Ⅲ. 経腸栄養も全うすること(後半)

3. 胃瘻・腸瘻による在宅経腸栄養法(HEN)の管理

経口摂取が困難で十分な栄養補給が困難な状況が4-6週間以上継続する患者には、胃瘻・腸瘻からの経腸栄養投与が必要となります。

1)胃瘻(PEG)栄養の基礎

PEGの利点(経鼻胃管との比較)

・ チューブによる違和感や苦痛がない。

・ 胃噴門機能を悪化させない。

・ 位置異常や誤挿入による肺炎や窒息がない。

・ 事故抜去が少ない。

・ 在宅管理が容易。

・ 嚥下リハビリが可能

PEGの欠点(経鼻胃管との比較)

・ 造設に専門的設備と技術が必要。

・ 造設や交換時に重篤な合併症がある。

・ 瘻孔周囲の漏れやチューブ・トラブルなど、特殊な合併症がある。

PEGの適応

(1)経腸栄養アクセスとして

・脳血管障害、痴呆などによる自発的な摂食意欲の障害

・神経筋疾患などによる嚥下機能の障害

・頭部、顔面外傷による摂食障害

・食道・胃噴門部病変による経口摂取障害

・長期の栄養補充が必要な炎症性腸疾患

・誤嚥性肺疾患の予防と治療

(2)誤嚥性肺疾患を繰り返す場合

・経鼻胃管留置に伴う誤嚥

(3)減圧目的

・減圧ドレナージとしての適応

PEGの禁忌と要注意例

・内視鏡が通過困難な咽喉頭、食道、胃噴門部の狭窄

・大量の腹水貯留

・極度の肥満

・著明な肝腫大

・胃の潰瘍性病変や急性粘膜病変

・胃手術の既往

・横隔膜ヘルニア

・高度の出血傾向

・全身状態不良で予後不良と考えられる例

・消化管吸収障害

* PEG困難症例に対しては、手術的に開腹で作成(達人は局所麻酔でも作成可能)、小腸瘻(内視鏡的PEJや回復手術)、PTEG(経皮経食道胃管挿入術)もあります。さらに、筆者が行っていたCTガイド下穿刺およびPEG造設は、非常に安全に作成できます(http://www20.atpages.jp/hospynst/?p=287)。いろいろな工夫で、PEG困難症例でも、経腸栄養をあきらめないように検討することも重要です。

PEGカテーテルの選択

 <バンパー型>

利点: 耐久性が高い

事故抜去の可能性が低い

交換の頻度が少ない(46か月で交換

経済性にすぐれる

欠点: 交換が患者に苦痛

交換手技が難しい

 <バルーン型>

利点: 交換が容易、苦痛がない

欠点: 耐久性に劣る(バルーンの破裂よりも、バルーンの収縮困難が多い)

交換の頻度が多い(23か月で交換

事故抜去の可能性がある(バルーンのしぼみ、破裂だけでなく、抜けやすい)

バルーン内は蒸留水または水道水で、12週間で交換

* 交換トラブルに多い抜去困難は、バルーン型の場合には内容吸引の不十分で、回収のしやすさを確認することで、交換時期の目安になります。筆者の経験では1-2割の回収不良は大丈夫ですが、つぎ足す必要はありません。毎回回収が減っていくようなら、バルーントラブルを考えて交換してください。ちなみに、バルーン内に注入するのは、蒸留水または水道水で、生理食塩水は回収不能の原因になるので注意してください(結晶が閉塞の原因になります)。

 

 <チューブ型>

利点: 接続が容易

チューブトラブルに対して、対応できる。短くなっても、再利用できる。

固形化栄養剤の注入に適する(コネクト部がせまくならない)

欠点: 事故抜去の可能性が高い(ひっぱりやすい、ひっかかる)

外観が悪い

チューブが邪魔でリハビリテーションがしにくい

瘻孔にかかる圧が不均等になりやすい

 <ボタン型>

利点: 事故抜去が少ない

清潔保持がしやすい

外観が良い、リハビリテーションに邪魔にならない

瘻孔にかかる圧が均等

欠点: 長さの調節が困難

接続しにくい、接続部がはずれやすい、アダプターが必要な場合に内腔がせまくなる。

以上から、在宅患者の環境に応じて、PEGカテーテルを選択する。

✓ 重症または患者・家族の希望で、PEG交換入院はできない・しない場合… バルーン型

✓ レスパイト入院も可能な場合… バンパー型

✓ 半固形栄養を行い、事故抜去の可能性が少ない場合… チューブ型

✓ リハビリも可能で自立している場合… ボタン型   など

4. PEG在宅経腸栄養法(HEN)のリスクマネジメント

1)カテーテルトラブル

✓ 遊びの確認(瘻孔皮膚から外部バンパーまでの距離)  2cm

✓ カテーテルの回転  1回転半以上

✓ カテーテルの垂直立ち  こよりティッシュ

✓ カテーテル迷入、位置異常、圧迫性胃潰瘍  上記確認

✓ カテーテル事故抜去  無理しない

✓ カテーテル閉塞  フラッシュ、簡易懸濁法

カテーテルトラブルは、大きく分けてカテーテルの固定法の問題と感染に分けられます。先ず、固定法には瘻孔皮膚から外部バンパーまで距離(遊び)が重要です。一般的には、作成直後の圧迫から緩めていき、だいたい2cmの遊びがあるといいといわれています。この遊びを確保することで、バンパー埋没症候群(詳細はNSTマニュアルのPEG管理マニュアルを参照)や瘻孔感染の予防ができます。

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 次にカテーテルの回転を確認することも重要で、バンパー埋没症候群のみならず、カテーテルの逸脱の予防にもなります。回転数は必ず1回転半以上できることを確認してください(筆者の経験では、1回転以内だとカテーテルのねじれの範囲内のこともあります)。さらに、瘻孔からの横漏れの予防には、こよりティッシュによる垂直立ちが有用です。決して、チューブのサイズを大きくしたり、引っ張って固定などはしないようにしてください。また、さばきガーゼや脱脂綿などを使用すると、糸くずなどがカテーテルにこびりついて感染のもとになりますので、必要有りません。

バルーン型を用いた場合は、バルーンの圧迫による胃粘膜損傷(潰瘍、びらんなど)や迷入による幽門輪閉塞などの可能性もあり、経腸栄養開始前の胃内用前吸引で出血や多量の胃液などが引ける場合は疑ってください。

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カテーテル事故抜去は、可能であればすぐに再挿入しないと、瘻孔が壊れたり、閉鎖してしまい、再挿入が困難と言われており、実際に筆者の経験でも夜間に事故抜去されていて翌朝再挿入困難だった症例の経験もあります。実際の対応は、発見者の職種やスキルにもよりますが、在宅での管理には、筆者はより細い吸引カテーテル(8-12Fr)の無理のない挿入と瘻孔確保を指導しています。吸引カテーテルのような細くて柔らかいものがない場合には、やわらかいヒモなどを挿入しておくと瘻孔確保が可能です。抜けたカテーテルの再挿入は、無理しないことが重要です。

最後に、カテーテル閉塞は、栄養剤や薬剤の残存または細菌感染によるカテーテル内腔の汚染によると言われています。白湯による頻回のフラッシュが有効ですが、ブラシなどでの物理的清掃はカテーテル損傷の可能性があるだけでなく、内腔面に傷をつけてより不純物の沈殿が起こりやすくなるので推奨されません。以前よく使用されていた酢水クランプ(食酢です、決して酢酸ではありません)は、カテーテルの清浄化、感染予防には一定の効果がありますが、閉塞しかけているカテーテルの閉塞予防にはなりません。食酢10倍希釈の基本を守って、より細いカテーテル(12Fr以下)への使用をおすすめします。薬剤による閉塞予防は、粉砕法より簡易懸濁法をおすすめします(http://www20.atpages.jp/hospynst/?p=24)。

2)感染対策

✓ できるかぎりRTHReady-to-Hang)製剤(つなげるだけ、つるすだけで使用できるパック液体・半固形製剤)を使用する。

✓ 経腸栄養剤の希釈はしない。

✓ 経腸栄養剤は、RTH製剤は24時間以内、その他は6-8時間以内に使用する。

✓ 経腸栄養ライン・ボトルは、基本は単回使用

* 実際は、中性洗剤で洗浄後、次亜塩素酸ナトリウムで十分消毒後、さらに十分に乾燥させて再使用する。

* 交換頻度は、汚染・破損時または1(~4)週間ごとが多い。

✓ 瘻孔周囲の皮膚は、石鹸と水道水で洗浄。入浴も可能。

✓ ガーゼ保護は、瘻孔からの漏れがなければ、もちろん不要。

✓ スキントラブル対応

 * 基本はお肌の手入れと同じ、石鹸でしっかり洗浄

 * 不良肉芽はステロイド含有軟膏(リンデロンVクリーム®など)の塗布

   出血や感染を伴う不良肉芽は硝酸銀で焼却することもありますが、皮膚科医にご相談ください(http://www.peg.or.jp/danwa/kako/skin/s-12.html

 * ボタン型の場合は、カテーテル埋没にも注意しましょう。

3)カテーテル交換トラブル

基本は、専用の内視鏡(http://www.peg.or.jp/lecture/peg/product/pegscope/index.html)もしくはガイドワイヤーなどを用いた透視下の入れ替え、さらには胃カメラによる確認が推奨(保険適応あり、経管栄養カテーテル交換法200点)。

<在宅で行えるバルーン型PEGカテーテルの交換の実際>

1. PEGカテーテルの交換は、経腸栄養剤投与直前に行う、または投与終了後2時間以上あけて行う。

2. 交換用カテーテルをセットアップ(バルーンのインフレ―ト・デフレートの確認、内腔の加水、挿入部のゼリー塗布など) *インフレート(ふくらます)、デフレート(しぼませる)

3. 挿入してあるPEGカテーテルから前吸引して胃内容が引ける、栄養剤が大量に引けないことを確認。同時にエアーを注入して、胃内にエアーが入っていくことを聴診で確認する。

4. ブルーハワイシロップで着色した液を50mL、胃内に注入しておく(スカイブルー法)。

5. 筆者は、交換用のカテーテルのセットのガイドワイヤーは使用しない。血管造影用のガイドワイヤー(ラジフォーカス0.035100cm アングル)を使用している。アングルの柔らかい先端をPEGカテーテルから胃内に挿入して、バルーンをデフレートしてPEGカテーテルをガイドワイヤーに沿わせて抜去。引き続き、新しいカテーテルをガイドワイヤーに沿わせて挿入。この際に、ガイドワイヤーが屈曲したり、跳ねたりしないように慎重に挿入していく。新しいカテーテルが十分な深さに挿入されたら、バルーンを既定の量の蒸留水または水道水でインフレートして、ガイドワイヤーを抜去。ガイドワイヤーは使用ごとに滅菌再利用しているが、本来はディスポーザブルなので管理には注意を要します。

6. 挿入した新しいPEGカテーテルから、あらかじめ注入した青色の液体が引けてきたら、再度エアーを十分量注入してエアーの胃内への入りを確認する。

7. PEGカテーテルの回転を1回転半以上確認したら、PEGカテーテルの交換終了。

8. PEGの固定を確認したら、経管栄養開始。しばらく、患者の状態を観察しておく。

<トラブルシューティング> できれば外科医の指導のもとに行ってください。

✓ バルーンの水が引けない(デフレートできない)… 先ず、バンパー埋没症候群になっていないか、バルーンの回転を確認。回転が問題ないなら、PEGカテーテルの外壁に沿って注射器につけた注射針を挿入してバルーンを破裂または穿刺吸引する。この際に、バルーンの水の注入ルートを誤って傷つけないように、気を付ける(注入ルートを目視で確認してできる限り反対側で穿刺を行う)。この際には、バルーン内に注入できるなら、できるだけ蒸留水を注入しておいて、穿刺しやすくかつ破裂しやすいようにすると比較的楽に穿刺できます。

✓ ガイドワイヤーが入らない… PEGカテーテルからできればスカイブルー法を行って一旦抜去。8Frなどの細い吸引カテーテルを無理なく挿入して青色の液体の吸引確認したら、その吸引カテーテルを通してガイドワイヤーを再挿入し、交換。

✓ PEGカテーテルが抜けてしまった、既に抜けていた… 8Frなどの細い吸引カテーテルを無理なく挿入して胃内用が吸引できたら、その吸引カテーテルにガイドワイヤーを挿入して交換。より確実に行うためには、経鼻胃管を挿入して胃内に到達したら、スカイブルー法施行しておいて、胃内容を確認することも推奨されます。

✓ 瘻孔から出血あり… 5分以上PEGカテーテルを引っ張り気味にして圧迫止血します。止血が不確かなら、しばらくPEGカテーテルを開放にして出血が漏れてこないことを確認して使用します。

✓ カテーテルがちぎれた、抜けない、変な手ごたえがあった、胃内に挿入したことが確認できない、栄養剤を開始したら患者が腹痛を訴えるまたはバイタルが変動… 病院に搬送して検査・治療を検討

* 入院でPEGカテーテル交換の場合に注意すること

高齢者は環境適応能力が低下しており、また苦痛などの意思表示が困難、さらには発熱や症状が現れないことがあり、慎重に適応・時期を選択する必要がある。

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5. PEG合併症対策

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1)胃食道逆流

胃食道逆流は、寝たきりで経腸栄養を行っている患者の約2~3割に発生していると言われ、逆流した酸の濃い胃内容が気管支・肺に入ることで重篤な誤嚥性肺炎をきたします。全身状態や意識状態の悪い患者では、胃食道逆流から誤嚥をきたしても必ずしもムセたり、咳をするとは限らず、繰り返す熱発や突然の呼吸障害で発見されることも多いです。

そこで、先ず胃食道逆流のチェックリストをご提案します。前述のように、ムセたり、咳をするというのは、誰でもわかるのですが、このリストのように、看護・介護するスタッフの五感を駆使した確認は非常に有用です。コストがかかりますが、尿糖試験紙を用いた舌または口腔内唾液の糖定性試験も有用とされています。また、最近のガイドラインでは、前吸引と呼ばれる胃内残留量の確認は非常に重要とされています。基本的には、胃内容は30分から遅くても2時間で排出されるはずなので、胃内残量があれば追加投与すると逆流のリスクは高くなります。従って、胃内残量が多ければ、投与中止の検討も必要です。

これらに加えて、胃食道逆流と同様に誤嚥性肺炎の原因となる不顕性誤嚥(サイレント・アスピレーション)にも要注意です。多くは、患者が気づかないうちに口腔内の唾液や遺残物が気道内に垂れ込む、または誤飲することです。これらは、適切な口腔ケアを行うことで、約40%発症が予防できるとの報告もあり、咳嗽反射の促進剤も有効です。

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次に、対応策を提案します。先ず、体位と注入速度が重要で、胃瘻の場合は間歇投与や短時間投与により胃の拡張が強くなり、逆流のリスクが高まるので、より投与速度に注意する必要があります。在宅で経腸栄養を行う患者は高齢者や難病などで消化管機能の低下や胃の変形が強いことが多く、安全な体位は頭部挙上です。その角度は、患者の意識状態や全身状態にもよりますが、半座位(30-45度)が推奨され、液体栄養剤であれば注入後30分は体位保持が必要です。右側臥位は、必ずしも胃食道逆流の予防には有効ではありません。半固形化栄養剤を使用する場合には、必ず水分含有量をチェックし、必要な水分補給に留意してください。両者に共通することですが、胃排出速度の遅い経腸栄養剤より先に水分を前投与することで、胃拡張が軽減され逆流のリスクが軽減される可能性もあります。最終的には、これらが全て無効の場合に幽門後ルートと言って、空腸内への経腸栄養剤の投与が推奨されます。PEG-Jとは、胃瘻のチューブを空腸内に留置できるチューブに交換して空腸栄養を行う方法で、比較的簡便で安全な方法です。しかし、内腔がせまくなること、胃内に自然脱落していることが比較的多いので注意が必要です。

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対応策は、咳嗽反射の維持目的でのサブスタンスPと食道―胃蠕動促進薬の利用です。サブスタンスPとは、神経伝達ペプチドで咽頭や気管の神経に蓄えられていて、これらの反射を起こすきっかけとなるもので、降圧薬や漢方薬で増加することが知られています。さらに、辛子の成分であるカプサイシンや黒コショウ、メンソールなども刺激になり、嚥下改善用に市販されているものもあります。胃蠕動促進薬とともに、無理のない範囲で併用することで胃食道逆流が改善する可能性もあります。

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2)下痢・腹痛

在宅の経腸栄養における中断または中止理由では、胃食道逆流と同じように問題になるのが、下痢・腹痛です。下痢・腹痛の原因のチェックポイントは、感染、患者、経腸栄養剤の「3つのK」です。「感染」の注意点は、偽膜性腸炎の原因とされるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridim difficile)で、以前抗菌薬の使用によるMRSA腸炎とされていた難治性の腸炎もこの細菌の重複感染の可能性が指摘されていて、長期間の経腸栄養施行患者または入院歴のある患者の下痢では、このトキシン(CDトキシン)の確認は必須です。次の「患者」の要素には、消化吸収能や併用薬剤だけでなく、牛乳蛋白アレルギーなどのアレルギーの要素もあるので要注意です。

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「経腸栄養剤」は、温度、投与速度、感染管理は重要です。よくある間違いは、消化吸収能が低下している下痢を考えて安易に成分栄養剤を使用することです。成分栄養剤のエレンタール®使用の場合は、他の栄養剤に比較して浸透圧が倍近くあることと、脂肪成分がほとんど含まれていないため、長期使用で必須脂肪酸欠乏に注意が必要です。最近、そのまま使えるRTH(Ready-to-Hang)製剤を使用する機会が増えて器具関連の感染は減少していますが、これらの細菌感染は非常に重篤になるので調整後6~8時間以内の投与などは厳守するべきです。幽門後と呼ばれる逆流対策や胃のない患者への投与では、投与速度によってダンピング症状もきたすので、注意してください。

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マル秘レシピは、プレバイオティクスと呼ばれる水様性食物繊維の併用です。私たちは、無味無臭で経腸栄養剤や食事に混合しやすいサンファイバー®をよく利用します。成功レシピで対応できない場合でも、かなりの確率で有効ですので、是非お試しください。さらに、プロバイオティクスである乳酸菌などの併用(シンバイオティクス)により相乗効果も期待でき、免疫能の改善や腸管機能の向上にも寄与します。

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在宅経腸栄養法成功レシピ その他

在宅経腸栄養患者は、正確な体重測定などが困難な場合があり、必ず患者の体を見て、触って、つまんで、皮膚のハリや浮腫の有無を確認し、適正な水分管理を心がけましょう。気候や室内環境によって、同じ水分量を投与していても必ずしも適正とは限りません。下痢を合併したり、発熱があるなどの場合は、水分管理は非常に慎重な対応が必要です。また、褥瘡や創傷からの浸出液などが多い場合にも注意が必要です。

次に、基礎疾患や急性疾患(肺炎や尿路感染など)の合併時には、水分バランスや栄養必要量は大きく変化するので、アセスメントを適宜行い、慎重なモニタリング(体重変化、浮腫、排便・排尿状況など)も重要になります。

在宅経腸栄養患者では、過剰栄養もよくあります。特に、寝たきりの高齢患者は、経腸栄養導入時の栄養量を継続すると肥満が問題となることがよくあります。活動量の低下と筋肉・脂肪の減少による相対的必要熱量は低下してくるのと、急性疾患の回復期と完全な慢性期では必要熱量は明らかに低下するからです。うっかりしていると、肥満が強くなり、体位変換が困難になるだけでなく、肝・腎機能障害をきたしてくる場合もあります。

6. 在宅経腸栄養法における患者、家族への指導内容

・ 在宅経腸栄養の意義と必要性

・ 経鼻チューブの自己挿管法(間欠法、夜間HENの場合)

・ 栄養剤の調整法、保存法

・ 注入バッグとチューブの接続法

・ 注入ポンプの操作方法

・ 栄養剤の投与方法、注入速度

・ バッグ、チューブの洗浄法、消毒法

・ 合併症の知識および対処法、アラーム時の対応

7. PEG栄養の注入手技

1) 患者の体位を整える(仰臥位、30-45度以上ギャッジアップ)。

必ずしも右側臥位は逆流予防にはならない。

2) 胃内容物を吸引し、食物残渣の有無を調べる。200mL以上あれば延期。

白湯を注入し、スムーズに注入できて、患者さんに異常がないこと、周囲よりの漏れのないことを確認。

3) 栄養剤の温度(室温で可)を確かめて、イルリガードル、経腸栄養バッグに流し込み、ルートを満たす。

できればRTH(Reay-to-Hang)製剤を感染対策として使用し、ルートに接続する。

4) 内服薬がある場合、先に簡易懸濁法にて注入しておく。

5) ルートとチューブを接続する。

6) クレンメで滴下を調節する(医師指示の速度に調節)。

もしくは経腸栄養ポンプを用いて注入。

7) 注入中も患者観察を継続。

注入速度: 胃200-500mL  空腸100mL 慣れてくれば、徐々にアップも可能

8) 全量注入後、患者の状況に応じて追加水分量の白湯をカテーテルチップまたはイルリガードル、経腸栄養バッグで注入する。PEGカテーテルを十分にフラッシュしておく(60~100mL)。

9) 終了後は、液体栄養剤の場合、30分間以上同じ体位を維持させる。

半固形栄養剤を用いた場合は不要。

在宅経腸栄養の素晴らしいところは、栄養療法に加えて、患者や家族の思いや工夫が自由な発想で可能なことです。私たちの患者でも、家族の希望で意識のない患者に認知機能改善効果のあるココアを追加したり、若者の交通事故後の遷延性意識障害の患者に大好きだったヨーグルトを半固形栄養剤と一緒に混合して投与したりと、すごく愛情を感じる治療法です。そのためにも、安全な投与のためのマル秘レシピをご活用いただければ幸いです。