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自殺予防マニュアル(病院内)

病院内における自殺予防マニュアル 2008年版

  財団法人日本医療機能評価機構、認定病院患者安全推進協議会より、入院中の自殺に関して実施された調査(2005年)によれば、回答の得られた病院の29%に、過去3年以内に入院患者の自殺が認められている。自殺が相当数生じていることを銘記する必要がある。健康問題は、自殺の主要動機のひとつである。身体疾患と自殺の間には密接な関係があることが知られており、悪性新生物をはじめとしたさまざまな身体疾患において自殺の危険度が高いことも知られている。慢性の経過や進行性の疾病経過、疼痛、身体機能の喪失、不意の病状告知などは患者にとって大きな負荷となる。

 自殺に至った事情や経過は人それぞれであるが、自殺者の80%以上が精神疾患(気分障害、物質依存症、統合失調症、不安障害、適応障害など)に罹患した状態で自殺を企図していたことが明らかにされている。但し、多くの自殺者に精神疾患に罹患しているという自覚はなく、精神科を受療していない。過去の自傷や自殺企図歴、喪失体験(親しいものとの離別・死別、失職、身体機能の喪失など)や社会的・心理的孤立、自殺の家族歴は自殺の危険因子であり、これらが認められる患者については、精神状態の評価を導入し、十分な関わりと観察を行うことが望ましい。自傷行為は、その手段や身体損傷の軽重を問わず自殺の危険因子となる。

 以上の点が財団法人日本医療機能評価機構、認定病院患者安全推進協議会より提言されている。

 【自殺予防対策として】

1.自殺の予兆に注意をはらう

多くの自殺者は、自殺の直前に周囲に自殺の意思表示やサインを表す。自殺への願望や生に対する諦め、絶望感を口にする患者、行動に変化や異常が見られる患者には特に注意が必要である。「死にたい」等の意思表示の他、自傷行為、抑うつ状態や不安の増強、無断離院など何らかの危険信号、あるいは予兆ととれる行動が認められる。予兆が認められた患者には厳重な注意を要するが、全スタッフ間で当該患者の情報を共有することがまず重要となる。

・当該患者をチェックし、患者のサインなどに気づくこと(自殺のリスク・アセスメントのためのチェック・リスト参照)

・当該患者への十分なアプローチ(話をきいて、何を問題として抱えているのかなど)

患者の立場になってこころのケアに配慮する。

疾病の治療過程や、症状説明・告知の直後に自殺が生じることがある。診療科によらず、医療者は、受け持ちの患者の病者としての苦悩を理解し、こころのケアに常に配慮することが求められる。医療者は、疾病そのものだけではなく、患者の生活背景や、疾病・治療への理解、疾病や入院により生じた不利益、こころの状態などに注意を向けることが必要である。

・スタッフ間で当該患者の情報を共有すること

 2.精神・心身医療専門家への相談を行う

患者に、精神症状や行動上の変化・異常、自殺の予兆と思われる言動、明らかな危険因子など求められる場合には、受け持ちのスタッフは専門科へのコンサルテーションを検討すべきである。専門科へのコンサルテーションを行う際は、患者や家族にその必要性を説明し理解を求めることがその後のフォロー・アップのためにも大切である。

・専門科医師へのコンサルテーションを検討する。

・医師不在の場合、心理士が関わり専門科医師へ繋げる。

 3.自殺を未然に防ぐための環境整備を行う

自殺の手段は、“縊首”、“高所からの飛び降り”の両者が大半を占める。それらによる自殺事故を防止するために、病院の施設、備品等に関する環境整備が重要であり、特に危険度が高いと思われる患者においては、その所持品等にも注意を向ける必要がある。“縊首”に使用される道具を詳しく調べた結果、タオルや衣類、寝具、紐、電気コード類などの日用品が多く使用されている一方で、ナース・コールや輸液ポンプのコード、カーテン、抑制帯など病院の施設、備品類が利用された事例も報告されている。ベランダ・屋上の柵の見直しや病室の窓の開閉幅の制限、備品や調度の取手の付け替え(紐のかかりにくい形状物に変更)、荷重がかかると脱落するようにカーテンレールやフックの強度を調整することなどは検討に値する。またナース・コール、輸液ポンプ等のコード類の位置・長さなどにも注意をする必要があるし、特に危険度の高い患者については、所持品に注意を向ける必要もあるだろう。

 4.自殺予防についての学習機会を設ける

自殺を予防するためには、そもそも自殺企図者の特性や自殺行動への理解が不可欠であり、そのための学習機会が必要である。学習は、病棟スタッフ間の話し合いから安全管理委員会のレベルにいたるまで、さまざまなレベルで行われる必要がある。事例検討等も有用である。

・ 自殺が主要な医療事故であることを知る。

・ 疾病罹患ないしは健康問題は、自殺の主要動機であることを知る。

・ ほとんどの自殺者は、その行為の時点で精神疾患に罹患していることを知る。

・ 社会的背景、喪失体験、家族の自殺歴などは危険因子であることを知る。

【実際に患者による自殺企図が生じた場合】

 5.自殺の続発に注意を払う

一人の自殺の影響で、別の自殺が続発・群発することがあるので注意を要する。自殺者に近いもの、類似の境遇にあるもので自殺の危険因子を有するものには特に注意を払わなければならない。危険因子を評価し、もしハイリスク者が同定されたなら個別の関わりを行っていく必要がある。自殺事故の直後から再発予防は始まる。

・当該出来事に関わりのある患者、スタッフについて、当該部署において十分に話し合い、何が起きていたのか事実確認を行うと共に、責任を一人で背負わせることなく、部署内でシェアする必要がある。

・関わりをもった人たちの精神状態を把握し、ハイリスク者が同定される場合には、個別に関わりをもつ必要がある。

 6.関係者のこころのケアを実施する

現在、一般病院において、自殺者に直接関わったり現場に遭遇した医療スタッフに対するメンタル・ケアは質量ともに不十分であり、一貫したケアの体制が確立されることが望ましい。当事者に対するサポート・システムを含む施設の対応手順(専門家の助言、当事者間でのミーティングや集団カウンセリング、当事者個人の面接やカウンセリング、休養の指示、経験者の助言など)が策定され機能することが望ましい。

なお、自殺者の遺族のケアと支援体制のことも忘れてはならない。遺族の心痛はあまりに大きい。遺族において、複雑性悲嘆の発生や精神疾患の発症、自殺のリスクが懸念される。遺族へのこころ遣いはもとよりソーシャル・ワークを含む支援、自助グループの紹介、メンタル・ケアの紹介などがためされることが望ましい。

・当該出来事に関わりのある患者に対して、臨床心理士が個別に対応することも検討する。

・当該出来事に関わりのあるスタッフに対して、院内のメンタルヘルスの果たす役割として、臨床心理士に相談することも検討する。

7.財団法人日本医療機能評価機構、認定病院患者安全推進協議会より出されたチェック・リスト

 自殺のリスク・アセスメントのためのチェック・リスト

                      項目                    チェック欄

患者の訴え      死や自殺の願望・意思を口にしている

             絶望感やあきらめを口にしている

             身体機能の喪失、疼痛により強い苦悩・苦痛を訴えている

既往歴・家族歴    精神疾患の既往歴がある

             自傷・自殺企図の既往がある

             自殺の家族歴がある

生活環境、ライフ・イベント

             最近、親しいものとの離別・死別があった

             失業や経済的破綻を経験した

             家族や介護者、相談者がおらず孤立している

症状、疾病      精神症状を呈している、あるいは精神疾患を合併している

             抑うつ状態にある

             強い不安状態ないしは焦燥状態にある

             不眠や食思不振がつづいている

             明らかな行動上の変化・異常を認められている

             慢性ないしは進行性の身体疾患に罹患している

             自身の身体や健康に無頓着である

・ チェックリストにひとつでも該当するものがあれば、その他の項目について注意深く対話や観察を行い、引き続き患者の心の状態や行動をみていくことを勧める。

・ 複数該当する患者については、特に注意が必要であるが、自殺の意思を口にするものはそれ単独で厳重な注意が必要である。

・ 患者の心の状態や自殺の危険性の評価に関しては、スタッフ間で情報を正確に共有することが大切である。

8.病院内での対応の流れ

①自殺のリスク・アセスメントのためのチェック・リストに該当する患者の場合

1)スタッフは該当患者と直接話をする時間を設定し、十分に該当患者の話をきき、話し合う。 

2)病棟内で話し合い、全スタッフ間で当該患者の情報を共有し、患者のこころの状態に十分な注意を払う。

(主治医の判断により、非常勤の医師の予定を考慮し、2通りの方法が想定される)

3-1)精神・心身医療専門科へコンサルテーション

※専門科へのコンサルテーションを行う際は、患者や家族にその必要性を説明し理解を求めることが、その後のフォロー・アップに繋がる。

3-2)依頼時に専門科医師不在の場合、臨床心理士へ繋げる。

ア 当該患者への確認(「今の辛い気持ちを聞いてくれる専門家に相談しましょう」など)。

イ 緊急性の確認。

ウ 臨床心理士へ直接内線を入れる。

エ 話ができる場所の確保。

オ 臨床心理士は時間調整を行い、病棟スタッフと打合せをし、当該患者とプライバシーが確保できる場所で話をきく。

カ 臨床心理士は当該患者の守秘義務を越えない範囲内で主治医、ならびに病棟スタッフに話し合った内容を報告する。

・臨床心理士は後日、担当する専門科医師に状況を説明する

3-3)夜間・休日にて心理士不在の場合、主治医・担当医の判断で精神病院の受診・転送も考える。

4)その他の経路

「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とのその家族に対して」は緩和ケアチームに対して依頼する方法

  <参考 1.>

 自殺願望を打ち明けられた時の対応・・・

  先ず、忘れてはならないのは、誰でもよいから、たまたまある医療者に「自殺したい」と打ち明けたのでは決してないということ。これまでの関係から、「この人ならば、私の絶望的な気持ちをきっと真剣に聞いてくれるはずだ」との思いから、意識的・無意識的に特定の人物を選び出していることに気づいてください。

        ↓

  従って、打ち明けられた人は、絶望的なまでの救いを求める叫びを真正面から受け止める義務があります。うまく対応できないと、直後に自殺が起きる可能性もあります。

        ↓

  - TALKの原則 -

 Tell:あなたのことを心配しているということをはっきりと言葉に出して伝える。

 Ask:自殺のことを感づいたら、はっきりとその点について「自殺」という言葉を使って尋ねる。真剣に対応するなら、それを話題にすることは危険ではなく、予防につながる。

 Listen:気持ちを真剣に聞き、気持ちを受け止めます。

 Keep safe:危険性を認知したら、その人を決して1人にしないで、安全を確保した上で、必要な対応を行う(上記参照)。

 * 話をそらしたり、叱ったり、社会的な助言をおこなうこと、例えば「死ぬ気があるなら何でもできる」「家族のことを考えなさい」「命を粗末にしないで」などは、逆効果です。

<参考 2.>

患者が「死にたい」と打ち明けた時の患者とのコミュニケーション

   コミュニケーションの継続・・・

    「死にたいと思っているのですね。そのことについて、もう少しお伺いしてもいいですか?」

    「今、感じていることを、もう少し話してください」

   患者の苦痛について調べる・・・

    「死んでしまいたいとおっしゃいましたが、きっとつらいことがあるのですね、よかったら、そのことについてもう少しお話をお聞きしていいですか?」

    「何か心配なことがあるのですね。その一番ご心配なことをお聞かせ下さい」

   患者の苦痛に共感的にかかわる・・・

    「これだけ痛みが続くと、そんな気持ちにもなりますね」

    「これからのことが不安で、そんな気持ちになるのですね」

    「死にたいと感じるくらい、つらいのですね」

   患者の経験を肯定する・・・

    「あまりにつらいときは、だれでもそのように感じることはあります」

    「同じような気持ちになられた患者さんは、他にもみえますよ」

    「今の状態なら、そのように感じるのは自然なことでしょうね」

②患者による自殺企図(未遂)が生じた場合

 1)自殺未遂は最も重要な危険因子で、どんなに些細な未遂行為(例えば明らかに死ねないような自傷行為など)も真剣に受け止めて、原則的には必ず精神科受診が必要となる。もしも、本人が拒否的な場合には、家族に説明して同意を得る。

        ↓

 2)自殺未遂による興奮作用で、気分が昂揚してうつ病などの精神疾患が、隠れていることがあるので、本人・家族と十分に話し合って、必ず精神科での治療を勧める。

        ↓

 3)周囲の人間との絆の回復に気をつける。家族全体の病気を代表している場合もあるので、家族全体を治療体系に入れる。

③患者による自殺企図(既遂)が生じた場合

 1)先ず、救命および患者の安全確保

        ↓

 2)危険が去って、状態が安定したら原則的には必ず精神科受診が必要となる。もしも、本人が拒否的な場合には、家族に説明して同意を得る。

        ↓

 3)以下の点にも気をつけて対応する。

ア 自殺の続発性に注意が必要となる。

イ 関係者のこころのケアが必要となる。

医療スタッフ(医師、病棟スタッフ、コメディカルスタッフなど)に対して、該当病棟内で十分に話し合う機会を設け、全スタッフで出来事を共有することが重要である。また、メンタル的に不調が危惧されるようであれば、メンタルヘルス・ケアとして院内でのカウンセリングも可能である。

ウ 自殺者の遺族のケアと支援体制が必要となる

 名古屋記念病院 2008年9月

褥瘡予防治療における栄養管理のエビデンス

褥瘡予防・治療と栄養管理のエビデンス
方法:

PubMed 1966年~2011年6月30

“decubitus” 14174(英語のみ1121)

“pressure ulcer” 9602

“pressure sore” 9908

“bed sore” 9644

“decubitus” x “nutrition”  471

“pressure ulcer” x “nutrition”  443

“pressure sore” x “nutrition”  454

“bed sore” x “nutrition”  444

2000年以降 230件

対象文献40件

「エビデンスのレベル」  分類:質の高いものから

レベル1   システマティックレビュー/メタアナリシス

レベル2  1つ以上のランダム化比較試験による

レベル3  非ランダム化比較試験による

レベル4  分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究による)

レベル5  記述研究(症例報告やケースシリーズ)による

レベル6  患者データに基づかない専門委員会や専門家個人の意見

35. Langer G  Cochrane Datebase Syst Rev 2003 Level 1 予防・治療

褥瘡予防治療における栄養介入の効果システマティックレビュー

褥瘡予防におけるサプリメントの効果の可能性がある

Bourdel-Marchasson I Nutrition 2000

Delmi M Lancet 1990

Houwing RH Clin Nutr 2003

Hartgrink HH Clin Nutr 1998

褥瘡治療におけるビタミンCの効果は未確定

Taylor TV Lancet 1974

Ter Riet G J Clin Epidemiol 1995

褥瘡治療における高たんぱく質サプリメントの効果はエビデンスが弱い

Chernoff RS J AM Diet Assoc 1990

褥瘡治療における亜鉛の効果はエビデンスは不明確
Norris JR  J Am Geriatr Soc 1971 Level2

方法: Randomised double-blind crossover study

被検者: 慢性期病院の褥瘡有患者14人  悪性腫瘍、ターミナル患者及び表層性、ポケットのある褥瘡患者は除外

治療: A)硫酸亜鉛 200mg x 3/day    n=7

B) placebo   n=7

12週で交代  目標24週

結果判定: 褥瘡の体積(アルギン酸塗布または充填量)

注意: 3例のみ完遂 4週ごとの評価。

硫酸亜鉛治療群が4週間で平均10mlの褥瘡体積減少に対して、対象群の6mlに比較して縮小率が高かったが有意差なし。
22. Stratton RJ Aging Res Rev 2005 Level 1 褥瘡予防治療

褥瘡の予防治療に経管家用は有効か?メタアナリシス

<ONS, RCT>

Benati G Arch Gerontol Geriatr 2001

Bourdel-Marchasson I Nutrition 2000

Delmi M Lancet 1990

Ek AC Clin Nutr 1991

Houwing RH Clin Nutr 2003

<ONS, Non RCT>

Soriano LF J Wound Care2004

<ETF, RCT>

Hartgrink HH Clin Nutr 1998

<ETF, Non RCT>

Henderson CT J Am Coll Nutr1992

Bourdel-Marchasson I Int J Qual Health 1997

Mitchel SL Arch Intern Med 1997

Peck A J Am Geriatr 1990

<high protein, RCT>

Craig LD Nutrition 1998

Chernoff RS J AM Diet Assoc 1990

<High protein, Non RCT>

Breslow RA J Am Geriatr Soc 1993

Breslow RA JPEN 1991

高齢で手術適応のない、慢性疾患をもつ患者は、経腸栄養によって褥瘡の悪化が予防できる可能性がある(オッズ比0.75)。ただし、すでにある褥瘡の治癒やQOL、死亡率には差を認めない。経管栄養による合併症の増加はないが、特殊な成分の経腸栄養剤や静脈栄養との比較による効果は認めない。
9. Schols JMGA J Tissue Viability 2009 Level 1 褥瘡予防治療

アルギニン高濃度含有サプリメントの褥瘡予防治療における効果システマティックレビュー 1997~2008年

褥瘡治療とサプリメント4件

Cereda E  J Am Geriatr 2009 Level2 治療

方法: Randomized cotrolled study

被検者:65歳以上施設入所褥瘡患者28人

治療: 治療群  n=13 サプリメント2pack(500kcal、たんぱく質34g、亜鉛18mg、ビタミンC500mg、アルギニン6g)

経腸栄養剤(たんぱく質1.5g、アルギニン0.85g、ビタミンC28mg、亜鉛8mg /100ml強化)

対象群  n=15     3か月

結果判定: 褥瘡治癒面積、PUSHスコア、血清亜鉛濃度

注意: 患者背景、その他の治療や管理が不明

亜鉛投与にて12週間目に褥瘡治癒面積、PUSHスコア改善率がサプリメント群において有意に促進されていた。

Heyman H J Wound Care 2008

Benati G Arch Gerontol Geriatr 2001

⑩Benati  Arch Gerontol Geriatr 2001 Level 2 治療

方法: control study

被検者: 重度の認識機能障害をもつ褥瘡有入院患者36名

治療: 1群 普通食 (褥瘡患者食ができる前の患者対象) n=5

2群 +高タンパク質カロリー溶液の経口補給 n=5

3群 +アルギニン7.5g、亜鉛25mg、抗酸化物質n=6

0、5、10、15日に観察

結果判定: PSST

注意: 2,3群がカロリー、たんぱく質ともに、1群より多い。

結果の評価が定量的でなく、有意差なし。

メーカー提供

より栄養強化をした群で褥瘡治癒が促進された。特に、アルギニン、亜鉛強化はより効果的であった。

SorianoLF J Wound Care 2004

褥瘡予防とサプリメント2件

Hommel A Clin Nutr 2007

Houwing RH Clin Nutr 2003

Houwing RH  Clin Nutr 2003 Level2 予防

方法: Randomized double-blind placebo-controlled study

被検者: 褥瘡危険因子のある骨盤骨折患者103人(登録3センター)

転移、ターミナル患者、糖尿病、肝不全、腎不全、極端な肥満、妊婦、乳児は除外

治療: A)サプリメント 400ml/日(500kcal、たんぱく質40g、Lアルギニン6g、亜鉛20mg、ビタミンC500、ビタミンE200mg、カロチノイド4mg)n=51

B)placebo  n=52

最初の28日間は毎日、さらに退院まで観察

結果判定: 褥瘡ステージ(EPUAP)

注意: 対象群より、投与カロリーもタンパク質も多い。

ランダム化について詳細な記載がない。

有意差を検定するには、症例数が少なすぎる。

サプリメント追加群は対象群に比較して褥瘡発生率に変わりはなかったが、ステージ2が発生する率が9%低く、発生もやや遅い傾向にあるが有意差はない。

アルギニン、亜鉛、ビタミンCを強化したサプリメントの使用で、褥瘡の治療予防に効果がある可能性がある。

(但し、症例数が少なく、メーカー提供の論文が多い、予防に関しては有意差なし)

15. Reddy M JAMA 2006 Level 1 褥瘡予防

褥瘡予防のシステマティック・レビュー

栄養に関する褥瘡予防のRCTは5件、そのうち推奨されるのはBourdel-Marchasson I
Nutrition 2000のみ有効(
ビタミンC+亜鉛+蛋白+脂肪を追加した群で、ハイリスク急性期病院入院患者の褥瘡予防に効果)

Houwing RH Clin Nutr 2003

Hartgrink HH Clin Nutr 1998

Ek AC Clin Nutr 1991

Delmi M Lancet 1990
37. Ohura T Wound Rep REg 2011 Level 2 褥瘡治療

褥瘡患者における栄養介入効果に関するRCT

方法: randomized controlled non-blinded prospective study

被検者: NPUAP分類Ⅲ―Ⅳの褥瘡のある入院患者(経管栄養施行中)60名

肝・腎障害、重症糖尿病、担癌患者は除外

治療:ラコール®をBEE(HB式)×1.1×1.3~1.5を経管から投与 n=21

対象)経管栄養 n=29

12週間観察

結果判定: 褥瘡の縮小率

注意: 症例数が少ない

介入群は平均37.9kcal/kg/日、対象群は29.1kcal/kg/日のカロリー投与が行われ、体重とプレアルブミン値の上昇を有意に認めた。さらに、介入群が有意に創の縮小が良好で、大きな褥瘡に顕著であった。

12. Theilla M Clin Nutr2007 Level 2 褥瘡予防

EPA、GLA及びビタミンACEを含んだサプリメントの急性肺障害、人工呼吸器患者の褥瘡予防

方法: randomized controlled non-blinded prospective study

被検者: 急性肺障害(P/F250未満)のICU入室、人工呼吸器管理患者100名

頭部外傷、脳出血、凝固障害、18歳未満、妊婦、ストロイド治療中は除外

治療: サプリメント)REE(間接熱量測定)×1.25を経管から投与(オキシーパ®:EPA、GLA、ビタミンACE) n=46

対象)経管栄養 (プルモケア) n=49

1週間観察

結果判定: 褥瘡の発生、悪化、軽快

注意: ベースラインの状態が不明

既に褥瘡のある症例も含まれている

サプリメント群が、1週間の褥瘡発生率が有意に対症群に比較して低下していた。発生していた褥瘡の治癒率は不変。
4. Stotts NA Wound Rep Reg 2009 Level 2 褥瘡予防

褥瘡危険因子のある患者の水分負荷の影響

方法: randomized controlled trial

被検者: サンフランシスコの老人ホーム5施設の入所者で褥瘡のない 64人

BMI20~29.9、WBC2000以上の患者

心不全、腎不全、急性疾患、喫煙者、免疫抑制剤投与、糖尿病患者などは除外

治療: 水分負荷) 水分10ml/kg 5日間追加 n=26

対象)  n=27

19日間観察

結果判定: コラーゲン沈着、皮下酸素濃度、総体内水分量、症状

注意: ランダム化が不明、メーカー協賛

対象群より、投与カロリーもタンパク質もミネラル、ビタミンも全てが多い。

水分負荷群において、対象群に比較して局所循環や皮膚状態に変化はなかった。
33. Bourdel-Marchasson I Nutrition 2000 Level 2 褥瘡予防

サプリメン投与による褥瘡予防効果

方法: Multi-centre, randomized controlled trial

被検者: 急性期病院の自分で移動できず、食事もできないが入院時褥瘡のない65歳以上の患者672人

悪性腫瘍、ターミナル患者及び表層性、ポケットのある褥瘡患者は除外

治療: A)1800kcal+サプリメント2pack(200kcal、たんぱく質15g、 脂肪4.5g、亜鉛1.8mg、ビタミンC15mg×2) n=295

B) 普通食1800kcal  n=377

最低15日以上または退院まで観察

結果判定: 褥瘡グレード

注意: ランダム化が不明、対象群は、ADL低く看護依存度も高い。また、糖尿病や心不全も対象群に有意に多い。

対象群より、投与カロリーもタンパク質も多い。

サプリメント追加群が、15日目で対象群に比較して褥瘡発生比率が0.83と有意に低かった。多変量解析では、入院時血清アルブミン値とKuntzman
score(ADL評価)、下肢の骨折、Norton score10未満(患者状態)が褥瘡増悪因子であった。

1. van Anholt RD  Nutrition 2010 Level 2 褥瘡治療

経口サプリメントの褥瘡治癒促進効果

方法: randomized trial

被検者: ベルギーなど4カ国の入院または施設入所患者でEPUAP分類Ⅲ、Ⅳの褥瘡を有する者(18~90歳) 47人

70歳以下BMI18.5未満または71歳以上BMI21未満は除外

末期患者、重症患者、褥瘡以外の患者、ステロイド治療中、経口摂取困難は除外

治療: ONS)普通食+250kcal×3(たんぱく質20g、脂肪7g、亜鉛9mg、アルギニン3g、ビタミンACE、葉酸、セレン、銅、カロチノイド) n=22

対象) 普通食 詳細不明  n=21

8週間観察

結果判定: 褥瘡ステージ、褥瘡面積、ドレッシング交換回数・時間

注意: ランダム化が不明、メーカー協賛

対象群より、投与カロリーもタンパク質もミネラル、ビタミンも全てが多い。

ONS群が、8週目の褥瘡面積の縮小率、ステージ軽快、ドレッシング交換回数・時間が対象群に比較して有意に高かった。血中ビタミンC濃度も有意に上昇した。
16. Lee SK Adv Skin Wound Care 2006 Level 2 褥瘡治癒

たんぱく質含有サプリメントの褥瘡治癒促進効果

方法:double-blinded, placebo-contorol, randomized, multicenter trial

被検者: アメリカ4州の23の介護老人施設入所者でNPUAP分類で褥瘡Ⅱ~Ⅳあり71名

終末期、腎不全、影響のある内分泌・消化器疾患、アレルギー、ステロイド使用は除外

治療: サプリメント)普通食+Pro-Stat®×3 (108kcal、たんぱく質17g、アルギニン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、亜鉛、ビタミンC含有) n=44

対象) 普通食 詳細不明  n=27

8週間観察

結果判定: PUSHスコア

注意: ランダム化が不明、メーカー協賛

対象群より、タンパク質、カロリー、ビタミン、亜鉛が多い。ベースがそろっていない。

サプリメント群が、対象群に比較して8週目のPUSHスコア改善率が有意に高い。
7. Cereda E J Am Geriatr Soc 2009 Level 2 褥瘡治療

サプリメントの投与による高齢者褥瘡の治療効果

方法: randomized controlled trial

被検者: イタリア、コモの老人介護施設に入所した65歳以上の高齢者でNPUAP分類でステージⅡ、Ⅲ、Ⅳの褥瘡患者

感染症、褥瘡感染、糖尿病、PAD、腎障害、ステロイド治療中、経口摂取困難は除外

治療: サプリメント)普通食+500kcal(たんぱく質34g、亜鉛18mg、アルギニン6g、ビタミンC500mg) n=4

経管栄養1000kcal(たんぱく質55g、アルギニン8.5g、ビタミンC380mg、亜鉛20mg)n=9

対象) 普通食 30kcal/kg/day  n=6

経管栄養 1000kcal/day  n=9

12週間観察

結果判定: PUSHスコア、褥瘡面積

注意: メーカー提供

症例数が少ない

サプリメント群が、12週目のPUSHスコアの改善率と8週目以降の褥瘡面積の縮小率が有意に対症群に比較して良好であった。

20. Desneves KJ  Clin Nutr 2005  Level 2 褥瘡治療

方法: Randomised control study

被検者: ステージ2-4の褥瘡有入院患者16人

糖尿病、経腸栄養、ステロイド使用患者は除外

治療: A) 普通食   n=6

B)  普通食+500kcal、たんぱく質16g、脂肪なし、ビタミンC72mg、亜鉛7.5mg  n=5

C) 普通食+500kcal、たんぱく質21g、脂肪0g、ビタミンC500mg、亜鉛30mg、アルギニン9g  n=5

3週間、毎週計測

結果判定: PUSHscore、血清Alb、Trf、亜鉛、ビタミンC、CRP

注意: A、B両群は有意にC群に比較して、必要カロリー量が80%しか投与できていない。また、B群はさらに、投与前の血清アルブミン値が他に比較して有意に少ないだけでなく、必要タンパク質量も60%と他に比較して有意に少ない。サプリメントのメーカー支援。

亜鉛およびビタミンC,アルギニンを強化したサプリメント追加群が、他に比較して有意に2.5倍褥瘡の治癒が促進された。しかし、血清値や体重、食事摂取量には有意な変化は認めなかった。
39. Yatabe J J Nutr Health Aging 2011 Level 3 褥瘡治療

褥瘡のあるPEG患者におけるアルジネート・ウォーター投与における褥瘡治療効果

方法: cross-sectionally study

被検者: 慢性期病院入院患者(PEG栄養施行中)10名

糖尿病患者は除外

治療:アルジネートウォーター®(カロリー160kcal、アルギニン4g、亜鉛16mg、銅1.6mgなど)をPEGから投与 n=5

対象) n=5

2週間ごと観察

結果判定:血漿アルギニン値、褥瘡面積、褥瘡周囲長、DESIGN-R、PUSHスコア

注意: メーカー供与、症例数が少ない、ランダム化が不明瞭

褥瘡のある患者はない患者に比較して有意に血漿アルギニン値が定置で、サプリメント投与にて改善した。アサプリメント投与群は、褥瘡面積、周囲長、DESIGN-R、PUSHスコアが有意に改善良好であった。
6. Iizaka S Clinical Nutrition 2009 Level 4 褥瘡予防治療

褥瘡の予防治療における栄養不良の影響

方法: 施設無作為抽出、褥瘡ありなしによるコホート研究(アンケート形式)

被検者: 2688の在宅ケア施設から20%を無作為抽出

65歳以上を対象として、非褥瘡群は褥瘡の既往のまったくないもの 1069例

栄養不良の定義:BMI18.5以下、血清Alb3.0g/dL以下、Hb11g/dL以下

治療: PU群) n=290

非PU群)  n=456

結果判定:

注意: 治療内容不明

患者の詳細不明

栄養不良が多変量解析で最も有意な褥瘡危険因子で(2.29倍)、より栄養不良な患者により重症の褥瘡が合併した。栄養アセスメントとそれの基づく食事摂取の推進が褥瘡発生を予防(0.43倍)。
11. Heyman H J Wound Care 2008 Level 4 褥瘡治癒

アルギニン含有サプリメントによる褥瘡治癒促進効果

方法: open study

被検者: ベルギーの老人介護施設入所中のEPUAP分類でステージⅡ、Ⅲ、Ⅳの褥瘡患者 245名

治療: サプリメント)普通食+250kcal×3(たんぱく質20g、亜鉛9mg、アルギニン3g、ビタミンC250mg、ビタミンE38mg)

9週間観察

結果判定: 褥瘡面積、褥瘡治癒、浸出液量

注意: 対象がない

サプリメント群が、褥瘡面積が53%有意に減少、3週間で7%、9週間で20%が治癒。浸出液の涼も有意に減少。
17. Reynolds TM J Clin Pathol 2006 Level 4 褥瘡治療

褥瘡の予後と炎症、栄養状態との相関

方法: コホート研究

被検者: イギリスの急性期病院に入院したEPUAP分類でグレードⅠ以上の褥瘡を有する患者105名

結果判定: PINIと褥瘡の悪化、改善の相関

PINI = CRP××α1-acid glycoprotein / albumin×prealbumin

CRPや血清アルブミン値、プレアルブミン値、α1-アシッドグリコプロティン値などで計算したPINI (prognostic inflammatory and Nutritional Index) が褥瘡の予後に相関する

18. Donini LM J Nutr Health Aging 2005 Level 4 褥瘡治療

栄養状態と改善の褥瘡治療への影響

方法:コホート研究(チャートレビュー)後ろ向き

被検者: 介護老人施設に入所した褥瘡患者ステージⅢ、Ⅳ 125名

結果判定: 治癒58名(46.4%)

栄養不良が褥瘡の治癒インデックスに有意に影響を与えた。特に、血清アルブミン低値、褥瘡面積とも相関していた。
31. Langkamp Henken B JPEN 2000 Level 4 褥瘡治療

アルギニン含有サプリメントは、褥瘡患者の免疫能や栄養状態を改善しない

方法: コホート研究

被検者: フロリダの特別養護老人ホーム2か所に入所中の褥瘡のある患者で経腸栄養を施行しているもの32名

結果判定: 免疫指標と栄養指標の推移

アルギニン投与により、血清アルギニン濃度は上昇したが、リンパ球の増殖能とインターロイキン2などの免疫学的指標や栄養状態は改善しなかった。
32. Anthony D J Adv Nurs 2000 Level 4 褥瘡予防

血清アルブミン値が褥瘡予防の指標となるか

方法: コーホト研究

被検者: イギリスの総合病院に7日間以上入院した高齢患者773名

結果判定: 血清アルブミン値、電解質、Waterlow score

血清アルブミン低値であれば、褥瘡の発生が有意におおく、さらにWaterlow scoreを併用するとさらに感度が高くなる。
25. Soriano LF  J Wound Care 2004  Level 4 治療

方法: Open prospective multicentre intervention study

被検者: 登録10病院入院中のグレード3、4の褥瘡有患者39人

肝不全、腎不全の褥瘡患者は除外

治療: HB式と褥瘡(1.1)、感染あり(1.3)のストレス係数をかけたものを必要熱量として、食事にサプリメント1から3パックで補充。1パックは、250kcal、たんぱく質20g、アルギニン3g、脂肪7.5g、ビタミンC250mg、ビタミンE37.6mg、亜鉛9mg

3週間で評価

結果判定: 褥瘡の面積と縮小率、BMI、TSF,MAC

注意: 対象設定なし

サプリメント使用にて、褥瘡の縮小率が0.34cm/日となり、過去の報告に(wet-to-dry dressingの0.06cm/日や湿潤環境の0.11cm/日)比較して縮小が速い。他の計測値は、体重も含めて有意差なし。
40. Chester H Adv Skin Wound Care 2010 Level 4 褥瘡治療

低栄養は褥瘡の陰圧吸引療法における相対的禁忌

方法: multicenter, 218-day observational study

被検者: Stage Ⅲ―Ⅳの仙骨部褥瘡のある脊損患者 86名

治療:陰圧吸引療法  n=33

対象) n=53

週2~3回観察

結果判定:褥瘡面積

注意: 栄養管理の詳細の記載がない、アルブミン以外の栄養評価がない

陰圧吸引療法と標準治療では褥瘡の治癒において有意差はなし。ただし、陰圧吸引療法施行群で非治癒例は治癒例に比較して有意に血清アルブミン値が低かった。
38. Brewer S J Wound Care2010 Ohura T Level 4 褥瘡治療

脊髄損傷施設入所患者の褥瘡治療におけるアルギニン含有サプリメント投与の効果

方法: historical controlled study

被検者: NPUAP分類Ⅱ―Ⅳの褥瘡のある施設入所の脊髄損傷成人患者35名

代謝障害、敗血症、慢性腎不全は除外

治療:アルジネイド®(アルギニン4.5g、炭水化物4g、Vit.C155mg、Vit.E60mg)2パック投与 n=18

対象) n=17

治癒まで観察

結果判定: 褥瘡の治癒期間

注意: 症例数が少ない、過去の文献との比較

介入群は褥瘡治癒までに10.5±1.3週間と対象群の21±3.7週間に比較して有意に短縮していた。これらは、褥瘡の重症度別に過去の文献と比較しても有意に良好な結果であった。糖尿病の合併による差も認めなかった。
3. Doley J Nutrition in Clinical Practice 2010 Level 6 予防・治療

褥瘡の栄養管理EO

・ 投与エネルギー、蛋白必要量にエビデンスはない

・ 投与カロリーは、30~35kcal/kg/dayを推奨(EPUAP)

・ 褥瘡の投与推奨カロリーは、35~40kcal/kg/day(NPUAP)

・ 高カロエイー投与により人工呼吸器の離脱の遅れ、高血糖の遷延、免疫能の低下の報告もある

・ n-3系脂肪酸の効果は不明

・ 投与蛋白量は、1.2~1.5g/kg/dayを創傷j治癒には必要。褥瘡のステージⅢ、Ⅳは、1.5~2.0g/kg/dayを推奨するが、2.0g/kg/dayの場合には腎不全に注意して使用(AHRQ、NPUAP)

・ 1~1.5g/kg/day(EPUAP)

・ アルギニンに褥瘡治癒の促進の明確なデータはない

・ グルタミンにも明確なエビデンスはないが、NPUAPとEPUAPでは投与推奨

・ ビタミンA、C、E不足に対して、補充する意義はあるが、ルーチン投与にエビデンスはない。ビタミンAについては、血中濃度は不正確で不足の証明も難しい

・ 亜鉛欠乏の患者には、最大40mg/dayを10日間投与が創傷治癒に有効

・ 銅欠乏にも注意して、補充必要

・ 投与水分量は30~35ml/kg/day

・ 血糖コントロールは、重症患者で110~150mg/dL、非重症患者で70~130mg/dLまたはHbA1C 7%以下
23. Clark M J Wound Care 2004 Level 6 褥瘡予防治療

褥瘡における栄養管理のガイドライン(EPUAP)

・ 栄養スクリーニングや評価は患者個々に行われるべきで、SGAなどがシンプルで有用。特に有意な体重減少(6ヶ月10%、1ヶ月5%)は栄養不良の有用なマーカーとなる。

・ BMIは、20未満を栄養不良とするが、特に子供や高齢者ではあまり有用な指標とならない。

・ 適切な栄養アセスメントツール(MUSTなど)を使用する。

・ 適切な経口摂取が不可能な場合には、蛋白-カロリーが高濃度のサプリメントの摂取を考慮する(推奨度Ⅰ-B)

・ ビタミンや微量元素による褥瘡予防のエビデンスは不明確(推奨度Ⅰ-B)

・ 経口摂取が不能な場合には、他のルートによる栄養投与を考慮する。

・ 栄養投与量の基準は、カロリー30~35kcal/kg/day、たんぱく質1~1.5g/kg/day、水分1ml/kcal/day。

・ 投与カロリーや内容は、栄養士を含めたチームにて検討し、HB式などから算定する。モニタリングが重要。

・ 褥瘡が発生した場合には、積極的栄養介入を行う。アルギニンやビタミン、微量元素を含んだ高たんぱく質、カロリーのサプリメントが有用な可能性がある(推奨度Ⅰ-B)。ビタミンCのみのエビデンスは不明確で(推奨度Ⅰ-B),亜鉛のエビデンスも弱い(推奨度Ⅰ-B)。
34. Gray M J WOCN 2003 Level 6 褥瘡予防治療

褥瘡予防治療における亜鉛の使用法(WOCNガイドライン)

褥瘡の治癒促進を目的としたルーチンの亜鉛の補給は、エビンデンスがない(Level 1)。亜鉛欠乏がある場合にまれに、一つの栄養成分としての亜鉛の経口補給を考慮することは推奨される(Level5)。亜鉛の過剰投与を予防するために、1日の推奨投与量を守る必要がある(Leve4)。従って、褥瘡患者においては亜鉛欠乏を含めた栄養アセスメントが必要であり、必要投与量を守る。高容量の亜鉛を投与する場合には、必ず血中亜鉛濃度のモニタリングと副作用に気をつけて行う。
36. Stechmiller JK Wound Rep Reg 2008 Level 6 褥瘡予防

褥瘡予防ガイドライン(The Wound Healing Society)
8. Dorner B Adv Skin Wound Care 2009 Level 6 褥瘡予防治療

褥瘡予防治療における栄養の役割(NPUAPガイドライン)

・ 高齢者、重症基礎疾患、褥瘡の既往歴、有意な体重減少と経口摂取困難が褥瘡の危険因子

・ 意図しない体重減少、栄養不良、PEM、脱水はよく知られている栄養の危険因子だが、BMI低値や経口摂取の減少、自立できない経口摂取も有意な危険因子

・ 1ヶ月5%、6ヶ月10%の体重減少は危険因子

・ 血清アルブミンおよびプレアルブミン値は、栄養不良の指標としては不適切

・ 投与カロリーは、HB式から求めるREEは不正確

・ カロリーだけでなく、亜鉛やアルギニンなどトータルに補充すると褥瘡治癒が促進される可能性がある

Desnerves KJ Clin Nutr 2005

・ 投与蛋白量は、1.2~1.5g/kg/dayを創傷j治癒には必要。褥瘡のステージⅢ、Ⅳは、1.5~2.0g/kg/dayを推奨するが、2.0g/kg/dayの場合には腎不全に注意して使用(AHRQ、NPUAP)

・ 1~1.5g/kg/day(EPUAP)

・ アルギニン、グルタミンにも褥瘡治療に明確なエビデンスはない

・ 投与水分量は1ml/kcal/day

・ ビタミンCは不足がある場合に投与する

・ 亜鉛、銅の補充による褥瘡治療の効果は不明

・ 肥満患者のリスクについて検討が必要

ガイドライン:

1. 入院時褥瘡を認める、または褥瘡が悪化する各状態で(褥瘡が治癒しない限りは)、患者個々の栄養スクリーニング及び評価は必要(推奨度C)

1-1. 全ての褥瘡患者の栄養評価および栄養的介入を早期に栄養士依頼する(推奨度C)

1-2. 体重の増減、有意な体重減少(1ヶ月5%、6ヶ月10%の体重減少)を評価する(推奨度C)

1-3. 患者が自立して食事できるかを評価する(推奨度C)

1-4. 正確な食事摂取状況、成分内容を評価する(推奨度C)

2. 十分なカロリーを投与する(推奨度B)

2-1. 30~35kcal/kg/日のカロリーを褥瘡患者には投与するが、体重の増減や肥満、やせの状況を評価して投与する。特に、有意な体重減少があり、必要なカロリーの追加が必要と判断したら、それらを改善するための十分なカロリーが必要(推奨度C)

2-2. 食事内容の犯行が必要なら、栄養士または医師の判断で行う(推奨度C)

2-3.必要なら経口補助食を追加する(推奨度B)

2-4. もし、経口摂取が十分にできなければ、栄養的介入を行う(推奨度B)

3. 正の窒素バランスとなるように、褥瘡患者に適切なたんぱく質を供給する(推奨度B)

3-1. 1.25~1.5g/kg/日のたんぱく質を褥瘡患者に対して、状態改善するまで投与する(推奨度C)

3-2. 腎機能の悪化に気をつけて高たんぱく質の投与を行う(推奨度C)

4. 適切な水分量を補給する(推奨度C)

4-1. 脱水の症状、徴候(体重変化、皮膚ツルゴール、尿量、血清NaClの上昇、血清浸透圧の上昇)などをモニターする(推奨度C)

4-2. 脱水、体温上昇、嘔吐、発汗多量、下痢、浸出液多量などがあれば、喪失分の水分補給を行う(推奨度C)

5. 適切なビタミン、微量元素を補給する(推奨度B)

5-1. 十分な栄養素をバランスよく配合した食事を選ぶ(推奨度B)

5-2. ビタミン、微量元素は、その不足が疑われたら補給する(推奨度B)
10. Bluestein  D Am Fam Physician 2008 Level 6 褥瘡予防治療

褥瘡予防治療ガイドライン

ビタミンCおよび亜鉛、高たんぱく質補給をルーチンに行うことにエビデンスはない(推奨度C)

・ 褥瘡の投与推奨カロリーは、30~35kcal/kg/day

・ 投与蛋白量は、1.25~1.5g/kg/dayを創傷j治癒には必要

・ たんぱく質とビタミンC、亜鉛は、不足があれば補給する。しかし、創傷治癒促進のエビデンスはない
2. Stechmiller JK Nutrition in Clinical Practice 2010 Level6 創傷治癒

創傷治癒における栄養の目的EO

・ 投与カロリーは、30~35kcal/kg/dayを推奨(ASPEN)

・ 褥瘡の投与推奨カロリーは、35~40kcal/kg/day(NPUAP)

・ 投与蛋白量は、1.25~1.5g/kg/dayを創傷j治癒には必要。褥瘡のステージⅢ、Ⅳは、1.5~2.0g/kg/dayを推奨するが、2.0g/kg/dayの場合には腎不全に注意して使用(NPUAP)

・ 創傷治癒におけるアルギニンの効果は、不確定(17~30g/day)

・ 創傷治癒におけるグルタミンの効果も、エビデンスはない(0.57/g/kg/day)

・ その他に、メチオニン、システィン、リジン、プロリンなどの報告があるが、RCTはない

・ 脂肪についても、外傷の治癒に必須脂肪酸補充が有効であるが、褥瘡には十分な研究がない

・ 熱傷の患者にn-3系脂肪酸補充が、免疫能の向上と感染率の低下、生存率の改善の報告がある。
◆Gottschlich MM JPEN 1990 Level 2 熱傷治癒

脂肪のタイプによる熱傷患者の治療効果

n-3、アルギニン、システィン、ヒスチジン、ビタミンAC、亜鉛含有経腸栄養剤を経管から投与した重症熱傷患者は、他の栄養剤投与に比較して創傷感染率の低下と入院期間の減少を有意に認めた。長鎖脂肪酸主体の40%を脂肪とした栄養剤投与では、有意差はないが死亡例が増加

◆Alexander JW Ann Surg 1986 動物実験

熱傷動物の脂肪のタイプによる治療効果

30%熱傷作成ブタにおいて、n-3系脂肪酸を経管投与した群が、リノレイン酸や紅花油の投与群に比較して、体重減少や骨格筋減少が有意に少なく、よりREEが少なく、免疫能も向上した。

・ 投与水分量は30ml/kg/day、または1~1.5ml/kcal/day

・ ビタミンA、Cは、欠乏症に対して創傷治癒に有効(Vit.A 10000~50000IU/day、Vit.C 1000~2000mg/day)

・ 亜鉛欠乏の患者には、最大40mg/dayを10日間投与が創傷治癒に有効

・ 栄養アセスメントとその結果に基づく栄養療法は、褥瘡の予防治療に有

Iizaka S Clin Nutri 2009

Dorner B  NPUAP Adv Skin Wound Care 2009
19. Posthauer ME  Adv Skin Wound Care 2005 Level 6褥瘡治療

亜鉛が褥瘡治療に有効か?レビュー

亜鉛の1日推奨量は、男性11mg、女性8mgであり、1日40mg以下が安全とされる。亜鉛化合物の純亜鉛量に気をつける。たとえば、硫酸亜鉛220mgで亜鉛50mg、グルコン酸亜鉛222mgで31mgとなる。NPUAPもAHCPRも亜鉛欠乏が疑われるときにのみ、サプリメントとして使用すべきとしている。亜鉛の使用により、褥瘡の治癒が改善される可能性があるが、過剰投与や銅とのバランスに気をつけるべきだ。
24 Harris CL Ostomy Wound Manage 2004 Level 6 褥瘡治療

高齢の入院栄養不良患者の栄養管理EO

褥瘡ステージに応じて、高カロリー(30~40kcal/kg/day)、高たんぱく質(1.2~2.0g/kg/day)、水分1ml/kcal/day、ビタミンC、亜鉛の強化を行う。
5. Ellinger S Curr Opin Nutr Metab Care 2009 Level 6創傷治癒

ビタミンの創傷治癒における効果レビュー-

・ ビタミンC+亜鉛+蛋白+脂肪を追加した群で、ハイリスク急性期病院入院患者の褥瘡予防に効果
Bourdel-Marchasson I Nutrition 2000

・ ビタミンC+亜鉛+アルギニンを追加した群で、褥瘡治癒が促進された

Desnerves KJ Clin Nutr 2005

・ おそらく1日1~3gのビタミンCを経口的に補給すると、創傷治癒が促進される可能性がある

ビタミンの補給は創傷治癒に効果がある可能性があるが、エビデンスは弱い
26. Mechanick JI Am J Surg 2004 Level 6 創傷治癒

創傷治癒における栄養管理レビュー

・ ハイリスクの栄養不良患者は栄養不良のない患者に比較して2.1倍褥瘡が悪化する

・ 重症栄養不良患者の65%が褥瘡を合併する

・ 体動困難、骨盤骨折、乾燥肌、経口摂取不良(特にたんぱく質)、体重減少、低アルブミン血症、リンパ球減少、低免疫、亜鉛欠乏、便失禁、糖尿病、脳卒中患者に有意に褥瘡が悪化しやすい。

・ 高カロリー、高たんぱく質の投与が褥瘡予防治療に有用。

・ 亜鉛、コラーゲン、ビタミンACEなどが褥瘡治療に有用な可能性。

・ グルタミン、アルギニンも有用。

・ 経腸栄養による下痢の予防に、プレウロバイオティクスも有用。
28. Schmit T Caring 2002 Level 6 褥瘡治療

褥瘡治療における栄養治療の効果EO

高カロリー、高たんぱく質、亜鉛、ビタミンACEに加えてアルギニンも使用すると有用
29. Thomas DR Nutrition 2001 Level 6 褥瘡治療

褥瘡治療における栄養介入の効果レビュー

高たんぱく質、高カロリー、亜鉛、ビタミンACなどの研究があるが、有効性は証明されない。
30. Ferguson M Medsurg Nurs 2000 Level6 褥瘡予防治療

栄養と褥瘡管理、看護師向けガイドライン

一般的栄養管理を推奨

ビタミン ACE、亜鉛の褥瘡に対する効果に強いエビデンスはない。

Royal Collge of Nursing and National Institute for Health and Clinical Excellence 2005
27. Gengenbacher M Aging Clin Exp Res 2002 褥瘡栄養評価

褥瘡患者における栄養不良因子の評価

方法: コホート研究

被検者: スイスの老人病院の急性疾患による入院患者 22名

結果判定: 褥瘡あり(ステージⅢ、Ⅳ)となし

重症褥瘡患者群が褥瘡のない患者群に比較して、アルブミン、トランスフェリン、Hb、コレステロール、血清鉄、亜鉛が有意に低値で、CRPは有意に高値であった。
13. Hengstermann S JPEN 2007 Level 4 栄養アセスメント

褥瘡患者の栄養アセスメント

方法: コホート研究l

被検者: 総合老人病院に入院した急性期疾患患者(入院48時間以内) 484名

結果判定: MNA(Mini Nutrition Assessment)

BIA(Bioelectrical impedance analysis)

Barthel index(ADL)

褥瘡の有無、重症度と栄養評価の相関検定

MNAが一番褥瘡患者の栄養不良リスクを反映していた。
14. Sergi G J GerGerontol A Biol Sci Med Sci 2007 Level 4 褥瘡と栄養評価

REEと褥瘡の重症度

方法: コホート研究

被検者: イタリアの65歳以上の入院寝たきり患者

BMI30超、溢水・脱水、発熱、急性疾患、臓器不全、貧血、がん、免疫不全、エネルギ-に影響を及ぼす薬物使用患者は除外

褥瘡Ⅲ、Ⅳ(Shea分類)患者23名

褥瘡なし患者29名

結果判定: 血清Alb,pre-Alb、RBP、REE(間接熱量測定、HB) 、FFM、FM、褥瘡面積・体積

重症褥瘡患者は栄養マーカーは有意に褥瘡のない患者に比較して低値で、重症褥瘡患者のREEも有意に高値で、HB式で求めた予測カロリーの1.1倍が70%以上であった。また、REEや予測REEと実測REEの差は、褥瘡体積に相関した。
Dambach B J Am Geriatr Soc 2005 Level 4

高齢入院患者のエネルギー必要量は、25~30kcal/kg/dayで褥瘡の有無には有意差なし。1日必要量はHB式で予測するのが一番正確で、これらは褥瘡の重症度に相関しない。
21. Langkamp-Henken B J Am Diet Assoc 2005 Level 4 褥瘡栄養評価

MNAおよびMNA screening scoreが高齢者褥瘡患者の栄養評価に有効

方法:cross-sectional study

被検者: 特別養護老人ホーム入所者で褥瘡のある患者(Ⅰ~Ⅳ)

糖尿病、腎不全、肝不全、免疫疾患、感染症は除外 n=23

結果判定: MNA、MNA-SS

褥瘡のある高齢者では、血清アルブミン値などよりMNA、MNA-SSの方が栄養不良を反映していた。

Guideline:

<AHCPR>

・ ビタミンや微量元素のサプリメントによる褥瘡予防にはエビデンスがない。

・ 亜鉛非欠乏患者への過剰投与は避ける。

・ 最適の栄養状態を維持するのが、最良の方法の一つである。

<EPUAP>

・ 高タンパク質、高カロリーのサプリメントを、抗酸化作用を期待してアルギニン、ビタミンや微量元素などと併用するのは、褥瘡治癒を促進させる(I-B)。

Benati、Mourder-Marchasson①、Breslow15、Chernoff

・ ビタミンC補給のエビデンスは疑わしい(I-B)。

・ 亜鉛補給のエビデンスは説得力に欠ける(I-B)。Norris②

<ESPEN>

・ 高タンパク質の経口補給は、褥瘡の合併のリスクを低下させる(A)。

・ 褥瘡治癒のために、経腸栄養も推奨される(C)。

・ 亜鉛、アルギニン、カロチノイド、ビタミンA、C、Eなどのサプリメントは、高齢者の創傷治癒を促進させる可能性はある。

・ 適切な栄養補給だけでなく、局所の循環を改善するポジショニングや組織のダメージを軽減させることも大切である。

<JSPEN>

・ 低栄養は褥瘡発生の重要なリスクファクターで、褥瘡発生を予防するためには適切な栄養療法を行う(A-II)。

・ 褥瘡患者の安静時エネルギー消費量はしばしば亢進しているので、褥瘡の治療ではこれに見合ったエネルギーとタンパク質を投与する(A-II)。

・ 創傷治癒過程にかかわる栄養素(亜鉛、ビタミンA,C,E、アルギニンなど)の欠乏状態にならないように注意する(A-III)。

<Up to date>

・ 適切な栄養を投与すべきであり、褥瘡の合併は元の栄養状態によるが、サプリメントと経腸栄養は効果が期待できる。

・ 老人病院に入院中の患者で、普通食のみ摂取していた場合に、サプリメントを投与しないと褥瘡のリスクがあがったとの報告もある。