PEG管理マニュアル

1. 栄養投与ルートとしてのPEG

* 経腸栄養の利点

1. 消化管を利用するため、静脈栄養に比較して生理的である。
2. 静脈栄養に比較して、安価である。
3. TPN管理に比較して、重篤な合併症がなく、代謝上の合併症も少ないため安全。
4. 持続投与の必要がすくなく、在宅管理が可能。さらに、入浴なども可能で社会復帰できる。
5. 投与ルートが選べ、最近ではいろいろ便利なキットが開発されている。
6. 消化管免疫や内分泌機能を活性化し、腸管安静によるBT(バクテリアル・トランスロケーション)などの合併症がない。
− GALT、イムノニュートリション −
7. 栄養源としていろいろな成分の配合(中鎖脂肪酸や特殊なアミノ酸など)を試みることが可能。
8. 静脈栄養に比較して心肺機能への負担が少なく、高齢者にも長期管理が可能。
9. いままで内服していた薬剤をそのまま使用できる(簡易懸濁法)。
10. 医師でなくても管理できる。
11. 門脈を介して直接肝臓に達する栄養ルート(胆汁などの腸肝循環の改善)。
12. 長期間にわたって施行可能。

2. PEGの実際

●PEGの適応
(1)経腸栄養アクセスとして
・脳血管障害、痴呆、癌などによる自発的な摂食意欲の障害
・神経筋疾患などによる嚥下機能の障害
・頭部、顔面外傷による摂食障害
・咽喉頭、食道、胃噴門部病変による経口摂取障害
・長期の栄養補充が必要な炎症性腸疾患
・誤嚥性肺疾患の予防と治療
(2)誤嚥性肺疾患を繰り返す場合
・経鼻胃管留置に伴う誤嚥
(3)減圧目的
・減圧ドレナージとしての適応

●PEGの禁忌と要注意例
・内視鏡が通過困難な咽喉頭、食道、胃噴門部の狭窄
・大量の腹水貯留
・極度の肥満
・著明な肝腫大
・胃の潰瘍性病変や急性粘膜病変
・胃手術の既往
・横隔膜ヘルニア
・高度の出血傾向
・全身状態不良で予後不良と考えられる例
・消化管吸収障害

●PEGの利点(経鼻胃管との比較)
・ チューブによる違和感や苦痛がない(鼻、咽頭など)。
・ 胃噴門機能を悪化させない。
・ 位置異常や誤挿入による肺炎や窒息がない。
・ 事故(自己)抜去が少ない。
・ 在宅管理が容易。
・ 嚥下リハビリが可能。
●PEGの欠点(経鼻胃管との比較)
・ 造設に専門的設備と技術が必要。
・ 造設や交換時に重篤な合併症がある。
・ 瘻孔周囲の漏れやチューブ・トラブルに特殊なものがある。

●PEGの造設方法
(1) PUSH、PULL法
胃内視鏡を用いてチューブを経口的に挿入する方法で、以下の手技にてチューブを挿管するのですが、ガイドワイヤーに沿って口から押し込む(PUSH法)と腹壁から引っ張る(PULL法)の二つがあります。現在では、ほとんどが挿管しやすいPULL法になっています。

* 感染予防の特殊なPULL法(オーバーチューブ法)
オーバーチューブという筒を口腔および上部消化管まで貫通させて、直接チューブが触れないようにすることで、感染を予防する方法です。


カンガルーPEGキット ニュートレックス 日本シャーウッド(株)

(2) INTRODUCER法
胃壁を特殊な器具で固定しておいて(鮒田式固定具、クリエートメディック(株))、太い穿刺針とシース(外筒)を用いて胃にチューブを直接経皮的に挿管します。清潔な操作が可能ですが、チューブの太さに制限があります。


クリエートメディック(株)のパンフレットより

(3) Direct法(セルジンガー法)
INTRODUCER法を改良して、シースを使用せずに、専用の瘻孔拡張器具を用いて、太いチューブを直接経皮的に挿管しhます。清潔操作が可能で、作成時から専用のボタン型チューブの挿入も可能です。ただし、胃壁固定具は必要です。


カンガルー セルジンガーPEGキット 日本シャーウッド(株)

● PEGチューブのタイプ
PEGチューブのタイプは、大きく分けて以下のようになります。

胃内固定版タイプ    バンパー型 × バルーン型
チューブ型 × ボタン型

これらの組み合わせで4種類になりますが、患者さんや施設の慣れ、管理のしやすさなどで決定します。

チューブ型)

ボタン型)

株式会社メディコン ホームページより


コメディカルのための静脈・経腸栄養手技マニュアルより引用

3. PEGの合併症とその対策


「胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践」 蟹江治郎著より引用

● PEG前期合併症

(1) チューブ誤挿入による汎発性腹膜炎
PEG造設の最初の段階が指で腹壁をおした感触と内視鏡の所見のみで穿刺ポイントを決定することから、俗に言うブラインド操作が含まれており、慣れた 術者や施設でも1〜2%の可能性があると言われています。合併しても直後にX-P透視下または超音波誘導下にドレナージ(消化液や膿を対外に排出するこ と)できれば予後はいいですが、ドレナージがうまくいかなければ手術が必要となります。また、もともと患者の状態が不良なだけでなく、症状がでにくく、本 人の主訴もわからないことが多く、早期に発見するのは非常に困難でさらに予後を不良にしています。常に、腹膜炎の可能性をねんとうにおいて対応することが 肝要です。

(2) 胃、周囲臓器(大腸、小腸、肝など)損傷
これも上記と同じ、ブラインド操作による合併症で、腹膜炎だけでなく、血管や肝臓を損傷して出血すると致命的になります。あらかじめCTなどで、周囲 の臓器との位置関係を確認していても胃内への送気の状況による胃のふくらみによって変化するため、確実な予防方法の確立が望まれます。
また、穿刺の際に胃壁を裂いたり、穿刺を何度も行っているうちに胃瘻と別の場所の胃に穿孔をきたすこともあります。この場合、PEG作成後に胃内容を排出 させて、胃を減圧すれば大事に至らないことが多いですが、要注意です。特に胃の小弯や大弯付近には太い血管があるので、穿刺はなるべく避けた方がいいとさ れています。胃の穿刺の際に反対側の胃壁を損傷して、出血することも要注意です。多くの場合には、胃内視鏡で確認できますが、当院ではPEG作成術後1日 は胃内容を自然排出させて出血の確認と胃の減圧を推奨しています。

(3) 胃腹壁間離解
胃壁と腹壁の間が開いてしまうと、瘻孔ができないだけでなく、胃内容の漏れの原因となってしまいます。したがって、以下の方法でバンパーの管理が必要です。

(4) 瘻孔感染、皮下・筋膜膿瘍
チューブに口腔内や胃・食道内の細菌が付着することによって、胃瘻作成時に瘻孔周囲の皮下組織に感染が起こることによって発生します。また、PEG作成後 のバンパーの圧迫しすぎによる血流傷害も増悪因子となります。したがって、これらの予防としては、鼻腔や口腔内、便培養によるMRSAなどのチェックと可 能であれば除菌、さらには感染予防タイプのPEG造設法(オーバーチューブ法やセルジンガー法など)も有効と言われています。バンパーの固定も上記のごと く、圧迫に気をつける必要もあります。
当院では、瘻孔感染の予防として、術前に判明したMRSAキャリアー患者は可能であれば除菌も行っています。しかし、このような患者も含めて、特に特殊な PEG造設法は行っておらず、従来型のPULL式で特に問題となるような瘻孔感染は認めていません。ただし、軽度の瘻孔感染は必発であり、常に医師だけで なく、看護師も瘻孔周囲の皮膚の初赤と排膿に注意しています。発赤や排膿があれば、瘻孔周囲の皮膚を強く押して、皮下に膿がたまらないように膿を押し出す こと(ドレナージ)を義務付けています。これにより、多くの瘻孔感染は自然治癒していきます。まれに、押し出しても膿が十分排出されない場合には、瘻孔の 皮膚に少し切開を加えたり、拡張して、膿が流れ出やすいようにします。決して、消毒や抗生剤に頼っても治りません。感染対策の基本は洗浄とドレナージで す。
病院によっては、PEGチューブを出す腹壁の皮切を造設時から、T字型や大きくしておいてドレナージを効かして効果を上げている施設もあります。

(5) 創部出血
瘻孔部よりの出血を強く認める場合には、先ずは圧迫です。さらにPEGチューブを開放して、胃内からの出血でないことも確認しましょう。もし、胃内か らの出血であれば、医師に相談して胃内視鏡などを緊急で行う必要があります。また、患者の出血傾向などを再チェックする必要もあります。瘻孔からの出血の 場合には、バンパーを再度圧迫するか、止血用の短冊ガーゼを軽く瘻孔わきに挿入して止血します。

● PEG後期合併症

(1) 嘔吐・胃食道逆流

<一般的な嘔吐・胃食道逆流への対応>
・ 経腸栄養投与時および投与後30〜60分は上半身を30〜45度以上挙上しておく。
・ 投与速度を守る。
・ 定期的なチュ−ブの位置や状態のチェック。
・ 嚥下リハビリを併施する。
・ 消化管機能改善薬の投与

<難治性嘔吐・胃食道逆流への対応>
1) 経腸栄養剤の固形化
利点: PEGをそのまま利用可能
間欠投与による投与時間短縮
欠点: 固形化栄養剤の作製の煩雑さ
手順に不慣れ

固形化経腸栄養剤とは,寒天などを利用して栄養剤をゲル化し「重力に抗してその形態を保つ」経管栄養剤です。液体の経管栄養剤と異 なり生理的な形態のため「嘔吐」「栄養剤漏れ」「下痢」に対しての改善効果が期待されています。固形化剤としては、寒天やゼラチン、卵などがあり、他に固 形化ではありませんが粘度増強剤やトロミ剤などを利用したものもあります。固形化栄養には、上記のような利点・欠点がありますが、最大の利点はカテーテル チップによる注入が可能なので200mlを5分間くらいで注入できます。それによって、リハビリ時間の延長や介護の時間の短縮が可能です。しかし、調理の 手間や慣れが必要になり、特に大きな病院では調理を誰がするのか、薬品の経腸栄養剤に食品の寒天をいれるため品質管理の問題などがあります。

2) 経胃瘻腸瘻栄養(PEGJ)への変更
利点: 確実な誤嚥減少効果
欠点: 持続投与が必要
チューブが細くつまりやすい
交換期間が短い
交換が難しい

PEGの中を通す細いチューブで先端を十二指腸や空腸に送り込むことによって、逆流を防止します。側孔がついていて、胃内容も排出 できるため、確実に逆流に対応できます。しかし、挿入や交換に技術を要するのと、ダンピング症候群(小腸内に急速に栄養剤を送り込むことによる循環の変化 や低血糖)の予防のために投与速度は50ml/時間以下となります。また、チューブも細くつまりやすい欠点もあります。

(2) 瘻孔よりの栄養剤の漏れ
・ こよりティッシュなどを使用してチューブの位置を是正します。
チューブを垂直にする。
ティッシュにて、もれた消化液を吸収する。
バンパーを1〜2cm皮膚から浮かせて、接触させない。

・ 栄養剤の固形化
・ PEGの注入休止
* 決してやってはいけないこと
PEGチューブのサイズアップ
バンパーの圧迫
頻回の消毒と切り込みガーゼの放置

(3) 事故(自己)抜去
1. バンパー型の場合・・・ バンパー部分を切断して、再挿入を試みる。
バルーン型の場合・・・ バルーンの内容をぬいてしぼめた状態で再挿入を試みる。
* 皮膚の入口さえ確保できればいいので、決して無理をしない。
2. 再挿入できない場合には、別の柔らかくて細いチューブ(吸引チューブ、ネラトンチュ−ブ、尿道バルーンなど)の挿入を試みる。
3. 主治医へ連絡する。
瘻孔は半日から1日で閉鎖してしまうといわれています。

(4) バンパー埋没症候群
バンパーの圧迫による位置以上で、バンパーが胃の粘膜内、ひどい時には胃壁外に逸脱した状態です。意外と注入は継続できるのですが、交換は外科的処置 を要します。下図のごとく、日頃からバンパーの回転を確認すれば、予防できます。また、常にバンパーの固定の位置も確認しましょう。

(5) スキン・トラブル
不良肉芽形成・・・ 硝酸銀焼却、軟膏処置
周囲皮膚炎・・・ 石鹸と水道水洗浄
消毒薬・絆創膏カブレ・・・ 消毒不要、絆創膏も直接皮膚に貼る必要なし
バンパーの圧迫・・・ バンパーの再固定、ボタン型の場合には入れ替え

(6) チューブ閉塞
しっかりした洗浄とブラッシング

メディコン(株)のパンフレットより

(7) サイレント・アスピレーション、マイクロ・アスピレーション
不顕性誤嚥,、微小誤嚥

本人が気づかないうちに、口腔内の微生物が少量の唾液や飲食物とともに気道内に入ってしまうことを不顕性誤嚥、微小誤嚥と呼びます。以下の原因で、PEG管理中の患者は合併の危険が高く、重症の場合には適切な治療法がありません。

<経腸栄養による不顕性誤嚥の危険因子>
・ 微小な逆流
・ 消化管ホルモンの活性化による唾液、消化液の増加
・ 脳障害によるドーパミン−サブスタンスP系の異常
(経鼻胃管による胃食道逆流と咽喉頭刺激)

(8) 入れ替え困難

症例報告参照

4. PEG管理のガイドライン

<経腸栄養管理のポイント>
日本静脈経腸栄養学会ガイドライン2003年版

・ 投与速度は原則として徐々にステップアップする。
胃瘻: 200〜300ml/時間以下
腸瘻: 100ml/時間以下
・ 投与開始時の濃度は薄くする。
できれば10%ブドウ糖液で開始することが望ましい
(無菌の栄養剤で食道・胃の反射、誤嚥が起こらないことを確認)。
経腸栄養剤を2倍希釈して用いる。(できれば成分栄養剤から開始)
栄養剤の投与量を2倍、3倍と1〜2日ごとに増量していく。
PEG後は一時的に胃排出能が低下するので、経腸栄養の投与は慎重に行う。

術前に経鼻胃管から経腸栄養が行われていた場合には、術 後第1病日より術前同様の経腸栄養剤を同じ濃度から開始する。
投与量は予定投与カロリーの3分の1を目安にする。術後第3病日まで持続注入が好ましい。
経腸栄養が30kcal / kgまで増量できた時点で、間欠的投与に切り替える。
術前1ヶ月以上消化管をまったく使用していない場合には、
経腸栄養剤の濃度を薄くして(通常倍量希釈)微量持続注入(最初は10ml / 時間程度)を行い、消化器症状を観察しながら投与量を少しずつ増加させる。

・ 温度は人肌・室温とする
経腸栄養の温度の低下は下痢につながる。

・ 原則として術後7日間は創部の観察を行う。

・ 創部感染が生じた場合には、直ちにドレナージを行うとともに、重症の場合には一時的に経腸栄養を中止する。

・ 術後第5日目からシャワー、術後第7日目から入浴を許可する。

・ バンパー式PEGの場合、胃内バンパーが胃壁に埋没しないように、外部バンパー(ストッパー)に1cm程度のゆとりを持たせる。

・ 1日1回程度、カテーテルを回転させる。

・  カテーテルの閉塞を予防するため、経腸栄養剤の終了直後に白湯でフラッシュし、ブラッシングなどを適宜行う。

・ 老朽化したカテーテルは適宜交換する。
バンパー型 4〜6ヶ月、 バルーン型 1〜2ヶ月

・ 術後第5日目からシャワー、術後第7日目から入浴を許可する。

・ 投与開始早期は蛋白も少なめに、あるいはアミノ酸を
主体とする経腸栄養剤を用いる(蛋白は消化作用が
必要、アミノ酸は不要)。

・ 長期絶食、高齢者、消化器外科手術後早期症例では、  消化機能が低下していることが多いので注意を要する。

5. 名古屋記念病院 PEG管理マニュアル

● PEG造設決定
確認事項:
・ 感染症の有無
特に、鼻腔、咽頭や便などのMRSAの保菌、常在
・ 抗凝固薬剤内服の確認 (休薬期間の目安)
パナルジン             10〜14日
エパデール              7〜10日
アスピリン                  7日
ワーファリン、ドルナー        4〜5日
プレタール、オパルモン          2日
アンプラーグ、ペルサンチン      1日
・ ステロイド、免疫抑制剤、抗リウマチ剤などの内服確認
・ 胃、十二指腸潰瘍の有無

必要検査:
・ 血液型、感染症(HB、HCV、梅反)
・ 血液生化学検査
AST、ALT、ALP、LDH、T.Bil、T.P、Alb、BUN、Cr、Na、Cl、K、FBS
可能であれば、CRP
・ 凝固機能(PT、APTT)
可能であれば、出血時間
・ 胸・腹部単純X-P
・ 心電図
・ 可能であれば、便潜血

直前検査:
・ 胸腹部CT・・・胃の位置以上と横行結腸の位置確認と他病変の有無
・ GIF ・・・PEG造設位置の確認と胃・十二指腸病変の確認

● インフォームド・コンセントのポイント

1) なぜ、PEGが必要なのか?
嚥下困難・摂食困難
誤嚥性肺炎を繰り返す
意識障害
その他

2) PEG以外の治療法は?
経鼻胃管栄養
手術的胃瘻・腸瘻
中心静脈栄養
その他

3) PEGとはどういう検査か?

4) PEGの合併症と安全性
PEGの早期合併症
下痢など全て含めると             30〜50%
造設に関する瘻孔のトラブル(感染など) 10〜30%
大腸穿刺や腹膜炎などの合併         1〜2%
PEG造設30日以内の死亡           5〜10%

参考文献:
・ 松原淳一他:高齢者における経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の予後についての臨床的検討 日本消化器病学会雑誌、102(3)、303-310、2005
・ 嶋尾仁:内視鏡的胃瘻造設術の現況 日本消化器内視鏡学会雑誌、45(8)、1217-1224、2003
・ 蟹江治郎他:内視鏡的胃瘻造設術における術後合併症の検討—胃瘻造設10年の施行症例よりー 日本内視鏡学会雑誌、45(8)、1267-1272、2003
・ 高橋美香子他:経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の造設手技と合併症、長期経過についての検討 総合臨床、46(7)、2028-2032、1997

5) PEGのタイプと交換時期
バンパー型  4ヶ月くらい
バルーン型  2ヶ月くらい

● PEG造設前日まで
1) 口腔ケア
2) 全身清拭、可能ならばシャワー浴、入浴
3) 鼻腔、消化管の感染(MRSAなど)のチェックと除菌
4) 同意書の確認
5) 服薬内容の最終確認
抗凝固剤、循環器系薬剤、ステロイドなど
6) リハビリテーションの継続
7) NST依頼または栄養ケアマネジメント

● PEG造設当日
1) 前日就寝前より絶飲食
経腸栄養も中止
2) 口腔ケア
3) 末梢点滴確保
抗生剤の術前投与
4) 前処置
5) 移動はストレッチャー(帰室は必須)

● PEG造設直後・当日
1) 移動はストレッチャー
ベッド上安静(翌日まで)
2) チューブのタイプとバンパー固定位置の確認
3) 胃瘻チューブの開放(出血のチェック)
瘻孔部のチェック
4) 術後抗生剤の投与
5) 末梢点滴内容の確認
6) バイタル・チェック(SpO2)
肺雑音・腹鳴・腹部膨満・腹膜刺激症状など
痛みや不穏に対するケア(重症化の予兆)

● PEG造設翌日(術後第1日目)
1) 安静度フリー、リハビリテーションも再開。
口腔ケア、清拭。
2) バンパーを0.5〜1cm緩めて、きれこみガーゼをバンパーと
腹壁の間に挟みこむ。消毒は不要。
3) 胃内容に問題なければ、胃瘻チューブは閉鎖して、腹壁に
密着させ事故抜去予防。
4) 内服薬の服用再開。可能であれば、経口摂取も再開。
5) 必要があれば、胃瘻よりの投薬や栄養剤の投与も考慮。
6) バイタル・チェック(SpO2)
7) 採血、X-P

● PEG造設術後2日目から1週間
1) 安静度フリー、リハビリテーションも再開。
口腔ケア、清拭。
2) バンパーをさらに0.5〜1cm緩めて、きれこみガーゼをバンパーと腹壁の間に挟みこむ。
チューブを回転させて、自由度を確認。
チューブ刺入部の感染確認。消毒は不要。
3) 栄養剤注入開始。胃瘻チューブよりの投薬も開始。
4) バイタル・チェック(SpO2)  2検から1検へ
5) 目標投与カロリーまで、合併症(下痢、逆流など)に気をつけ
て徐々に経腸栄養剤の投与量をアップする。

● 経管栄養法 看護手順
1) 患者の体位を整える。
(ファーラー位)背中に枕をあてて右向きに傾けて寝かせる。
(胃の向きに合わせて消化吸収をよくするため)
2) 胃内容物を吸引し、食物残渣の有無を調べる。
3) 胃部に聴診器を当て、カテーテルチップにて10〜20mlの空気をチューブから送り込み、音を確認する。
4) 栄養剤の室温・適温を確かめて、イリゲータに流し込み、ルートを満たす。
5) 内服薬がある場合、簡易懸濁法にて注入する。
6) ルートとチューブを接続する。
7) クレンメで滴下を調節する。
(1秒間に1〜2滴の速さで1〜1.5時間くらいで注入)
8) 全量注入後、微温湯を約60ml注入あるいは患者の状況に応じて、約100mlイリゲータより注入する。
9) 終了後は、30分間以上同じ体位を維持させる。

● PEG栄養法 看護手順
1) 栄養剤の室温・適温を確かめる。
2) 栄養剤をイリゲーターに移しチューブの先端まで満たしておく。
3) 患者を座位またはファーラー位にする。右側臥位で行う場合には、上半身を少し起こす。
4) 吸引して、胃内容物を確認する。
5) 微温湯を注入し、スムーズに注入できることを確認する。
6) 周囲から漏れないことを確認する。同時に、胃瘻チューブが抜けていないか確認する。よければ、内服薬を簡易懸濁法にて注入する。
7) 胃瘻チューブとイリゲーターを接続して滴下量を調節する。
8) 栄養剤の投与が終了したら、微温湯でスムーズに注入できるまでフラッシュする(60〜100ml)。
9) 注入が全て終了したら、クランプし接続をはずす。
10)キャップを閉める。
11)注入終了後30分以上は同じ体位を維持させる。
12)1日1回は胃瘻チューブ内に酢水(10倍希釈)を通すと、チューブの汚れによる閉塞を予防できる。

● PEG栄養法スキンケア
<挿入から1週間>

1) 挿入部の観察。
2) 挿入部の洗浄(微温湯と石鹸)。
3) チューブを回転させ皮膚とチューブのストッパー(外バンパー)が多少ゆるみを持っていることを確認する。
<1週間以降>
1) 挿入部の消毒は微温湯と石鹸で行う。またh、微温湯で湿らせたガーゼで清拭する。
2) チューブストッパーの位置は毎日少しずつ変えて皮膚に接触する位置をずらす。
3) シャワーは1週間を目安にする。入浴は2週間を目安に挿入部の感染がないことを確認して許可する。
4) シャワー、入浴のときは胃瘻部に何もあてなくてよい。
5) シャワー、入浴後は乾いたタオル、ガーゼでよく拭き自然乾燥させる。
6) 胃瘻挿入部の消毒は基本的には不要。

● 名古屋記念病院 PEG管理の5つの予防

1) 事故抜去の予防
時に上肢の抑制、ミトン型手袋の使用
2) 誤注入、誤接続の予防
カテーテルチップの使用
3) 誤嚥の予防
体位の工夫
呼吸音、逆流音、呼吸状態、SpO2の確認
注入前、注入中、注入後の口腔内の確認と口腔ケア
固定部の長さのチェック(注入前毎回)
必要と思えば迷わずX-P
4) 感染・下痢の予防
5) 皮膚、鼻粘膜トラブルの予防
スキンケアと絆創膏の位置を変える

名古屋記念病院におけるPEG管理の提言

1. PEG不要の患者(食事が何とかできる)には、PEGが廃用 症候群の原因になる可能性があります。
必要な食事量の3割摂取できている患者さんにPEGを作成した場合に、食事の摂取を継続し、さらに嚥下訓練も継続すれば問題ありませんが、多くの場合 に安全優先や介助者の都合でPEG栄養が優先されると、患者さんは食事の意欲をなくしていきます。高齢者は多くの場合、食事をとるということが日常生活の メリハリにつながっていることが多く、PEGの強制栄養にて食事への意識が薄れていくと、気力も低下していきます。これが、廃用症候群につながっていきま す。
われわれは、全く食事への興味のない高齢の患者さんには、先ずPEGの適応があるかどうかの検討からご相談します。しかし、前述のように、少しでも食 事のとれている患者さんには、食事摂取の継続を条件、できればPEGがいずれは不要になることを目標としてのPEG作成を勧めています。

2. PEG造設の合併症は時に致命的となり、非常にリスクが ある治療です。また、決して予後は良好ではありません。

3. 認知症患者へのPEGの適応については、議論があります。
多くの国内、国外の論文等にて、PEGの合併症や術後30日以内の死亡率などが公表され、決して安易な手術でないことが確認されています。また、認知 症の高齢患者におけるPEGの治療成績や長期予後は、経鼻胃管栄養などと比較しても決して良好でない可能性も示唆されています。特に、高齢になればなるほ ど、栄養状態が不良であればあるほど、基礎疾患が重症であればあるほど、さらに、在宅ケアにできない入院継続が必要な患者ほど、予後不良という結果がでて います。したがって、これらのことを十分確認したうえでのPEG造設の決定およびインフォームド・コンセントが重要と考えています。

参考文献:
・ David Casarett, Jennifer Kapo, Arthur Caplan: Appropriate use of artificial nutrition and hydration-Fundamental principles and recommendations-. N Engl J Med. 2005 Dec;353(24)::2607-10.
・ To the Editor: Appropriate use of artificial nutrition and hydration. N Engl J Med. 2006 March;354(12):131-2.
・ Ina LI.: Feeding tubes in patients with severe dementia. American Family Physician 2002 April ; 65(8):1605-10.
・ Thomas E, Colleen Christmas, Kathy Travis: Tube feeding in patients with advanced dementia 1999 Oct ; 282(14):1356-70.
・ Murphy LM, Lipman TO.: Percutaneous endoscopic gastrostomy does not prolong survival in patients with dementia. Arch Intern Med. 2003 Jun; 163(11):1351-3.
・ Janes SE, Price CS, Khan S.: Percutaneous endoscopic gastrostomy: 30-day mortality trends and risk factors. J Postgrad Med. 2005 Jan-March; 51(1):23-8.
・ Sunders DS, Carter MJ, et al.: Survival analysis in percutaneous endoscopic gastrostomy feeding: a worse outocome in patients with dementia. Am J Gastroenterol. 2000 Jun; 95(6):1472-5.
・ Shah PM, Sen S, et al.: Survival after percutaneous endoscopic gastrostomy: the role of dementia. J Nutr Health Aging. 2005 Jul-Aug; 9(4):255-9.
・ Lang A, Barden E, et al.: Risk fantors for mortality in patients undergoing percutaneous endoscopic gastrostomy. Endoscopy. 2004 Jun;36(6):522-6.

4. PEGの造設・管理は、一貫した手順で行われれば、合併症が減少できます。そのためには、PEGという治療法を熟知することが不可欠です。