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第1回在宅経腸栄養療法セミナー開催のお知らせ(2014.11.08)

第1回在宅経腸栄養療法セミナー開催のお知らせ

2014年11月8日(土)

会場名:安保ホール301(名古屋駅前)

主催:フレゼニウスカービジャパン株式会社 

 今回、在宅医療に携わっていらっしゃる全ての職種の方を対象に、在宅経腸栄養に関するセミナーを開催いたします。内容は、経腸栄養をやるとかやらないとかの倫理的問題ではなく、必要な患者さまに安全で適切な在宅経腸栄養療法を提供し、その適応に悩んでいる患者さま・ご家族、そして医療・介護スタッフの皆さんに実りある情報提供をテーマとして、現場の最前線で活躍されている講師陣による実践に即した内容でのセミナーを企画いたしました。また、最後の講演では、実際に在宅経腸栄養を施行していらっしゃる患者さまにも自らの体験談を発表していただく機会もいただけました。是非、医療・介護、そして福祉関係の皆様の多数のご参加をいただきたいと思います。

          たけうちファミリークリニック 院長 武内有城

下記のファイルをダウンロードしていただき、FAXにてお申し込みください。

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経鼻胃管からの栄養剤投与によって著明な発汗をきたす患者

<症例>

90歳代女性

入院時診断名:誤嚥性肺炎(右)、脱水

既往歴:多発ラクナ梗塞(基底核、大脳白質)、胃切(‐)

現病歴とNST介入までの経過:グループホーム入所中で、1年前からケーキやチョコレートなどの好きなものだけを少量食べ、誤嚥・脱水で入退院繰り返していた。4月末日より食事中にムセあり、食事・水分摂取困難となり、諸症状(発熱・チアノーゼ)みられ上記診断にて入院。入院後、肺炎に対し酸素療法・抗生剤投与にて改善。CT上、新たな脳梗塞(右被殻・左前頭葉)あり嚥下障害(仮性球麻痺)みられST介入し、摂食嚥下リハビリテーション開始。摂取量増えず、5/24経鼻胃管栄養開始。家族の経口摂取の希望も強く、併用実施。経管栄養開始後から異常な発汗がみられている。

投与状況:経鼻胃管チューブ8Fr (左鼻50cmで咽頭交差あり)

     朝・昼:メイバランス1本(1時間)+湯150ml(30分)

     夕:メイバランス2本(2時間)+湯150ml(30分)

           昼のみ嚥下訓練B食(甘いもの2品)

投与内服薬:バファリン1錠/朝、ラックビー微粒3g/毎食後

発汗の現状:

<6/5夕~6/6朝の観察>

朝:開始10分後から発汗が始まり、25分後頸部・顔面

・両上肢へ拡大。開始50分後にはほぼ全身へ。流れるような発汗は見られず。

昼:パジャマがかなり湿る状況で、下肢以外の部位。

夕:頭部、左上肢に流れるような発汗。その他の下肢以外もパジャマがかなり湿るほど。

(終了直前)

<看護記録からの情報>

  ・夕・昼間の発汗の記録が比較的多いが、すべての記録がなされているわけではない為、不明。

発汗以外の症状:

  ・湿性音あり、口腔内唾液様のもの増加あり。

  ・意識レベルは変動あるが、発汗がある際は比較的良好である。

本症例での疑問点:異常な発汗の原因は何か?

1.まずは、発汗に関する解剖生理

<エクリン腺>

・全身に分布で約500万~約200万個。実際は半分程度で活動。皮膚の表面から1~3mmの所にあり肉眼ではほとんど見えない。

・汗の量を左右し、体温調節を行う。発汗量⇒快適な気温でも一日約900cc。夏は1時間当たり400~500cc。

・働きは自律神経の一つ交感神経の支配を受け、中枢は視床下部(脳の底の一部)。交感神経支配だが、神経伝達物

質は通常のカテコラミンではなく副交感神経と同じアセチルコリンである。発汗には情動不安定や自律神経失調症状を伴うことも多く、大脳皮質や大脳辺縁系との関係も推測されている。

<汗の種類>

1)温熱性発汗:暑い時や運動した時、体温調節のためにかく汗

2)精神性発汗:緊張した時や驚いた時に出る冷や汗で、手のひらや足の裏、わきの下から出やすい

3)味覚性発汗:辛いものを食べた時に額や鼻にかく汗

2.汗の原因

<全身性発汗>

1)気温上昇時、運動時、睡眠時⇒ 健康人でもおこる

2)突然の嘔吐・悪心⇒健康人でもおこる ⇒嘔吐に至らない逆流が実は発生しており、悪心の為、発汗に至っている可能性もあり?

3)病的状況

①発熱:感染症(結核やリウマチ熱)と悪性腫瘍、膠原病

②全身衰弱

③激痛(腎疝痛、胆疝痛など) ⇒認知症あり、発語少なく把握不可能。症状出現時、苦痛表情あり。

④基礎代謝の亢進する疾患:甲状腺機能亢進症⇒甲状腺ホルモン量が増加し、代謝が増す(約10%)

             副腎腫瘍⇒アドレナリンの分泌が多くなる

             多血症:赤血球の増加による

             ⇒当患者では、不明であり要検討が必要。

               (入院時5/1 TSH:0.760 FreeT3:1.09(↓) FreeT:1.12)

⑤妊娠 ⇒該当なし

⑥閉経期(皮膚の発赤を伴う) ⇒閉経しており、当患者には該当なし

⑦末梢循環虚脱(心不全のある時期)

⑧呼吸困難、高二酸化炭素血症

 呼吸性アシドーシス:血液中の二酸化炭素が増加して、脳の体温調節中枢の調節レベルを低下させ、発汗が増加。

症状:頭痛、振戦、痙攣、傾眠がおこる。特に発汗は著明で、体温に関係なく見られる。呼吸性アシドーシスでは高K血症を伴うことが多く、長く続くと、尿中にKが排出され、逆に低K血症になる。高K血症では、知覚、運動障害が徐々に出現し、意識・精神障害は通常少ない。⇒症状出現時のSpO変化なし。経管栄養実施により炭水化物摂取による炭酸ガス産生量の増加に伴い換気系で代償?でも、呼吸不全はない・・・・もしくは、唾液の増加もあり、純粋に呼吸状態が悪化している?

⑨手術、重篤疾患の回復期 ⇒該当なし

⑩間脳てんかん:発作時に発汗がおこる⇒症状出現時、けいれんはみられていないが、実情は不明

4)薬剤や化学物質による影響

甲状腺ホルモン剤や農薬中毒などで発汗過多。体内に炭酸ガスが増えた場合、皮膚が紅潮して発汗する。

  (例)アナフラニール、ニトログリセリン、プレドニン、ベイスン、ルジオミール、セロトニン症候群

⇒当患者では該当する薬剤はない。

<局所発汗>

1)精神的緊張状態で、手掌・足底・腋窩に発汗がみられる。

2)局所の発汗を起こす病的状態

①くる病:・・・・・・・・頭部(頭汗)が多い

                原因:ビタミンDの供給不足・日光曝露不足・吸収能低下・リン欠乏など

     症状:不機嫌、不安、不眠、発汗、蒼白な皮膚、筋弛緩など

            ⇒おこっているのは全身性の発汗ではあるが、可能性はあり。

②縦隔腫瘍:・・・・交感神経の刺激で一側性(顔面・頭部・体幹部) ⇒現状では指摘なく、不適合。

③大動脈瘤:・・・・交感神経の刺激で一側性(顔面・頭部・体幹部) ⇒現状では指摘なく、不適合。

④関節リウマチ:・・・活動期には手・足が発汗。 ⇒RAなく、不適合。

⑤片麻痺:・・・・・・・・罹患部に発汗 ⇒初回脳梗塞の既往にて、左側麻痺あり。臨床所見的に、顔面神経麻痺は考えられるため、上肢・頭部の発汗は影響が考えられる。ただし、羅患部に以外にも発汗がある。

⑥神経筋異常:・・・・罹患部に発汗 ⇒現状では指摘なく、不適合。

<その他>

 1)ダンピング症候群 (dumping syndrome):食物が胃を経過せず急速に小腸に送り込まれることが原因で2分類ある。

早期ダンピング症候群:通常よりも濃い食物が小腸に流れ込み、浸透圧で体の水分が腸の中に逃げることが原因で、一時的に血液が減少したのと同じ状態になる。

症状:動悸、立ちくらみ、めまい、悪心等

⇒胃切の既往はないが、経鼻胃管チューブが胃内留置ではなく、経鼻幽門ルートになっていて、上記症状がおこる可能性もある?

(円背があるため、位置確認をするもわかりにくいとの事)

  医師の記録だと・・・「繰り返すなら、透視下で十二指腸以下にチューブ留置する」

               これで改善されるのは、逆流ではないのか?

後期ダンピング症候群:インスリンが過剰に分泌されることが原因で、低血糖を引き起こす。

症状:発汗、疲労感、立ちくらみ、めまい等

⇒看護記録より発汗時の低血糖はない。また経管中・終了直前から症状が出現してい

るため、後期ダンピング症状としては早すぎるので否定的。

一般的な対策:・時間をかけてゆっくりと食事をする(90分ほど)

・少量ずつ回数を一日5回程度に増やす

・飴やチョコレートといった甘い物を持ち歩き、低血糖症状時に摂取

 2)投与速度:一般的には胃内投与200ml~400ml/時、小腸内投与100ml/時

⇒栄養剤投与速度は問題ないが、湯の投与方法が早すぎるのではないか?

3)先行期を使わない経管栄養特有の原因

人間は普通、その時の生理的な必要量と消化吸収能力とによって生理的に決まる。それに対して経管栄養は医療者側の判断で決められるため、量的な差が発生。(経管栄養の方が量多くなる傾向がある) 過剰摂取された水分は排泄されるが、病人においては皮膚排泄に頼るところが大きいため、発汗が起きる。(引用:ナイチンゲール看護研究所http://www.nightingale-a.com/index.html

⇒もともと摂取量が少なく、本人が希望する量との差が大きい可能性もあり、過剰分を皮膚排泄している?

 4)迷走神経反射

食事が入る前に十分な胃の受容性弛緩が必要であり、味覚刺激や嗅覚刺激があると、通常収縮している胃が準備を始めるが経鼻胃管栄養を含む胃瘻・腸瘻などは、胃に食事がいきなり入ってくるため、胃はびっくりし、迷走神経反射を起こす。

   ⇒当患者では十分に考えられる。

 5)ショック、アナフィラキシー様症状(頻度不明)

 症状:血圧低下、意識障害、呼吸困難、チアノーゼ、悪心、胸内苦悶、顔面潮紅、そう痒感、発汗等

   経腸栄養剤全般に対し、ショック、アナフィラキシー様症状に関連した副作用症例の調査が行なわれ、複数の製剤で報告されている。⇒看護記録より発汗時のバイタルサインの変動はなく、否定的。

6)電解質バランス

 発汗が続く事により、低Naに陥る危険あり。また、水分喪失から脱水のリスクもあるためBUN・Crの観察が必要。

7)微量元素・ビタミン

 入院時: 5/1            5/6          6/3

    Ca  8.2↓     7.7 ↓         8.5↓

    Mg  2.7       2.3          ×

         P   2.0↓      2.4↓     ×

 8)逆流性食道炎

   経鼻胃管栄養の欠点に逆流性食道炎が挙げられる。

   ⇒もともと摂取量が少なく、消化管運動が緩慢になっている事も考えれる。また、発汗以外の症状として、湿性音も聞かれており、経腸栄養終了直前には口腔内の唾液の増加も認められる。

さらに、施設ではランソプラゾール®が内服されている経緯があるため、充分考えられるのでは?

3.考察と対策

  数々の原因が挙げられたため、実践可能なものから実施し、原因を見つけていく。

  1)経鼻胃管栄養チューブの先端位置の確認

  2)投与スピードの変更

   3)熱型と発汗、いつ発汗が多いのかの更なる観察

  4)血糖値のモニタリング

  5)血液ガス、電解質バランスのモニタリング

  6)微量元素のモニタリング

  7)消化管運動促進薬の使用(ガスモチン®など)

  8)甲状腺機能の再確認

 9)消化管造影による胃内容排出、逆流の確認

 10)口腔内糖濃度の確認(テステープ)

4. 結果

 最終的には、不顕性誤嚥による発汗・発熱が疑われ、対応を検討中。

2011.06.07栄養学習会(短腸症候群)

短腸症候群(Short Bowel SyndromeSBS

・ 短腸症候群とは、小腸の大量切除に伴う吸収不良の状態で、通常成人では小腸は5~6m、小児では2mであり、70~80%切除されると重度の消化吸収障害となる。原因は、成人では上腸間膜閉塞症、クローン病、外傷など、小児では小腸閉鎖症や腸回転異常症などが多い。

・ 短腸症候群における消化吸収障害の程度は、

手術時の年齢

残存小腸の長さ

回盲弁の有無

残存小腸の病変の有無

腸切除後の経過時間

残存小腸の適応能力

残存小腸の部位

合併切除臓器の有無などの栄養を受ける。

・ 短腸症候群の診断基準は、十二指腸を含まない残存小腸の長さが成人で150cm以下、小児(15歳以下)で75cm以下とされている。残存小腸が、30cmあれば経腸栄養は可能、60cmあれば経口摂取は可能とされる。

・ 1m以上の回盲弁を含む小腸切除では、腸内通過時間が1/5、糞便量と脂肪、蛋白の排泄(非吸収)が3~6倍となる。

・ 空腸が大量切除されると、膵液胆汁分泌が影響を受けて、脂肪やタンパク質の消化吸収が低下し、カルシウム、マグネシウムの喪失がおこる。しかし、回腸が十分に残存していれば、代償される。

・ 回腸は、炭水化物、タンパク質、水電解質だけでなく胆汁酸、ビタミンB12、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の主な吸収部位なので、これらの欠乏と脂肪性下痢が発生する。

・ 回盲弁は回腸と結腸の圧格差を維持するために重要で、この機能により栄養素が小腸を通過する時間が保たれ、結腸内の細菌の小腸への逆流を防止している。

・ 短腸症候群では、結腸の残存は水電解質の吸収を保ち、下痢を防ぐために重要であるが、結腸内の細菌の小腸への逆流や、シュウ酸と乳酸の過剰吸収による腎結石や乳酸アシドーシスを合併することがある。

・ 可溶性食物繊維(ペクチン、グアーガム)は、胃内容の粘張度を増して胃排泄を遅らせたりする作用をもち、また、大腸内で腸内細菌が発酵してつくられる短鎖脂肪酸の前駆物質でもあり、SBS患者にとってはエネルギー利用の面からも有用。しかし、不溶性繊維(セルロースやキチンなど)は消化管ではほとんど消化されずに便形成に役に立つが、SBS患者においては窒素、Ca、亜鉛などの便への喪失を増加させるためにむしろ有害の可能性がある。

・ 可及的早期に経腸栄養を開始することは、残存小腸の再生を促し、機能維持に重要である。

・ 腸管大量切除後は以下の合併症に気をつける。

ガストリンの分泌亢進による胃や上部消化管の潰瘍 → 制酸剤

鉄の吸収障害 → 鉄剤投与または静注

胆汁酸の吸収障害(回腸末端)による胆石、必須脂肪酸欠乏、脂溶性ビタミン欠乏→ 利胆剤(コレスチラミン)、脂肪乳剤、ビタミン剤の投与

脂肪便形成によるカルシウム、マグネシウムの欠乏 → 補充

セレンや亜鉛などの微量元素欠乏 → 補充

ビタミンB12欠乏(回腸末端)による大球性貧血 → 補充

D乳酸の腸管内過剰産生によるアシドーシス → 腸内細菌の活性化、グルタミン投与

腸管の拡張、壁の菲薄化によるバクテリアル・トランスロケーション→ グルタミン投与、経腸栄養の継続

蓚酸過剰による尿路結石 → 低蓚酸塩食

・ 腸管免疫の低下、バクテリアル・トランスロケーション、栄養デバイス(CVカテーテル、リザーバーなど)の感染・合併症が患者の予後を左右する。

<栄養管理ガイドライン> 静脈経腸栄養ガイドライン 第2版

1. 広汎な消化管切除を受けた患者あるいは短腸症候群の患者は栄養学的なリスクを有している。栄養アセスメントを実施し、栄養管理計画を作成する。

2. 小腸粘膜の萎縮防止や残存小腸機能の増加・回復を目的に可能な限り経口摂取への移行を試みる。

3. 経口摂取あるいは経腸栄養で栄養必要量が満たされない場合、中心静脈栄養を併用する。

4. 正常な大腸を有する場合に、低脂肪・高複合炭水化物食が望ましい。

SBS患者での比較試験では、大腸が残存している患者において低脂肪・高複合炭水化物食[low fat-high corbohydrate diet]では高脂肪・低炭水化物食に比べ、便中のエネルギー損失が500kcal/日減少し、エネルギー吸収は有意に高かった。炭水化物の種類に関しては、単純炭水化物(単糖類)はSBS患者では浸透圧性の下痢を起こすことがあり、発酵による短鎖脂肪酸の変換もしないため、複合炭水化物の方が望ましい。

5. 正常な大腸を有する場合には、低蓚酸塩食(生野菜、特に緑色野菜、ホウレンソウを避ける)を試みる。

食物中の蓚酸(oxalate:HOOCミCOOH)は、通常カルシウムと結合し不溶性複合体として便に排泄されるが、腸内のカルシウム量が少ないと腸管から蓚酸の吸収が増加する。また、脂肪はカルシウムとの親和性が蓚酸よりも強いため、蓚酸と結合するカルシウムを減少させて遊離型蓚酸の吸収を増加させる。SBS患者で大腸が残存して脂肪便がみられる場合には、蓚酸は大腸から容易に吸収されるため、蓚酸塩腎結石症を発症しやすくなる。また、増加した蓚酸が小腸内に逆流しても同様に血中に蓚酸が増加する原因となる。

6. 回腸末端切除症例では、月1回非経口的にビタミンB12を補充する。

 

短腸症候群の栄養管理

<第1期術直後期(術後1か月以内)>

A. 腸麻痺期(術直後2~7日間)

TPNは必須

25~30kcal/kg/日、たんぱく質1.2~2.0g/kg(理想体重)または総カロリーの15~22%、脂肪20~30%、

水分30~35ml/kg+喪失分、Vit A,D,E,K,B12、Ca、Mg、亜鉛の補給

B. 腸蠕動亢進期(術後3~4週間)

多量の下痢に伴う水分と電解質の喪失

水分と電解質の補充

微量元素、特に亜鉛欠乏に気をつける

必要カロリー量(H-B式+Long法、または40kcal/kg/日)の投与

<第2期回復適応期(術後数か月~12か月)>

残存腸管の再生の促進により、吸収能が改善し、下痢も改善

経口摂取を開始し、TPNを減らす。

残存腸管が短く下痢が持続する場合には、消化吸収のよい成分栄養剤や経口の場合には低残渣食を用いる。

欧米では、ペプチド・ベースの栄養剤(半消化態栄養剤)のほうが、アミノ酸ベースの栄養剤(成分栄養

剤、消化態栄養剤)よりも吸収効率が高いとされて推奨されているが、本邦では浸透圧に気をつけて成分栄養剤または消化態栄養剤を使用することが多い。

吸収効率の良いMCT(中鎖脂肪酸)を含んだ低長鎖脂肪酸の投与が推奨。

アルコールやカフェインは消化管活性を促進するために、避ける。

残存小腸の機能維持および促進のために、グルタミンを用いる(欧米では、少なくとも25g/日)。

<第3期(Ⅱ期以降数年)>

腸管が十分に適応する時期

経腸栄養を進めて、TPNの離脱をはかる。

TPNから離脱困難な症例は、在宅静脈栄養(home pareteral nutrition:HPN)の適応となる。

小児で20cm、成人で40~50cmが、TPNから離脱可能な残存小腸の長さの基準。

経腸栄養剤の経口補給だけで不十分な症例は、夜間のみ自己挿入した経鼻胃管からの持続的経腸栄養も考慮する。

通常、残存小腸が60cm以上あれば、経口摂取は可能。

正常な大腸を有する場合は、低脂肪・高複合炭水化物を選択する。

正常な大腸を有する場合は、低シュウ酸塩食を試みる。

回腸末端切除例では、月1回非経口的にビタミンB12を補充する。

下痢が続く場合には、乳糖が入っていない食事を選択する。

グルタミン、成長ホルモンやファイバーを多く含む食事を投与する。

必須脂肪酸、脂溶性ビタミン、微量元素の欠乏に気をつけ、適宜、必要なら非経口的に補充していく。

胃液の過剰分泌によって胃・十二指腸潰瘍を発生しやすい(ガストリンの分泌亢進)ので、PPIやHブロッカーを適宜使用する。但し、腸内細菌の異常により、逆に下痢を惹起することもあるので注意を要する。

脂肪便によって、CaやMgが石ケン形成によって喪失するので、テタニーや骨粗鬆症などに気をつける。

下痢のコントロールに、ロペラミド(ロペミン®)やオピオイドを使用する。

2011.05.17栄養学習会(経腸栄養時の下痢対策)

* 経腸栄養剤に伴う下痢対策

・経腸栄養剤で下痢は最も多い合併症である(2.3~68%)。原因はいろいろで、まずは経腸栄養法による下痢か、そのほかの原因による下痢かを鑑別する。経腸栄養法によるもので最も多い原因は注入速度で、その他栄養剤の組成、浸透圧、細菌汚染(栄養剤の細菌汚染)Clostridium difficileがある。その他のものでは、抗生物質、特にペニシリン、セフアロスポリン、クリンダマイシンなどを投与すると、腸内細菌のが増殖し分泌性下痢を生じる。低アルブミン血症も腸管の浮腫や粘膜の萎縮などのために下痢の原因となる。しかし、下痢のために経腸栄養を中止することはない。その原因を確かめて対応することが重要。

・注入速度の目安は胃内200~300ml/時、小腸内100ml/時以下であるが、個体差があるため投与速度を落としたり、固形化栄養への変更を考慮する。浸透圧が高い成分栄養でも投与速度を調節することにより下痢の発生を防ぐことができる。

・浸透圧の高い経腸栄養剤は下痢症の原因となる.血管内の浸透圧である300mOsm/Lに近い栄養剤が最適であるが、500mOsm/L以上の高い浸透圧のものは予め希釈するなどの配慮が必要となる。但し、通常の300mOsm/L前後の経腸栄養剤を下痢予防のために、希釈して投与することは推奨されない。施設のやり方が優先されるが、基本は投与速度の調節。

・乳糖不耐症の場合は乳糖を含まない経腸栄養剤を使用。脂肪吸収障害の場合は脂肪含有量の少ない経腸栄養剤や、吸収されやすい中鎖脂肪酸が含まれているものを選択する。

・経腸栄養剤の温度が低いと低温刺激による蠕動運動の亢進により下痢を引き起こすため、温めて(人肌)注入するとよい。

・経腸栄養剤を投与バックに移して使用すると6時間目頃から細菌の繁殖がみられ、8時間以上経過すると下痢発生の危険が出でくるため8時間以内に投与を終了する。クローズド・システムで投与できるものは24時間まで最近の汚染は見られなかった。

・長期間、絶食が続いた場合は腸管粘膜の萎縮が起こっていることがあるため吸収能力が低下している。腸管の吸収能力を回復させるためにGFO®の投与を行うことが有効である.

<経腸栄養剤の下痢チェックポイント-コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック>

✓ 経腸栄養剤の注入速度:消化管の馴化期間を十分にとる

注入速度は20~30ml/hrで開始し、徐々に上げていき、1週間前後で維持量に到達。

持続注入の場合には、必ずポンプを使用する。

下痢が発生したら、いったん注入速度を下痢のないところまで戻し、腹部症状を慎重に観察しながら、再び緩徐に注入速度を上げていく。

注入速度が100ml/hrを超えると下痢を起こしやすい。

✓ 経腸栄養剤の温度が冷たい。

✓ 乳糖不耐症による可能性があれば、経腸栄養剤の成分をチェック。

✓ 浸透圧の高い経腸栄養剤(特に、エレンタール®)は水分吸収のアンバランスで下痢を起こしやすい。

✓ 最近の経腸栄養剤は常温保存でそのまま注入はきるが、加温する場合には60~70℃の湯で10分間温める。

✓ 細菌感染、特にクロストリジウム・ディフィシル(偽膜性腸炎)D-1毒素。

✓ 脂肪吸収障害

<当院における経腸栄養剤の下痢対策>

投与速度 ・・・ ゆっくりする。

投与量 ・・・ 予定投与量の3分の1〜2分の1の量から開始し、徐々に増やす。

濃度(浸透圧) ・・・ 希釈することも可能だが、水分が多すぎても下痢になることもある。また、胃液、消化液で希釈されるため、あまり効果が期待できない。

温度の調節 ・・・ 冷たくしない。

乳糖不耐症 ・・・ 乳糖を含まない製剤へ変更、ラクターゼ投与。

脂肪吸収障害 ・・・ 脂肪含有量の少ない製剤への変更。

細菌の繁殖予防 ・・・ 経腸栄養剤や器具の汚染予防、清潔管理。

細菌性腸炎 ・・・ 適切な抗生剤使用または腸管安静。

食物繊維の追加(サンファイバー®など)

下痢止めの併用(グルタミン®、ロペミン®、リン酸コデイン®、ラックB®、ビオフェルミン®、コロネル®)

半固形化栄養剤も下痢予防に有効。

* 腸管の炎症や浮腫による吸収障害では、なるべく腸管のストレスを軽減するために、食物繊維を含まない栄養剤が有効なこともある。できれば、アミノ酸、脂肪なども吸収しやすい成分にすることも有効。 キューピ K-2S®という経腸栄養剤もある。

* 消化吸収障害・消化管機能不全への経腸栄養

・成分栄養剤使用の注意・・・浸透圧が高いので、下痢の発生予防として投与は要注意

脂肪含有量が少なく、必須脂肪酸欠乏への注意

・胃でのタンパク質消化を要する半消化態栄養剤、濃厚流動食は基本的には胃内投与

腸瘻からの投与の場合には、消化酵素製剤を併用

・脂肪吸収障害患者への経腸栄養

消化酵素製剤やウルソデオキシコール酸の併用

長期留置型PEGチューブの使用経験

長期留置型ポリウレタン製PEGカテーテルの在宅経腸栄養患者における有用性

【はじめに】

PEGの適応においては、造設時の合併症だけでなく、カテーテル交換に伴う合併症やその方法、時期なども問題となる。特に、継続的に在宅治療を施行している患者・家族においては、できる限り同じ医療環境を希望して、定期的入院を希望しない場合もある。当院では、長期間留置が可能とされるポリウレタン製カテーテル(フレンタEDカテーテル®)を在宅患者に使用して良好な成績を認めているので報告する。

【当院の使用経験】

当院では、フレンタEDカテーテル®の適応を表1として、患者・家族と相談して決定している。


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2007年より長期留置の同意を得られた16例(初回造設10例、交換6例)に対し、再造設3回を含めてフレンタEDカテーテル®を用いたPEGを19回施行した。対象16例は平均年齢77.8歳で、基礎疾患は表2に示す通りで、10例のうち6例は全身状態が不良などの理由でPEG困難としてNSTに紹介となった症例であった。


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症例全体の1年生存率53.0%、2年生存率44.2%であった。平均留置期間は912.2日(31~1051日、中央値403.8日)で、194日目と756日目に先端部の自然脱落を認めたが、1-2年留置率は90.0%であった(Kaplan-Meier法、2010年4月現在)(図1)。


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在宅担当医の希望にて2年目(842日目)に交換したカテーテルは、栄養剤による色素沈着は認めるものの開存・形状維持ともに問題なかった(図2)。


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【症例】

患者は70歳代の女性で、60歳代でアルツハイマー病を発症して徐々に寝たきりとなり、3年前より誤嚥性肺炎にて入退院を繰り返していた。2004年に当院へ在宅管理目的にて紹介され、2006年にPEG施行を勧められたが、拡張した大腸が胃の前面を覆う形でPEG困難としてNSTに紹介となり、CTガイド下にPEG施行した(図3)。


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6ヵ月後の1回目の定期交換にあたり、在宅での継続医療を希望され、2007年5月にフレンタEDカテーテル®に交換した。2007年11月には喀痰排出困難から窒息をきたし、気管切開+在宅人工呼吸管理を継続している。銅欠乏の予防と脳機能改善目的にココアを毎日投与しているため、カテーテルの色素沈着はあるが、2010年4月現在1051日と最長留置期間更新中である(図4)。


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【当院の使用経験でわかったこと】

① ポリウレタン製胃瘻カテーテルは長期留置が可能であるが、丁寧かつ慎重なカテーテル管理が必要である。特に、細菌・真菌(カビ)などへの対策を行わないと、比較的早期にカテーテルの劣化や脱落の可能性が高くなる。酢水や水分ゼリーによるカテーテル・クランプは有用な可能性がある。

② 通常の経腸栄養剤の投与と管理を行っている限り、閉塞を起こすことはない。

③ 当院の経験では2年留置には問題ないが、最低1年に1回はX線にてカテーテル形態の確認を行った方がよい。

④ カテーテル先端の逸脱を認めた場合には、胃内に確認できれば回収と再造設を同時に行うことが可能である。また、十二指腸より肛門側まで進んでしまった場合でも、再造設を施行した後に自然排泄を待つことで対応できる。

【まとめ】

フレンタEDカテーテル®はカテーテル素材にポリウレタンを使用しているため、その耐久性と開存性の高さから平均留置期間も長いとされている(平均916日)。今回のわれわれの経験から、カテーテル劣化や閉塞の原因となりうる細菌・真菌対策を十分に行い、慎重に取り扱うことで本邦でも同様の成績が得られる可能性があることがわかった。さらに、当院の成績で2年間の留置率が約90%で、胃瘻患者の2年生存率が今回約50%であったことを考えると、多くの患者が3~4回の交換のリスクを軽減できる可能性がある。今回のわれわれの症例は、原疾患および誤嚥性肺炎、蘇生後脳症の治療については議論があるところだが、フレンタEDカテーテル®による在宅経腸栄養が家族やスタッフの在宅治療継続の希望と予後に貢献する可能性を示唆した。

フレンタEDカテーテル®のお問い合わせは、(株)フレゼニウス・カビの担当者までお願いします。