腎不全に必要なアミノ酸は?

1.窒素代謝と窒素平衡
生体のタンパク質、アミノ酸必要量は、正常な生理機能を維持するための各臓器の代謝的窒素必要量(Metabolic Demands:MD)とタンパク質、アミノ酸の摂取量とその有効利用率により規定される。通常の栄養摂取(Feeding State)では図1の平衡関係が成り立つ。摂取した窒素は、血中に存在する遊離アミノ酸プール(Free Amino-Acid Pool)と体構成タンパク質プール(Body Protein)との間でタンパク代謝回転(protein turnover)を調節し平衡関係を維持している。MDのうち生理機能維持に伴う不可避的タンパク喪失量(Obligatory Protein Loss:OPL)は、臨床実験により健常成人男性では0.34g/kg/日とされている。1日の最低タンパク投与量は、食餌のタンパク質利用率を70%として0.57g/kg/日(安全域20%+利用効率130%)と考えられている。飢餓状態(Fasting State)では、MDを充足するために、生体外からの窒素補給が減少した分を体タンパクの分解により補充しタンパク代謝回転を維持するため、体構成タンパク量の減少を生じる。生体内タンパク量が70%程度に減少すると不可逆的な生理作用の障害が発生し死亡に至る。

2.窒素平衡(Nitrogen Balance:NB)理論
NB=窒素摂取量−窒素排泄量
窒素はタンパク質の約16%を占める。窒素(g)=タンパク質(g)/6.25
1gの負のNB=6.25(g)の体タンパクの喪失=32gの除脂肪体重の喪失
尿中の窒素排泄量は全排泄量の約80%を占める。全排泄量(g)=尿中排泄量(g)×5/4
糞便や表皮などの測定不能な窒素排泄を加味したもの。
全排泄量(g)=尿中窒素排泄量(g)+推定非尿中尿素窒素喪失量(3.5〜4g/日)

3.腎不全の評価法
日本腎臓学会による慢性腎機能障害の区分では、Ccr 30mL/min以下(血清Cr 2mg/dL以下)を腎不全期、Ccr 10mL/min以下は透析が必要な尿毒症期。急性腎不全は進行が急速なためBUNやCrの上昇は遅れてみられる。腎不全においてはタンパク・アミノ酸代謝異常が存在し、異化亢進状態にある。

4.慢性腎不全に対する栄養療法
・保存期には透析導入を遅らせるため、0.6〜0.8g/kg/日のタンパク摂取制限と35kcal/kg/日の十分なエネルギー補給をめざし、低栄養による体タンパク量の減少を防ぐ。
・ネフローゼ症候群では高タンパク食が推奨されてきたが、最近では低タンパク食が推奨されている。
・透析患者でも体タンパク量の減少を目指すため35kcal/kg/日程度の十分なエネルギー投与が必要であり、最近の高性能透析膜ではタンパクの喪失が大きいため1.2g/kg/日程度のタンパク摂取が必要とされる。CAPDではさらにタンパク喪失が多いので1.3g/kg/日必要とされる。

5.急性腎不全に対する栄養療法
・間接熱量計で消費エネルギーを測定し、ほぼ同量、または10%程度上乗せしたエネルギー量を投与。
・急性腎不全では生体侵襲に伴うカテコラミン、グルカゴン、ステロイドなどのストレスホルモンの分泌により末梢組織でのインスリン抵抗性が上昇し高血糖となるためインスリンで150mg/dL以下となるよう血糖コントロールする。
・タンパク異化の亢進、タンパク合成の低下がみられ、異化亢進により筋タンパクから利用されやすいBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)がエネルギー産生のために動員され、除脂肪体重が減少する。通常、腎不全用アミノ酸輸液が使用される。アミノ酸の推奨投与量は、NPC/N比を高くすることが推奨され、300〜500を目安とするが、十分な検討はされていない。
・急性期をすぎ、同化期に入った際は通常の組成のアミノ酸製剤への変更も考慮する。
・脂質は我が国では長鎖脂肪酸(Long Chain Triacylglycerol:LCT)のみが使用されており、過酸化脂質の形成や液性因子の産生促進、呼吸障害や凝固障害などの問題が指摘されているため、急性期にはエネルギー源として使用せず必須脂肪酸補充の目的で少量のみ使用。急性期を脱したらエネルギー源の1つとして考慮してもよい。

6.腎不全用アミノ酸輸液
・1950年代にRoseにより体内で合成されない必須アミノ酸が同定され1980年代に輸液に応用され、必須アミノ酸を主体としHisを配合していたが、よく高アンモニア血症を起こしていた。1990年代に異化を防ぐBCAAの配合量を高くし尿素回路に必要なArgを配合、腎不全時の含硫アミノ酸代謝異常を考慮しメチオニンを減量しアミノ酸インバランスを考慮した改良型のアミノ酸輸液が開発された。

7.ESPEN Guidelines on Parenteral Nutrition : Adult Renal Failure
・The optimal amount of protein supplementation in ARF patients is unknown.
・ARF is a highly catabolic state, and normalized protein catabolic rates(nPCR) of 1.4-1.8g/kg/day have been reported in ARF patients on artificial nutrition. In uncontrolled interventional study, only 35% of patients achieved a positive nitrogen balance with nutrient intakes of 2.5g/kg/day of protein and 35kcal/kg/day of energy.
・It should be emphasized that hypercatabolism in ARF patients is unlikely to be overcome by increasing protein or amino acid intake alone!
・The nutritional requirements of stable CKD patients, an energy intake >30-35kcal/kg/day is associated with better nitrogen balance. ESPEN recommendations of protein supply in adult patients with non-dialysis CKD: GFR=25-70mL/min 0.55-0.60g/kg/day, GFR<25mL/min 0.55-0.60g/kg/day or 0.28+EAA(essential amino acids).
・ESPEN recommendations of protein supply in adult patients with routine hemodialysis: 1.2-1.4g/kg/day(energy supply 35kcal/kg/day)
・Standard amino acid solutions can be used for IDPN in non-acutely ill malnourished HD patients(C). The energy supply should combine carbohydrate and fat(C). The use of specific parenteral solutions is not yet supported by controlled data.

【参照】
コメディカルのための経腸栄養ハンドブック.(日本静脈経腸栄養学会)
ESPEN Guidelines.
輸液・栄養の第一歩.(大塚製薬)

 

抜粋したデータをどう読むかは、しばし検討中です。

腎不全に必要なアミノ酸は?」への2件のフィードバック

  1. 在宅療養中のeGFR30以上の患者さんで85歳♂元来身長体重から比較的大く心不全傾向脳梗塞の既往がありBNP は最近測定がありませんが、200未満です。医師及び管理栄養士によるタンパク制限を指導されていていますが食欲低下が主訴の状態で、TP・Albは低下しています。先日は筋力低下が原因で屋内の転倒で、尾骶骨骨折でさらに食欲不振を悪化させました。Znの測定は不定期にあり、低下傾向で味覚障害が認められます。慢性腎不全の進行と低栄養状態のしのぎ合いでどのようなNSTの判断を加えた食事指導が最適なのか余命と健康寿命に貢献するのかご指導いただけると幸甚です。家族の
    希望は、好きなものが少しでも食べられることに幸せと希望を持っています。在宅訪問担当の薬剤師です。

  2. お返事遅くなって申し訳ありません。長年栄養管理をやっていて、一番難しい症例です。慢性腎不全の患者は、アルブミンなどの血清値はあてになりません。上腕筋肉量や日々の筋力、握力などのサルコペニアなどの指標や、浮腫、息切れなどADLで評価が必要です。タンパク質は腎機能から制限せざるを得ないので、少しでもアミノ酸が有効に利用されるように、可能な限りエネルギーを補給すること(糖尿病がなければ糖質がベストですが、燃焼率の高い脂肪でも構いません)。そして、BCAAなどの有効利用されるアミノ酸の質を見直すことも重要です。適度なリハビリ、運動も有効です。そして、タンパク質にこだわらず、患者さんの希望にもこたえてあげてください。本当にお返事が遅くなって申し訳ありませんでした。

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