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末梢栄養点滴の考察(2016年7月24日)

80歳女性寝たきり 身長140cm 体重35kg 病名:老衰

この患者さんに、ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸輸液を有効に投与するために・・・
Harris-Benedictの式
BEE 860kcal 活動係数1.0 ストレス係数1.2  必要エネルギー量 1032kcal/日


データ1:
35kgの総蛋白質量 体重×16% 5.6kg 5600g その半分2800gが筋蛋白
1日の必須タンパク質喪失量 54mg/kg/日 体重35kgで1.89g/日 約2g/日
ちなみに、Gambleスタディ
タンパク質節約効果を期待するには、ブドウ糖100g/日が最低量 これで節約効果1/2
ブドウ糖はこれ以上投与してもタンパク質節約効果がないとされる
全くの飢餓でタンパク質400g/6日で喪失
すなわち、6日間で412gタンパク質喪失するので40.7日で筋蛋白質全て失うことになる
ブドウ糖100g投与(それ以上いくら投与しても同じ)で、
212g/6日タンパク質喪失(35.3g/日)
すなわち、80.3日で筋蛋白はなくなる計算
このデータとみごとに一致するのが、35kgの人が筋蛋白を維持するのに必要な蛋白質必要量は1g/kg/日にて35g/日


データ2:
非タンパク質カロリー窒素比 150の事実
すなわち、投与窒素が全て筋蛋白に使用されるためには、その他の栄養素(主に糖質)で150倍カロリー量が投与される必要があり。35gのタンパク質の総窒素量は5.6gなので
つまり、5.6×150で840kcal/日必要となります。
ビーフリード4本+20%脂肪乳剤1本でギリ(計800kcal)。ちなみに体重35kgに輸液2000mL施行する人はいません。体重35kgの高齢者に推奨する輸液量は×25-30mL
で875~1050mLですよね。

以上から、
ビーフリード1本(210kcal、ブドウ糖37.5g150kcal、タンパク質15g、窒素2.35g)/日の投与でタンパク質節約効果が期待できる人は・・・
必須喪失タンパク質2g/日+1日喪失予想タンパク質35g/日の合計37g/日をおぎなうために、投与タンパク質がすべて筋蛋白合成に使用される必要があり。そのためには、37÷6.25=5.92gの窒素×150=888kcalの非タンパク質カロリーを確保する必要があり、ビーフリード150kcal以外にタンパク質以外で738kcalを必ず経口摂取している(条件1)。
筋蛋白崩壊を1/2にするために、ブドウ糖100g投与が必須なので、62.5gのブドウ糖を必ず経口で摂取していること(条件2)
最後に、さらに22g/日のタンパク質を必ず経口摂取していること(条件3)
これらの条件を全て満たすには、定食を毎日1食欠かさず食べている患者さん、もしくは毎回食事摂取量が3割の人になります。それだったら、栄養ドリンクなら、エネーボ2本+α
そこまでのめたら、エネーボ3缶でコンプリート
もし、どうしても末梢点滴だけでなら、譲歩してビーフリード2本+イントラリピッド20%2本でもやはり難しい?

アミノ酸の有効利用は難しいですね。ご意見お待ちしています。

2011.06.21栄養学習会(慢性腎不全患者のアミノ酸インバランス)

腎不全患者のアミノ酸インバランス

<アミノ酸の基礎> 全20種類

必須アミノ酸(Essential Amino Acid:EAA)生体内では合成されず補給が必要 9種類

バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン

非必須アミノ酸(Non-essensial Amino Acid:NEEA)生体内で産生可能 11種類

アラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、グルタミン酸、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン *小児では、アルギニンは必須

分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid:BCAA)バリン、ロイシン、イソロイシン

<透析患者に認められるたんぱく質・アミノ酸代謝異常の原因>

1.腎不全に由来するもの

アミノ酸代謝異常(下記に詳細)

代謝性アシドーシス → 蛋白分解を誘導

内分泌異常 → インスリン、インスリン類似増殖因子(IGF-1)の抵抗性

蛋白異化ホルモンであるグルカゴン、グルココルチコイド、PTHの増加

尿毒素の蓄積 → メチルグアニジン、グアニジン酢酸による酵素活性低下や蛋白結合抑制

2. 透析療法に由来するもの

透析中のたんぱく質・アミノ酸の喪失 → 5時間のHDにて、10~13gのたんぱく質喪失(アミノ酸5~8gを含む)

CAPDにて、5~15gのたんぱく質喪失(アミノ酸1.2~3.4gを含む)

透析膜によって誘発される異化亢進 → IL-1やTNFなどのサイトカインや、透析液の汚染(エンドトキシン)が関与

たんぱく質20g喪失(総筋肉量の40%)

回路への血液喪失 → 1回の透析で血液20ml(たんぱく質4g喪失)

3. 生活様式に由来するもの

栄養素の摂取不足 → ビタミンB6欠乏、ビタミンD活性化の阻害

腸管よりのアミノ酸吸収障害

4. 合併症に由来するもの

血液喪失(消化管出血など)

エネルギー需要増加や栄養素消費の亢進(炎症など)

5. エリスロポエチンによる貧血治療は、EAA/NEAA、Tyr/Phe、Val/Glyを改善

<腎不全患者の代謝異常>

1. 水・電解質代謝異常:水分貯留、K↑、Ca↓、Mg↑、P↑、Al↑

2. 酸・塩基平衡:HCO3-↓、BE↓、アシドーシス

3. 糖代謝異常:インスリン抵抗性↑、耐糖能↓

4. 脂質代謝異常:総コレステロール↑、中性脂肪↑、HDLコレステロール↓、LPL↓、LCAT↓、カルニチン↓

5. たんぱく・アミノ酸代謝異常(後述)

6. 内分泌代謝異常:コルチゾール↑、グルカゴン↑、PTH↑

7. ビタミン代謝異常:水溶性ビタミン↓、活性型ビタミンD↓、ビタミンA↑

8. ミネラル代謝異常:亜鉛↓、Se↓、Fe↑

<透析患者のアミノ酸インバランス>

・  血液透析(HD)患者における血漿アミノ酸インバランスは、非透析慢性腎不全患者とほぼ同じパターンだが、全体的には透析により改善傾向にある。

・  非透析慢性腎不全患者の筋肉におけるアミノ酸インバランスは、血漿中のものとほぼ同じ。

・  CAPD(持続携行式腹膜透析)患者は、同様のアミノ酸インバランスを血漿中に認めるが、筋肉内はタウリン以外正常。これは、高インスリン血症による血漿内から細胞内へのアミノ酸の動員による?

・  BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)の著名な低下・・・BCAAはATP賛成効率が高いため、エネルギー不足状態で消費されやすいことが原因。

・  BCAAを含んだ必須アミノ酸(EAA)の低下 トリプトファンの低下

・  腎実質障害のためにフェニルアラニン・ヒドロキシナーゼの低下により、フェニルアラニンンからチロシンへの変換が低下(Tyr/Pheが低下、チロシンの低下、フェニルアラニンの増加)

・  腸管より、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンの吸収障害による低下

・  腎へのグリシンの取り込みとグリシンからセリンへの合成障害(Val/Gly、Ser/Glyが低下)

・  バリン、セリンのタンパク合成の律速段階で、これらの低下によりタンパク合成そのものが低下

・  1-メチルヒスシジン、3-メチルヒスチジンは尿中排泄障害で増加、3-メチルヒスチジンは筋蛋白の崩壊によりさらに増加

・  非必須アミノ酸(NEAA)は全体に増加し、EAA/NEAAは低下、システィン、シトルリン、オルニチン、タウリンは増加

<腎不全用アミノ酸輸液>

必須アミノ酸(EAA)療法: 1960年代前半に提唱された腎不全患者に対するアミノ酸投与法。少量のEAAに十分な量のエネルギーを含む低蛋白食の投与により、蛋白異化が抑制され、尿毒症が改善するというもの。EAA投与により内因性尿素が蛋白合成に再利用されるとする仮説に基づく。すなわち、腸管で尿素の分解により生じたアンモニアが再吸収されたのち肝でNEAAに合成され、これが蛋白合成に再利用するとしたが、のちにこの内因性尿素の再利用はごくわずかで、EAAのみで窒素平衡を保つのは困難ことが分かった。

アミユー®はこの理論に基づいて、8種類のEAAに腎不全には必須とされるヒスチジンを添加した腎不全用アミノ酸輸液であるが、高アンモニア血症、脂肪肝、代謝性アシドーシス、尿中オロトン酸の上昇を認め、臨床的には使用されなくなった

この原因として、アルギニンの不足による尿素回路機能不全であることが判明した。また、フェニルアラニン、メチオニン、リジン、スレオニンの過量やBCAAの低下も認められた。

第2世代腎不全用アミノ酸輸液: 1980年代にアルギニン、チロシンの添加、メチオニン、リジン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジンの減量、BCAAの増量の腎不全用アミノ酸輸液が日本で開発された(キドミン®)。その投与によって、合併症がなくなり、たんぱく質代謝は改善されたとされる。特に、日本のみのデータだが、CKD患者でBUNの低下と栄養状態の維持あるいは改善、AKD患者のAKDの進展の抑制、栄養状態の維持および改善も報告されている。

<腎不全患者の栄養管理>

・ 腎不全時の輸液・栄養管理における投与法の第一選択はTPNである。その理由として、経腸栄養で投与された水分の体内への吸収量および吸収速度糖の把握が困難で、腎不全の管理において重要となる厳密な水分管理ができないことである。そこで、エネルギー投与量、エネルギー気質の調節は主にTPNで行い、それに加えて少量の経腸栄養を併用することが推奨される。

・ 血液透析患者の約60%が低アルブミン血症(3.5g/dL以下)。

・ BUNが血清クレアチニンの10倍より小さいときは、たんぱく質摂取不足を疑う。

・ 血清Pが4.0mg/dL未満の場合も、たんぱく質摂取不足を疑う。

・ たんぱく質摂取量の少ない透析患者の予後は不良。

たんぱく質摂取量1.1~1.3g/kg/日の死亡危険率を1とすると、たんぱく質摂取量0.7~0.9g/kg/日の患者は1.49、0.5~0.7g/kg/日は3.2であった。

・ 透析導入前の患者にたんぱく質制限食を投与しても腎機能障害の進展を抑制できない可能性を指摘する研究もある。また、著明なたんぱく質制限食の投与(0.48g/kg/日)は透析導入後の死亡率が高かった。

・ 急性腎不全患者に必要なEEAは0.3~0.5g/kg/日。特に、BCAAが有用。

・ 投与エネルギー量は、可能であれば間接熱量測定にて計測して投与することが望ましい。

・ Cal/N比は、CRFで300前後、AKDで400~500前後になるようにする。

・ 投与カロリーの目安は、AKDなど侵襲が高い場合でも35~40kcal/kg/日。

・ エネルギー源は糖質主体。脂肪はもともとある脂質代謝異常を増悪させ、過酸化脂質の形成や免疫能低下、呼吸障害、凝固障害などを惹起する可能性があり、最小限にする。特に、LPL、カルニチン濃度が低下しているので脂質代謝は落ちていると考えられる。従って、必須脂肪酸目的にて週1~2回の投与を推奨。

・ 水溶性ビタミンが不足し(血液浄化にて喪失)、脂溶性ビタミンが蓄積しやすい。ビタミンCは過剰投与が組織沈着の原因となるので注意を要する。

・ 亜鉛、銅、Mnは蓄積傾向があるので投与量に注意が必要。

・ 腎機能障害による腎性貧血にてHbA1Cが低下するので、注意を要する

・ 透析患者は浸透圧利尿が生じないため高血糖には比較的強く、インスリンクリアランスが悪いためにインスリンの効果が遷延しやすいために低血糖に弱い。

・ 血液透析中に回路の静脈側を使ってアミノ酸輸液(+高カロリー輸液)を補給すること(IDPN:intra-dialysis parenteral nutrition)は、異化の予防と蛋白代謝の改善に有効。

・ CHDFを開始した急性腎不全では、腎不全用アミノ酸輸液でなくてもバランスのとれた輸液製剤ならOK。

<参考>

CKD患者におけるPEMの診断基準: Fouque D 2008, Kidney Int

以下の4つのカテゴリーのうち、1項目でも該当するカテゴリーが3つ以上ある場合には、PEMと診断する。

1. 生化学検査

血清アルブミン値 <3.8g/d

血清サイレチン(プレアルブミン)値 <30mg/dL(透析患者のみ)

血清総コレステロール「 <100mg/dL

2. 身体計測

BMI <23

意図しない体重減少(浮腫なし):3ヶ月で5%以上あるいは6ヶ月で10%以上

体脂肪率 <10%

3. 筋肉量

筋肉量減少:3ヶ月で5%以上あるいは6ヶ月で10%以上

AMC:基準値の50%範囲内において、10%以上の減少

クレアチニン産生速度(透析前後の血清クレアチニン濃度から算定。筋肉総量と相関)

4. 食事摂取量

意図しないたんぱく質摂取量の低下

CKD2~5:0.6g/kg/日未満

CKD5:0.8g/kg/日未満が少なくとも2ヵ月以上

意図しないエネルギー摂取量の低下

25kcal/kg/日が少なくとも2ヵ月以上

血液透析患者(週3回透析) 腎疾患患者の生活指導・食餌療法に関するガイドラインより

総エネルギー:30~35kcal/kg/日(標準体重)

たんぱく質:1.0~1.2g/kg/日(標準体重)

塩分:0.15g/kg/日(現体重)(残腎尿量100mLにつき0.5g/日増量)

カリウム:1.5g/日

食事外水分量:15mL/kg/日(現体)(残腎尿量分の増加可)

リン:700mg/日 カルシウム:600mg/日

*エネルギー量は肥満者では減らし、栄養障害者では増やす。

*糖質55%、脂質25%、たんぱく質20%

*糖質は、単純糖質を減らし、大部分を複合糖質とする。

*脂質は、飽和:一価不飽和:多価不飽和=1:1.5:1

*食事外水分には、食事時に摂取するスープ、飲料を含む。

CAPD患者 腎疾患患者の生活指導・食餌療法に関するガイドラインより

総エネルギー:29~34kcal/kg/日(標準体重)(透析液の腹膜吸収分を含む)

たんぱく質:1.1~1.3g/kg/日(標準体重)

塩分:CAPD除水量(L)×7.5(g/日)(残腎尿量100mLにつき0.5g/日増量)

カリウム:2.0~2.5g/日

食事外水分量:CAPD除水量+残腎尿量mL/日

リン:700mg/日 カルシウム:600mg/日

*エネルギー量は肥満者では減らし、栄養障害者では増やす。

*糖質55%、脂質25%、たんぱく質20%

*糖質は、単純糖質を減らし、大部分を複合糖質とする。

*脂質は、飽和:一価不飽和:多価不飽和=1:1.5:1

*食事外水分には、食事時に摂取するスープ、飲料を含む。