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2011.10.11栄養学習会(神経因性食思不振症)

神経因性食思不振症

疫 学:

患者数は欧米の先進諸国では神経性食欲不振症は、思春期~青年期女性の4~5%と報告されている。日本でも1980年代から増えており、神経性食欲不振症について、厚生労働省が1993年に200~300床以上の病院へのアンケートという方法で行った調査では、13~29歳の女性10万人あたりの有病率は14.6~21.8人であったが、地域の学校を対象に摂食異常調査表によって行った調査では高率で、京都市内の中学、高校、短大、大学生での調査では、神経性食欲不振症は200~600人に1人と いう結果が得られた。

病 因:

中枢性摂食異常症は、ストレスを適切に処理する能力が未熟なために発症する心身症である。思春期にありがちな挫折体験を適切に処理できないときに、自分の体型や体重に強い関心を持ち、ダイエットにのめりこみ、達成感や優越感や周囲の関心という誤った代償を得ている。発病を増長しやすい要因として、患者の性格傾向、養育環境や家族関係、教育や文化の影響が指摘されてきた。多く見られる性格傾向は完璧主義と強迫性と柔軟性のなさである。物事の完全性を求めるあまり挫折感を経験しやすく、他人の評価に敏感であるが自己評価は低いため、物事をストレスと受け取りやすく、ためやすい。家族関係では、親が過保護・過干渉で患者の自主性の発達を妨げ、家庭が安らぎの場にならないような家族内葛藤があることが多い。 1970年代以降の患者の増加の大きな要因として教育と文化の影響がもっとも大きい。若い女性にとって「やせ」が自信となるような傾向は、主としてマスコミやファッション業界が作り出した。他のことで挫折を感じた若い女性は、数字で表せて容易に他人の評価をえられ、のめりこめるダイエットに飛びつきやすいし、体型や体重で自分の価値を見出そうとする。ストレスが摂食中枢に影響を及ぼしやすい遺伝素因があると考えられる。神経性食欲不振症ではしばしば同一家
族内に複数例の発症がある。

診断基準:神経性食欲不振症のプライマリケアのためのガイドライン(2007年)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「中枢性摂食異常症に関する調査研究班」より)

本症は、主に10~20代の女性において、多くはその年代に特有の心理的ストレスに対処できないことを契機に、やせ願望や肥満恐怖に基づく食行動の異常のためにやせを来たす疾患であり、その程度に応じて様々な合併症を呈する。表1に厚生労働省研究班で作成された診断基準を示す。標準体重として国際的にはBMIが用いられることが多いが、表1の診断基準では、日本人の体型を考慮して平田の方法などが推奨されている。病型には制限型(小食)とむちゃ食い/排出型(やせを維持するための過食後の自己誘発性嘔吐や下剤・利尿剤の乱用)がある。

神経性食欲不振症の診断基準(厚生労働省特定疾患·神経性食欲不振症調査研究班平成元年)

1. 標準体重の20%以上のやせ

2. 食行動の異常(不食、大食、隠れ食いなど)

3. 体重や体型についての歪んだ認識(体重増加に対する極端な恐怖など)

4. 発症年齢:30歳以下

5. (女性ならば)無月経

6. やせの原因と考えられる器質性疾患がない。

(備考)1、2、3、5 は既往歴を含む。(例えば、-20%以上のやせがかつてあれば、現在はそうでなくても基準を満たすとする。)6 項目すべてを満たさないものは、疑診例として経過観察する。

1 ある時期にはじまり、3 ヶ月以上持続。典型例は-25%以上やせている。-20%は一応の目安である。(他の条項をすべて満たしていれば、初期のケースなどでは、-20%に達していなくてもよい。)米国精神医学会の基準(DSM-Ⅳ-TR)では-15%以上としている。標準体重は15 歳以上では身長により算定(例、平田の方法)するが、15 歳以下では実測値(例、平成12 年度学校保健統計調査報告書)により求める。

平田法 身長 標準体重

160cm以上 (身長cm-100)× 0.9

150~160cm (身長cm-150)× 0.4 + 50

150cm以下 (身長cm-100)

2 食べないばかりでなく、経過中には過食になることが多い。過食には、しばしば自己誘発性嘔吐や下痢利尿剤乱用を伴う。その他、食物の貯蔵、盗食などがみられる。また、過度に活動する傾向を伴うことが多い。

3 極端なやせ願望、ボディーイメージの障害(例えば、ひどくやせていてもこれでよいと考えたり、肥っていると感じたり、下腹や足など体のある部分がひどく肥っていると信じたりすること)などを含む。これらの点では病的と思っていないことが多い。この項は、自分の希望する体重について問診したり、低体重を維持しようとする。患者の言動に着目すると明らかになることがある。

4 まれに30 歳をこえる。ほとんどは25 歳以下で思春期に多い。*

5 性器出血がホルモン投与によってのみ起こる場合は無月経とする。その他の身体症状としては、うぶ毛密生、徐脈、便秘、低血圧、低体温、浮腫などを伴うことがある。ときに男性例がある。

6 統合失調症による奇異な拒食、うつ病による食欲不振、単なる心因反応(身内の死亡など)による一時的な摂食低下などを鑑別する。**

* 最近の傾向では30 歳以上の発症例も多く見られる。

** やせをきたす器質性疾患には下垂体・視床下部腫瘍、慢性炎症性腸疾患、感染症、慢性膵炎、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などがある。

病 態:

若い女性が,精神的要因のために拒食するもので,るいそうと無月経を主訴とする。

患者の95%は女性で,無月経を伴うことが多い。

好発年齢は12~25歳で,思春期に多い。診断基準は30歳以下。

標準体重の-20%以上のやせが,3ヵ月以上続く。

一般に患者は病識に乏しい。体重や体型に体するゆがんだ認識がある。

行動は活動的であることが多く,病識がなく比較的活発な肉体的行動を伴うのが特徴である。

隠れ食など食行動の異常を伴う。盗食,多食,不食,様々な病態を呈する。

頻度としては,都市部に多い。

症 状:

るいそう,無月経,過度に活動する傾向がある。

うぶ毛の増加を認める。下垂体機能低下症との鑑別の一つである。恥毛・腋毛は正常であり,多毛はない。ときに頭髪の脱毛をみる。

血圧低下,体温低下を認める。徐脈傾向を示し,安静時徐脈がみられる。

便秘を伴うことが多い。下腿などに浮腫が出現しやすい。

しばしば,体重を減らすため,下剤や利尿剤を乱用する。また,自己誘発性

嘔吐をみることがある。

ときに自殺企図を示す。

合併する異常

本症患者の身体的合併症及びその頻度(外来/入院)

1. 60/分以下の徐脈 (38/40)

2. 36℃以下の低体温 (31/15)

3. 収縮期血圧90mmHg 以下の低血圧 (36/23%)

4. 骨量減少(51/66),骨粗鬆症** (26/24)

5. 貧血 (28/42),白血球減少 (55/47),血小板減少 (23/14)

6. 低ナトリウム血症 (3/13),低カリウム血症 (13/22)

7. ALT 上昇 (38/35)AST 上昇 (47/29)

8. 低血糖(70 mg/dl 以下) (26/26)

9. 歩行困難や起き上がれないなどの運動障害 (2/7)

10. 意識障害 (1/7)

*若年健常女性の平均値の80%以下 **若年健常女性の平均値の70%以下

(注)外来例の合併症頻度は2000~2004年間の東京女子医科大学内分泌疾患総合医療センター内科初診246例、入院例のそれは2003~2006年間の九州大学病院入院94例のデータに基づく。

検 査:

下垂体前葉ホルモンの分泌は正常~高値であることが多い。

血中成長ホルモンの上昇があり,GHの基準値は上昇する。しかし,ソマトメジンが低値のため,作用は発現されていない。

LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)の低下。一般に血中ゴナドトロピンは低いが,LH-RHテストの反応はよい。

TSHが遅延型の分泌反応を示すことが多く,TRHに対する反応は異常を示す。

T3が低下し,血中reverseT3値の上昇があり,いわゆる飢餓状態である。ただし,甲状腺機能は正常である。

血清コレステロール値は高値。貧血(鉄欠乏性)、白血球減少、低蛋白血症、低K血症
治 療:精神療法が治療の基本となる。他に,薬物療法としてクロルプロマジン,食事療法などがある。

1.精神療法

カウンセリングは,恋愛問題など,自己の葛藤となる問題点を見つけるため,思春期の患者ではとくに重要。

BMIが13~17の場合には、家族とともに粘り強く治療への説得と介助が有用。しかし、BMIが12を切ると、精神症状が強く入院管理がベター。

患者の話を傾聴し,受容的に対応し,よい治療者-患者関係を作る。

行動療法,特にオペラント条件付け法が有効である。体重が増えれば,外泊を増やすなどの「報酬を患者に与える方法」をオペラント条件付けといい,それを中心として「行動療法」が有用とされている。また,その報酬を自分で決めさせることを「自己強化療法」という。

心療内科的治療としては,認知療法,家族療法も有効である。体重や体型に対する過った認識を理解させる治療を認知療法といい,家族全体に対して行うのを家族療法という。他に芸術療法,箱庭療法も有効。

2.薬物療法

性格の硬い傾向があれば,クロルプロマジン(ウインタミン)を用いる。

強迫傾向があれば,bromazepam(セニラン、レキソタン)を用いる。

うつ状態があれば,amitryptyline(トリプタノール)を用いる。

薬物療法として,食欲の増進にはsulpirido(ドグマチール)が有効である。

3.栄養療法

1. まず、経口摂取を促し、これが困難な場合には経鼻胃管による経腸栄養。

2. 全身状態が悪い場合には静脈栄養。

3. 投与熱量は30kcal/kg/日より開始。

4. 体重増加を確認しながら、40~50kcal/kg/日まで増量(3~4日おきに100~200kcalずつ)。

5. 目標体重は標準体重の80%。

6. Refeeding syndromeに気をつける。

7. ビタミン、微量元素、必須脂肪酸欠乏に気をつける。

食事療法は,1,000cal程度の小カロリーから始める。経口栄養剤の併用も有用である。

摂食量が不十分な場合には、間食を勧める。

極端な低栄養,電解質バランス異常があれば,中心静脈高カロリー輸液や経鼻栄養を患者とよく相談した上で行う。

患者が「食べない」ことに関しては,反発や患者の依存心をなくすため,無関心を装うのがよい。

極度な症状があれば,入院する必要がある。

神経性食思不振症の入院の適応

① 30%以上のやせが3ヵ月以上続く  ⑥ 激しい多食傾向

② 重篤な電解質異常          ⑦ 重篤なうつ状態

③ 極度の徐脈(40以下)         ⑧ 自殺企図

④ 低血圧(収縮期70mmHg以下)   ⑨ 明らかな精神病

⑤ 低体温(36℃以下)        ⑩ 悪い家庭環境

* 緊急入院の適応指針

本症の死亡率は6~20%で、他の精神疾患より高いので、救命のために緊急入院の適応の有無の判断をする。主な死因は内科的合併症、飢餓、自殺である。次の場合には緊急入院が必要であり、内科病棟での積極的な治療が望ましい。この段階では向精神薬、カウンセリングなどによる治療よりも全身状態の改善が最優先される。

1. 全身衰弱(起立、階段昇降が困難)

2. 重篤な合併症(低血糖昏睡、感染症、腎不全、不整脈、心不全、電解質異常)

3. 標準体重の55%以下のやせ

重篤な身体合併症である意識障害.運動障害の発生頻度は入院時の体重が標準体重の55%以下では40%と増加し、やせの程度は意識障害.運動障害の合併を予測する主要な因子である。重ねて説得しても入院治療に応じない場合は、家族に精神科への相談と入院の必要性を説明し、入院させる。

予 後:

神経性食欲不振症は、末松らが行った1984年の1011例の2年後の転帰調査では、治癒44%、が軽快39%、不変14%、死 亡3%であった。約25%が慢性の経過をたどるが、死因の多くは衰弱死、自殺、不整脈、感染症とされる。適切な治療を受けないまま、約10年を過ぎて重症、難治化して来院する例もある。通常は、体重が標準体重の85%以上に回復して6ヶ月維持できれば回復と判断する。

Refeeding syndrome guidelines

Refeeding syndrome

<病態> 

・ 飢餓状態では、代謝状態は異化に傾いており、主に脂肪とタンパク質を分解してエネルギー源としており、基礎代謝量も20~25%低下している。この状態が続くと、筋肉や脂肪組織がケトン体や遊離脂肪酸に分解されて、エネルギーとして利用される。このため、ケトン体の血中レベルの増加により、脳はエネルギーの主燃料をグルコースからケトン体へ変更し、筋蛋白の崩壊を防ぐために肝臓では糖新生が抑制される。この間、体外からの補給がなく、細胞内ミネラルが消耗される。体内のミネラルを維持するために、腎排泄も減少する。

・ 栄養投与の再開による血糖回復のために、インスリンの上昇とグルカゴンの減少がおこり、糖質・たんぱく質・脂質は全て分解される傾向となる。この際に、リンやマグネシウム、補酵素としてビタミンB1が消費される。具体的には、インスリンの刺激により、カリウムはNa-K ATPase チャンネルを通じて細胞内へ、さらに糖質も細胞内へ取り込まれる。同時に、マグネシウムもリンも細胞内へ取り込まれ、浸透圧にて水分も移行する。これらによって、血中のリン、マグネシウム、カリウムは低下し、電解質バランスの不均衡や基礎代謝の異常をきたす。

・ リンは細胞膜の構造維持に不可欠で、多くの細胞内の酵素や補酵素の構成成分である。さらに、エネルギーとしてATPの形で貯蔵・利用され、Hbにおける酸素運搬にも関与し、腎臓における酸-塩基バランスの緩衝にも重要である。また、マグネシウムもリンと同様にATPの産生に関与し、DNA、RNAやリボソームの構造維持に必要。

参考: 

同化と異化

栄養とは、栄養素を消化吸収し、体構成成分に合成し(同化:アナボリズムanabolism)、また分解(異化:カタボリズムcatabolism)してエネルギーを得る過程と定義できる。

・同化

 グルコースはグリコーゲン合成され、肝臓に72g(300kcal)、筋組織に245g(1000kcal)貯蔵

   血糖維持には、主に肝臓のグリコーゲン利用(12~18時間の絶食で枯渇)。次にタンパク質を異化して利用する。

   筋組織のグリコーゲンは、筋組織の解糖(エネルギー産生)に利用

   脂肪組織は10万kcal貯蔵、過剰な糖質は脂肪酸合成に向かう

   タンパク質には、予備はない

・異化

 すべての栄養素はアセチルCoAに代謝され、クエン酸回路にてATP(エネルギー)産生

   炭素・・・肺から二酸化炭素として排出

   水素・・・水分として尿から排出

   窒素・・・肝臓で尿素回路により尿素へ、腎から尿中へ排泄

Refeeding syndromeの病態

低リン血症

  心血管系…心不全、不整脈、低血圧、心原性ショック

  腎臓系…急性尿細管壊死、代謝性アシドーシス

  筋骨格系…横紋筋融解、脱力、筋痛、呼吸障害(横隔膜障害)

  神経系…せん妄、昏睡、失神、痙攣

  内分泌系…低血糖、インスリン抵抗性、骨軟化症

  血液系…溶血、血小板減少症、顆粒球機能異常

低K血症

  心血管系…低血圧、心室性不整脈、心停止、徐脈、頻脈

  呼吸器系…低換気、呼吸切迫、呼吸不全

  筋骨格系…脱力、全身倦怠、筋攣縮

  消化器系…下痢、嘔気、嘔吐、食思不振、麻痺性イレウス、便秘

  内分泌系…代謝性アルカーロシス

低Mg血症

  心血管系…発作性心房性・心室性不整脈、再分極性交互脈

  呼吸器系…低換気、呼吸切迫、呼吸不全

  神経筋系…脱力、全身倦怠、筋痙攣反射(トルソー、クボスティック)、運動失

調、めまい、知覚異常、幻覚、うつ、痙攣

  消化器系…腹痛、下痢、嘔吐、食欲低下、便秘

  その他…貧血、低Ca血症

低Na血症

  心血管系…心不全、不整脈

  呼吸器系…呼吸不全、肺水腫

  腎臓系…腎不全

  筋骨格系…筋攣縮、全身倦怠、浮腫

ビタミンB1欠乏症

  神経系…ウエルニッケ脳症

  心血管系…慢性心不全、乳酸アシドーシス、脚気心

  筋骨格系…筋力低下

 

Guidelines for the prevention and treatment of adult patients at Risk of developing refeeding syndrome

 

ステップ1: 初期評価

Refeedeing syndromeのリスクにある患者の評価と同定

                  ↓

絶対適応:

✓ 慢性栄養不良の既往

✓ 急性の体重減少(意図的なものを除く)または病気になる前の体重から10%以上の体重減少

✓ 7~10日間以上の絶食または摂食不良

相対適応:

✓ 合併症(例えば、感染症、手術、褥瘡、がんなど)

✓ ストレス(例えば、術後、ICU患者など)

✓ 遷延した飢餓

✓ 神経因性食思不振症

✓ 慢性アルコール中毒

✓ 電解質異常(カリウム、リン、マグネシウム)、長期制酸剤・利尿剤内服

✓ 高齢者

その他…脳卒中、炎症性腸疾患、慢性膵炎、短腸症候群、HIV、DMコントロール不良

          ↓                  ↓

        リスクあり              リスクなし

       栄養士に相談             通常の栄養管理

          ↓

問診及び栄養評価  

    ↓

栄養評価:

1. 体重

2. 体重減少率

3. 食事摂取状況

4. 栄養不良の原因 ―経口または経腸栄養の障害、嚥下困難、腸管機能不全など

          ↓

モニター:

1. 心拍数、血圧、呼吸数、SpO2、意識レベル ― 初期3日間は6時間ごと

2. 体温

3. 心電図モニター(不整脈、カリウムやリン異常)

 

* BMI<16は強く疑う、BMI<18.5は疑う必要あり

* 3~6カ月で15%超の体重減少は強く疑う、10%超は疑う必要あり


ステップ2. 初期管理

Refeeding syndromeの初期管理

                   ↓

1. 敗血症の確認と治療

✓ 敗血症は臨床的に明らかでなくても急激な状態の悪化の説明がそれでつく

✓ 敗血症のスクリーニングは怠らない

✓ 広域スペクトラムの抗菌薬の使用をためらわない

                   ↓

2. 適切な輸液管理

✓ 循環血液量の管理を厳密に行う(心拍数や水分バランスのチェック)

  栄養不良患者は、輸液負荷にて心不全に容易に陥りやすい(例えば、1日2L以上など)

✓ 輸液が必要なのは、経口摂取が足りるまでの初期3日間

✓ 明らかな脱水があっても、初期24時間は1~2Lの輸液にて反応をみて増減

✓ 総輸液量の目標は、30mL/kgを最大とする(通常1.5L/日以下)

✓ 少なくとも6時間ごとに、血圧、脈拍、呼吸数をモニタリングし、心不全を予防

                   ↓

3. 電解質異常の補正

✓ 直近48時間の以下の血中濃度を把握

   BUN、Na、K、Cl、P、Ca、Mg、肝機能、血算

✓ 電解質異常の原因の検索

✓ 心電図のチェック(K < 3.5mmol/L、P < 0.8mmol/L)

✓ 電解質の補正(K < 3.5mmol/L、P < 0.8mmol/L、Mg < 0.5mmol/L、Ca < 2.0mmol/L)

✓ 腎機能障害患者に注意

✓ 特に重症の電解質異常(K < 2.5 mmol/L、P < 0.32 mmol/L、Mg < 0.5mmol/L)では、栄養補給のみでさらに悪化する可能性があり、注意を要する

                   ↓

4. 血糖コントロール

✓ 血糖チェックを1日1~2回以上行う

✓ 低血糖には5%ブドウ糖液にて補正する

                   ↓

5. 体温コントロール

✓ 少なくとも1日1回は体温(できれば深部体温)を測定

✓ 栄養不良患者の多くが低体温を合併、温めた輸液、ドリンクや毛布などで対応

                   ↓

6. ビタミン・微量元素欠乏への対応

✓ ビタミンB1を100mg1日3回、10日または改善するまで継続投与、開始は栄養投与の少なくとも30分前

✓ 総合ビタミン剤、微量元素製剤の適切な補給

ステップ3. Refeeding syndrome患者への栄養補給開始

ゆっくりと栄養補給開始

                   ↓

✓ 投与カロリーは、最初24時間は10kcal/kg/日で開始し、よりリスクの高い患者はさらにゆっくり、少なめに投与

✓ 水分バランスに慎重に!

投与推奨メニュー:

1日目    10kcal/kg/日 (BMI<14または15日超の絶食は、5kcal/kg/日)

       糖質 50~60%、脂質 30~40&、たんぱく質 15~20%

        PO42- 0.5~0.8mmol/kg/日

        K+ 1~3mmol/kg/日

        Mg2+ 0.3~0.4mmol/kg/日

        Na+ <1mmol/kg/日

        水分バランス 0

        ビタミンB1+ マルチビタミンを栄養補給開始の30分前に1回

2~4日目   5kcal/kg/日ずつ増加

        ビタミンB1 100mg 1日3回 + マルチビタミン

5~7日目   20~30kcal/kg/日

        電解質、ビタミン、微量元素、肝機能のチェック

        水分バランス 0

        7日目より鉄補給考慮

8~10日目  30kcal/kg/日以上または必要投与量フル

                   ↓

モニタリング(少なくとも3日間)

                   ↓

✓ 血中BUN、Na、K、Cl、補正Ca、P、肝機能を最低1日1回

✓ 血中Mgを初期は3日おき、落ち着けば1週間に1回

✓ 水分バランス毎日

✓ 血糖測定を1日1~2回以上

✓ 体温、脈拍、呼吸数、SpO2毎日

✓ 血圧6時間ごと

✓ 心電図モニター

 

参考文献:

◆Guidelines for the prevention and treatment of adult patients at risk of developing refeeding syndrome   National Haelth Service 2008

◆National Institute for Health and Clinical Excellence. Nutrition support in adults. Clinical guideline CG32 2006