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摂食嚥下障害患者に対する栄養療法(2016年4月29日)

1. 脳卒中患者の摂食嚥下障害に対する栄養療法

✓早期に経腸栄養を開始した患者(1週間以内)は、静脈栄養を行って経腸栄養の開始

が遅れた患者に比べて、6か月後の死亡率が低かった(42.4% vs 48.1%)。

✓経鼻胃管の口径は逆流には関係しないが、太いチューブは訓練に影響する。

✓PEGに関しては、発症後7~10日以内の急性期に行った群の方が、経鼻経管栄養を行った群よりも死亡率が高く、機能予後も悪かったという報告あり。これに対して、1か月後にPEG栄養を開始した患者は、経鼻経管栄養患者に比較して栄養状態も予後もよかったとの報告あり。したがって、PEGの実施は、先ず細径の経鼻経管栄養を行いつつ、嚥下訓練の効果をみながら、長期が予想される場合に1か月を目安に施行する。

✓亜急性期は経腸栄養を中心に栄養管理を行い、摂食・嚥下機能評価を行って安全に経口摂取に移行することを目指す。

✓慢性期は経口摂取への移行が望ましいが、経腸栄養が長期になる場合や摂食・嚥下障害が強い場合は胃瘻などを活用する(食べるためのPEG)。

✓急性期(発症から1週間以内)は、静脈栄養のみ。亜急性期(発症から3,4週間以内)の神経症状が安定するまでは、状態に応じた栄養管理とリハビリを開始する。発症後1ヶ月以降の慢性期は嚥下の評価を行い、長期方針をたてる。

急性期(発症または手術後3~4日)・・・脳浮腫がピークとなり、約1週間で軽快する。脳の治療を優先しながらPPNを行い、できるだけ早期より(3~4日目)経腸栄養を開始する。脳圧亢進などのために嘔吐が続くときには、経口摂取は避ける。

亜急性期(発症後または手術後3~4週間)・・・できる限り経口摂取を進めていくが、嘔吐や合併症のために困難な場合はTPN、摂食・嚥下障害があれば評価を行い、訓練を開始する。PPNから経口摂取、経腸栄養へ移行していく。

慢性期・・・神経症状が固定する時期で、意識状態や嚥下機能で栄養療法を決定していく。経口摂取が不十分であれば、ENを行うが、長期の場合にはPEGを考慮する。

2. 認知症の摂食嚥下障害に対する栄養療法

✔ 認知症患者の摂食嚥下障害の有病率は、13~57%とされる。

✔ 認知症患者は、病状の進行とともに摂食嚥下障害の合併が見られるようになる。

✓ 認知症の摂食嚥下障害の具体例

食べない、口を開けない

食べることを忘れる

食べるものが認知できない

食べるための準備(買物、調理など)ができない

食事に集中できない、中断する、停止する

他のものに気を取られる、固執する

他人の食事が気になる、とってしまう

食べ物以外のものを食べてしまう

食事の速度がはやい、口に詰め込む

お箸や食器が使えない、手づかみや直接口で食べる など

✓ 各認知症の病態に応じた対応(認知症の栄養管理参照)

http://www20.atpages.jp/hospynst/?page_id=1518

✓ 認知症の摂食嚥下障害に対して、特殊な栄養療法はない

3. サルコペニア、老嚥による摂食嚥下障害に対する栄養療法

✓ 投与エネルギー量は、20~30kcal/kg(現体重)/日に設定する。

✓ 炭水化物の投与量は、健常高齢者と同等。

✓ 脂質は、骨格筋量の減少や運動負荷を勘案してやや控えめに設定。

✓ タンパク質は、1.0~1.5g/kgを目安に十分量を投与する。

✓ BCAAは有用な可能性があり、リハビリテーションの前後に摂取をすすめる。 ✓ ロイシン、ミルクプロテインに有用性があるかもしれない。

✓ ビタミンD700~1000IU/日(1.75~2.5μg/日)摂取で転倒リスクが減少し、筋量・筋力増大の可能性あり。

✓ ビタミンB6、B12もホモシスティン濃度が上昇し、有効な可能性。

✓ 抗酸化薬(ビタミンACEなど)や降圧薬ACE阻害剤が有用との報告もあるが、エビデンスはない。

✓ ホルモン剤(成長ホルモン、テストステロン、エストロゲン)の投与が有用な可能性もあるが、副作用の面から推奨されない。

✓ クレアチニン、HMB(βヒドロキシβメチル酪酸)、ω-3系脂肪酸なども検討されている

認知症と摂食嚥下障害(2016年4月29日)

認知症の摂食嚥下障害とは・・・

・ 認知症患者の摂食嚥下障害の有病率は、13~57%とされる。

・ 認知症患者は、病状の進行とともに摂食嚥下障害の合併が見られるようになる。

・ 老嚥の要因(摂食嚥下編参照)

・ 認知症の摂食嚥下障害の具体例

食べない、口を開けない

食べることを忘れる

食べるものが認知できない

食べるための準備(買物、調理など)ができない

食事に集中できない、中断する、停止する

他のものに気を取られる、固執する

他人の食事が気になる、とってしまう

食べ物以外のものを食べてしまう

食事の速度がはやい、口に詰め込む

お箸や食器が使えない、手づかみや直接口で食べる など

アルツハイマー型認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

初期:

嚥下障害はほとんどない。

遂行機能障害として、食事の準備や買い物ができない、段取りができない。料理ができない。

先行期(認知期)の問題として、偏食、過食、食べたことを忘れるなどがある。

嗅覚障害がある。

中期:

軽度の誤嚥も認められる。

空間認知障害や失行、失認・失行により食物を食べる対象として認知できない、お箸や食器の使い方がわからない、食品の開封ができない、手で食べる、食べこぼしなど摂食行動の障害がある。この段階では、食事量がわからず詰め込みすぎて、ムセや誤嚥する可能性もある。一部には拒食症もある。

注意障害により、食器の模様に気を取られる、他のことに気を取られて食事に集中できない、他人の食事を食べるなどの行動もある。

後期・末期:

口腔顔面失行により、いつまでも咀嚼し続ける、口腔内に食物をため込むなどを認める。

さらに進行すると、嚥下障害から誤嚥性肺炎の合併を認める。

口腔乾燥も出現。

低栄養も合併し、サルコペニアもきたす。

レビー小体型認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

認知機能の変動:

認知機能の低下している時を避け、覚せい状態良好の時に摂食をすすめる。

パーキンソン症状:

上肢の振戦や筋・関節の拘縮による食事の困難

筋拘縮による摂食嚥下の協調運動障害

ドーパミンの低下による嚥下、咳嗽反射の低下

顔面・口腔の不随意運動によるムセ

幻視などにより、拒食や食事中断がある。

抑うつによる食思不振

抗精神病薬の過敏性による誤嚥、食思不振

前頭側頭型認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

初期:

大食いや偏食が起こることあり

常同行動により、いつも同じ時間に同じ場所で同じものを食べるなどへの固執があり

中期:

脱抑制や被影響性の亢進により、早食い、詰込みなどあり。何でも口に入れる口唇傾向もあり。さらに、立ち去りや中断などもみられる。

摂食介助への抵抗

後期:末期:

無為・無動の時間が増加し、開口困難やため込み出現

嚥下反射も低下しており、誤嚥のリスクが高い

血管性認知症の摂食嚥下障害の特徴と対策

皮質性血管性認知症(多発梗塞型):

注意障害、遂行機能障害、失行、麻痺による食事の口への取り込み、食塊の保持・形成困難、嚥下反射遅延

皮質下性血管性認知症(小血管病変型):

基底核症状によりドーパミンが低下し、嚥下・咳嗽反射の低下

局在病変型血管性認知症

障害部位による症状

 認知症の食事介助の実際

食事前の準備:

✓ 覚醒は良好か?

薬剤の副作用のチェック

環境、特に光環境の調節による覚醒の促し

コミュニケーションなどによる覚醒の促し

家族の訪問や介助などで覚醒の促し

睡眠・生活リズムの改善

✓ 体調不良や発熱はないか?疲れていないか?

バイタルサインの確認

視診、触診、聴診

✓ 排泄はすませているか?便秘や腹部膨満はないか?

便秘のチェック

✓ 食事であることが理解できているか?または、おなかがすいているか?

五感の活用

視覚…盛り付け、食器やテーブルクロスの色、「食べる」の文字、食べるイラスト、スタッフが一緒に食べる、スタッフのエプロン、マスコット、暖色系の使用

嗅覚…食欲をそそる香り

聴覚…揚げ物を上げる音、グラスの音など、心地よい音楽

味覚…濃い味

触覚…食材にふれる

好物の活用

記憶の継続性(なじみの食器やテーブル、いすなどの活用)

✓ 食べたい、または食べられるものが提供されているか?

食べたいものがあることで食事はすすむ

✓ 食卓に食べ物以外がおかれていないか?

シンプルに食事に集中

✓ 気になるものが周りにないか?食事に集中できているか?

注意を引く盛り付け、色彩

食欲をそそる香り

好きな仲間、スタッフ

食事前のルーティン

✓ 手洗いは大丈夫か?

✓ 口の中はきれいか?義歯は大丈夫か?

まず、食べる口をつくる

味覚障害、嗅覚障害はないか?

✓ 食事を嫌がっていないか?

かならず、一品は好物をいれる

思い出のある食事をとりいれる

食事の実際:

✓ 食べる姿勢はできているか?

足底はしっかり床につける

テーブルは肘の高さ

頸部はやや前屈

膝関節は90度屈曲

イスとテーブルの距離が適度

IMG3_0002_NEW図をクリックすると大きくなります

認知症のリハビリテーション栄養 若林秀隆編著 医歯薬出版株式会社2015年 より引用

✓ どのように食べていいかわからない

✓ どれからたべていいかわからない

コース料理方式

ワンプレート方式

弁当箱の使用

✓ 食具(おはし、スプーンなど)の使い方がわからない

食具をいつも同じ場所におく

食具を手渡す

おにぎり、サンドイッチなど食具を使用しなくてもすむ食形態にする

✓ 食器がみえない、食べ物がみえない

✓ 食べるペースが違う人がいないか?

✓ 他人の食事を食べる、邪魔をする

✓ 食事で遊ぶ

✓ 嚥下に問題ないか?

✓ 詰め込み、過食はないか?