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2011.04.26栄養学習会(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

・COPDは、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)と呼ばれ、日本には500万人以上のCOPD患者がいると推定されているが、実際に治療を受けているのは5%にも達していない。

・長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは“肺の生活習慣病”といわれ、高齢者に多い疾患。2007年の日本の死亡原因の第10位で、2020年には虚血性心疾患、脳血管障害に次いで世界第3位の死因になると推測されている。

・スウェーデンの研究グループは、1987~2004年にCOPDの長期酸素療法を開始した成人7,628人のデータを分析。1人当たり平均1.7年間の追跡期間中、5,497人が死亡した。死因として肺癌(がん)および呼吸器疾患は年々減少し、循環器疾患および消化器疾患が増加していることが判明。全体では心血管疾患による死亡リスクが62%増加していた。これはCOPD罹患患者の高齢化が主な原因であるが、メタボリック症候群とともに注意が必要。

・COPDは一つの病気ではなく、慢性気管支炎、肺気腫により長期に気道が閉塞状態になる病気の総称。

定義:有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である。この気流制限にはさまざまな程度の可逆性を認め、発症と経過が緩徐であり、労作性呼吸困難を生じる

・タバコなどの有害な空気を吸い込むことによって、気管支や、肺胞などに障害が生じ、空気の出し入れがうまくいかなくなる。せき、たん、息切れなどの症状が見られるようになる。

・COPDによる閉塞性換気障害はゆっくりと進行し不可逆的であるが、気管支喘息は気道炎症に伴う可逆的な気流閉塞を示す疾患でありCOPDには含めない。

慢性気管支炎                                  

・気管支が慢性的に炎症を起こしている状態。痰の量と咳の回数が異常に増えるだけでなく、痰を伴う咳が1年間に3カ月以上も続くような状態が、2年以上みられる場合。ただし、肺結核や気管支ぜんそく、気管支拡張症などが原因で起こる症状は除く。気管支の炎症が慢性的になれば、気管支の粘膜の分泌線が肥大して、気管支の壁である気管支壁が壊れていき、それが原因で多量の痰を伴う咳が続き、呼吸困難や“ばち指”、チアノーゼといった症状が現れ、さらに心不全も併発すると浮腫(むくみ)が出てくる。

肺気腫

・タバコの煙や有害な物質を長期間に渡って吸い込むことで、肺胞の壁が徐々に壊れたり肺胞壁が拡大したりして、次第に肺全体の機能が低下する。息を充分に吐き出せなくなり、肺が過膨張(膨らみきった風船の状態)となってさらに酸素と二酸化炭素の入れ替えが上手くできなくなるため、すぐに息切れをするような状態になる。

診断基準・検査

 肺機能検査

・吐き出す息の量と、息を吐き出す時間を測定する「スパイロメトリー検査」が用いられる。この検査を受けることで、さまざまな肺機能の指標を測定できます。

・1秒率(最初の1秒間に吐き出す息の量が、吐き出す息の全量の何%を占めるかを表す数値)が、検査の結果「70%未満」であった場合、気管支拡張薬(β2刺激薬)を吸入させ、再検査をしても、1秒率が70%未満であった場合には、COPDが強く疑う。

・気管支拡張薬吸入で気道の可逆性が見られれば、COPDではなく気管支喘息の可能性が高くなる。しかしCOPDでも気道可逆性の大きい場合があることが知られるようになり、診断除外の根拠ではなくなっている

・GOLDや日本呼吸器学会の分類では、COPDの重症度はスパイロメトリー検査により、1秒量の正常値に対するパーセント (FEV1/ predicted FEV1) で、0期(COPD予備群)および I 期 ~ IV期の5期に分類される。

病期 定義
0期(COPD予備群) 咳嗽、喀痰など症状はあるがスパイロメトリーは正常(まだCOPDではない)
I 期(軽症) 一秒率70%未満かつ1秒量が正常値の80%以上
II期(中等症) 一秒率70%未満かつ1秒量が正常値の50%以上80%未満
III期(重症) 一秒率70%未満かつ1秒量が正常値の30%以上50%未満
IV期(最重症) 一秒率70%未満かつ1秒量が正常値の30%未満、あるいは1秒量が正常値の50%未満で慢性呼吸不全か右心不全を合併

 

参考:

COPDの診断の手引き:

 下記①~③の臨床症状のいずれか、あるいは、臨床症状がなくてもCOPD

発症の危険因子、特に長期間の喫煙歴があるときには、常にCOPDである

可能性を念頭に入れて、スパイロメトリを行うべきである。スパイロメトリはC

OPDの診断において最も基本的な検査である。

 ① 慢性の咳嗽

 ② 慢性の喀痰

 ③ 労作性呼吸困難

 ④ 長時間の喫煙あるいは職業性粉じん暴露

<診断基準>上記を参考にしたうえで

 ① 気管支拡張薬投与後のスパイロメトリでFEV1/FVC<70%を満たすこと

 ② 他の気流制限をきたしうる疾患を除外すること

 

画像検査

胸部X線検査

 ・肺が膨張して上下に長くなっていることが多い。肺の下にある横隔膜は、正常では丸いドーム状だが、COPDでは平らになっている。

・ 肋骨が片側で10本以上視える。肋骨が水平になっている。

CT検査

・正常な人に比べて血管の陰が減少している

・COPDの合併症として危険性が高い肺がん(または肺気腫)の早期発見にも有効。

酸素飽和度検査

・安静時の動脈血の中に、酸素がどの程度含まれているか(酸素飽和度)を調べる検査。指先にパルスオキシメーターをつけて測定する。安静時の測定で酸素飽和度が90%以下の場合は、肺の機能が低下していてガス交換がうまく行われていないと推測できる。

血液ガス検査

・特に二酸化炭素濃度(PaCO2)の上昇とpH低下(呼吸性アシドーシス)に気をつける

6分間平地歩行テスト

・歩いていて酸素が足りなくなる事がないか、どの程度歩けるかを調べる。重症になれば100M程度しか歩けなくなる。パルスオキシメーターを付けて歩く。治療中の人は治療の効果なども分かる。

COPD急性増悪

 慢性呼吸不全は、COPD、結核後遺症、神経筋疾患など慢性不可逆性の疾患による血液ガス異常や肺性心に対し、生体がかろうじてバランスを保 っている状態。急性増悪とは、呼吸器感染症、過労などの右心負荷、続発性気胸、睡眠薬 、不適切なO2吸入、原疾患の急性進展などにより、このバランスに破綻を 生じ、生命の危機、呼吸困難、意識レベルの低下などを中心とした急激な症状の悪化をきたす状態を言う。

 原因: 感染、気管支痙攣、気胸、右心不全

 症状: 呼吸困難↑↑↑       PaO2↓ PaCO2↑↑      ショック

 治療: 酸素投与、気管支拡張剤吸入  NPPV

治療

禁煙

・ 喫煙を続けるかぎり、病気の進行を止めることはできないため、完全にたばこをやめることが重要。

ワクチン

・ かぜやインフルエンザの感染症がCOPDの増悪原因となることから、ワクチンの接種が重要。 増悪を防ぐためのワクチンにはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの2種類がある。特にインフルエンザワクチンは重篤な増悪を減少させ、死亡率も約50%減少させると報告されている。

薬物療法

 COPDでは気管支が収縮し呼吸が苦しくなるため、気管支を拡げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が薬物治療の中心となる。その他、たんをとる去痰薬、せきを止める鎮咳薬、感染症を防ぐ抗生物質や、増悪を繰り返す場合には吸入ステロイド薬を使用することもある。 

短時間作用性抗コリン薬および短時間作用性β2刺激薬

短時間作用型の気管支拡張薬は運動時や入浴時など日常生活での呼吸困難の予防に有効。気管支を拡げる作用は抗コリン薬の方が強く、気管支を拡げる速度はβ2刺激薬の方が速い。

長時間作用性抗コリン薬

長時間作用性抗コリン薬は1回の吸入で作用が24時間持続し、1秒量や努力肺活量の改善効果が翌朝まで認められる。長期的には気流閉塞の進行や死亡率を抑制する可能性が報告されている。前立腺肥大で尿閉を起こしたり、緑内障を悪化させることがある。

長時間作用性β2刺激薬

β2-アドレナリン受容体を刺激することで気道平滑筋に働き気道を拡張する。吸入型の長時間作用性β2刺激薬は1回の吸入で作用が12時間持続し長期間使用しても効果が減弱しない。

メチルキサンチン類

1秒量の改善効果は吸入の気管支拡張薬より小さいとされるが、末梢気道の拡張作用や呼吸筋力の増強作用が報告されている。また、低用量テオフィリンは気道の炎症細胞を減少させる。

吸入ステロイド薬

1秒量が予測値の50%未満で増悪回数が多い場合は、増悪回数を減らしQOLを改善する。

長期間作用性β2刺激薬と吸入用ステロイド配合薬

長期間作用性β2刺激薬 / 吸入用ステロイド配合薬は、それぞれ単剤で使用するよりも呼吸機能や運動耐性能、呼吸困難感を改善し、増悪頻度も減少させる。長期的には気流閉塞の進行を抑制する可能性がある。

喀痰調整薬

COPDの増悪頻度と増悪期間を減少させる。

呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションは可能な限り機能を回復、あるいは維持させ、自立できるように継続的に行っていく。その中でも中心となるのが呼吸理学療法で、2ヵ月間以上実施することがすすめられており、自覚症状の軽減、運動能力の向上、QOLの向上といった効果が期待できる。

酸素療法

肺機能の低下が進むと普通の呼吸では十分に酸素を取り込めなくなり、低酸素血症を起こし呼吸不全という症状に陥る。家庭で持続的に酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT)を行うことでQOLが向上し、生存率が高まる。在宅酸素療法の適用となるのはⅣ期(極めて高度の気流閉塞)で薬物療法などを行っても、1ヵ月以上低酸素血症が持続していて、通常の呼吸で動脈血の酸素分圧が55Torr以下の場合、あるいは動脈血の酸素分圧が60Torr以下で、運動時や睡眠時に顕著な「低酸素血症」を起こす場合。さらに、病態が安定しており、他に入院などして治療する必要がないことも条件となる。

外科療法

内科的治療を行っても症状が改善しない場合、外科的な治療が行われる。肺胞が破壊され弾力性を失い膨張した肺を縮小させるために、極度に破壊された肺の一部(20~30%)を切除する手術が行われる。その手術には、開胸しないで胸腔鏡を用いる方法も使われます。
外科的治療がすべてのケースに効果があるわけではなく、また根本的な治療でもない。

栄養障害栄養療法

・  COPD患者では約70%に%IBWが90%未満の体重減少がみられる。

・  エネルギー消費量の増加とエネルギー摂取量の低下により体重減少栄養障害を呈することが多い。

・  体重が肺機能とは独立した予後因子であることは、COPDの診断と治療のための国際的ガイドラインであるglobal initiative for chronic obstructive lung disease(GOLD)においてもエビデンスAの事項として明記されている。

・ 健常者に比べ%IBW、BMI、TSF、AMCの低下がみられる。

・  BCAAの減少によるFischer比の低下がみられる。

・  閉塞性換気障害や肺過膨張などによる呼吸筋酸素消費量の増大によりREE(安静時エネルギー消費量)が増大する。呼吸運動に必要とするエネルギーは1日150kcal程度であるが、呼吸数が2倍になると必要エネルギーは4倍(600kcal)、3倍になると10倍(1500kcal)にも達すると言われている。すなわち、呼吸に伴うエネルギー消費量は健常者に比べ約10倍上昇している。

・  TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが増加すると代謝亢進状態になりエネルギー消費量は1.3~1.5倍になる。また、体重を増やす脂肪組織から分泌されるレプチンの低下により体重減少が起きる。

・  肺の膨張により横隔膜が腹部臓器を押し下げ腹満を感じやすく、咀嚼や嚥下の際に呼吸のリズムが乱れ呼吸困難感が増強するなどの理由で摂取量が低下する。

・  食事で摂取した栄養分をエネルギーとして利用する時には、酸素が消費され、二酸化炭素が発生する。この時、酸素1に対して発生した二酸化炭素の量を「呼吸商」で表す。COPDでは呼吸で二酸化炭素を排出する機能が低下しているため呼吸商が0.7と低い 脂質(炭水化物は呼吸商が1)を摂るとよい。

<推奨メニュー>

・  体重増加を目的とする場合は,非蛋白カロリーとして安静時エネルギー消費量(REE)の1.5倍以上のカロリー投与が必要である。窒素源としては,分枝鎖アミノ酸が異化抑制・蛋白合成促進などの代謝調節作用から有効である。

①Harris-Benedictの式よりBEEを算出   BEE×1.7                                                                                              

②間接熱量計でREEを実測       REE×1.5

・  蛋白質  総エネルギーの12~15%

・  脂肪の摂取量を多くする。総エネルギーの40%を超えると消化器系に負担をかけ呼吸困難を増悪させる。

・  BCAAを多く含む食品を摂取し筋蛋白の維持をはかる。

・  P、K、Ca、Mg は呼吸筋の収縮に重要であるため十分に摂る。

・  肺性心を合併している場合は塩分6g/日。利尿剤を投与している時はKの排泄が増加するためKを十分に摂る。

・  ステロイドを内服している場合は骨粗鬆症になりやすいためCaを十分に摂る。

・  強い酸化ストレスが発生・増悪要因とされているため、抗酸化作用のあるn-3系多価不飽和脂肪酸や抗酸化ビタミン,微量元素,カテキンなど抗酸化物質の補充をするとよい。

・  脂質を多くした組成の経腸栄養剤(プルモケアEx:アボットジャパン株式会社、ライフロンQL:三和化学研究所)を使用する。

◆プルモケアEx
・たんぱく質16.7%、脂質55.2%、糖質28.1%  375kcal/240mL缶
・ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンを強化
・MCT(中鎖トリグリセリド)は吸収されやすく、体内輸送系も長鎖脂肪酸と異なり速やかに代謝される。

◆ライフロンQL
・高い脂質比率の濃厚流動食(たんぱく質16%:脂質44%:炭水化物40%)1パック125mL 200kcal

・コエンザイムQ10を1パック(125mL)当たり10mg配合
*コエンザイムQ10(CoQ10)とは、人間の細胞内のミトコンドリアにあり、エネルギーを生み出すのに重要な役割を担っている成分(補酵素)。人間の体内のCoQ10は20歳頃をピークとして加齢とともに減少していく。
・DHA・EPAを配合しn-6/n-3は2.5、フラクトオリゴ糖・水溶性食物繊維を配合

・ 一回の量を減らし一日の食事回数を増やす 

・ ガスを発生しやすい食品を避ける。

2011.03.22の栄養学習会(肝炎・肝硬変)

肝臓疾患と栄養療法 2011.03.22   ・・・ 管理栄養士が主催するNST栄養学習会の内容を紹介します。

 肝疾患  経過:急性肝炎、慢性肝炎

       原因:ウイルス性、アルコール性、自己免疫性、

脂肪肝(アルコール性 NAFLD  NASH)

薬剤性・中毒性

急性肝炎 

・  肝臓の細胞が広い範囲にわたって葉介され肝障害が生じる

・  ウイルスに感染してから数週間から数ヶ月後、薬剤を初めて投与されてから数週間後に発症

・  ALT、ASTの著明な上昇(数百~数千)と黄疸の指標となるビリルビン値が上昇する

・  原因のほとんどがウイルス性肝炎(A型B型C型)

  A型肝炎:経口感染 一過性に経過し慢性化することはほとんどない

  B型肝炎:体液感染・血液感染 新生児、小児期に感染すると高度に慢性化

       最近は、成人でも慢性化が増加(海外タイプの感染)

  C型肝炎:血液感染 高率に慢性化

       遷延化、慢性化に対してインターフェロン治療を行う

・  全身倦怠感、食欲不振、黄疸などの症状がでる

・  特別な治療はせず安静、食欲不振や嘔気が強く食事が摂れない時には点滴で栄養補給を行う

・  脂肪乳剤の急速および過剰投与により細網内皮系(体の様々なところにあるが共通する構造的特徴をもつ免疫組織の総称)の機能が抑制され免疫能の低下を来たす可能性がある

投与速度は0.1g/kg/hr以内とする

 

劇症肝炎

・  急性肝炎の約1% 

・  症状が出てから8週間以内に肝性脳症が出て、プロトロンビン時間が40%以下になる

・  初期症状から10日以内に肝性脳症が出る急性型、それ以降に出る亜急性型に分類される

・  脳浮腫、感染症、消化管出血、腎障害などの合併症を引き起こすことが多く多臓器不全の病態を示すため、治療は救命を目的とした全身的なものになる。

慢性肝炎

・  6ヶ月以上、肝臓の炎症が持続する病態

・  ウイルス性(B型・C型)、自己免疫性が大部分を占める

・  自覚症状はほとんどない

B型慢性肝炎

成人になるとウイルスを排除しようとする免疫力が高まるため慢性肝炎が引き起こされる

C型慢性肝炎

    C型肝炎ウイルスに感染すると80%は慢性肝炎に至る

    10年~30年かけて肝硬変、肝癌に移行していく

    C型慢性肝炎では肝臓内の鉄が過剰に貯留するため瀉血療   

    法、鉄制限食を行うことで肝線維化の進展や発ガンの予防に効果的と考えられている

慢性肝炎のステージ分類(新犬山分類)

慢性肝炎:6ヶ月以上の肝機能検査値の異常とウイルス感染が持続している病態組織所見:門脈域 リンパ球を主体とした細胞浸潤と繊維化     小葉内 種々の程度の肝細胞の変化と壊死組織分類:線維化と壊死、炎症所見を反映させ、線維化(ステージ)と活動性(グレード)

     の各段階に分け表記 

線維化(fibrosis)の程度:ステージ F0:線維化なし  F1:門脈域の線維性拡大  F2:線維性架橋形成

  F3:小葉のひずみを伴う線維性架橋形成

  F4:肝硬変

活動性(activity)の程度:グレード A0:壊死・炎症の所見なし  A1:軽度の壊死・炎症所見 A2:中等度の壊死・炎症所見

A3:高度の壊死・炎症所見 

 

栄養療法

 ・エネルギー30~35kcal/day 蛋白質1~1.5g/day 脂質 総エネルギーの20~25%を目安とする

 ・鉄制限食は鉄摂取量を5~7g/dayとする

・C型肝炎ウイルスを体の中から排除して感染からの治癒を目指す原因療法。ウィルスの増殖を抑える働きを持つインターフェロン単独で行う場合と、抗ウイルス薬のリバビリンを併用する場合がある。亜鉛の補充がインターフェロンの副作用を軽減するとの報告もある。

肝硬変

・  肝細胞の壊死と再生が繰り返し起こることにより肝臓全体にびまん性の繊維化と結節(偽小葉)形成をきたす、慢性肝炎の週末像

・  症状の出ない代償性肝硬変と症状のある非代償性肝障害がある

・  非代償性肝硬変は手掌紅斑、クモ状血管腫、腹水、浮腫、腹壁静脈怒張、胃食道静脈瘤、門脈圧亢進症性胃症、PHG、肝性脳症などの症状が出る

Child-Pugh分類

    1点 2点 3点
ビリルビン <2 2-3 >3
アルブミン >3.5 3.5-2.8 <2.8
PT(%) >80 50-80 <50
腹水 なし コントロール可 コントロール困難
昏睡度 なし 軽度I-II 重症III-IV

Class A: 5-6
Class B: 7-9
Class C: 10-15

肝障害度(表1 

項目\肝障害度  A B C
腹水 ない 治療効果あり 治療効果少ない
血清ビリルビン値 2.0未満 2.0-3.0 3.0超
血清アルブミン値 3.5超 3.0-3.5 3.0未満
ICG R15(%) 15未満 15-40 40超
プロトロンビン活性値(%) 80超 50-80 50未満

2項目以上の項目に該当した肝障害度が2ヶ所に生じる場合には高い方の肝障害度をとる。

たとえば、肝障害度Bが3項目、肝障害度Cが2項目の場合には肝障害度Cとする。

栄養療法

・  エネルギー 30~35 kcal/kg/日    

 耐糖能異常のある場合25~30 kcal/kg/日

・  蛋白質 1.0~1.5g/kg/日(血清アルブミン値が3.5g/dl以下にはBCAA)

       蛋白不耐症がある場合 0.5~0.7g/kg/日+肝不全用経腸栄養剤

・  脂質 エネルギー比 20~25% 重症度に応じた投与法か必要となる

・  腹水がある場合には塩分 5~7/日 にする

・  肝内に貯蔵されるグリコーゲンが減少し糖新生能が低下するため夜間飢餓状態になる。エネルギー基質として筋蛋白を分解して得たアミノ酸からの糖新生が必要となるため骨格筋が減少し窒素出納が負となる。そのため200kcal程度のBCAAをLES(Late Evening Snack)として摂ると良い。

・  LESは糖質中心で蛋白質・脂質・分岐鎖アミノ酸を豊富に含み、胃にもたれず簡単に作れるものがよいため、肝不全用経腸栄養剤(アミノレバン®EN、へパン®ED)を利用するとよい。

・  LESを行うと糖質の燃焼率の増加と脂質の燃焼率の低下がみられ非蛋白呼吸商が改善、血清アルブミン値の上昇、筋肉萎縮の予防などの効果がある。

・  蛋白不耐症における脳症の予防には、肝不全用経腸栄養剤(アミノレバン®EN、へパン®ED)の併用が有効である。蛋白不耐症がなく低タンパク血症を認める例にはBCAA顆粒(リーバクト®)の補充が長期予後の改善に有用である。

・  アミノレバンENは1包50gを180mlの水でとかし(エネルギー200kcal タンパク質約 13.5gフィッシャー比38)1日3回摂取、へパンEDは1包80gを250mlの水でとかし(エネルギー310kcal タンパク質約11.2g フィッシャー比61)1日2回摂取する。

LESとして利用する時は1回の容量、エネルギー量が少ないアミノレバンがよい。

・食道・胃静脈瘤などの消化管出血や脳症極期は経口摂取が困難なことから、経静脈栄養によ

り分岐鎖アミノ酸高含有輸液(アミノレバン®、モリヘパミン®)の投与を行う。但し、急性

脳症や劇症肝炎には禁忌

・肝硬変ではグリコーゲン合成系の異常が見られるため糖質の過剰投与は高血糖を引き起こし肝

機能の悪化を招く。投与速度はブドウ糖5mg/kg/minとする。

・蛋白アミノ酸代謝異常には,分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与により肝臓で作られる蛋白質

の合成が促進され血清アルブミン濃度の改善効果が期待できる。低アルブミン血症による浮腫の改

善がみられる。

・  代償期では,翌日に疲れを残さない程度の軽い運動は,体力維持・QOLの維持に有用である

・  こむらがえりは、ふくらはぎ(こむら)の筋肉が痙れんすること(筋肉の異常収縮)によって起こる。筋肉の痙れんは下肢ではふくらはぎのほかにも、太ももや足の裏、指の筋肉にも起こります。原因はよく分かっていませんが、筋肉の収縮に重要な役割を果たしている電解質(ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなど)のバランスが崩れたり、筋肉に異常な負荷がかかって起こると考えられている。分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与し筋肉の維持をするとよい。

・  腹水は肝細胞が破壊されて減少し,肝臓での蛋白合性能が低下することによって血液中のアルブミンが減少する低アルブミン血症により発生するものと繊維の増加や結節の形成により肝静脈枝や門脈枝が圧迫され、肝内の静脈圧や門脈圧や類洞内静水圧が上昇し、水分を組織中に押し出すことが原因で発生するものがある腹水の治療には安静、食事療法、アルブミン製剤の投与、利尿剤の投与などがあります。アルブミン製剤や利尿剤などの治療が無効の場合は穿刺により腹水を抜くなどの治療をすることがあります

・  瀉血療法と鉄制限食の併用療法を施行すると,非施行症例に比べて肝発癌率を低下させることが可能である。BCAAの投与も肥満肝硬変患者の発癌を予防する可能性がある。

・  BCAAにはインスリン抵抗性の改善効果があり、肥満・糖尿病を伴う肝硬変患者の発癌抑制効果がある。

・  肝疾患では亜鉛の尿中排泄増加と小腸での亜鉛の吸収率の低下が起こり、亜鉛欠乏が生じる。亜鉛が欠乏することで肝予備能低下の一因となっており、亜鉛補充はアンモニアを下げる有効な治療法であるとともにBCAA製剤の作用を促進させる。 

・  肝腎症候群の診断基準 (International Ascites Club,1999)[Gine’s P, Arroyo V: J Am Soc Nephrol 10:1833, 1999]

重症肝障害に伴う腎障害で、原因として肝産生腎血管拡張物質の産生低下、肝内圧受容体の亢進による肝腎反射、末梢血管拡張、有効循環血流量減少に基づく神経性・体液性因子の異常により腎血管収縮、プロスタグランジンやその関連物質が重要とされる
主要項目

糸球体濾過率の低下(血清Cr>1.5mg/dlまたは24時間CCr<40ml/min)

ショック・細菌感染・体液喪失・腎毒性薬剤の投与がない

利尿薬の中止と1.5literの血漿増補液輸液による血漿増容によっても持続的な腎機能の改善

(血清Cr≦1.5mg/dlまたは24時間CCr≧40ml/min)がない

蛋白尿が<500mg/dayで エコー上閉塞性の尿路病変や実質性腎疾患がない

付加的項目

尿量<500ml/day

尿Na濃度<10mEq/liter

尿浸透圧>血漿浸透圧

尿沈渣(赤血球)<50/hpf

血清Na濃度<130mEq/liter

肝硬変患者の栄養療法のエビデンス(2009年版)

Ⅰ. 肝硬変患者におけるPEMの実態

エネルギー栄養状態     蛋白栄養状態

正常           正常       14(13%)

正常           異常       27(25%)

異常           正常       13(12%)   87%

異常           異常 55(50%)

* 血清アルブミン低値(Alb3.5g/dL以下)40%、エネルギー低栄養(基礎代謝量以下)70

Tajika M. et al. Nutrition 17;445-450:2001

・ 代償性肝硬変の20%、非代償性肝硬変の60%にPEMが存在

Plauth M. et al. Clin Nutr 16;43-55:1997

・ 慢性肝疾患の栄養不良の要因

肝臓自体の代謝異常

栄養摂取量の低下、食欲中枢を傷害するサイトカインの増加、腹水、浮腫による腹部膨満感

胆汁分泌障害による消化吸収障害

門脈圧亢進による小腸浮腫、炎症、出血

消化管ホルモンの代謝低下(コレシストキニンなど)

亜鉛欠乏による味覚障害

耐糖能の低下(約30%に合併)

・ 浮腫・腹水のある肝硬変患者の栄養

食塩 5~7g/日

食事以外の水分摂取 500~1000ml/日

ストレス係数 1.2~1.3

蛋白質    1.2~1.3g/kg/日

BCAA投与

・ 肝硬変は、血清アルブミン値3.5g/dLを基準として予後に影響する。

Muto Y. et al. Gastroenterol Hepatol 3;705-713:2005


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◎ 肝硬変患者では、低アルブミン血症を呈する患者においても腹水や浮腫の存在によってBMIやTSFなどの身体計測指標が見かけ上保たれている症例も存在し、その評価が困難である(ESPENガイドライン)。

Kondrup J. et al. Clin Nutr 22;415-421:2003

*肝硬変患者の栄養基準 日本病態栄養学会(2003年)

1. エネルギー必要量

栄養所要量(生活活動強度別)第6次改定(厚生労働省2000年)を目安

耐糖能異常のある場合  25~30kcal/kg/日

2. 蛋白必要量

蛋白不耐症(肝性脳症)がない場合  1.0~1.5g/kg/日

但し、低アルブミン血症3.5g/dL以下、フィッシャー比1.8以下(BTR3.0以下)に

はBCAAを投与することがある。

蛋白不耐症がある場合 低蛋白食(0.5~0.7g/kg/日)+肝不全用経腸栄養剤

3. 脂質必要量

エネルギー比 20~25%

4. 食塩

腹水・浮腫(既往歴も含む)がある場合 5~7g/日

5. 分割食(4~6回/日)あるいはLES(約200kcal相当)

但し、肥満のある症例では、1日のエネルギー量を変えないように分割する。

*ESPEN―肝疾患ガイドライン(2006

1. 一般的事項

・ ベッドサイドで実施可能なSGAや身体計測により患者が低栄養状態のリスクがないか確認する(Grade C)。

・ 生体電気抵抗分析法(BIA)により、定量的に低栄養状態を評価する。但し、腹水症例でのBIAは限界がある(Grade B)。

・ 推奨される摂取熱量は35~40kcal/kg/日(Grade C)。

・ 推奨される摂取蛋白量は1.2~1.5g/kg/日(Grade C)。

2. 経腸栄養の適応

・ 適切な食事指導を行っても患者が経口的に必要量の食事を摂取できない場合(Grade A)。

3. 経路

・ 至適量の食事が摂取できない場合は、経口的に経腸栄養剤を投与するか(Grade C)、食道静脈瘤があってもチューブによる投与を行う(Grade A)。

・ PEGは合併症の頻度が高く推奨されない(Grade C)。

4. 経腸栄養剤の組成

・ 一般的な蛋白組成が推奨される(Grade C)。

・ 腹水症例では高蛋白・高カロリーの組成を考慮すべきである(Grade C)。

・ 経腸栄養剤施行中には肝性脳症を発症した症例ではBCAAを高含有組成の製剤を投与する(Grade A)。

・ 経口のBCAA補充は進行した肝硬変の予後を改善する(Grade B)。

5. 予後

・ 経腸栄養剤は栄養状態、肝機能を改善し合併症を減らし、生存期間を延長することから推奨される(Grade A)。

* ASPEN 肝疾患における栄養補給ガイドライン(2002年)

① 肝疾患患者は栄養不良のリスクが大きいので、栄養スクリーニングをしなければならない。その結果、必要な栄養評価を行って、栄養ケアプランを必要とする患者を検出しなければならない。

② 肝硬変患者の栄養評価には、ビタミン・微量元素(ビタミンADEK、亜鉛)の欠乏の有無が含まれる。胆汁うっ滞性肝疾患患者には、特にこれらを補充投与すべきである。

③ 肝硬変患者には、食事を1日4~6回に分割して頻回投与(夜食も含む)すべきである。

④ 肝性脳症の迅速なマネジメントには、蛋白制限が必要である。

⑤ 肝疾患患者で蛋白制限を長期に行ってはならない。

⑥ 分岐鎖アミノ酸の多い食事を投与したり、それを用いた栄養管理は、薬剤治療によってもよくならない場合に限って慢性型の脳症肝硬変に患者を対象に行うべきである。

⑦ 術前の栄養管理は、肝硬変に合併した肝癌のために肝切除を行う患者に対して行われる。

Ⅱ. BCAA

・ 肝硬変患者では、BCAAが低下し、AAAが増加、およびフィッシャー比の低下がある。

肝硬変でBCAAが減少する理由

① 肝臓で解毒機能が低下したアンモニアを骨格筋で代償的に代謝する際に基質として用いられる。

Yamato M, et al. Hepatol Res 3;91-96:1995

② 肝硬変ではブドウ糖よりBCAAの方がエネルギー効率は高く、骨格筋でエネルギーを産生する燃焼基質に用いられる。

さらに、この燃焼はTNFαによって刺激されるので、炎症やBT、菌血症などにても惹起される。

Kato M. et al. Inter Med 37;1792-1801;1998

Shraki M. et al. Biochem Biophys Res Commun 328;973-978;2005

・ アミノ酸バランスの不均衡が継続すると、アルブミン合成に遺伝子レベルで低下する。

・ 門脈圧亢進症・肝硬変の特徴は、血清アルブミン値の低下がBCAAの低下と相関があ

る。フィッシャー比の低下とともに予後も不良となる。


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Yoshida T. et al. J Gastroenterol 24;692-698:1989

・ ロイシンが肝細胞表面のレセプターに結合することで、アルブミン合成が開始される。

Ijichi C. et al. Biochem Biophys Rea Commu 303;59-64:2003

ロイシンは肝星細胞のHGF(肝細胞増殖因子)の産生・分泌を促進。

Tomiya t. et al. Biochem Biophys Res Commun 297;1108-1111:2002

・ BCAA顆粒の経口長期投与(33か月間)によって、血清アルブミン値の改善と生存率

やQOL(腹水、浮腫、肝性脳症、黄疸、肝癌発生、食道静脈瘤破裂)の改善が得られた。

Muto Y. et al. Clin Gastroenterol Hepatol 3:705-713,2005

・ BCAA経腸栄養剤の長期投与(15か月間)によって、有害事象の累積非発現率(腹水、肝性脳症の予防、child-Pughスコア低下、総ビリルビン値低下、入院回数・入院日数の減少、QOLの改善、予後の改善)が有意に高かった。

Marchesini G. et al. Gastroenterology 124;1792-1801:2003

・ BCAAは、骨格筋内でグルタミン酸からグルタミンを合成する過程でアンモニアを取り込むことによって処理されるが、このグルタミン酸の前段階にBCAAが必須であり、肝硬変患者はアンモニアの解毒のためにBCAAを必要とすることになる。

また、BCAAは脳血液関門でAAAと同一のキャリアーにて輸送されるので、BCAAを増加させることでAAAの脳内移行を阻害することも肝性脳症の治療になる。

・ 肝硬変患者にBCAA顆粒を投与することで耐糖能異常が改善。

Urata Y. et al. Hepatol Rea 37;510-516:2007

ラットの実験で、肝硬変でもBCAAまたはロイシンの投与により、インスリン分泌非依存性に血糖降下作用が確認。

その理由として、

① ロイシンとイソロイシンがPI-3kinase/PKCシグナルの活性化を介して筋肉組織にけるグルコースの取り込みを促進する。

② ロイシンが肝細胞内のmTORを経てp70s6キナーゼを活性化することにより、グリコーゲン合成酵素活性を増加し、グリコーゲン合成能が改善する。

・ BCAAによる免疫能の改善(肝内リンパ球、NK活性など)

Cerra FB. Et al. Ann Surg 199;286-291:1984

Tsukishiro T. et al. J Gastroenterol Hepatol 15;849-859:2000

肝硬変患者にBCAA顆粒を3カ月投与したところ、好中球貪食能、NK細胞活性が有意に改善した。

Nakamura I. et al. Hepatol Res 37;1062-1067:2004

・ 肝硬変患者は門脈圧亢進症から蛋白漏出を約40%に認める。従って、消化吸収されやすい経腸栄養剤は有効である。

・ 利尿剤に反応性の腹水患者に対してBCAA製剤を投与することで、アルブミン値の上昇だけでなく、治療期間の短縮や利尿剤の早期減量が可能になった。

野口ら 肝胆膵 44;657-663:2002

・ 代償性肝硬変の段階に手もフィッシャー比の低下している症例は、早期にBCAA製剤を投与することでアルブミンの低下を予防できる。

Habu D. et al. Hepatol Res 25;312-318:2007

◎ BCAA製剤の投与により還元型アルブミンの上昇と酸化型アルブミンの下降が確認され、BCAAはアルブミンの質の改善に有効

Watanabe A. et al. Nutrition 20;351-357:2007

福島秀樹 栄養-評価と治療 24;147-150:2007

加藤ら 栄養―評価と治療 24;144-146:2007

Ⅲ. エネルギー燃焼比率

・ 肝硬変患者は、間接熱量測定にて安静時エネルギー消費量(REE)の亢進、健常者の1.3倍がある。

・ 肝硬変では、エネルギーを産生する燃焼源としてブドウ糖の割合が低下し、脂肪の燃焼比率が著明に上昇している。この指標として、間接熱量計による呼吸商が有用。


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Tajika M. et al. Nutrition 17;445-450:2001

また、TSFやBMIも有用

Alberino F. et al. Nutrition 17;445-450:2001

この理由は、

肝委縮によるグリコーゲン貯蔵量の減少

肝硬変に伴うインスリン抵抗性

高グルカゴン血症、カテコラミンやコルチゾールの血液中の増加

・ ブドウ糖と脂肪の燃焼率の異常は予後と関係する。

Tajika M. et al. Nutrition 17;445-450:2001

・ 早朝に飢餓状態は強い。一般的に健常者の3日間の絶食に匹敵する。

Owen OE. Et al. J Clin Invest 72;1821-1832:1983

肝臓でのグリコーゲン貯蔵量が減少し、骨格筋の筋蛋白を分解してアミノ酸から糖新生を行うため、骨格筋量が減少して窒素平衡は負に傾き、起床時には体内の脂肪を栄養素として燃焼する。

Scheeweiss B. et al. Hepatology 11;387-393:1990

Ⅳ. LES

・ LESの最初の報告

Swart GR. et al. Brit Med J 299;1202-1203:1989

・ LESによって、エネルギー燃焼率の改善あり。

Plauth M. et al. Clin Nutr 25;285-294;2006

Chang WK. et al. JPEN 21;96-97:1997

LESによって脂質代謝が改善(FFA、ケトン体低下))

今村ら 肝臓 23;113-120:1998

長期間のLESによってQOL改善

奥村ら 日本病態栄養学会 9;159-164:2006

・ BCAA製剤の朝、寝る間の2回投与でエネルギー代謝が改善

Nakaya Y. et al. J Gastroenterol 37;531-536:2002

・ BCAA経腸栄養剤によるLESによってPEMの改善と呼吸商の有意な上昇(長期)

Miwa Y. et al. Hepatol Res 18;184-189:2000


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・ BCAAによるLESによって血清アルブミン値、窒素出納、栄養燃焼効率の改善を認めた(3ヶ月間)。スナック群では、倦怠感や疲労感などの自覚症状の改善のみであった。

Nakaya Y. et al. Nutrition 23;113-120:2007


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BCAAによるLESにて尿中3-メチルヒシチジン低下

Yamauchi M. et al. Hepatol Res 21;199-204:2001

・ BCAAはLESによって通常の投与よりも血清アルブミン値および窒素バランスの改善あり。

Fukushima H. et al. JPEN 27;315-322:2003

・ BCAA経腸栄養剤を用いたLESを入院患者に1週間行ったところ、血糖値の日内変動が有意に改善した。

Okamorto M. et al. Hepatol Res 27;45-50:2003

Sakaida I. et al. Hepatol Res 30S;67-72:2004

Tsuchiya M. et al. Hepatol Res 31;95-103:2005

BCAA経腸栄養剤を用いたLESを3カ月施行したところ、開始前より耐糖能異常を認めた症例が悪化した。

Aoyama K. et al. Hepatol Res 37;608-614:2007

BCAA経腸栄養剤にαグルコシダーゼをLESのみに併用して3カ月施行したところ、耐糖能の改善が得られた。

Korenaga K. et al. Hepatol Res 38;1087-1097:2008

Ⅴ. その他

<経口投与、経腸栄養剤の有用性>

・ 肝硬変患者、特に門脈圧亢進症患者では、小腸機能の低下から消化吸収障害やBTの頻度が高いため、小腸粘膜のIntegrityを保つために経口または経腸栄養を優先。

白木 亮ら 肝胆膵 57;1219-1226:2008

<亜鉛欠乏>

・ 門脈圧亢進症になると小腸粘膜の委縮により、亜鉛の吸収力が低下。

・ 血液中では、アルブミンやα2マクログロブリン、アミノ酸などの結合しているが、アルブミンの減少によってアミノ酸結合が増加し、尿中への亜鉛排泄が増加。

・ アンモニア濃度の低下

オルニチン-カルバミル転移酵素に関与

AMPデアミナーゼにも関与

<脂質>

必須脂肪酸欠乏の予防に、脂肪乳剤は0.3~0.8g/kg/日の投与まで慎重に。

・ リン脂質やコレステロールの低下

・ 肝臓から供給されるリポ蛋白の合成・分泌の減少

・ 脂質の摂取不足

・ 胆汁酸合成低下、門脈圧亢進症による小腸粘膜浮腫による吸収障害

・ 肝における不飽和化反応障害による多価不飽和脂肪酸の欠乏(アラキドン酸、EPA、DHAなど)

・ 脂溶性ビタミンの吸収障害

<蛋白不耐症と蛋白(肝硬変)ジレンマ>

蛋白不耐症: 高度の肝機能低下例やシャントが発達した症例(門脈圧亢進症)では、高蛋白食により血中アンモニア値の上昇をきたし、肝性脳症となる危険性があること。

蛋白ジレンマ: 肝性脳症を予防するために蛋白制限食を投与せざるを得なくなり、低蛋白状態の悪化を助長し、さらに悪化してしまうこと。

* 門脈圧亢進症

門脈圧200mmH2O超(正常値100~150mmH2O)

<耐糖能異常>

・ 肝硬変の約30%に耐糖能異常を合併。特徴は、高インスリン血症と食後の高血糖で、インスリン抵抗性がその要因。

・ 肝硬変におけるグリコキシナーゼ活性が著減するために、食後の肝細胞内への糖のとりこみ能が低下すると共に、骨格筋組織におけるグルコース輸送、グリコーゲン合成能の低下による。

<アルブミンの代謝>

・ アルブミンは585個のアミノ酸からなる分子量約66kDaの蛋白質で、全血漿中に存在する蛋白質の60%。

・ 生理機能としては、血漿浸透圧の維持、輸送蛋白、アミノ酸の供給源(栄養不良時)、酸化・還元緩衝に携わる。

・ 血漿の膠質浸透圧の75~80%を維持し、アルブミン1gは約20mlの水分を保持。

・ 成人の生体内貯蔵量は約300gで、約40%は血管内、残りの約60%血管外にある。1時間に全体の5%づつが相互に入れ替わりながら平衡を保つ。

・ アルブミン合成は主に肝で行われ(0.2g/kg/d:10~15g/d)、エネルギー摂取量。血中アミノ酸濃度、ホルモンや、血漿膠質浸透圧などによって、転写・翻訳レベルから調節を受ける。

・ アルブミンの分解は全身の組織で行われ、1日の分解率は生体内貯蔵量のおよそ4%程度(12g)であり、主な分解の場としては筋肉、肝、腎などでこれらで約40~60%が分解。

・ アルブミンの半減期は平均17日であるが、肝硬変患者ではアルブミン合成能の低下とそれに伴う代謝性の分泌低下があるので、生体内での半減期は延長している。

Ⅵ. BCAAと発癌

・ 肥満を有する(BMI25以上)C型肝硬変患者がBCAA顆粒の経口投与を継続することで、発癌率が低下。

Muto Y. et al. Hepatol Res 35;204-214:2006

この理由は、

BCAAが骨格筋でインスリン抵抗性を改善

Nishitani S. et al. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 288;G12191-1300:2005

還元型アルブミンの上昇による抗酸化作用

Fukushima S. et al. Hepatol Res 37;765-770:2007

Ohno T. et al. Hepatol Res 38;683-688:2008