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がん悪液質のまとめ その1

癌悪液質について
(ESPEN LLL Topic 26 Nutrition support in cancer 2012 ESPEN Guidelines for Non-surgical oncology Enteral 2006 & Parenteral 2009 nutrition Clinical practice guidelines on cancer cachexia in advanced cancer patients with afocuson refractory cachexia 2011より)

がん特有の栄養不良の病態(安静時エネルギー消費量の増大、骨格筋の著明な減少、炎症反応の持続など)は、サトカインや腫瘍由来物質産生の関与が証明されており、栄養不良をより早期に発見し、適切に対応していくことが患者のQOLの改善につながる。ただし、その効果は難治性悪液質を合併するまでである。

そのために必要なことは、以下である。

✓ がん栄養不良の病態を知り、進行度を評価できる。

✓ 患者の適切な予後評価ができる。

✓ がん栄養不良の病態を多方面から多職種によるチームで 対応する。

癌悪液質のまとめ

がん悪液質は、まだ完全には理解されていない臨床症候群である。

・ 筋肉量喪失、エネルギー必要量増大と代謝障害は、一般的にみられる。

・ がん悪液質は、身体的な、徴候的な、代謝性および腫瘍関連の因子の多彩な影響がある。

・ 悪液質には、患者のQOLと生存に悪影響を及ぼす。

・ がん患者の死因の約20%は悪液質が関係するとされる。

・ がん患者の治療のために、チーム・アプローチとして栄養の統合の必要を示すエビデンスがある。
1. がん悪液質の定義

・ 癌患者は、PEMまたは悪液質に移行するかもしれない栄養不良を合併している。

がん悪液質とは、従来の栄養療法で完全に改善することは困難な継続する筋肉量の減少と(脂肪量の減少の有無に関わらず)、進行性の機能障害につながる多因子複合的な栄養不良症候群である。病態生理学的には、栄養摂取量の減少と代謝異常によって、タンパク質及びエネルギーは負の平衡状態となる。By Kenneth
Fearon 2011

・ がん悪液質の可能性は1932年から1972年にかけて研究され、1980、90年代にがん患者の8~84%(発生部位に応じて)存在することが証明されている。しかし、悪液質の病態は、解明されていない。

・ 従来、悪液質は飢餓から内臓蛋白を温存するストレスへの生理的代償反応と思われていたが、その反応には限界がある。筋蛋白の喪失により、動けなくなり機能低下をきたすためである。

・ 体重の10%以上の減少は、患者のQOLと予後を低下させ、すなわち体重減少の重症度ががん患者の死亡率、合併症率と相関する。癌患者のうち、手術75%、放射線治療57%、化学療法患者51%、一般の癌患者の80%が体重減少を認めている。解剖学的な発生臓器以外にも、癌の悪性度(進行ステージ、病理学的悪性度)や抗癌治療(放射線治療、化学療法、手術)、年齢、精神サポートも体重減少にかかわる因子である。

・ 食欲低下は、がん患者の15~40%にみられ、終末期では80%に達するとされる。
<がん悪液質とサイトカインおよび腫瘍放出因子>

・ 食思不振が最大のがん患者の消耗(悪液質)の原因。

・ 頭頸部、消化管癌患者は食事によって何らかの症状をきたし、食事をためらうようになる(food aversion)。これは、がんの診断前も含めて、癌の進行度に関係なく発症する。

・ 食事量の低下は、食事刺激の中枢への働きかけの低下、化学的感覚器の異常(味覚異常、嗅覚異常)、上部消化管の運動低下(早期の満腹感、嘔気、嘔吐)、遠位消化管の蠕動異常(下痢、便秘)によっても誘発される。さらに、メンタル面の不安定からも起こる。

・ 悪液質は、食思不振に合併することが多いが、必ずしも食思不振と食事摂取量の低下から発生するとは限らない。

・ 悪液質の消耗には以下の血液循環する因子が考えられている。サイトカインよりは腫瘍崩壊因子の方がエビデンスは強い

1)宿主産生・・・TNF-α、IL-1IL-6IFNγ、LIFleukemia inhibitory factor

2)腫瘍産生・・・LMFlipid mobilizing factor)→脂肪組織、PIFproteolysis-inducting factor)→骨格筋

これらの因子は協働しており、悪液質の進行に関与するサイトカインの産生に循環因子が関与している可能性がある。

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<急性期反応>
・ 急性期反応(APR)は、組織損傷、感染または炎症に反応してさまざまな生理的および代謝的な変化のことを言う。

・ APRでは、 肝臓タンパク質合成は、アルブミンの合成から急性期蛋白(例えばC反応性蛋白(CRP)、血清アミロイド-A蛋白質、β2-マクログロブリンとα-1-抗トリプシン)にシフトする。

・ 肺癌、膵癌、メラノーマの患者は、APRから早急な体重減少をきたすことが知られており、腎癌、膵癌、大腸癌ではAPRをきたした場合には予後不良である。

APRの重症度はサイトカイン(IL-6TNFα)と相関し、体重減少の重症度や予後とも相関する。また、PIFNF-κβの転写を促進し、その結果炎症性サイトカインであるIL-8IL-6CRPを増加させ、トランスフェリンを減らす。

・ APRに加えて、IL-6の仲間であるCNTF(ciliary neurotrophic factor)が食思不振と体重減少に作用している。

<代謝亢進>

・ がん患者の48%でREEは亢進している。

・ 体重減少は、減少したエネルギー摂取、さらなるエネルギー消費または両方とものため起こる。摂食障害はすでに診断時に癌患者に普通にみられる。

・ がん質の患者は、栄養相談や静脈栄養を駆使しても、体重増加は一時的かつみかけ上であり、そのほとんどは水分と脂肪である。同様の減少は、ヒスロンなどのエストロゲン製剤(megestrol acetate medroxyprogesterone acetate)などの炎症性サトカインを失活させる薬剤でもおこる。

・ 飢餓の代償

カロリー摂取不足は、脂肪の減少はきたすが、しばらく骨格筋は維持される。

飢餓の最初は、グルコースは肝および筋蛋白の貯蔵から、脳・赤血球のエネルギー源として利用され、そのグルコースは主に乳酸及び筋の糖原性アミノ酸は肝臓で生成される。

飢餓が長期化するとケトン体や脂肪酸の代謝産物を使用して、グリコーゲンと筋蛋白の使用を控えるようになる。

・ 悪液質の患者は骨格筋と脂肪は同じように減少する。骨格筋の一部を優先的に消耗することで、内臓蛋白の減少を予防しているが、全体重の30%以上の減少では耐えられない。

<糖質代謝とエネルギー消費>
・ 糖質代謝で最も特徴的な変化は、糖新生↑とグルコース異化↑とインシュリン感受性がたもたれているのにインシュリンの機能が低下していることにある。このインシュリン機能不全によって、末梢組織でのスルコースの利用と糖耐性(血糖の安定化)が困難となり、SIRSと同じようにTNFαの作用でみられる。これらの変化は病気またはがんとは無関係な体重減少と対照をなす。

・ 膵癌、肺癌の患者は体重減少にもかかわらずREE↑であり(胃癌、大腸癌ではない)、普通は食事量が減少して体重減少し、その結果REEは低下するので、悪液質の進行において特異な状況である。

・ 消化管癌で体重減少した患者では、REEは増加していないにも関わらず、骨格筋のUCP-3mRNA(Mitochondrial
uncoupling protein-3)が5倍健常者や体重減少のない癌患者に比べて発現していた。

UCP-2、-3は、脱神経による筋委縮や運動などの筋蛋白の異化刺激で筋肉内に発現することが知られている。

UCP-3mRNAは、非常に低カロリーの食事によって脂肪組織内での発現が減少し、エネルギー消費を抑える役目をしていることが判明している。

従って、REEの上昇が起きないメカニズムに、UCP-3mRNAが一役買っていることが示唆されている。

・ 増加したUCP-3mRNAは、脂肪酸、トリグリセリドとコレステロールを二倍に増加させた。ニコチン酸による高脂血症の減少には、筋肉のUCP-3の発現を減らさなかった。これは、循環する脂肪酸が癌悪液質の間、好気的な筋肉でUCP-3遺伝子発現の調節に関与している可能性があることを示唆する。

・  悪液質はTNF-αの影響を受けていると考えられており、実際にTNF-α(100μg/kg)の一回の静脈注射の投与を受けたラットは骨格筋のUCP-2とUCP-3の有意の増加を示した。これは、LMFTNF-αが悪液質癌患者の骨格筋でUCP-3 mRNAを上昇させ、これらの血清脂質の上昇の原因となることを示唆する

・ 腫瘍が産生する大量の乳酸を肝臓のCori cycleでブドウ糖にリサイクルするために、大量の熱量が消費されることも関与している。

<蛋白質代謝と骨格筋>

・ 悪液質は、全体重の約30%が減少すると、骨格筋が75%まで減少するので、それは死に直結する窒素死と呼ばれる。骨格筋の喪失は、蛋白合成能の低下と筋蛋白の崩壊の証明である。この結果引き起こされる蛋白質の濃縮は、BCAAは維持されるが糖原性アミノ酸の減少を招く。筋蛋白の崩壊では、アラニンとグルタミンの放出をおこし、アラニンは肝臓における糖新生とAPRを促し、グルタミンはエネルギーと窒素補給のため腫瘍に取り込まれていく。

・ ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼとチトクロームc-オキシダーゼの活動が癌患者の骨格筋で有意により低いとわかったが、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの活性は有意により高い。これらはエネルギー産生を障害し筋力低下につながる。

・ 体重減少した癌患者でも、体全体の蛋白合成能は、APR2倍に亢進するので保たれる。しかし、骨格筋の蛋白合成は全体の8%と健常人に比較して明らかに減少している。癌患者の蛋白合成能は、明らかに亢進しており、ターンオーバーも早くなっている。これはATPユビキチン依存性蛋白質分解経路による細胞内蛋白質の異化によるところが大きい。TNFα、IL-1、IFNγはこれらの反応を促進するが、LIF,IL-6にはそのような作用はない。直接効果が証明されたのはTNFαのみであり、蛋白異化の促進にはTNFαが重要

・ サルコペニアの癌患者は、化学療法の副作用のハイリスクであり、減量や治療延期を考慮すること。

・ 骨格筋の蛋白異化には、リボソーム経路、カルシウム調節性カルパイン経路、ATPユビキチン依存性経路があるが、悪液質ではユビキチン経路が最も重要である。炎症性サイトカインが、MuRF1muscle
ring-finger 1
Atrogin-1muscle
atrophy F box
:MAFbx)を誘導し、骨格筋を萎縮させる。MuRF1はNFκβ経路が、Atroginn-1はphosphatidylinositol-3 kinase(PI3K)/Art経路を阻害して誘導される。IGF-1はPI3K/Art経路の活性化により、骨格筋の萎縮の予防効果がある。

・ PIFはユビキチン依存性経路を活性化する。

・ 筋細胞の細胞骨格構成分子であるdystrophin glycoprotein complexDGCは、過剰発現にて悪液質の予防が期待される。すなわち、DGCの減少は悪液質をきたしている可能性がある。

・ 悪液質における蛋白合成能低下は、アミノ酸プールの不均衡、肝臓でのAPR蛋白合成増加、ミオシン発現の低下(MyoDの低下)、myostatinの増加、インスリン抵抗性、IGF-低下などの因子が考えられる。

・腫瘍はその過剰な増殖により低酸素状態となり、hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)が増加し、糖輸送因子であるglucose transporter-1,3(GLUT-1,3)が発現し、腫瘍内に糖の取り込みが増加する。

<脂質代謝と脂肪組織>

・ 癌患者では、脂肪組織は大きなエネルギー源であり、著明に減少していることが多い。悪液質患者では、脂肪分解の亢進と脂肪合成の低下によって85%の脂肪組織が喪失していることもある。

・ 以下の因子による脂肪分解、脂肪酸の流出↑

TNFα、LMfによる脂肪分解↑

TNFα、IL-1による脂肪合成↓

TNFα、IL-6IFNγ、LIFによるLPL活性↓

・ 癌患者は脂肪代謝が亢進しており、特にグリセロールと脂肪酸の代謝が亢進していて、体重減少の前から見られることも多い。CTでは腹腔内死亡は比較的保たれている。

・ 脂肪酸の増加は、βアドレナリン・レセプターの活性化により、βブロッカーにてエネルギー消費量、組織酸素代謝、CO2産生も抑制できる。

TNFαはMEKmitogen-activated protein kinase)とERKextracellular signal-related kinase)を介してcyclicAMOを上昇させて脂肪分解を亢進させる。

LMFadenylate cyclate in a GTP-dependent processと協働で脂肪分解を促進させる。

<がんの進行の影響>

・ 癌患者の体重減少を予防するには、多方面からのアプローチが重要であり、免疫力低下や感染症、術後合併症が発生、医療補の増大につながるので注意が必要である。

・ 倦怠感や無気力も日常生活の低下につながり、メンタル面からも栄養不良は増悪する。さらに、微量元素欠乏でも同様の症状がみられるので、注意が必要。


2. がんと摂食障害

・ がん悪液質は、独立した予後不良因子でQOLを低下させることは臨床的に明白である。
・ がん悪液質の存在は、質的に、そして、量的に評価されなければならない。

・ 腫瘍によって誘発された神経炎症因子は、主として癌悪液質の病因に関与する。

・ がん関連の摂食障害と消耗している組織は、エネルギー・ホメオスターシスを制御している脳域を含んだ病原性経路を共有する可能性がある。

・ 癌悪液質は、食思不振による重症栄養障害、末梢組織で野筋蛋白の崩壊を代謝異常によって引き起こされる適度かつ持続的な全身炎症反応の臨床症状である。

・ エネルギー・ホメオスターシスを調整している視床下部の特殊領域の活動を含むいくつかの病原性経路を理解しておく必要がある。
<がんによる摂食障害>

・ 悪液質は、炎症によって引き起こされた体内外で発生した障害を伴う生理的反応である。すなわち、急病または外傷によって引き出される臓器を治癒し回復させるための行動および代謝的な変容のことである。しかしながら、慢性疾患(がんを含む)では、悪液質はエネルギー摂取や代謝に持続的に影響するため、タンパク質とエネルギー貯蔵を減少させて、合併症のリスクを増して、結局死亡を増加させる。

・ 悪液質の主要な特徴のうちの1つに、減少した食物摂取(すなわち摂食障害)の進行がある。摂食障害の臨床的意義は、入院患者の死亡のリスク増加で、特に癌患者で強調される。また、摂食障害は生活の質に影響を与える。

・ 食物摂取の減少が癌患者のQOLを決定する因子である。

・ 癌患者の約50%は診断時に何らかの食事行動の変容を訴えている。

・ 癌終末期の患者の60%は食思不振を患っているが、それまでの治療の副作用で合併していることも多い。

・ 摂食障害と代謝変容は同じ神経化学物質/代謝障害の徴候を表現していることに注意する。

・ 診断用ツール

・ 食思不振の診断ツールとして、visual analogueや摂取エネルギー測定やアンケートなどがあるが、どれも質的・量的評価には問題がある。

ESPENは、AC/S-12FAACT)を推奨し、24以下は食思不振の十分な診断となる。
<がん摂食障害の病因>

・ 生理的状況の下で、エネルギー摂取と体重は、視床下部によって調整される。視床下部は末梢組織から生じている神経、代謝的なおよび、ホルモンの信号を集積する。そして、それはエネルギー貯蔵の状態に関する情報を伝達する。 視床下部(ヒトにおける漏斗核)の弓状核は、これらの入力をニューロン反応に変換している特定のニューロン集団を含む、そして、第2経路を経て、行動および代謝反応に、ニューロン信号を送っている。

癌の食思不振は、形質導入プロセスにおけるエラーまたは第2の神経命令シグナル経路からの変性からの防御的末梢シグナルによる結果からかもしれない。

<メラノコルチン系>

・ 視床の弓状核には、食事摂取やエネルギー消費に関する2つのニューロンが存在する。

・ その1つは、プロオピオメラノコルチン(POMCで、POMCは生物活性を持たなくて、より小さい生物学的に活性ペプチドであるメラノコルチンになる。メラノコルチンは、αメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSHのもとであり、その生物学的効果は特異的な受容体であるメラノコルチン-4-受容体(MC4Rによって媒介され、食欲不振のおよび異化作用のエネルギーバランスを調節する。

・ 神経単位の第2は、ニューロペプチドY(NPY)とアグーチ関連タンパク質(AgRPを表す。AgRPは、α-MSHの作用においてMC4Rの内因性の拮抗剤である。これは、2つのニューロン・サブセットの相互的な関係を示す。

・ 過剰なエネルギーの状態では、POMCは起動され、次々にMC4Rを活性化して、メラノコルチンの放出を誘発する。そして、メラノコルチンは食物摂取の抑制とエネルギー消費の増加を刺激する。同時に、弓形AgRP/NPYの活動は停止する。対照的に、エネルギーが減少すると、食欲不振誘発性POMC神経単位の活動は減少する、しかし、NPY/AgRP神経単位の活動は増加する。

・ がん悪液質は、末梢信号に対する視床下部の抵抗によって特徴づけられる。これは、POMC神経単位の持続的な活性化によって媒介される。がんの実験モデルにおいて、MC4Rノックアウト・ラットは、食物摂取の減少と除脂肪体重の損失に抵抗する。悪液質動物におけるAgRPの投与は、食思不振を改善して、身体組成を改善する。 これは、NPY/AgRP神経単位の減少した活動と並行してPOMC/CART神経単位の活性化過剰が悪液質の本体であることを示唆する。

<炎症性サイトカインの役割>

・ 炎症性サイトカインは、特にIL-1TNF-αが癌食思不振の病因とされる。摂食障害の腫瘍をもったラットにおいて、視床下部IL-1 mRNA発現は、有意に増加したである。 また、IL-1受容体拮抗剤の内部視床下部注射が同じ実験モデルで摂食障害を改善する間、食欲不振の腫瘍をもったラットの脳脊髄液のIL-1集中は増加して、反対にエネルギー摂取と相関する。

<視床下部セロトニン作動性の活性>

・ 視床下部で、セロトニンは生理的状態の下で満腹を調節する。

・ がん患者では、IL-1のさらなる視床下部での表出とセロトニンのさらなる放出が起こっている。

・ BCAAは食欲不振をもたらすセロトニンの作用を軽減する。

<自律神経系の役割>

・ 悪液質と迷走神経(自律神経)が関連しており、炎症性サイトカインが介入している。

<視床下部脂肪酸酸化(エネルギー信号)の役割>

・ 視床下部脂肪酸代謝は、食物摂取とエネルギー代謝の変調に貢献する。視床下部マロニル補酵素A(CoA)は脂肪酸合成酵素(FAS)の基質である、高い内部視床下部マロニル‐CoAは脂肪酸酸化を阻害することによって摂食障害を誘発するが、低レベルは食物摂取を引き出す。

カルニチンは、この脂肪酸酸化に対する効果を強化している

<その他の内分泌系>

・ 悪液質では、グレリは上昇(50%~80%) 、レプチンは低下傾向。 グレリンは空腹時に胃より分泌され、摂食を促進し、エネルギー消費を抑制してエネルギーバランスを保つように末梢より、液性、神経性に脳内へシグナル伝達される。視床下部のNPY/AgRP蛋白の発現と分泌を増加させることで、コントロールしている。また、下垂体前葉において、成長ホルモンの発現と分泌、さらには間接的にIGF-1の肝での発現と分泌も促進する。

①成長ホルモン、IGF-1の分泌促進、②摂食亢進、③エネルギー消費抑制、④胃酸分泌、胃蠕動促進、⑤炎症性サイトカインの抑制、抗炎症作用⑥脂肪蓄積、分解抑制、⑦筋蛋白の同化促進、異化抑制、⑧血圧上昇、心拍出量増加、⑨空腹時血糖維持

・ レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、視床下部を通して強力な摂食抑制とエネルギー消費亢進により、体重減少を促進する。レプチンは視床下部でPOMC神経を刺激して摂食抑制。

2012.01.10栄養学習会(抗体療法)

抗体療法とは・・・??

☆癌細胞に特有の細胞を標的にして抗体を産生し、その細胞のみを攻撃する代表的な治療法のこと。一般的な抗がん剤は、正常な細胞も攻撃してしまうことによって副作用の発現のリスクが高まるが、標的細胞のみの攻撃であれば、副作用が少なくてすむという利点もある。

抗体とは・・・人の体内で免疫細胞が作るたんぱく質のこと。免疫グロブリンから成り、特定の異物に特異的に結合し、その異物を体内から除去する役割を担っている。血中の抗体は異物と結合すると、貪食細胞であるマクロファージや好中球を活性化させ、異物を除去する。

※免疫グロブリン…別名γ-グロブリン。構造を変化させて多様な抗原に結合することができる抗原結合領域と、あまり変化のない定常領域から構成される。定常領域の構造の違いによってIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類に分類される。

IgG:血液中に多く存在し、唯一胎盤を通過できる。細菌や毒素と結合する能力が高く、生体防御を担う。

IgM:B細胞からすばやく作られ、感染の初期に働く

IgA:腸管や分泌物(母乳中など)に多く含まれ、鼻・目などの粘膜からの細菌の侵入を防ぐ。母子免疫に関与。

IgE:肥満細胞に結合してアレルギー反応を引き起こす

IgD:B細胞表面に存在し、抗体産生の誘導に関与

※貪食細胞…侵入してきた病原性の細菌や異物、細胞内の老廃物などを取り込み、消化して無毒化する細胞。

マクロファージ…白血球の1つで免疫システムの一部を担う細胞。生体内に侵入した細菌、ウイルス、死んだ細胞を捕食して消化する。

好中球…細胞質に顆粒を持つ白血球のうちの1つで、生体に侵入してくる病原性の細菌などに対する自己防御の最前線で働く。

働きは…

中和作用…抗体が異物の周囲を取り囲んで毒になる部分を覆い隠して中和する。細菌が作り出す毒素も中和。

オプソニン化…細菌や異物(抗原)を好中球やマクロファージが貪食しやすくする

細胞溶解…補体と共に膜侵襲複合体(補体の活性化によって、補体と抗体がドーナツ状に結合したもの)を作り、細菌などを攻撃する

炎症の誘発…IgEが肥満細胞に結合して抗原に反応することにより、ヒスタミン・ロイコトリエンなどが放出される。
☆異物と認識された特定の物質や分子、細胞や組織(物質や分子)のみに働く性質を利用したものが、抗体医薬品
☆通常の医薬品と何が違うの?

①    特異性・・・標的を狙って作られるため、標的以外に作用することがほとんどないため、副作用の発現が少ない。

②    生体内安定性・・・抗体はもともと血中に存在する物質。

③    毒性が低い・・・元々生体内に存在する物質のため、毒性の発現する可能性が低い。

④    最適な抗体を比較的簡単に得られる。

⑤    生産や精製法の共通が高い・・・世界的な標準はCHO細胞を使用する方法。
☆自己免疫疾患、がんとその関連疾患、心疾患、感染症や神経疾患などに対する薬が開発されている。

<自己免疫疾患>

☆関節リウマチに使う薬

インフリキシマブ…一般名レミケード。ヒトTNFαに対して特異的なマウス型モノクロナール抗体由来の可変領域と、ヒトIgGの定常領域を有するヒトとマウスのキメラモノクロナール抗体を遺伝子組み換え技術によって作成した、抗TNFαヒトモノクローナル抗体。<副作用>点滴投与中,あるいは点滴終了後2
時間以内に投与時反応と呼ばれる頭痛,潮紅,眩暈などの症状がしばしば出現する(infusion
reaction)。

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レミケードは、キメラ型モノクローナル抗体で、TNFαと結合する部位のみがマウスの蛋白質からなり、その他はヒト由来の蛋白で、遺伝子工学によって2種の蛋白を合体したものです。全体の25%がマウス蛋白なので、ヒトにとっては本来の体にはない異物と認識されるために、アレルギー反応がおこることがあります。このためアナフィラキシー(急性のアレルギー反応で血圧の低下やショック状態を起こす)と呼ばれる、生命にも関わる可能性がある強いアレルギー反応も、0.5%程度ですが、起こりえます。また連用しているとレミケードに対する抗体(抗キメラ抗体)ができて、効果がうすれてくることがしばしばあります。このアレルギー反応や抗キメラ抗体の産生を抑えるためにMTXと必ず併用します。したがって、MTXがどうしても服用できない患者様はレミケードも使用できません。

エンブレルは、TNF受容体という蛋白とヒトの免疫グロブリンという蛋白の一部を人工的につなぎ合わせたもので、すべてヒト蛋白でできています。マウス蛋白がないので抗キメラ抗体はできないため、MTXとの併用は必ずしも必要ではなく、単独でも使用できます。アナフィラキシーはほとんどありませんが、局所の発赤やかゆみなどの軽いアレルギー反応は多くみられ、時に全身のかゆみやじんましんなどの強いアレルギー反応や効果の減弱がみられます。MTXとの併用で、アレルギー反応も抑えられ、RAに対する効果も強くなることが知られていますので、できればMTXと併用で使用した方がよいでしょう。またレミケードと異なり、皮下注射で使用します。半減期(体内での薬の濃度が半分になる時間)が4日と短いため、1週間に2回の注射が必要で、多くは患者様自身がトレーニングを受けて自己注射で使用します。

ヒュミラはレミケードと同様のモノクローナル抗体製剤なので、エンブレルとは異なり、TNFβとは結合(中和)せず、TNF産生細胞上の膜型TNFαと結合し、その細胞を壊す作用があります。レミケードとの違いは、マウス蛋白を含まないことと、皮下注製剤であることです。このためMTXは併用不要で単独での使用が認められています。しかしマウス蛋白を含まなくても、中和抗体(抗アダリムマブ抗体)が欧米では17%、国内の治験では約40%の患者にみられたと言われており、効果の減弱やアレルギー反応がみられる可能性があります。したがって、他の製剤と同様にMTXとの併用が推奨されます。ヒュミラの投与方法は皮下注ですが、エンブレルと異なり半減期が長いため2週間に1回でよく、エンブレルの週2回と比較して使用しやすいと思います。注射した部位に発赤やかゆみなどが時々みられますが、通常軽度で、使用を継続することは可能です。

日本リウマチ財団のHPより引用

<がんと関連疾患>

☆血液がん

・リツキシマブ・・・リツキサン。B細胞表面のCD20を標的とするマウス・ヒトキメラ型モノクローナル抗体薬。補体依存細胞傷害反応や抗体依存性細胞傷害反応、およびアポトーシス誘導などによってCD20陽性細胞を傷害する。<副作用>投与中、特に開始から30分~2時間で発熱、悪寒などを生じることが多い(infusion reaction)。

☆乳がん

・トラスツマブ・・・ハーセプチン。抗HER2 ヒト化マウスモノクローナル抗体であり。癌細胞の細胞膜に存在するHER2と結合し、HER2の二量体形成阻害、HER2の下流のシグナル伝達阻害、抗体依存性細胞障害の惹起、HER2蛋白のendocytosisによる変性などの機序により細胞増殖を抑制すると考えられている。<副作用>投与中・投与開始24時間以内の発熱・悪寒などの反応(infusion reaction)や心毒性(EFの低下や心不全症状等)などが主にある。

☆大腸癌

・ベバシズマブ・・・アバスチン。抗VEGFヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、VEGFと結合することにより、VEGF受容体との結合を阻害して、シグナル伝達を遮断する。この結果、投与早期には未熟な腫瘍血管を退縮させることにより抗腫瘍効果を示す。続いて、残存腫瘍血管は正常化して間質圧が低下することにより、併用するcytotoxic agentsの腫瘍移行性を上昇させる。<副作用>消化管穿孔、出血、(動静脈)血栓塞栓症、創傷治癒遅延、高血圧、蛋白尿、infusion reactionなど

・セツキシマブ・・・アービタックス。EGFR(HER1/erbB1)に対するIgG1サブクラスのモノクローナルキメラ抗体。細胞表面に存在するEGFRのリガンド結合部位に,EGFと競合的に結合し、EGFRの活性化、二量体化を阻害する。また、細胞表面にあるEGFRを細胞内へ内在化させ、EGFRからのシグナル伝達が遮断され、癌細胞はアポトーシスに陥る。EGFRの発現強度はセツキシマブと相関しないことが分かっており、EGFR陰性大腸癌においてもセツキシマブの有効性が示されるようになった。<副作用>皮膚毒性、infusion reactionが多く、皮膚毒性は80%の症例で見られるが、皮膚毒性が治療効果と相関することがわかっているため、皮膚症状をコントロールすることが大事である。治療には、ステロイド軟膏、抗菌剤が有効。

・バニツムマブ・・・ベクティビックス。上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に特異的かつ高親和性に結合し、リガンドのEGFR への結合を競合的に阻害することで腫瘍細胞の増殖を抑制する遺伝子組換え型のヒト型IgG2
モノクローナル抗体。<副作用>完全ヒト型のため、注射投与中又は投与後に現れる過敏反応の症状が少ない。

☆肺癌

ゲフィチニブ…イレッサ。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤。EGFRチロシンキナーゼの自己リン酸化を強力かつ選択的に阻害することにより、腫瘍細胞の増殖をもたらすシグナル伝達を抑制する。さらに、野生型EGFRよりも変異型EGFRに対してより低濃度で阻害作用を示し、アポトーシスを誘導することが知られている。<副作用>発疹、肝機能異常、下痢などが見られるが、重篤なものに、間質性肺炎・急性肺障害があり、早期の発見が必要。

エルロチニブ…タルセバ。EGFRを標的とした選択的チロシンキナーゼ阻害剤。EGFR 細胞内チロシンキナーゼ領域のATP 結合部位においてATP と競合的に拮抗することにより、癌細胞の増殖抑制、アポトーシス誘導に基づいて抗腫瘍効果を示すと考えられている。<副作用>発疹、下痢、皮膚乾燥・掻痒感などの発現が報告されている。

☆腎細胞癌

ネクサバール…ソラフェニブ。腫瘍細胞の増殖に働くMAPキナーゼ経路を直接阻害する点に加え、血管新生に働くVEGF受容体、PDGF受容体活性を併せて阻害する。<副作用>手足症候群、急性肺障害、出血、肝機能障害、肝性脳症などの報告がある。肝細胞癌にも効果が認められている。

スーテント…スニチニブ。複数のRTK(受容体チロシンキナーゼ)をターゲットとする新規のキナーゼ阻害剤。<副作用>汎血球減少症、手足症候群、肝機能異常、食慾不振などが報告されている。

トーリセル…テムシロリムス。癌細胞の成長・増殖を調節するキナーゼである哺乳類のラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin:mTOR)を阻害することで、細胞周期の移行及び血管新生を抑制することにより、癌細胞の生存・増殖・転移を抑えるとともにアポトーシスを誘導すると考えられている。<副作用>発疹、口内炎、肝機能異常、コレステロールやTGの上昇、重篤なものとして、間質性肺疾患、血栓症やinfusion reactionなどが報告されている。

☆その他

グリベック…イマチニブ。CMLに対しては、Ph 染色体の異常遺伝子bcr-abl のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害する分子標的薬。KIT陽性消化管間質腫瘍に対しては、KIT(CD117)チロシンキナーゼ活性を選択的に阻害する分子標的薬。<副作用>好中球減少症、下痢、嘔気、浮腫などの報告がある。

※参考

名前の由来は・・・?

モノクロナール抗体(monoclonal antibody = mab)

o‐mab:マウス

xi‐mab:キメラ 可変領域はマウス由来であるが、その他の定常領域をヒト由来の免疫グロブリンに置換したもの    –Rituximab(リツキサン®) Cetuximab(アービタックス®)

zu‐mab:ヒト化 可変領域のうち、相補性決定領域がマウス由来で、その他の領域をヒト由来としたもの。免疫原性はキメラ抗体よりもさらに低減する

Trastuzumab(ハーセプチン®) Bevacizumab(アバスチン®)

umab:ヒト ヒト抗体遺伝子を導入したトランスゲニックマウスを用いて、完全なヒト型抗体としたもの  –Panitumumab(Vectibix)
特徴的な副作用は・・・?


☆  各種分子標的薬による治療が行われるようになり,それにつれて従来の薬疹とは対応の異なる皮膚障害が増加している。EGFR系阻害薬として,EGFR チロシンキナーゼ阻害薬,抗EGFRモノクローナル抗体、マルチターゲット型チロシンキナーゼ阻害薬があり,以下のような皮膚障害のパターンをとることが知られている

瘡様皮疹:毛孔に一致した紅色の丘疹,黄色調の膿疱。通常細菌感染はなし。

脂漏性皮膚炎:脂漏部位に光沢を有する紅斑な鱗屑

皮膚乾燥(乾皮症):鱗屑が付着し,全身がかさかさな乾燥皮膚の状態

爪囲炎:指の爪甲周囲に紅斑や炎症を伴う色素沈着がみられ,陥入爪の好発部位に亀裂を生じる。進行すると腫脹や肉芽を形成する。

⑤ 掻痒症:

<治療>

☆  薬疹・中毒疹では、原因薬剤を中止することが原則であるとされているが、分子標的薬による皮膚障害では、皮膚障害が強いほど、癌の治療効果がよいと報告されているものもある。そのため,Grade 2 までの皮膚障害であれば、癌の治療をできるだけ継続しながら、皮膚の症状をコントロールすることが重要である。

☆  他にも、抗癌剤治療数週間後から四肢末端、とくに手掌・足底・爪に紅斑、色素沈着、腫脹、疼痛、ほてり、知覚過敏などがみられ、重症化すると水疱やびらんを伴い、落屑や皮膚亀裂などにより物がつかめない、歩行困難など日常生活に支障をきたすことがある症候群(手足症候群)が発現することがある。

☆  原因薬剤は、フッ化ピリミジン系(5-FU 系)抗癌剤の、特に持続点滴でしばしばみられ、カペシタビンでもその頻度が高い。ほかにもシタラビン、ドキソルビシン、メトトレキサート、エトポシド、ドセタキセルなどでみられる。

<推奨されるセルフケア>

1)   毎日シャワーを浴び石けんでよく洗い,肌を清潔に保つ

2)    低刺激性で香料,保存剤を含有しない石けんを使用する

3)    シャワーはぬるま湯で使用し,長いシャワー,熱いシャワーは避ける

4)    シャワーまたは入浴後の15分以内に保湿剤を乾燥している部位に使用する

5)    必要のないときは化粧をしない

6)    直射日光を避け,日光の遮断度の高い日焼け止めを使用する7)サイズの合った柔らかい歩きやすい靴を選ぶ

<生活指導>

☆手足の安静☆手足を挙上させたり,冷却する☆手袋の使用☆皮膚を清潔にし,乾燥を避ける。低刺激性石けんの使用☆過度の荷重や機械的刺激を避ける☆温度,圧力,摩擦を避ける☆手足をこすり合わせるような運動やジョギングなどの足底に負荷のかかるような運動は避ける☆きつい靴や指輪を避ける☆やわらかいパッドなどを患部にあてる。

 

高カルシウム血症を見逃すな

高カルシウム血症(MAHCmalignacy associated hypercalcemia

<疫学>

・ がん患者の約10%に認められる。

・ 肺扁平上皮がんや乳がんで頻度が高い(40~60%)。その他、多発性骨髄腫、腎がん、頭頸部がんにも認められる。

・ 86%に骨転移あり。

・ がんの悪液質などの症状と鑑別がつかず、見逃されることが多く、注意が必要。

参考:

活性化ビタミンD(1,25(OH)2-VitD)は腸管からのCa再吸収亢進

上皮小体ホルモン(PTH:parathyroid hormoneは上皮小体から分泌され、骨芽細胞を介して破骨細胞を活性化させて骨吸収を亢進させるとともに、腎尿細管でのCa再吸収亢進と活性化ビタミンの活性化する。

<原因>

1. LOH:local osteolytic hypercarcemia

広範な骨転移巣における骨融解によって、腎臓で処理できないほどのカルシウムが血液中に流出。

・ 頻度は少ない.

・ 多発性骨髄腫、乳がんなどの広範な骨転移

2. HHM:humonal hypercalcemia of malignancy

腫瘍から分泌される液性因子のPTH関連蛋白(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)によって、骨における骨吸収亢進ならびに腎臓におけるカルシウム再吸収亢進による。

・ ほとんどがこの原因。

・ 扁平上皮がん(肺、頭頸部、皮膚など)、腺がん(乳腺、膵、胆嚢、卵巣など)、肝細胞がん、腎細胞がん、成人型T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫など。

<臨床症状>

・ 尿濃縮力障害による多尿、夜間尿、脱力、口渇、腎機能障害

・ 食欲不振、嘔気・嘔吐、便秘(消化器症状)

・ 傾眠、意識障害、精神症状(中枢神経症状)

<診断>

・ 高カルシウム血症 *補正Ca濃度(mg/dL)=血清Ca濃度+(4-血清Alb値)

・ 心電図 QT短縮

・ ALP↑↑

・ 血中PTHrP高値ならHHM

・ 血清K↓、BUN↑、Cr↑、低Cl性アルカローシス

* PTHおよび血清P値は不定

・ XP、CT、骨シンチ

<治療>

血清Ca11mg/dL以上で要注意、13mg/dL超で治療。但し、症状の重篤度に応じて対応。

1. 脱水の補正

200~300mL/hr以上の生理食塩水の輸液(2~3L/24~48時間)。脱水が補正されたら、尿量を100~200mL/hrを目標として輸液負荷。

2. ループ利尿剤(ラシックス®(R))による尿中Caの排泄促進。

処方例) 尿量をみながら、40~80mgを1日1~2回静注。

ただし、サイアザイド系利尿剤(アルダクトン®、ソルダクトン®)は、尿中Ca排泄を低下させる。

3. ビスホスフォネイト(ゾメタ®)

骨基質であるハイドロキシアパタイトと親和性が強く、骨組織と結合して破骨細胞の活性化が抑制され、骨吸収抑制作用からCaの吸収を抑制。ただし、効果発現に2日間を要し、効果発現は7日後を最大として2~4週間で減弱していく。従って。2~4週間で再投与が必要。発熱や骨痛、腎機能の悪化、顎骨壊死に気をつける。

処方例) ゾメタ® 4mg+5%ブドウ糖100ml  15分以上かけて点滴静注

4. ステロイド

カルシトニンに対する腎尿細管での反応性低下を阻害し、Ca低下拮抗作用を持続させる。ステロイドそのものにもCa低下の直接作用?

処方例) プレドニン30~40mg/日

5. カルシトニン

破骨細胞を直接抑制し、腎尿細管でのCa再吸収を抑制する速効性の甲状腺ホルモン。ただし、その効果は一過性で、連続投与により4~5日目で効果が減弱する(エスケープ現象)。従って、重症の場合に最初の1~2日目に使用し、ビスフォスホネートと併用することが多い。

処方例) エルシトニン®40~80U/日 筋注