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プロバイオティクス

プロバイオティクスの定義

プロバイオティクスは抗生物質(アンティバイオティクス)に対比される言葉で、生物間の共生関係を意味する生態学的用語を起源としています。プロバ イオティクスとは、「腸内細菌のバランスを改善することにより、宿主(人など)に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されます。

プロバイオティクスの働き

・腸内への細菌やウイルスの進入を防ぐ。
・乳糖を分解する酵素を供給する。
・抗コレステロール作用。
・ビタミンB3、B5、B6、B12、葉酸、ビタミンKを作る。
・ガン予防、老化防止など免疫を高める可能性。
・腸を活性化させ大量の排出物を作る。
・過敏性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎の症状の軽減の可能性がある。
・ニキビや湿疹などの皮膚トラブルを減らす可能性がある。
・口臭を減らす。

腸内の善玉菌を増やすことで腸内バランスを保つというのがプロバイオティクスの考え方ですが、善玉菌の代表はビフィズス菌やラクトパチルス菌(乳酸桿 菌)などの乳酸菌です。腸内には数多くの細菌、体調を整える善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌、腐敗や発癌物質を作るウェルシュ菌や大腸菌が常在しています。 大腸は空気がほとんどない嫌気状態なので嫌気性菌と呼ばれるビフィズス菌やユウバクテリウム、ウェルシュ菌などの細菌が存在し、腸内細菌の90%以上がこ れにあたります。このうち、ビフィズス菌以外は利用できる糖質がなくてもアミノ酸などを利用してどんどん増殖するが、人の善玉菌は動物に比較して少なく、 その分消化液が強力で殺菌効果を増強して対応しています。
従って、善玉菌を増やして腸内のバランスを良くすると、抗体が多く作られ免疫が活性化します。その機序は、乳酸菌などの善玉菌は腸管に入り込んでマクロ ファージに取り込まれます。マクロファージは外敵の情報をリンパ球に伝える大事な細胞で、リンパ腺や扁桃腺においてマクロファージによってリンパ球(NT 細胞やT細胞、B細胞)も活性化されます。NK細胞やキラーT細胞は外敵と戦い、B細胞は外敵と戦う武器(抗体)を作り始めます。つまり乳酸菌によってリ ンパ球や免疫能は活性化されます。
乳酸菌を増やす食品には、ヨーグルト、乳製品、納豆、味噌、醤油、漬物(特にキムチ)などがあります。
ただし、プロバイオティクスには、胃液などの消化液に消化されずに腸内に到達できることが必要であり、もともと宿主の腸内に存在し増殖できることが必須条件となります。

プロバイオティクスとなる善玉菌の種類

ラクトバチルス
(乳酸桿菌属)
桿菌 アシドフィルス、カゼイ、プルガリクス、ブレビス
ヨーグルト、乳酸菌飲料
プランタルム、ファーメンタム: 発酵食品
ビフィズス菌属
(ビフィドバクテリウム)
桿菌 ブレーベ、ビフィダム、インファンティス
人の腸管、乳酸菌製剤、発酵乳
シュードロンガム、サーモフィルス
動物の腸管
連鎖球菌属
(ストレプトコッカス)
球菌 ラクティス、クレモリス、サーモフィルス
チーズ、ヨーグルト
フェカーリス: 乳酸菌製剤
ペディオコッカス属 球菌 セレピシュ: 加工品
ハロフィルス: 味噌・醤油

乳酸菌のプロバイオティクス機能

人間の腸内には約100種類、100兆個もの細菌がすみついていますが、腸内ではビフィズス菌に代表される健康によい働きをする細菌 (善玉菌)と、大腸菌、病原菌やブドウ球菌、腸内腐敗や発ガン関連物質を生み出すウェルシュ菌に代表されるような健康に有害な働きをする細菌(悪玉菌)が 絶えず勢力争いを行っており、このバランスが人間の健康状態を左右していると言われています。乳酸菌とは腸内で糖を分解して大量の乳酸を作り出す細菌の総 称です。その中でもビフィズス菌とアシドフィルス菌が主に有用です。通常、ビフィズス菌は大腸に、アシドフィルス菌は小腸に分布している善玉細菌です。腸 内細菌の2割程度を乳酸菌が占めていますが加齢に伴い腸内の細菌の分布が変化し、ウェルシュ菌に代表されるいわゆる悪玉菌が増加してきます。悪玉菌が増え ると腸内で便の腐敗が促進し、その結果発ガン物質が発生する恐れがあります。腸内環境を整えるために乳酸菌は欠かせません、特にビフィズス菌は糖を分解し て乳酸だけでなく酢酸をも作り出すので腸内環境の健康維持効果が知られています。また乳酸菌はオリゴ糖を好んで分解し、増殖する性質があります。

1) アシドフィルス菌
アシドフィルス菌とは善玉菌で腸内の有益菌を増やす乳酸桿菌属(ラクトバチルス)で、胃腸の調子を整え食中毒などになるのを防ぎます。またアシドフィルス 菌を摂っていると腸がきれいになり、腸内の腐敗に原因する口臭、便秘、匂いのキツイおならを減らし、にきびや皮膚のトラブルの治療の助けとなります。
<抗菌作用>
アシドフィルス菌は、消化管の小腸下部から大腸にかけて生息する腸内常住菌で、有機酸、過酸化水素、抗生物質などを造り、病原菌や腐敗菌の増殖を抑えま す。特に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム菌などに抗菌性を示します。アシドフィルス菌の抗菌作用の特徴は、病原菌あるいは潜在的な病原菌を特 異的に強く阻害することにあります。
<コレステロール抑制作用>
アシドフィルス菌は腸管内でコレステロールを消費し、その結果血清コレステロール値が抑制する可能性があると言われています。
<発ガン抑制作用>
腸内細菌の中には、食物成分や胆汁酸のような消化管の分泌物に作用して、アンモニア、アミン類、フェノール類、インドール、硫化水素などの有害な腐敗物 や発ガン物質を造るものがあります。アシドフィルス菌は、これらの腸内の悪玉細菌による発ガン物質の生成に関与する酵素の活性を低下させることが認められ ています。。アシドフィルス菌など腸内の乳酸桿菌は、人の胃ガンや大腸癌との関連が示唆されているニトロソアミンを分解します。

2)カゼイ菌
カゼイ菌は口膣内、腸内に常住する善玉菌で乳酸桿菌属(ラクトバチルス)です。繁殖力と耐久性がとても強く、アシドフィルス菌の生育を助けます。DL乳酸 とアミラーゼを作り出し、各種の物質(炭水化物)を幅広く消化する性質を持っています。DL乳酸とは乳酸菌が糖などを食べた結果できる物質、また体内のエ ネルギー代謝によってできる物質で細胞を活性化する働きがあります。カゼイ菌は乳汁やチーズの中にも多く見られる菌種です。
<カセイ菌の主な働き>
・免疫細胞の賦活
・腸内細菌のコントロール
・活性酸素の除去

3)ビフィズス菌
ビフィズス菌の由来:
ビフィズス菌というのはビフィドバクテリウム属に属する一群の菌の総称で、現在は25菌種に分類されていますが、このうちヒトの腸内に住みついているのは5菌種(ビフィダム、ブレーベ、インファンティス、ロンガム、アドレッセンティス)です。
1899年、フランス・パスツール研究所の小児科医ティシエは、健康な母乳栄養児の腸内で最優勢を誇っている未知の菌を発見し、バチルス・ビフィズス菌 と命名しました。母乳栄養児は健康に育つのに対し、人工栄養児は下痢などにかかりやすく、死亡率も高いという差があり、その謎を解く鍵は腸内菌にあると考 え、パスツール研究所の研究員となって母乳栄養児と人工栄養児の腸内菌の研究を続け、現在のビフィズス菌を発見しました。
<ビフィズス菌の働き>
・腸の働きを活発にする。 便秘を防ぐ。
・下痢を予防する
・ガスや便のいやな臭いをなくす
・肌あれを防ぐ可能性がある。
・老化防止
・免疫機能を調整してがんなどに対する抵抗力を高める。
・ビタミンB1、B2、B6、B12、ニコチン酸、葉酸、Kなどのビタミンを合成する。
・有毒物質の生成を抑え肝臓を保護する。

腸管免疫とは?

1. 腸管免疫

体の内と外の境界は、一般的には皮膚を思い浮かべますが、実際には食物などの通り道の腸管粘膜の方がはるかに広く、成人では体表面積 (皮膚の面積)は1.5m 2くらいなのに対して、腸管粘膜は、約400m 2 (テニスコート1面半)にも及ぶ表面積があります。粘膜系の中でも特に腸管粘膜は食物の摂取を通して常に膨大な量の蛋白質や病原微生物にさらされており、 腸内には多数の腸内細菌(腸内フローラ)が共生しています。腸管の免疫系は、生体がこれらの異物と接するし、その場所でそれらを監視し、対応するという重 要な役割を果たしています。そのため、抗体を作る B 細胞やそれを助ける T 細胞、腸に存在する特別な免疫器官であるパイエル板のリンパ球など、全身の末梢リンパ球の実に70%もが集結する体内最大の免疫組織です。これを粘膜免疫 系と呼び、食物の成分や常在細菌叢には反応せず、病原体には反応してこれを排除するように出来ています。したがって、ある種の蛋白などに過剰に反応してし まうアレルギーとも密接に関係してしまいます。だから、新しく腸管に入ってきた蛋白(食物)に対して過剰に反応しすぎないように免疫系を制御しています。 これを免疫寛容と呼び、その仕組みはまだよくわかっていません。このような粘膜免疫系の研究によって得られる知識は、効果的なワクチンや新たな薬物の投与 法の開発、さらには自己免疫疾患やアレルギーの治療への応用が期待されます。
このパイエル板やリンパ節などを総称して、腸管関連リンパ組織( gut-associated lymphoid tissue; GALT 、ガルト)と呼びます。

2. GALTの働きと仕組み

GALTは最も大きな免疫系でその大きな特徴は、食品のように安全なものと、病原細菌のように病原性のあるものを識別していることと 言えます。われわれは、生命を維持するため必要なものを認識してこれを受諾して分解し、体内に取り込んでいかなければなりません。しかし、誤って病原細菌 も体内に入ると、生命が危険にさらされる可能性があります。この病原細菌も、食品と同様にたんぱく質、炭水化物、脂質からつくられているので、食品などと 判別し排除していかなければなりません。
先にも述べたように食品など安全なものが認識された場合は、経口免疫寛容という免疫抑制作用が働き、安全に摂取することができます。その理由としては、 経口的に投与される多くのの物質が、すべて抗原として作用すると、免疫過敏状態たとえばアレルギーを発症してしまう可能性があり、それを防ぐために、この 経口免疫寛容現象が機能します。このような、非常に複雑な作用をGALTは行っているのです。
腸管免疫系を構成しているのは、(1)パイエル板、(2)小腸上皮細胞とそこに存在する上皮細胞間リンパ球(IEL)、(3)粘膜固有層とそこに存在す る粘膜固有リンパ球(LPL)です。IELは、上皮細胞5〜6個につき1個くらいの割合で存在して、その数は全免疫系細胞の60%と言われています。経口 的に体内に入る抗原は非常に多いため、これに対応する免疫系細胞も大量に存在する必要があります。そしてこれらの組織の下には腸管膜リンパ節や,最近発見 されたT細胞を作るクリプトパッチがあります。一般的に、腸管腔内に入ってきた抗原は、パイエル板のM細胞を通って体内に取り込まれ、そしてパイエル板の 中で一般的な免疫応答を起こします。M細胞は活発な抗原捕捉機能を有しており、抗原を取り込みます。取り込まれた抗原はマクロファージ、樹状細胞にある Toll様受容体(TLR)と結合して輸送され、傍濾胞領域にあるT細胞を活性化して、次に濾胞領域にあるB細胞がIgA(免疫グロブリン)産生能をもつ ように活性化します。最終的にIgA産生能をもったB細胞は全身をまわってまた腸管内に戻ってきて(これをホーミングといいます)、粘膜固有層でプラスマ 細胞となりIgAを分泌します。また、一部の抗原は腸管上皮細胞の間隙を通って、あるいは腸管上皮細胞内に直接取りこまれる形で体内に入り、同様に腸管免 疫系と接すると、IgAが産生され、経口免疫寛容が誘導されます。この分泌されたIgAがウイルスや細菌などの抗原を中和し、腸内細菌もコントロールして います。これらの仕組みに、先に述べた粘膜固有層リンパ球(LPL)、腸管上皮細胞(IEC)、上皮間細胞リンパ球(IEL)などが、サイトカインとケモ カインとよばれるメディエーター(媒介物質)などで複雑なネットワークを形成して調節しています。

こう説明すると非常に難しい話になるのですが、簡単に言うと腸管は人体にとって大事な免疫臓器であることがわかってきたのです。従っ て、この腸管粘膜が刺激を受けないということは、免疫機能が極端に低下するだけでなく、細菌やウイルスの侵入を防ぐことができないだけでなく、人体にとっ て有利に働いていた腸内細菌までもが人体を攻撃する(バクテリアル・トランスロケーション)最悪の結果になってしまいます。さらに、このGALTが自己免 疫疾患や炎症性腸疾患(クローン病ばど)とも密接に関係している可能性があり、花粉症などのアレルギーとも関連性があるのです。

3. 経口免疫寛容と食物アレルギー

食道を通過して胃や腸に達したタンパク質は、消化酵素による分解作用を受け、ペプチドやアミノ酸にまで分解されてから生体内へ吸収さ れます。この過程において、食品タンパク質の抗原性は大部分が消失しますが、残存したタンパク質やペプチドに対しては、局所腸管免疫系により産生される分 泌型IgA(免疫グロブリンA)がそれらの体内への侵入を特異的に防いでいます。さらにこのような障壁を乗り越えて生体内にアレルゲン(アレルギー抗原) が侵入しても、我々の免疫系はそれらを異物として認識することはありません。つまり、IgG(免疫グロブリンG)やIgE(免疫グロブリンE)の産生や遅 延型過敏症の抑制系が成立しており、経口的に侵入した抗原に対しては全身の免疫が応答しない経口免疫寛容(経口的に投与された抗原に対し、免疫系の応答が 特異的に抑制される現象)の状態となって、アレルギーの発症は抑えられています。これらには特定の免疫担当細胞が複雑に影響しており(CD4陽性T細胞な ど)、現在解明が進んでいるところです。このように、我々の体には食品に対してアレルギーを起こさないための防御作用が二重三重に兼ね備えられています。 ところが、これらの機能が十分に発揮されない場合や何かの異常にて、食品成分に対して免疫系が働き始めるとアレルギーが成立することになります。

< アレルギー成立の機序>
①消化機能の低下によりアレルゲンが増加する。
②IgA 分泌の低下により、腸管からのアレルゲン吸収が増加。
③全身性免疫の増強
遺伝的因子:抗IgE 応答性
環境因子:化学物質や微生物が免疫賦活剤
(免疫系の働きを亢進させる物質)となる
④経口免疫寛容の破綻→食物アレルギー

4. 腸管免疫を利用したアレルギー対策

前述したように適切に経口免疫寛容が誘導されると、アレルギーを抑えられる可能性があります。ひとつの方法として、実際のアレルゲン (アレルギー抗原)となる物質を害のない程度に少量づつ経口的に感作していき、アレルギーを予防する方法もありますが、腸管免疫機能を高めることにより予 防する方法が一般的です。
免疫の働きを高めるには一般的には十分な量のたんぱく質と、必要量のミネラル、ビタミンを摂取することが必要です。蛋白質、アミノ酸としては、グルタミ ンやアルギニンなどが有効といわれており、ω−3系脂肪酸や核酸なども腸管の免疫能を高めます。微量栄養素ではビタミンE, A, C、セレン、亜鉛が免疫の働きの低下を防ぐ働きがあります。ビタミンEは過剰に産生されてそしきに傷害を与える活性酸素を抑制するはたらきがあります。ま た高齢になるとプロスタグランジンE2といったような物質が体の中に出てきて免疫系を弱めてしまいますが、ビタミンEはこれができるのも防ぎ、免疫系のは たらきを高めます。亜鉛はわれわれのからだの中で不足しがちなミネラルで、もともと免疫細胞の生成に役立っており、活性酸素を除去する酵素の構成成分でも あります。セレンという微量元素も亜鉛と同様の働きをしています。以上のように免疫の働きを維持し高めるには栄養価の高いタンパク質、そしてビタミンやミ ネラルを摂ることが重要です。

5. 腸内細菌を利用したアレルギー予防

腸管には1014個位の微生物が生息し、その重量は1kgに達するとも言われ、最近これら微生物群は腸管免疫系を刺激し、その免疫的 環境を左右することがわかってきました。特に経口免疫寛容の誘導やIgAなどの抗体産生との関連性など腸内免疫系の重要な2つの特徴的な機能にとって必須 です。
また、腸管に侵入した細菌、抗原の種類によって誘導されるT細胞の種類が異なることが明らかとなりました。T細胞はTh1型およびTh2型の2種類があ り、このTh1とTh2のバランスがとれている場合には免疫系は正常ですが、Th2へとバランスが傾くとアレルギー、Th1へ傾くと自己免疫疾患になりや すいと言われています。免疫系を完全に保つにはTh2/Th1バランスが良好である必要があるのです。一般に腸内細菌の善玉菌と言われるラクトバチルス菌 やビフィズス菌などのグラム陽性菌は、T細胞をTh1へと導くため、アレルギー反応を抑制する可能性があります。したがって、プレバイオティクスやプロバ イオティクスを駆使してアレルギー反応や自己免疫疾患を抑制する可能性があります。

以上のことより、腸内細菌や腸管粘膜の刺激により、アレルギーの予防だけでなく、潰瘍性大腸炎やクローン病などの原因不明の炎症性腸疾患や自己免疫疾患にも有効性が期待できます。

プレ・プロバイオティクス2010

プロバイオティクス
腸内細菌のバランスを改善して有用な作用を生体(宿主)に与える生きた善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)、またはそれを含む食品のこと。
例) ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆など
プレバイオティクス
大腸にそのまま(消化されずに)到達して腸内細菌、特にビフィズス菌などの善玉菌の餌(食品)となり、それらを増殖させる働きのあるもののこと。
例) オリゴ糖、食物繊維、など
シンバイオティクス
プレバイオティクスとプロバイオティクスの両方の作用を持つ食品。

A. プロバイオティクス

1. プロバイオティクスの定義

プロバイオティクスは抗生物質(アンティバイオティクス)に対比される言葉で、生物間の共生関係を意味する生態学的用語を起源としています。プロバイオティクスとは、「腸内細菌のバランスを改善することにより、宿主(人など)に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されます。
2. プロバイオティクスの働き:
・腸内への細菌やウイルスの進入を防ぐ。
・乳糖を分解する酵素を供給する。
・抗コレステロール作用。
・ビタミンB3、B5、B6、B12、葉酸、ビタミンKを作る。
・ガン予防、老化防止など免疫を高める可能性。
・腸を活性化させ大量の排出物を作る。
・過敏性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎の症状の軽減の可能性がある。
・ニキビや湿疹などの皮膚トラブルを減らす可能性がある。
・口臭を減らす。

腸内の善玉菌を増やすことで腸内バランスを保つというのがプロバイオティクスの考え方ですが、善玉菌の代表はビフィズス菌やラクトパチルス菌(乳酸桿菌)などの乳酸菌です。腸内には数多くの細菌、体調を整える善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌、腐敗や発癌物質を作るウェルシュ菌や大腸菌が常在しています。大腸は空気がほとんどない嫌気状態なので嫌気性菌と呼ばれるビフィズス菌やユウバクテリウム、ウェルシュ菌などの細菌が存在し、腸内細菌の90%以上がこれにあたります。このうち、ビフィズス菌以外は利用できる糖質がなくてもアミノ酸などを利用してどんどん増殖するが、人の善玉菌は動物に比較して少なく、その分消化液が強力で殺菌効果を増強して対応しています。
従って、善玉菌を増やして腸内のバランスを良くすると、抗体が多く作られ免疫が活性化します。その機序は、乳酸菌などの善玉菌は腸管に入り込んでマクロファージに取り込まれます。マクロファージは外敵の情報をリンパ球に伝える大事な細胞で、リンパ腺や扁桃腺においてマクロファージによってリンパ球(NT細胞やT細胞、B細胞)も活性化されます。NK細胞やキラーT細胞は外敵と戦い、B細胞は外敵と戦う武器(抗体)を作り始めます。つまり乳酸菌によってリンパ球や免疫能は活性化されます。
乳酸菌を増やす食品には、ヨーグルト、乳製品、納豆、味噌、醤油、漬物(特にキムチ)などがあります。
ただし、プロバイオティクスには、胃液などの消化液に消化されずに腸内に到達できることが必要であり、もともと宿主の腸内に存在し増殖できることが必須条件となります。

3. プロバイオティクスとなる善玉菌の種類

乳酸菌のプロバイオティクス機能

人間の腸内には約100種類、100兆個もの細菌がすみついていますが、腸内ではビフィズス菌に代表される健康によい働きをする細菌(善玉菌)と、大腸菌、病原菌やブドウ球菌、腸内腐敗や発ガン関連物質を生み出すウェルシュ菌に代表されるような健康に有害な働きをする細菌(悪玉菌)が絶えず勢力争いを行っており、このバランスが人間の健康状態を左右していると言われています。乳酸菌とは腸内で糖を分解して大量の乳酸を作り出す細菌の総称です。その中でもビフィズス菌とアシドフィルス菌が主に有用です。通常、ビフィズス菌は大腸に、アシドフィルス菌は小腸に分布している善玉細菌です。腸内細菌の2割程度を乳酸菌が占めていますが加齢に伴い腸内の細菌の分布が変化し、ウェルシュ菌に代表されるいわゆる悪玉菌が増加してきます。悪玉菌が増えると腸内で便の腐敗が促進し、その結果発ガン物質が発生する恐れがあります。腸内環境を整えるために乳酸菌は欠かせません、特にビフィズス菌は糖を分解して乳酸だけでなく酢酸をも作り出すので腸内環境の健康維持効果が知られています。また乳酸菌はオリゴ糖を好んで分解し、増殖する性質があります。

1) アシドフィルス菌
アシドフィルス菌とは善玉菌で腸内の有益菌を増やす乳酸桿菌属(ラクトバチルス)で、胃腸の調子を整え食中毒などになるのを防ぎます。またアシドフィルス菌を摂っていると腸がきれいになり、腸内の腐敗に原因する口臭、便秘、匂いのキツイおならを減らし、にきびや皮膚のトラブルの治療の助けとなります。
<抗菌作用>
アシドフィルス菌は、消化管の小腸下部から大腸にかけて生息する腸内常住菌で、有機酸、過酸化水素、抗生物質などを造り、病原菌や腐敗菌の増殖を抑えます。特に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム菌などに抗菌性を示します。アシドフィルス菌の抗菌作用の特徴は、病原菌あるいは潜在的な病原菌を特異的に強く阻害することにあります。
<コレステロール抑制作用>
アシドフィルス菌は腸管内でコレステロールを消費し、その結果血清コレステロール値が抑制する可能性があると言われています。
<発ガン抑制作用>
腸内細菌の中には、食物成分や胆汁酸のような消化管の分泌物に作用して、アンモニア、アミン類、フェノール類、インドール、硫化水素などの有害な腐敗物や発ガン物質を造るものがあります。アシドフィルス菌は、これらの腸内の悪玉細菌による発ガン物質の生成に関与する酵素の活性を低下させることが認められています。。アシドフィルス菌など腸内の乳酸桿菌は、人の胃ガンや大腸癌との関連が示唆されているニトロソアミンを分解します。

2)カゼイ菌
カゼイ菌は口膣内、腸内に常住する善玉菌で乳酸桿菌属(ラクトバチルス)です。繁殖力と耐久性がとても強く、アシドフィルス菌の生育を助けます。DL乳酸とアミラーゼを作り出し、各種の物質(炭水化物)を幅広く消化する性質を持っています。DL乳酸とは乳酸菌が糖などを食べた結果できる物質、また体内のエネルギー代謝によってできる物質で細胞を活性化する働きがあります。カゼイ菌は乳汁やチーズの中にも多く見られる菌種です。
<カセイ菌の主な働き>
・免疫細胞の賦活
・腸内細菌のコントロール
・活性酸素の除去

3)ビフィズス菌
ビフィズス菌の由来:
ビフィズス菌というのはビフィドバクテリウム属に属する一群の菌の総称で、現在は25菌種に分類されていますが、このうちヒトの腸内に住みついているのは5菌種(ビフィダム、ブレーベ、インファンティス、ロンガム、アドレッセンティス)です。
1899年、フランス・パスツール研究所の小児科医ティシエは、健康な母乳栄養児の腸内で最優勢を誇っている未知の菌を発見し、バチルス・ビフィズス菌と命名しました。母乳栄養児は健康に育つのに対し、人工栄養児は下痢などにかかりやすく、死亡率も高いという差があり、その謎を解く鍵は腸内菌にあると考え、パスツール研究所の研究員となって母乳栄養児と人工栄養児の腸内菌の研究を続け、現在のビフィズス菌を発見しました。
<ビフィズス菌の働き>
・腸の働きを活発にする。 便秘を防ぐ。
・下痢を予防する
・ガスや便のいやな臭いをなくす
・肌あれを防ぐ可能性がある。
・老化防止
・免疫機能を調整してがんなどに対する抵抗力を高める。
・ビタミンB1、B2、B6、B12、ニコチン酸、葉酸、Kなどのビタミンを合成する。
・有毒物質の生成を抑え肝臓を保護する。


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B. プレバイオテイクス

1. プレバイオティクスの定義

大腸にそのまま到達して、腸内細菌の食品となってその増殖を助けるもの
1)オリゴ糖
2)食物繊維(セルロースなど)
3)デンプン
4)グルコン酸(酸性糖質) など

オリゴ糖は3~10個の単糖類が結合した寡糖類であり、消化酵素によって消化吸収されずに大腸に到達して腸内細菌の餌となるものが注目を浴びています。特に、オリゴ糖の消化酵素を有しているビフィズス菌、酪酸産生菌の増殖効果があり、腸内細菌の活性化が期待されます。また、高分子で立体構造を持つ食物繊維も腸内細菌の餌になるだけでなく、すみかにもなります。

2. プレバイオティクスの働き

1)整腸作用
2)血中コレステロール低下作用
3)発がん抑制作用
4)炎症性腸疾患の改善
5)血圧降下作用
6)免疫賦活作用
7)カルシウム、マグネシウムの吸収促進など


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3. プレバイオティクスの今後

近年、食生活の多様化から、イモ、マメ類の消費が減り、加工食品の増加に伴い、プレバイオティクスとなる難消化性糖類の摂取が極端に減少しています。特に、高蛋白(動物性)・高脂肪食を摂取することが多く、これらは腸内の悪玉菌の作用で多くが発ガン物質などの有害物質を産生したり、脂肪代謝異常も誘発します。例えば、大豆オリゴ糖を摂取すると、腸内のビフィズス菌(善玉菌)を有意に増加させるだけでなく、腸内環境を水分やpH(酸性環境)などの面から整える作用が期待できます。


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