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ODA:客観的データ栄養評価はmade in Japan

客観的栄養データ評価(objective data assessment : ODA)とは?

✓ 栄養アセスメントの手法のひとつであり、SGAで栄養障害があると判断された患者を対象に行う。

✓ 血液化学データや尿生化学検査をはじめとした各種の検査データを基に、栄養状態を判断する。

✓  SGAと比較して、より詳細な栄養状態の判定ができる。

✓ SGAとODAから得られた情報を基に栄養療法のプランを作成、実施する。

*ちなみに、ODAとは川崎病院の井上先生が作られたmade in Japanの造語です。

<ODAの分類>

①身体計測

②血液・尿生化学的検査

③免疫能検査

④機能検査(握力、呼吸機能など)

<身体計測>

♥ BMI(Body Mass Index):体重(kg)/{身長(m)×身長(m)}

27-25 超太りすぎ、25-22普通、21-19 やせ気味、19未満 やせすぎ

体重表:          BMI 25       BMI 19

身長130cm           42kg          32kg

身長140cm           49kg          37kg

身長150cm           56kg          43kg

身長160cm           64kg          49kg

身長170cm           72kg          55kg

身長180cm           81kg          62kg

身長190cm           90kg          69kg

理想体重(IBW)比:BMIや理想体重表で求める * BMIの場合には22を理想

通常時体重(UBW):患者の通常時の体重/理想体重(IBW)

80-90% 軽度、70-79% 中等度、69%以上 高度の栄養不良

♥ 体重減少率(%):体重変化をUBWで割ったもの

期間        有意の体重減少 重症

1週間          1~2%             2%<

1ヶ月          5%             5%<

3ヶ月         7.5%            7.5%<

6ヶ月        10%               10%<

* 身長が測りにくい時の対応

臥位身長:寝たきり患者で脊柱の変形が強いものや、下肢の関節拘縮が重度のもので、背臥位をとることが困難な患者では身体の各部分の計測を行って、合計して身長とする。可能な限り脊椎に沿って、曲がった部分を頂点として部分、部分を計測して合計する。

指極長:上記のいずれの方法にても困難、例えば下肢欠損などや高度の亀背には、指極の長さをもって身長に代えることもできる。指極とは、両上肢を左右水平に完全に伸展させた時の、両手の中指先端間の距離で、これを測定する。

膝高計測による身長および体重の推定式

<男性>身長推定式: 64.02+2.12×KH−0.07×年齢 体重推定式: 1.01×KH+2.03×AC+0.46×TSF+0.01×年齢−49.37

<女性>身長推定式: 77.88+1.77×KH−0.10×年齢  体重推定式: 1.24×KH+1.21×AC+0.33×TSF+0.07×年齢−44.43
*KH: 膝高cm、AC:上腕周囲長cm、TSF: 上腕三頭筋部皮下脂肪厚mm

 

❤上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF:triceps skinfold thickness)

→体脂肪量の指標

❤上腕周囲長(AC:arm circumference)

→筋肉量と体脂肪量の指標

❤上腕筋囲(AMC:arm muscle circumference)

→筋肉量の指標

→ ACとTSFから算出(自動計算)

上腕筋囲長(cm)=上腕周囲長(cm)ー3.14×上腕三頭筋部皮下脂肪厚(cm)

標準の80-90% 軽度、60-80% 中等度、60%以下 高度の消耗状態 これらはJARD2001を参考にして決定(パーセンタイル値)

 

<血液・尿生化学検査>

❤血清タンパク

☆血清総タンパク(TP):アルブミンとグロブリン

アルブミン(Alb)・・・血清中に最も含有量の多いたんぱく質。半減期3週間。

生体内におけるアミノ酸の主な供給減。

膠質浸透圧の維持・生体内物質の輸送に関与。

脱水、溢水など体液量にて修飾される。

肝機能障害、ネフローゼ、消耗性疾患があると、低下をきたす。

インスリン、ステロイド、甲状機能亢進症で上昇。

* 侵襲下では、急性期の炎症性メディエーター合成が増加し、Albの合成は低下する。

* 3.5~3.0g/dL 軽度栄養不良、2.5~3.0 中等度、2.5g/dL未満 高度

* Albは採血時の姿勢や採血時間に左右される。

* 肝臓での蛋白合成能の低下 → 腹水・浮腫の発現

☆急性相蛋白:RTP(Rapid turnover protein)

トランスフェリン(Tf)・・・肝臓で合成され、Feの運搬に関わる糖蛋白。半減期1週間。

高値・・・鉄欠乏性貧血・妊娠中~後期・ステロイド投与など

低値・・・蛋白欠乏性栄養障害・ネフローゼ・急性炎症性疾患など

トランスサイレチン・・・プレアルブミンとも呼ばれる。肝臓で合成され、サイロキシン(T4)の運搬に関与する蛋白質。RBPと結合し、RBPの腎からの漏出を防ぐ。必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンを多く含む。半減期2、3日

高値・・・腎不全・甲状腺機能亢進症・高カロリー輸液など

低値・・・ネフローゼ・肝障害など

レチノール結合蛋白・・・肝臓で作られ、レチノール(VA)との結合・運搬に関する蛋白質。半減期半日。

高値・・・慢性腎不全など

低値・・・VA欠乏症・甲状腺機能亢進症など

❤血漿脂質

☆中性脂肪(トリグリセリド)と総コレステロール

脂質は中性脂肪(TG)として体内に貯蔵されている。エネルギー供給不足の際、①糖質②脂質がエネルギー源となるため、低値では栄養不良の指標となる。長期に渡る熱量オーバーによる過剰栄養の際、脂肪分解抑制や脂肪合成亢進により高値を呈することがある。

トリグリセライド * 重症感染症などでは増加が見られることもある。

高値・・・高脂血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、痛風、脂肪肝、膵炎など

低値・・・甲状腺機能亢進症、重症肝硬変、心不全など

総コレステロール

高値・・・高コレステロール血症、ネフローゼ、甲状腺機能低下症、閉塞性黄疸、糖尿病など。

低値・・・肝障害、甲状腺機能亢進症、貧血、白血病、慢性膵炎、慢性腎炎など。

☆コリンエステラーゼ
コリンエステラーゼ(ChE)は、肝臓でのたんぱく質合成能の指標で、Albより鋭敏との報告もある(半減期11日)。コリンエステルという物資を分解して、たんぱく質を作り出しており、AlbやPT時間などとも良好な相関を認める。

高値・・・ネフローゼ、甲状腺機能亢進症、脂肪肝、肥満、糖尿病、喘息など

低値・・・肝障害、消耗性疾患、慢性腎不全、農薬中毒など

❤血漿アミノ酸

✓ 血漿アミノ酸は体内遊離アミノ酸の5%前後であり、低栄養で低下する。

✓ 高度肝障害では、肝臓でのアミノ酸代謝障害のために高値を呈することがある。

✓ タンパク栄養障害では必須アミノ酸(特に分岐鎖アミノ酸BCAA)の低下が著明になる。BCAAが低下し、芳香族アミノ酸AAAが増加するためにフィッシャー比が重要となる。(肝硬変など)

* BTR:BCAA/tyrosine(チロシン)はフィッシャー比の代用

✓ AAAは肝臓で代謝され、肝機能の低下によって高値。BCAAは主に骨格筋で代謝され、エネルギー消費増大に伴う異化亢進で低値。

❤窒素バランス(NB:窒素平衡)

投与された窒素量と尿中に排泄された窒素量の差

生体の蛋白質、アミノ酸の必要量は、正常な生理機能を維持するために必要な量、摂取量、有効利用率によって決定される。

約2週間窒素の補給がないと、生体内タンパク量が70%程度に減少し、窒素死に至るといわれている。

・ 尿中クレアチニン

尿中クレアチニン∝FFM(除脂肪組織)∝ エネルギー必要量

FFM(Kg) = 23.3×Ucr(mg/day)+21.1

・ クレアチニン身長係数(creatinine height index:CHI)

・・・筋タンパク代謝の指標、全身の筋肉量と相関

理想24時間尿中クレアチニン排泄量= 理想体重(kg)×クレアチニン係数(男23mg/kg、女18mg/kg)

CHI(%)= 実測値/理想値(24時間尿中クレアチニンン排泄量)×100

・ 尿中3-メチルヒスチジン(3-Mehis)

筋肉量、筋タンパク代謝状態に相関し、男性・若年者で高値、女性・高齢者で低値。ストレスによる異化亢進時と低栄養で増加、慢性低栄養に伴う筋肉消耗時に低下。

<免疫能検査>

✓ 侵襲に対する生体反応経路として、神経系・内分泌系・免疫系の相互作用が働き、生体の恒常性を維持している。

✓ 免疫系、特にサイトカインを中心に複雑な情報伝達が成り立っている。

✓ 細胞性と体液性のバランスの上に成り立っている。

❤総リンパ球数(TLC:total lymphocytes count)

1000/μL未満になるとT細胞数が減少 → 細胞性免疫の低下

* 皮膚遅延型過敏反応(ツベルクリン)も使用される。

・ リンパ球サブセット

ヘルパーT細胞(Th)・・・CD4を発現し、免疫応答を活性化(リンホカイン産生、T細胞の機能誘導、B細胞の分化成熟および抗体産生)

サプレッサーT細胞(Ts)・・・CD8を発現し、免疫応答を抑制

* 低栄養状態では、Th/Tsは低下する、すなわち免疫は抑制される。

・ リンパ球幼弱化反応

リンパ球が抗原刺激で芽球様細胞に変化し分裂増殖することを幼弱化といい、PHAなどで

T細胞を刺激してT細胞のDNA合成能を測定することで評価する。低栄養で低下。

・ 皮膚遅延型過敏反応

細胞性免疫能の評価・・・ツベルクリン反応(purified protein derivative:PPD)

10~15mm:経度栄養障害、5~10mm:中等度、<5mm:高度

ただし、免疫抑制剤投与、高齢者、悪性疾患、感染症、肝不全、腎不全でも偽陰性あり。

・ 補体・・・肝で合成されるタンパク質(C3、C4)

NK活性(natural killer、ナチュラルキラー)・・・担癌患者や肝硬変において栄養状態と相関する細胞障害性リンパ球機能

免疫グロブリン・・・Bリンパ球から産生される液性免疫で、IgAなどが低下

サイトカイン・・・細胞間の伝達物資であり、代謝などと相関しているが、臨床的には栄養評価としての定量は困難

炎症性サイトカイン・・・TNFα、IL-6、IFNγなど

抗炎症性サイトカイン・・・IL-4、IL-10、TGFβなど

<まとめ>

一般的栄養適応基準 (静脈・経腸栄養ガイドライン:日本静脈経腸栄養学会

理想体重比80%以下または有意な体重減少率

② 窒素バランスの負が1週間以上継続

③ 血清アルブミン値が3.0g/dl以下

④ 総リンパ球数1000/μl以下

⑤ トランスフェリン200mg/dl以下

⑥ ツベルクリン(PPD)皮内反応直径5mm以下

* PSの低下、褥創形成または治癒遷延

 

 

 

肝硬変患者の栄養療法のエビデンス(2009年版)

Ⅰ. 肝硬変患者におけるPEMの実態

エネルギー栄養状態     蛋白栄養状態

正常           正常       14(13%)

正常           異常       27(25%)

異常           正常       13(12%)   87%

異常           異常 55(50%)

* 血清アルブミン低値(Alb3.5g/dL以下)40%、エネルギー低栄養(基礎代謝量以下)70

Tajika M. et al. Nutrition 17;445-450:2001

・ 代償性肝硬変の20%、非代償性肝硬変の60%にPEMが存在

Plauth M. et al. Clin Nutr 16;43-55:1997

・ 慢性肝疾患の栄養不良の要因

肝臓自体の代謝異常

栄養摂取量の低下、食欲中枢を傷害するサイトカインの増加、腹水、浮腫による腹部膨満感

胆汁分泌障害による消化吸収障害

門脈圧亢進による小腸浮腫、炎症、出血

消化管ホルモンの代謝低下(コレシストキニンなど)

亜鉛欠乏による味覚障害

耐糖能の低下(約30%に合併)

・ 浮腫・腹水のある肝硬変患者の栄養

食塩 5~7g/日

食事以外の水分摂取 500~1000ml/日

ストレス係数 1.2~1.3

蛋白質    1.2~1.3g/kg/日

BCAA投与

・ 肝硬変は、血清アルブミン値3.5g/dLを基準として予後に影響する。

Muto Y. et al. Gastroenterol Hepatol 3;705-713:2005


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◎ 肝硬変患者では、低アルブミン血症を呈する患者においても腹水や浮腫の存在によってBMIやTSFなどの身体計測指標が見かけ上保たれている症例も存在し、その評価が困難である(ESPENガイドライン)。

Kondrup J. et al. Clin Nutr 22;415-421:2003

*肝硬変患者の栄養基準 日本病態栄養学会(2003年)

1. エネルギー必要量

栄養所要量(生活活動強度別)第6次改定(厚生労働省2000年)を目安

耐糖能異常のある場合  25~30kcal/kg/日

2. 蛋白必要量

蛋白不耐症(肝性脳症)がない場合  1.0~1.5g/kg/日

但し、低アルブミン血症3.5g/dL以下、フィッシャー比1.8以下(BTR3.0以下)に

はBCAAを投与することがある。

蛋白不耐症がある場合 低蛋白食(0.5~0.7g/kg/日)+肝不全用経腸栄養剤

3. 脂質必要量

エネルギー比 20~25%

4. 食塩

腹水・浮腫(既往歴も含む)がある場合 5~7g/日

5. 分割食(4~6回/日)あるいはLES(約200kcal相当)

但し、肥満のある症例では、1日のエネルギー量を変えないように分割する。

*ESPEN―肝疾患ガイドライン(2006

1. 一般的事項

・ ベッドサイドで実施可能なSGAや身体計測により患者が低栄養状態のリスクがないか確認する(Grade C)。

・ 生体電気抵抗分析法(BIA)により、定量的に低栄養状態を評価する。但し、腹水症例でのBIAは限界がある(Grade B)。

・ 推奨される摂取熱量は35~40kcal/kg/日(Grade C)。

・ 推奨される摂取蛋白量は1.2~1.5g/kg/日(Grade C)。

2. 経腸栄養の適応

・ 適切な食事指導を行っても患者が経口的に必要量の食事を摂取できない場合(Grade A)。

3. 経路

・ 至適量の食事が摂取できない場合は、経口的に経腸栄養剤を投与するか(Grade C)、食道静脈瘤があってもチューブによる投与を行う(Grade A)。

・ PEGは合併症の頻度が高く推奨されない(Grade C)。

4. 経腸栄養剤の組成

・ 一般的な蛋白組成が推奨される(Grade C)。

・ 腹水症例では高蛋白・高カロリーの組成を考慮すべきである(Grade C)。

・ 経腸栄養剤施行中には肝性脳症を発症した症例ではBCAAを高含有組成の製剤を投与する(Grade A)。

・ 経口のBCAA補充は進行した肝硬変の予後を改善する(Grade B)。

5. 予後

・ 経腸栄養剤は栄養状態、肝機能を改善し合併症を減らし、生存期間を延長することから推奨される(Grade A)。

* ASPEN 肝疾患における栄養補給ガイドライン(2002年)

① 肝疾患患者は栄養不良のリスクが大きいので、栄養スクリーニングをしなければならない。その結果、必要な栄養評価を行って、栄養ケアプランを必要とする患者を検出しなければならない。

② 肝硬変患者の栄養評価には、ビタミン・微量元素(ビタミンADEK、亜鉛)の欠乏の有無が含まれる。胆汁うっ滞性肝疾患患者には、特にこれらを補充投与すべきである。

③ 肝硬変患者には、食事を1日4~6回に分割して頻回投与(夜食も含む)すべきである。

④ 肝性脳症の迅速なマネジメントには、蛋白制限が必要である。

⑤ 肝疾患患者で蛋白制限を長期に行ってはならない。

⑥ 分岐鎖アミノ酸の多い食事を投与したり、それを用いた栄養管理は、薬剤治療によってもよくならない場合に限って慢性型の脳症肝硬変に患者を対象に行うべきである。

⑦ 術前の栄養管理は、肝硬変に合併した肝癌のために肝切除を行う患者に対して行われる。

Ⅱ. BCAA

・ 肝硬変患者では、BCAAが低下し、AAAが増加、およびフィッシャー比の低下がある。

肝硬変でBCAAが減少する理由

① 肝臓で解毒機能が低下したアンモニアを骨格筋で代償的に代謝する際に基質として用いられる。

Yamato M, et al. Hepatol Res 3;91-96:1995

② 肝硬変ではブドウ糖よりBCAAの方がエネルギー効率は高く、骨格筋でエネルギーを産生する燃焼基質に用いられる。

さらに、この燃焼はTNFαによって刺激されるので、炎症やBT、菌血症などにても惹起される。

Kato M. et al. Inter Med 37;1792-1801;1998

Shraki M. et al. Biochem Biophys Res Commun 328;973-978;2005

・ アミノ酸バランスの不均衡が継続すると、アルブミン合成に遺伝子レベルで低下する。

・ 門脈圧亢進症・肝硬変の特徴は、血清アルブミン値の低下がBCAAの低下と相関があ

る。フィッシャー比の低下とともに予後も不良となる。


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Yoshida T. et al. J Gastroenterol 24;692-698:1989

・ ロイシンが肝細胞表面のレセプターに結合することで、アルブミン合成が開始される。

Ijichi C. et al. Biochem Biophys Rea Commu 303;59-64:2003

ロイシンは肝星細胞のHGF(肝細胞増殖因子)の産生・分泌を促進。

Tomiya t. et al. Biochem Biophys Res Commun 297;1108-1111:2002

・ BCAA顆粒の経口長期投与(33か月間)によって、血清アルブミン値の改善と生存率

やQOL(腹水、浮腫、肝性脳症、黄疸、肝癌発生、食道静脈瘤破裂)の改善が得られた。

Muto Y. et al. Clin Gastroenterol Hepatol 3:705-713,2005

・ BCAA経腸栄養剤の長期投与(15か月間)によって、有害事象の累積非発現率(腹水、肝性脳症の予防、child-Pughスコア低下、総ビリルビン値低下、入院回数・入院日数の減少、QOLの改善、予後の改善)が有意に高かった。

Marchesini G. et al. Gastroenterology 124;1792-1801:2003

・ BCAAは、骨格筋内でグルタミン酸からグルタミンを合成する過程でアンモニアを取り込むことによって処理されるが、このグルタミン酸の前段階にBCAAが必須であり、肝硬変患者はアンモニアの解毒のためにBCAAを必要とすることになる。

また、BCAAは脳血液関門でAAAと同一のキャリアーにて輸送されるので、BCAAを増加させることでAAAの脳内移行を阻害することも肝性脳症の治療になる。

・ 肝硬変患者にBCAA顆粒を投与することで耐糖能異常が改善。

Urata Y. et al. Hepatol Rea 37;510-516:2007

ラットの実験で、肝硬変でもBCAAまたはロイシンの投与により、インスリン分泌非依存性に血糖降下作用が確認。

その理由として、

① ロイシンとイソロイシンがPI-3kinase/PKCシグナルの活性化を介して筋肉組織にけるグルコースの取り込みを促進する。

② ロイシンが肝細胞内のmTORを経てp70s6キナーゼを活性化することにより、グリコーゲン合成酵素活性を増加し、グリコーゲン合成能が改善する。

・ BCAAによる免疫能の改善(肝内リンパ球、NK活性など)

Cerra FB. Et al. Ann Surg 199;286-291:1984

Tsukishiro T. et al. J Gastroenterol Hepatol 15;849-859:2000

肝硬変患者にBCAA顆粒を3カ月投与したところ、好中球貪食能、NK細胞活性が有意に改善した。

Nakamura I. et al. Hepatol Res 37;1062-1067:2004

・ 肝硬変患者は門脈圧亢進症から蛋白漏出を約40%に認める。従って、消化吸収されやすい経腸栄養剤は有効である。

・ 利尿剤に反応性の腹水患者に対してBCAA製剤を投与することで、アルブミン値の上昇だけでなく、治療期間の短縮や利尿剤の早期減量が可能になった。

野口ら 肝胆膵 44;657-663:2002

・ 代償性肝硬変の段階に手もフィッシャー比の低下している症例は、早期にBCAA製剤を投与することでアルブミンの低下を予防できる。

Habu D. et al. Hepatol Res 25;312-318:2007

◎ BCAA製剤の投与により還元型アルブミンの上昇と酸化型アルブミンの下降が確認され、BCAAはアルブミンの質の改善に有効

Watanabe A. et al. Nutrition 20;351-357:2007

福島秀樹 栄養-評価と治療 24;147-150:2007

加藤ら 栄養―評価と治療 24;144-146:2007

Ⅲ. エネルギー燃焼比率

・ 肝硬変患者は、間接熱量測定にて安静時エネルギー消費量(REE)の亢進、健常者の1.3倍がある。

・ 肝硬変では、エネルギーを産生する燃焼源としてブドウ糖の割合が低下し、脂肪の燃焼比率が著明に上昇している。この指標として、間接熱量計による呼吸商が有用。


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Tajika M. et al. Nutrition 17;445-450:2001

また、TSFやBMIも有用

Alberino F. et al. Nutrition 17;445-450:2001

この理由は、

肝委縮によるグリコーゲン貯蔵量の減少

肝硬変に伴うインスリン抵抗性

高グルカゴン血症、カテコラミンやコルチゾールの血液中の増加

・ ブドウ糖と脂肪の燃焼率の異常は予後と関係する。

Tajika M. et al. Nutrition 17;445-450:2001

・ 早朝に飢餓状態は強い。一般的に健常者の3日間の絶食に匹敵する。

Owen OE. Et al. J Clin Invest 72;1821-1832:1983

肝臓でのグリコーゲン貯蔵量が減少し、骨格筋の筋蛋白を分解してアミノ酸から糖新生を行うため、骨格筋量が減少して窒素平衡は負に傾き、起床時には体内の脂肪を栄養素として燃焼する。

Scheeweiss B. et al. Hepatology 11;387-393:1990

Ⅳ. LES

・ LESの最初の報告

Swart GR. et al. Brit Med J 299;1202-1203:1989

・ LESによって、エネルギー燃焼率の改善あり。

Plauth M. et al. Clin Nutr 25;285-294;2006

Chang WK. et al. JPEN 21;96-97:1997

LESによって脂質代謝が改善(FFA、ケトン体低下))

今村ら 肝臓 23;113-120:1998

長期間のLESによってQOL改善

奥村ら 日本病態栄養学会 9;159-164:2006

・ BCAA製剤の朝、寝る間の2回投与でエネルギー代謝が改善

Nakaya Y. et al. J Gastroenterol 37;531-536:2002

・ BCAA経腸栄養剤によるLESによってPEMの改善と呼吸商の有意な上昇(長期)

Miwa Y. et al. Hepatol Res 18;184-189:2000


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・ BCAAによるLESによって血清アルブミン値、窒素出納、栄養燃焼効率の改善を認めた(3ヶ月間)。スナック群では、倦怠感や疲労感などの自覚症状の改善のみであった。

Nakaya Y. et al. Nutrition 23;113-120:2007


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BCAAによるLESにて尿中3-メチルヒシチジン低下

Yamauchi M. et al. Hepatol Res 21;199-204:2001

・ BCAAはLESによって通常の投与よりも血清アルブミン値および窒素バランスの改善あり。

Fukushima H. et al. JPEN 27;315-322:2003

・ BCAA経腸栄養剤を用いたLESを入院患者に1週間行ったところ、血糖値の日内変動が有意に改善した。

Okamorto M. et al. Hepatol Res 27;45-50:2003

Sakaida I. et al. Hepatol Res 30S;67-72:2004

Tsuchiya M. et al. Hepatol Res 31;95-103:2005

BCAA経腸栄養剤を用いたLESを3カ月施行したところ、開始前より耐糖能異常を認めた症例が悪化した。

Aoyama K. et al. Hepatol Res 37;608-614:2007

BCAA経腸栄養剤にαグルコシダーゼをLESのみに併用して3カ月施行したところ、耐糖能の改善が得られた。

Korenaga K. et al. Hepatol Res 38;1087-1097:2008

Ⅴ. その他

<経口投与、経腸栄養剤の有用性>

・ 肝硬変患者、特に門脈圧亢進症患者では、小腸機能の低下から消化吸収障害やBTの頻度が高いため、小腸粘膜のIntegrityを保つために経口または経腸栄養を優先。

白木 亮ら 肝胆膵 57;1219-1226:2008

<亜鉛欠乏>

・ 門脈圧亢進症になると小腸粘膜の委縮により、亜鉛の吸収力が低下。

・ 血液中では、アルブミンやα2マクログロブリン、アミノ酸などの結合しているが、アルブミンの減少によってアミノ酸結合が増加し、尿中への亜鉛排泄が増加。

・ アンモニア濃度の低下

オルニチン-カルバミル転移酵素に関与

AMPデアミナーゼにも関与

<脂質>

必須脂肪酸欠乏の予防に、脂肪乳剤は0.3~0.8g/kg/日の投与まで慎重に。

・ リン脂質やコレステロールの低下

・ 肝臓から供給されるリポ蛋白の合成・分泌の減少

・ 脂質の摂取不足

・ 胆汁酸合成低下、門脈圧亢進症による小腸粘膜浮腫による吸収障害

・ 肝における不飽和化反応障害による多価不飽和脂肪酸の欠乏(アラキドン酸、EPA、DHAなど)

・ 脂溶性ビタミンの吸収障害

<蛋白不耐症と蛋白(肝硬変)ジレンマ>

蛋白不耐症: 高度の肝機能低下例やシャントが発達した症例(門脈圧亢進症)では、高蛋白食により血中アンモニア値の上昇をきたし、肝性脳症となる危険性があること。

蛋白ジレンマ: 肝性脳症を予防するために蛋白制限食を投与せざるを得なくなり、低蛋白状態の悪化を助長し、さらに悪化してしまうこと。

* 門脈圧亢進症

門脈圧200mmH2O超(正常値100~150mmH2O)

<耐糖能異常>

・ 肝硬変の約30%に耐糖能異常を合併。特徴は、高インスリン血症と食後の高血糖で、インスリン抵抗性がその要因。

・ 肝硬変におけるグリコキシナーゼ活性が著減するために、食後の肝細胞内への糖のとりこみ能が低下すると共に、骨格筋組織におけるグルコース輸送、グリコーゲン合成能の低下による。

<アルブミンの代謝>

・ アルブミンは585個のアミノ酸からなる分子量約66kDaの蛋白質で、全血漿中に存在する蛋白質の60%。

・ 生理機能としては、血漿浸透圧の維持、輸送蛋白、アミノ酸の供給源(栄養不良時)、酸化・還元緩衝に携わる。

・ 血漿の膠質浸透圧の75~80%を維持し、アルブミン1gは約20mlの水分を保持。

・ 成人の生体内貯蔵量は約300gで、約40%は血管内、残りの約60%血管外にある。1時間に全体の5%づつが相互に入れ替わりながら平衡を保つ。

・ アルブミン合成は主に肝で行われ(0.2g/kg/d:10~15g/d)、エネルギー摂取量。血中アミノ酸濃度、ホルモンや、血漿膠質浸透圧などによって、転写・翻訳レベルから調節を受ける。

・ アルブミンの分解は全身の組織で行われ、1日の分解率は生体内貯蔵量のおよそ4%程度(12g)であり、主な分解の場としては筋肉、肝、腎などでこれらで約40~60%が分解。

・ アルブミンの半減期は平均17日であるが、肝硬変患者ではアルブミン合成能の低下とそれに伴う代謝性の分泌低下があるので、生体内での半減期は延長している。

Ⅵ. BCAAと発癌

・ 肥満を有する(BMI25以上)C型肝硬変患者がBCAA顆粒の経口投与を継続することで、発癌率が低下。

Muto Y. et al. Hepatol Res 35;204-214:2006

この理由は、

BCAAが骨格筋でインスリン抵抗性を改善

Nishitani S. et al. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 288;G12191-1300:2005

還元型アルブミンの上昇による抗酸化作用

Fukushima S. et al. Hepatol Res 37;765-770:2007

Ohno T. et al. Hepatol Res 38;683-688:2008