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2011.06.21栄養学習会(慢性腎不全患者のアミノ酸インバランス)

腎不全患者のアミノ酸インバランス

<アミノ酸の基礎> 全20種類

必須アミノ酸(Essential Amino Acid:EAA)生体内では合成されず補給が必要 9種類

バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン

非必須アミノ酸(Non-essensial Amino Acid:NEEA)生体内で産生可能 11種類

アラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、グルタミン酸、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン *小児では、アルギニンは必須

分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid:BCAA)バリン、ロイシン、イソロイシン

<透析患者に認められるたんぱく質・アミノ酸代謝異常の原因>

1.腎不全に由来するもの

アミノ酸代謝異常(下記に詳細)

代謝性アシドーシス → 蛋白分解を誘導

内分泌異常 → インスリン、インスリン類似増殖因子(IGF-1)の抵抗性

蛋白異化ホルモンであるグルカゴン、グルココルチコイド、PTHの増加

尿毒素の蓄積 → メチルグアニジン、グアニジン酢酸による酵素活性低下や蛋白結合抑制

2. 透析療法に由来するもの

透析中のたんぱく質・アミノ酸の喪失 → 5時間のHDにて、10~13gのたんぱく質喪失(アミノ酸5~8gを含む)

CAPDにて、5~15gのたんぱく質喪失(アミノ酸1.2~3.4gを含む)

透析膜によって誘発される異化亢進 → IL-1やTNFなどのサイトカインや、透析液の汚染(エンドトキシン)が関与

たんぱく質20g喪失(総筋肉量の40%)

回路への血液喪失 → 1回の透析で血液20ml(たんぱく質4g喪失)

3. 生活様式に由来するもの

栄養素の摂取不足 → ビタミンB6欠乏、ビタミンD活性化の阻害

腸管よりのアミノ酸吸収障害

4. 合併症に由来するもの

血液喪失(消化管出血など)

エネルギー需要増加や栄養素消費の亢進(炎症など)

5. エリスロポエチンによる貧血治療は、EAA/NEAA、Tyr/Phe、Val/Glyを改善

<腎不全患者の代謝異常>

1. 水・電解質代謝異常:水分貯留、K↑、Ca↓、Mg↑、P↑、Al↑

2. 酸・塩基平衡:HCO3-↓、BE↓、アシドーシス

3. 糖代謝異常:インスリン抵抗性↑、耐糖能↓

4. 脂質代謝異常:総コレステロール↑、中性脂肪↑、HDLコレステロール↓、LPL↓、LCAT↓、カルニチン↓

5. たんぱく・アミノ酸代謝異常(後述)

6. 内分泌代謝異常:コルチゾール↑、グルカゴン↑、PTH↑

7. ビタミン代謝異常:水溶性ビタミン↓、活性型ビタミンD↓、ビタミンA↑

8. ミネラル代謝異常:亜鉛↓、Se↓、Fe↑

<透析患者のアミノ酸インバランス>

・  血液透析(HD)患者における血漿アミノ酸インバランスは、非透析慢性腎不全患者とほぼ同じパターンだが、全体的には透析により改善傾向にある。

・  非透析慢性腎不全患者の筋肉におけるアミノ酸インバランスは、血漿中のものとほぼ同じ。

・  CAPD(持続携行式腹膜透析)患者は、同様のアミノ酸インバランスを血漿中に認めるが、筋肉内はタウリン以外正常。これは、高インスリン血症による血漿内から細胞内へのアミノ酸の動員による?

・  BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)の著名な低下・・・BCAAはATP賛成効率が高いため、エネルギー不足状態で消費されやすいことが原因。

・  BCAAを含んだ必須アミノ酸(EAA)の低下 トリプトファンの低下

・  腎実質障害のためにフェニルアラニン・ヒドロキシナーゼの低下により、フェニルアラニンンからチロシンへの変換が低下(Tyr/Pheが低下、チロシンの低下、フェニルアラニンの増加)

・  腸管より、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンの吸収障害による低下

・  腎へのグリシンの取り込みとグリシンからセリンへの合成障害(Val/Gly、Ser/Glyが低下)

・  バリン、セリンのタンパク合成の律速段階で、これらの低下によりタンパク合成そのものが低下

・  1-メチルヒスシジン、3-メチルヒスチジンは尿中排泄障害で増加、3-メチルヒスチジンは筋蛋白の崩壊によりさらに増加

・  非必須アミノ酸(NEAA)は全体に増加し、EAA/NEAAは低下、システィン、シトルリン、オルニチン、タウリンは増加

<腎不全用アミノ酸輸液>

必須アミノ酸(EAA)療法: 1960年代前半に提唱された腎不全患者に対するアミノ酸投与法。少量のEAAに十分な量のエネルギーを含む低蛋白食の投与により、蛋白異化が抑制され、尿毒症が改善するというもの。EAA投与により内因性尿素が蛋白合成に再利用されるとする仮説に基づく。すなわち、腸管で尿素の分解により生じたアンモニアが再吸収されたのち肝でNEAAに合成され、これが蛋白合成に再利用するとしたが、のちにこの内因性尿素の再利用はごくわずかで、EAAのみで窒素平衡を保つのは困難ことが分かった。

アミユー®はこの理論に基づいて、8種類のEAAに腎不全には必須とされるヒスチジンを添加した腎不全用アミノ酸輸液であるが、高アンモニア血症、脂肪肝、代謝性アシドーシス、尿中オロトン酸の上昇を認め、臨床的には使用されなくなった

この原因として、アルギニンの不足による尿素回路機能不全であることが判明した。また、フェニルアラニン、メチオニン、リジン、スレオニンの過量やBCAAの低下も認められた。

第2世代腎不全用アミノ酸輸液: 1980年代にアルギニン、チロシンの添加、メチオニン、リジン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジンの減量、BCAAの増量の腎不全用アミノ酸輸液が日本で開発された(キドミン®)。その投与によって、合併症がなくなり、たんぱく質代謝は改善されたとされる。特に、日本のみのデータだが、CKD患者でBUNの低下と栄養状態の維持あるいは改善、AKD患者のAKDの進展の抑制、栄養状態の維持および改善も報告されている。

<腎不全患者の栄養管理>

・ 腎不全時の輸液・栄養管理における投与法の第一選択はTPNである。その理由として、経腸栄養で投与された水分の体内への吸収量および吸収速度糖の把握が困難で、腎不全の管理において重要となる厳密な水分管理ができないことである。そこで、エネルギー投与量、エネルギー気質の調節は主にTPNで行い、それに加えて少量の経腸栄養を併用することが推奨される。

・ 血液透析患者の約60%が低アルブミン血症(3.5g/dL以下)。

・ BUNが血清クレアチニンの10倍より小さいときは、たんぱく質摂取不足を疑う。

・ 血清Pが4.0mg/dL未満の場合も、たんぱく質摂取不足を疑う。

・ たんぱく質摂取量の少ない透析患者の予後は不良。

たんぱく質摂取量1.1~1.3g/kg/日の死亡危険率を1とすると、たんぱく質摂取量0.7~0.9g/kg/日の患者は1.49、0.5~0.7g/kg/日は3.2であった。

・ 透析導入前の患者にたんぱく質制限食を投与しても腎機能障害の進展を抑制できない可能性を指摘する研究もある。また、著明なたんぱく質制限食の投与(0.48g/kg/日)は透析導入後の死亡率が高かった。

・ 急性腎不全患者に必要なEEAは0.3~0.5g/kg/日。特に、BCAAが有用。

・ 投与エネルギー量は、可能であれば間接熱量測定にて計測して投与することが望ましい。

・ Cal/N比は、CRFで300前後、AKDで400~500前後になるようにする。

・ 投与カロリーの目安は、AKDなど侵襲が高い場合でも35~40kcal/kg/日。

・ エネルギー源は糖質主体。脂肪はもともとある脂質代謝異常を増悪させ、過酸化脂質の形成や免疫能低下、呼吸障害、凝固障害などを惹起する可能性があり、最小限にする。特に、LPL、カルニチン濃度が低下しているので脂質代謝は落ちていると考えられる。従って、必須脂肪酸目的にて週1~2回の投与を推奨。

・ 水溶性ビタミンが不足し(血液浄化にて喪失)、脂溶性ビタミンが蓄積しやすい。ビタミンCは過剰投与が組織沈着の原因となるので注意を要する。

・ 亜鉛、銅、Mnは蓄積傾向があるので投与量に注意が必要。

・ 腎機能障害による腎性貧血にてHbA1Cが低下するので、注意を要する

・ 透析患者は浸透圧利尿が生じないため高血糖には比較的強く、インスリンクリアランスが悪いためにインスリンの効果が遷延しやすいために低血糖に弱い。

・ 血液透析中に回路の静脈側を使ってアミノ酸輸液(+高カロリー輸液)を補給すること(IDPN:intra-dialysis parenteral nutrition)は、異化の予防と蛋白代謝の改善に有効。

・ CHDFを開始した急性腎不全では、腎不全用アミノ酸輸液でなくてもバランスのとれた輸液製剤ならOK。

<参考>

CKD患者におけるPEMの診断基準: Fouque D 2008, Kidney Int

以下の4つのカテゴリーのうち、1項目でも該当するカテゴリーが3つ以上ある場合には、PEMと診断する。

1. 生化学検査

血清アルブミン値 <3.8g/d

血清サイレチン(プレアルブミン)値 <30mg/dL(透析患者のみ)

血清総コレステロール「 <100mg/dL

2. 身体計測

BMI <23

意図しない体重減少(浮腫なし):3ヶ月で5%以上あるいは6ヶ月で10%以上

体脂肪率 <10%

3. 筋肉量

筋肉量減少:3ヶ月で5%以上あるいは6ヶ月で10%以上

AMC:基準値の50%範囲内において、10%以上の減少

クレアチニン産生速度(透析前後の血清クレアチニン濃度から算定。筋肉総量と相関)

4. 食事摂取量

意図しないたんぱく質摂取量の低下

CKD2~5:0.6g/kg/日未満

CKD5:0.8g/kg/日未満が少なくとも2ヵ月以上

意図しないエネルギー摂取量の低下

25kcal/kg/日が少なくとも2ヵ月以上

血液透析患者(週3回透析) 腎疾患患者の生活指導・食餌療法に関するガイドラインより

総エネルギー:30~35kcal/kg/日(標準体重)

たんぱく質:1.0~1.2g/kg/日(標準体重)

塩分:0.15g/kg/日(現体重)(残腎尿量100mLにつき0.5g/日増量)

カリウム:1.5g/日

食事外水分量:15mL/kg/日(現体)(残腎尿量分の増加可)

リン:700mg/日 カルシウム:600mg/日

*エネルギー量は肥満者では減らし、栄養障害者では増やす。

*糖質55%、脂質25%、たんぱく質20%

*糖質は、単純糖質を減らし、大部分を複合糖質とする。

*脂質は、飽和:一価不飽和:多価不飽和=1:1.5:1

*食事外水分には、食事時に摂取するスープ、飲料を含む。

CAPD患者 腎疾患患者の生活指導・食餌療法に関するガイドラインより

総エネルギー:29~34kcal/kg/日(標準体重)(透析液の腹膜吸収分を含む)

たんぱく質:1.1~1.3g/kg/日(標準体重)

塩分:CAPD除水量(L)×7.5(g/日)(残腎尿量100mLにつき0.5g/日増量)

カリウム:2.0~2.5g/日

食事外水分量:CAPD除水量+残腎尿量mL/日

リン:700mg/日 カルシウム:600mg/日

*エネルギー量は肥満者では減らし、栄養障害者では増やす。

*糖質55%、脂質25%、たんぱく質20%

*糖質は、単純糖質を減らし、大部分を複合糖質とする。

*脂質は、飽和:一価不飽和:多価不飽和=1:1.5:1

*食事外水分には、食事時に摂取するスープ、飲料を含む。

2011.05.31栄養学習会(慢性腎不全、透析患者)

慢性腎臓病(CKD)
・ 腎臓は腰の辺りに左右に1対あり、そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさで1個が150gほどの小さな臓器。心臓から送り出される血液の20%以上が流れており、毎日200ℓもの血液をろ過して老廃物を尿として体外に排泄する。その他に体液の量や浸透圧・血圧の調整を行う、ナトリウム・カリウム・カルシウムなどのミネラルや酸性・アルカリ性のバランスを保つ、造血ホルモンを分泌する、ビタミンDを活性化する、といった多くの働きがある。
・腎臓病患者は世界規模で深刻化し、2002年に米国腎臓財団が、新しく「慢性腎臓病(Chronic Kidney
Disease=CKD)」という概念を提唱し、取組みが始まった。日本でも、2006年に「日本慢性腎臓病対策協議会」が設立され、疫学調査や啓蒙活動など、本格的なCKD対策に取り組んでいる。
・ 協議会の疫学調査によると20歳以上の日本人の約2,000万人が慢性腎臓病であり,特に高齢者で高頻度に見られることが明らかになった。
・CKDのなかでもっとも多い原疾患は糖尿病(糖尿病腎症)で、全体の43.4%、次いで慢性糸球体腎炎となっている。CKDは早期発見し適正に治療すれば進行を抑えることができるため、CKDを早期発見し原因疾患となる糖尿病や高血圧などに対する治療を行い腎臓機能の低下を抑制する必要がある。
・CKDを治療し腎不全や透析療法への進行を防ぐために、糖尿病や高血圧など原因となる病気の治療を行うことが重要。そのために、食事療法や生活習慣の改善のほか、糖尿病の治療、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)などによる降圧治療、脂質異常症の治療などを行うことが必要となる。
・CKDが継続し腎機能が低下して腎不全になると透析導入となるだけではなく、心筋梗塞や、脳卒中などの循環器系の合併症を起こすリスクがある。
・ 慢性腎臓病の定義
慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症など原疾患に関わらず
1.腎障害を示唆する所見(検尿異常,画像異常,血液異常,病理所見など)が3カ月以上存在すること
2. GFR 60mL/分/1.73m2(正常100ml/分/1.73m2)未満が3カ月以上持続すること
この片方または両方を満たす場合にCKDと診断される.
・CKDはGFR(糸球体濾過量)の値によりステージが分類され、尿蛋白が出ているだけのステージ1から 末期腎不全・透析期のステージ5まで分類されており、それぞれのステージで治療が可能であり、治療することで悪化させないことができる。
・CKDという定義が、尿蛋白が出ている または eGFRの値によって決まるため、尿検査 と 血清クレアチニンを測るのは最も基本となる。性別,年齢,血清クレアチニン値から、推算糸球体濾過量(eGFR)を計算できる。
*GFRとは
糸球体ろ過量という腎機能の標準的指標。イヌリンという物質を用いて測定するが、最近では年齢とクレアチニン(Cr)値を用いた以下の推定式を用いて算出する。
GFR(男性)194 x sCr-1.094 x age-0.287
GFR(女性)GFR(男性) x 0.739
・ステージ 1, 2は代償機能が働いておりほとんど無症状。ステージ 3に進行すると残存腎機能の代償が不完全となり、尿量の増加や血清尿素窒素(BUN)の上昇を認め貧血も軽度出現する。ステージ 3~4では、体液の恒常性が保たれなくなるため、代謝性アシドーシス、低カルシウム血症や高リン血症等の電解質異常、高血圧・貧血の増悪などの臨床症状が出現し、増悪する。ステージ 5では、体液異常の進行とともに、代謝性アシドーシスや高カリウム血症が顕著となり、肺水腫等の高度な尿毒症症状が出現し、生命維持のため透析療法が必要となる。
治療の原則は、①原疾患の治療、②慢性腎不全の進展・増悪因子の治療、③腎機能障害の進行に随伴する体液異常の是正、④合併症の治療。一般療法と薬物療法を組み合わせて行うことにより、腎不全の進行を抑制することが重要。ステージ 1, 2では、原疾患の治療と進行性腎障害に共通の進展因子の抑制療法が主体となり、心血管病変の評価とその治療を開始する。ステージ 3になるとさらに腎機能障害が進んでいるため、腎機能の増悪因子に注意しながら、進展因子の抑制療法と低蛋白食や塩分制限等の食事療法を強化し、腎不全の進行に伴う合併症の評価と治療が必要となる。ステージ 4では、さらに食事制限や薬物療法(経口吸着炭素製剤、エリスロポエチン製剤、高カリウム血症改善薬、高尿酸血症治療薬、高リン血症改善薬、アシドーシス改善薬、ビタミンD製剤等)による代謝異常の是正が強化され、透析または腎移植の適切な時期を検討する。ステージ 5では、透析導入基準に沿って適切な時期に、透析導入または腎移植をする。
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慢性腎不全
腎臓の働きが低下して、正常の腎臓の30%以下の働きしかできなくなった状態を腎不全(非代償期、保存期)といい、さらに機能が低下して10%以下になった状態を末期腎不全(ESRD:End-Stage Renal Disease)という。
末期腎不全の治療法としては、透析療法(血液透析・腹膜透析)と腎臓移植の2種類がある。
慢性腎不全では腎機能が低下して、血液中の水分や電解質の量を正常に保てなくなり、尿酸なども排泄できなくなるため様々な症状が現れる。初期の頃は夜間尿で、進行すると尿毒症となり貧血、骨粗しょう症、骨軟化症、痛風、痙攣、高血圧、心筋梗塞、心不全などの症状が見られるようになる。
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非代償期から見られる症状:
・腎性貧血:腎性貧血は、腎不全が原因で起こる貧血。腎臓は赤血球を作るホルモンであるエリスロポエチンを作っているので、慢性腎不全ではエリスロポエチンが不足して正球性正色素性貧血になる。
・高リン酸血症 : 糸球体濾過量の低下による。
・低カルシウム血症:高リン酸血症に反応した二次性の高副甲状腺ホルモン血症による事と、腎臓でのビタミンDの活性化障害による低ビタミンD血症による事との、二つの理由による。
末期腎不全から見られる症状:
・浮腫
・尿毒症: 尿毒症は、尿毒素による症候。
・呼吸困難 :尿毒素は不揮発性酸性物質なので、代謝性アシドーシスを来たす。ホメオスタシスはアシデミアを回避するために呼吸を用いて代償しようとするために、呼吸 が激しくなる。
・腎性貧血:エリスロポエチンの産生低下による正球性正色素性貧血を来たす。
・肺水腫 : 水分の排泄障害から体液の増加を来たし、循環血漿量の増加からうっ血性心不全を来たし、心不全から肺水腫に至る。心障害から至る肺障害を心性肺と言う。
・中枢症状 :尿毒素による神経障害から、意識障害、頭痛、等を来たす。
腎性骨異栄養症:renal osteodystrophy:ROD
腎不全ではリン酸の排泄が停滞して高リン酸血症となる。血中に溢れたリン酸は血清カルシウム(Ca)を抱き込んで析出して組織に沈着するので、低Ca血症を起こす。また血中Ca濃度を高めるホルモンであるビタミンDは腎臓で活性化されるので、腎不全ではビタミンD不足にもなる。高リン酸血症とビタミンD不足の両方の原因によって慢性の強力な低Ca血症が続く。すると血中Ca濃度を高めるホルモンであるPTHが常に出続けて高PTH血症となる。PTHは骨からCaを血中へ吸収することによって血中Ca濃度を高めようとするので、骨からCaが吸収されすぎて骨がスカスカになる(線維性骨炎)。他に、異所性石灰化、線維性骨炎、骨軟化・骨硬化などが起きる
*MIA 症候群
Malnutrition(栄養障害)
Inflammation(慢性炎症状態)
Atherosclerosis(動脈硬化)
「Malnutrition(栄養障害)」「Inflammation(慢性炎症状態)」及び「Atherosclerosis(動脈硬化)」それぞれの英語の頭文字をとって、「MIA症候群」と言いう。
・低栄養状態が続き、皮下脂肪の減少(カロリー不足)や筋たんぱく質の崩壊にて真の体重減少が続くと、設定した体重が見かけ上水分で埋められることがあり、心不全状態への移行やPEM(たんぱくエネルギー低栄養)の進行をきたす可能性がある。結果的に、免疫能が低下し、易感染状態から重篤な合併症が発生し、予後不良となる。
・長期透析患者では栄養障害が発生しやすく、慢性炎症は動脈硬化の原因、促進因子であり、サイトカインを中心に慢性炎症、動脈硬化、栄養障害の悪循環が心血管障害を助長して予後不良 因子となる。
・透析液が汚れているとエンドトキシンという物質が慢性炎症状態を体内に作り出しそれが原因で透析アミロイドーシスや動脈硬化を引き起こし、ひいては、心筋梗塞や脳梗塞になってしまうと言われている。体外に誘導された血液が回路や透析膜に接することで、いろいろな反応がおこることで、サイトカインの誘導も関係している。
・透析患者は、現在の透析環境で透析を行っていること自体で「MIA症候群」であると言われている。
検査
慢性腎臓病の検査は尿検査、血液検査が中心となる。
たんぱく尿
尿にたんぱくが通常以上に漏れているかどうかを調べるもので、たんぱく質のうちのアルブミンについて検査する。健康診断では試験紙でスクリーニングを行う。その結果、(1+)以上の場合、1日の尿を集めてたんぱくの量を検査する。尿たんぱくが1日1g以上は異常となる。糖尿病性腎症の早期発見には、微量アルブミン尿の検査を行う。
血尿
通常、赤血球は尿の中に漏れないが、糸球体が障害されると尿に赤血球がまじる。わずかな場合は肉眼では分からない。一般の健康診断では試験紙を使ってスクリーニングを行い(潜血反応)、必要な場合は尿の沈殿物を顕微鏡で観察して赤血球の有無を調べる。
血清クレアチニン値(正常値:0.5~1.2mg/dL)
腎機能低下の指標として一般に使われる。クレアチニンは筋肉から血液中に出て腎臓から尿に排泄される。腎臓の機能が低下すると、血中のクレアチニンの濃度が高くなる。ただし、筋肉量が多い人ではもともと濃度が高く、筋肉の少ない人は低くなる。
血清尿素窒素(正常値:5~20mg/dL)
たんぱく質の代謝でできる老廃物で、血中から尿に排泄されるが、腎機能が低下すると排泄されず、血中の濃度が高くなる。ただし、食事の内容に影響されることがある。
クレアチニン・クリアランス(腎機能検査)
腎機能を評価するための重要な指標となる検査。血液中のクレアチニンと尿中のクレアチニンの濃度を測り、腎臓がクレアチニンを含む血液を1分間にどれくらい濾過できるかを計算する。正常なら、1分間に約100ミリリットルの血液を処理できる(100mL/min)。一定時間内に出る尿をすべてためておき、その一部を検査する。
腎生検
腎臓の組織のわずかな部分を採取し、顕微鏡で糸球体や尿細管の状態を観察する。腎臓の病変の程度を正確に知ることができる。局所麻酔をかけ、医師が超音波の画像を見ながら針を腎臓に刺し、組織の一部を取り出す。数日間の入院が必要。
治療
CKDの治療は
・ 厳格な降圧療法
・ アンジオテンシン作用を阻害する薬の使用
・ 尿蛋白を減らす治療法
などが 腎機能の悪化を強く抑制することが明らかになってきた。
・  CKDの治療にあたっては、まず第一に生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善など)を行う
・  CRA症候群(Cardio-Renal Anemia Syndrome)という心腎貧血連関という概念があり、予後に重要な要素であり、心血管障害、脳血管障害による死亡率が高いことが重要。
・  血圧の管理目標は130/80mmHg未満であり、緩徐に降圧することを原則とする。
・  降圧にはACE阻害薬やARBを第一選択とし、必要に応じて他の降圧薬を併用する。
・  ACE阻害薬やARBの開始後は、血清Crや血清カリウムを2週間~1か月以内に測定し、その後もモニターする。
・  糖尿病腎症ではHbA1c 6.5%未満に管理する。
・  LDLコレステロールを120mg/dL未満に管理する。
・  腎性貧血にはエリスロポイエチンの分泌不足を補うために赤血球造血刺激因子製剤(エリスロポエチン製剤)の投与を行う。
・  腎機能に応じて経口吸着炭素製剤を使用し尿毒症の症状を改善する。
・  活性型ビタミンD製剤を投与しCaの吸収を助ける。
・  非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、造影剤、脱水などは、腎機能低下のリスクである。
<腎性骨異栄養症の治療>
①透析効率を高め、Pの除去を十分に行う
②炭酸カルシウムの投与
③食餌療法(P↓、Ca↑)
④透析液のCa濃度調節
⑤血清Mgのコントロール
⑥活性型ビタミンDの投与
<1年生命予後からみた望ましい検査データ>
年齢: 若年 (1歳ごとに1.045倍)
BMI: 20以上25未満
糖尿病: なし (ありで1.357倍)
透析時の体重減少: 2~6% (8%以上で1.8倍)
除水速度: 体重の0.3~1.2%/時間
Kt/V: 1.4以上 (標準化透析量)
nPCR: 0.9~1.5g/kg/日 (蛋白摂取率)
%Cr産生速度: 90%以上
Alb: 4.0g/dL以上
Ht: 30~35%
Ca×P: 55未満
intPTH: 60~180pg/mL
高脂血症、糖尿病、高血圧の改善・コントロール

食事療法
<生活習慣で気をつけること>
1. 減塩: 食塩制限6g/日未満
2. 適正体重の維持: BMI18.5~25
3. 禁煙
4. 運動: 心血管病のない場合に、有酸素運動30分以上
5. アルコール制限: 男 20~30ml/日 女 10~20ml/日
6. コレステロール、飽和脂肪酸(動物性脂肪)の制限
7. 食物繊維、ビタミンの積極的摂取 * 但し、カリウム過剰に気をつける
8. 感染症への配慮(ワクチン、外傷、シャント感染など)
・ 水分の過剰摂取や極端な制限は有害である
・ 肥満の是正に努める
・ ステージ3以上において蛋白質の摂取制限(0.8~0.6g/kg/day)はCKDに有益である
・ エネルギー量は30~35kcal/kg/dayにする(肥満の糖尿病では25kcal/kg/dayも可能)
・炭水化物や脂質から十分にエネルギーを摂取する(脂質比率は20~25%とする)
<CKDステージ別の栄養指導>
Stage 1 生活習慣の改善(禁煙、減塩、運動、減量)
基礎疾患の治療
水分コントロール
Stage 2 厳密な食塩制限(1日6g未満)
Stage 3 厳密なタンパク制限(0.6~0.8g/kg/日)
十分な投与エネルギー(30~35kcal/kg/日)
血糖コントロール
血清CaとPの管理
サプリメント(抗酸化ストレス)と電解質・ビタミン
Stage 4 さらに厳密なタンパク制限
さらに厳密なエネルギー投与管理
Srage 5 タンパク制限緩和(1.0~1.2g/kg/日)
水分、カリウムを制限
<保存期CKD患者の栄養介入>
1. 食塩制限(6g/day未満)→ 腎負荷軽減、細胞外液量の過剰防止、高血圧予防
2. タンパク質制限(0.6~0.8g/kg/day)→ 腎負荷軽減、高窒素血症の予防、代謝性アシドシスの予防
3. リン制限(タンパク質×15mg)
4. カリウム制限(1500mg/day)
<透析患者の栄養障害の要因>
① 血液透析に関するもの
透析液へのアミノ酸の喪失(1.5~3.0g/回)
サイトカインの産生による蛋白異化の亢進
(透析液中のエンドトキシン、透析膜と血液の接触など)
② 腹膜透析に関するもの
アミノ酸喪失(1.8~2.0g/回)総タンパク喪失5~15g/回
ブドウ糖吸収
腹部膨満
③ 不適切な体重管理
④ 透析不足
尿毒症、アシドーシス
⑤ 摂食量低下、うつ状態
消化吸収障害、ホルモン環境など

慢性腎臓病(CKD)に対する食事療法基準

スライド1

スライド2

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(日本腎臓学会:慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版より引用