体重減少、食事摂取量低下、炎症反応高値が推奨される。

✓ がん悪液質の病態、ステージを理解し、「pre-cachexia」の状態で早期の栄養的介入により、栄養不良の進展を抑制し、抗がん治療への耐容性の向上をはかる。

✓ 「refractory cachexia」は、栄養状態の改善は困難であり、QOLの維持を目的として過剰な輸液を回避し、時には栄養療法を断念する判断も必要となる。

✓ がんによる悪液質は、がんの進行をコントロールできない限り進行性の経過をとる。現在、がん悪液質に伴う低栄養を栄養療法単独で回復させることは困難であるが、栄養指導や軽い運動療法、メンタルサポート、抗炎
症療法などを早期から集学的に多職種で行うことでQOLの向上が期待できる。

<悪液質の薬物治療>

食欲刺激剤

重度食欲不振または早期の満腹感を訴えるがん患者に有用。高用量プロゲステロン製剤としてmegestrol酢酸(ヒスロン®)やヒドロキシプロゲステロンなどは、食欲不振の患者の約70%を改善し、炎症サイトカインの活性低下に作用する。ただし、主観的な食思不振の改善にもかかわらず、食事摂取量および体重増加を実際示すのは約20%のみ。

問題点:

① 体重増加は浮腫や脂肪沈着のためで、アンドロゲンのレベルを減らすことによって骨格筋量を減らす可能性がある。このため、活動性を含めたADLの改善には寄与しない理由がある。

② 適切な投与量が不明

③ 血栓症などの副作用の頻度が高く重篤。

* ステロイド製剤(食欲増進、QOL改善、疼痛軽減の可能性)

プレドニンゾロン 10mg/日

メチルプレドニゾロン 32-125mg/日

デキサメタゾン 3-8mg/日

2~4週間以内の短期使用に限る(効果が減弱、さらにミオパチー、骨粗鬆症、免疫低下、消化性潰瘍、心血管障害のリスク)

骨格筋異化(炎症性サイトカイン)の阻害

COX阻害剤(NSAIDs、アセトアミノフェン)、ペントキシフィリン、サリドマイド、メラトニン、スタチン製剤、ACE阻害抗薬サイトカイン抗体(抗TNFα抗体、抗IL-6抗体など) *感染症(特に、結核などの日和見感染)に気をつける

抗炎症性サイトカイン(IL 12、IL 15)

プロテアソーム阻害剤(EPA、ボルテゾミブなど)

・ 非ステロイド性抗炎症薬
(NSAIDS)の消化性潰瘍予防と組み合わせてのがん患者への使用は、生存期間の延長、全身性炎症を軽減し、体脂肪量を保持する。ステロイドと併用して、体重および筋肉量の増加を認めた報告もある。

・ Megestrol酢酸(ヒスロン®)と組み合わせて、イブプロフェンを重症の消化管がんの体重減少患者に投与するとより体重増加を促進する。

・ サリドマイドはTNF-α合成阻害に効果があり、一部のがんで体重増加や筋蛋白の増加、PALの向上あり。

・ Cannabinoids(マリファナ)には、食欲増進や気分障害、疼痛の改善効果があるとされているが、副作用が強く、ひすろん®とひかくしても効果にはあまり差がない。

・ EPAは、魚の油の自然のオメガ3系脂肪酸成分は炎症サイトカインの活性を低下させ、腫瘍放出因子(PIFなど) をブロックし抗癌剤と相乗的効果があるとされている。EPA は、魚オイルのカプセルとして(エパデール®)、または高蛋白質とカロリーの経口 (Prosure ®) を提供することが可能。この組み合わせは栄養不良への進行を止め、PALの向上に効果があるとされていた。エビデンス的には、膵がんと上部消化管がん患者への投与の大規模試験で唯一、LBMの増加に効果を認めたのみ。        1.5g/日 8週間以上      出血性副作用に注意

・ Cochrane review の結論では、EPAはがん悪液質には推奨されない。高容量の投与で、嘔気の副作用あり。

・ EPAは、NFκβを抑制して、炎症性サイトカインの産生を減少させる。また、直接PIFもブロックする。

・ β-Hydroxy-β-methylbutyrate(HMB)は、EPA同様にユビキチン依存性経路の蛋白異化を抑制。

・ 心臓悪液質の研究では、うっ血性心不全で体重減少を認める患者にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 (例えばエナラプリル、レニベース®) およびβ-ブロッカー(カルベジ ロール、アーチスト®)投与することで体重減少予防効果がある。

骨格筋同化の促進

・ 蛋白同化アンドロゲンステロイド(AAS)投与は、骨格筋のアンドロゲンレセプターのmRNA発現が増加し、アミノ酸の細胞内利用を促進し、骨格筋の蛋白合成を刺激して骨格筋量を増加させる。テストステロン、デカン酸ナンドロロンなどが、重度の熱傷、HIV感染症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)・性腺機能低下症によるサルコペニアなどの異化亢進状態に有用とされる。

・ 成長ホルモン(GH)/インスリン様成長因子(IGF)-1は、集中治療患者の投与において合併症発生率および死亡率が増加したため、使用が推奨されていない。さらに、がん患者においては、腫瘍の成長を刺激する可能性がある。

その他

・ 胃蠕動促進薬(メトクロピラミドなど)は、胃機能は促進するが食欲増進にはあまり結びつかない。早期満腹感や嘔気、胃酸逆流などには有効。

・ グレリン投与によって悪液質が改善する可能性あるが、腫瘍も増殖する可能性が指摘されている。漢方薬の六君子湯にグレリン抵抗性の改善作用あり。

BCAAは食欲不振をもたらすセロトニンの作用を軽減する。さらに、筋蛋白維持効果も期待される。

<その他の治療>

・ 強制栄養(EN、TPN)が経口摂取に比較して生存率に貢献したエビデンスはない。

・ 早期から他職種医療チームでの介入は有効。

・ がん悪液質患者は、健常者に比較して有意に活動性が低下している。

・ プログラム、ウォーキングなどの運動が、筋肉量の維持と患者疲労感の改善に有効。

・ 疲労感は、心理社会的サポートを増やし、患者のストレスレベルを低下させることで、さらに削減できる。

・ 貧血の存在下での疲労が発生した場合は、ヒト・エリスロポエチン(rhEPO)治療が有益なことがある。ただし、腫瘍の進行に対するEPOの影響が危惧される。

・ 悪液質は、可能な限り患者さんのQOLを改善するため、吐き気や嘔吐などに適正に対処し、早期の満腹感には胃運動促進剤によって緩和することができる。便秘や疼痛コントロールに真摯に取り組み、メンタルサポートの機会をおしまない。