強皮症の食事指導(2017.03.04学習会)

強皮症の栄養指導

 

強皮症とは・・・

全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなる変化(硬化)を特徴とし、慢性に経過する疾患です。しかし、硬化の程度、進行などについては患者によって様々である。

「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」

典型的な症状を示し、発症より5~6年以内は進行することが多い。

「限局皮膚硬化型全身性強皮症」

比較的軽症で進行はほとんどないか、あるいは緩徐である。

強皮症の基本病態:

(1)線維芽細胞の活性化

膠原線維が多量に産生され、皮膚や内臓の硬化が生じる。

(2)血管障害

レイノー症状や指尖部の潰瘍などが生じる。

(3)免疫異常

自己抗体が産生され、様々な臓器障害がおこる。

強皮症の疫学:

強皮症は、本邦での全身性強皮症患者は2万人以上いるとされ、男女比は1:12で、30~50歳代の女性に好発する。

強皮症の症状:

(1)レイノー現象

レイノー現象は強皮症の最初の症状であることが多く、約90%の患者にみられる。レイノー現象とは、寒冷刺激や精神的緊張によって、手の指や足の趾が発作的に血行障害を起こす現象で、血管の痙攣によって起こるとされる。典型的な場合は、指先、つま先が突然白く変色し、紫色に変化した後に、紅くなってもとにもどるという三つの変化を起こす。白色、紫色に変化した段階でしばしばしびれ感、冷感、異和感、痛みなどの自覚症状をともなうことがある。

レイノー現象を防ぐ・・・

✔寒冷刺激をさける。

✔禁煙をすすめる。

レイノー現象がでてしまった時は・・・

✔手をこすりあわせたり、マッサージをして暖ためる。

✔「携帯カイロ」などで、できるだけ早く手を暖ためる。

✔腕の運動なども有効。

(2)皮膚病変

(I)皮膚の硬化  強皮症の皮膚硬化は通常指先やつま先から始まり、徐々に体の中心の方向にむかって進んでいく。皮膚硬化が軽い段階では「皮膚がつまみにくい」だけで、診察時に指摘されるまで自覚していなかったということもまれではないが、皮膚硬化が進行した場合は「皮膚がつっぱって、光沢がある」という状態になる。顔面の皮膚にも硬化がくることがあり、この場合は顔の表情が変わったり、口が十分に開かなくなったりすることもある。

(II)皮膚の色素異常  全身の皮膚が黒ずんできたり、部分的には白く色素の低下した色素脱失がみられる。

(III)皮膚の潰瘍  強皮症の患者ではしばしば手足に血行障害がみられ、そのために潰瘍が生じる。よくみられる部位は、指先、つま先などだが、そのほか手背、肘、かかとなどにもみられる。

(IV)皮膚の血管拡張  顔面や手足に赤あざのような小さな血管が拡張した斑点がみられることがある。

(V)足のうらの「たこ」「うおのめ」  皮膚硬化が足のうらにもみられる患者に「たこ(胼胝)」「うおのめ(鶏眼)」ができることがある。

(VI)皮膚の乾燥,かゆみ  皮膚の硬い変化が強い場合、皮膚の乾燥、かゆみを伴ってくることがある。

(VII)爪の異常

爪の黒点や変形がみられる。

(3)関節症状

強皮症では、肘、膝、手関節などの関節に痛みや炎症をともなうことがあり、手指の関節が曲がったままの状態で拘縮変形もある。

(4)消化器症状

強皮症では消化器全般に病変が及ぶことがあり、食道にも硬くなる変化がくるために、「食べたものが通りにくい」または胃の中の胃酸が食道に逆流して逆流性食道炎が起こり、「胸やけがする」などの症状が起こる。頻度は多くないが、慢性の下痢や便秘が続くこともある。膵炎の合併(自己免疫性膵炎)もある。

(5)肺症状

強皮症では肺にも硬くなる変化が生じ,肺線維症という変化を起こす。自覚症状としては、息切れ、慢性の咳、疲れやすい、階段が昇りづらいなどの症状をひき起こす。その他、肺の血管に変化が起こり、肺の血管抵抗が高くなり、肺高血圧症という変化をきたすこともある。

(6)腎症状

腎における強皮症の病変は「強皮症腎」とよばれ、腎の血管が狭くなる変化を起こし,高血圧をおこす。

(7)心症状

強皮症における心臓の変化はまれだが、心臓の筋肉も硬くなることがあり,心臓の機能が障害され、心不全や不整脈をおこす。

(8)シェーグレン症候群(乾燥症候群)

シェーグレン症候群は、眼や口腔内に乾燥症状をひき起こす病状で、膠原病のひとつです。眼では涙液の分泌が不足するために、眼が乾いた感じ、異物感、チカチカするなどの症状を生じ、口腔内では唾液の分泌が不足するために口の中が乾いた感じになる。

強皮症の治療

(1)血管拡張剤

レイノー現象を防止したり、末梢循環障害を改善するためにいろいろな種類の血管拡張剤が使われ、ビタミンEや降圧薬のカルシウム拮抗剤も有効です。難治性皮膚潰瘍がある場合には、プロスタグランディンを内服薬または注射薬として使用する。

(2)副腎皮質ホルモン

副腎皮質ホルモンは膠原病一般に広く用いられており、強皮症では比較的早期の場合、炎症症状が強い場合、筋炎など他の膠原病の症状がある場合などに使われる。強皮症の皮膚の硬くなった変化に対しても効果が認められる。

(3)シクロホスファミド

免疫抑制剤の一種である本剤の点滴ないし内服治療(副腎皮質ホルモンとの併用)が、強皮症の間質性肺炎や皮膚硬化に有効です。

(4)肺高血圧治療薬

強皮症では肺の血管が硬くなって息切れをきたす肺高血圧がみられる場合があり、血管拡張薬や、血栓を予防する内服薬が用いられる。従来からのベラプロストナトリウム(プロスタグランディン製剤)に加えて、最近エンドセリン受容体拮抗剤や5型ホスホジエステラーゼ阻害薬という新しいタイプの肺高血圧治療薬が日本でも発売され、肺の血管を特異的に拡張させることにより、効果を示す。

(5)その他の薬剤

消化器症状に対して消化器系薬剤、関節炎に対して炎症をおさえる薬剤、皮膚潰瘍の細菌感染に対して抗生物質、腎臓の変化に対して血圧を下げる薬剤(ACE阻害剤)などが用いられている。

引用:SSC強皮症班会議 http://derma.w3.kanazawa-u.ac.jp/SSc/SSc.html

 

強皮症に対する日常生活上の注意点

・血流を悪くし、肺に負担をかけるため、タバコをやめる。

・手足を温かく保温する。

・激しい運動や疲労を残すような無理な活動を避ける。

・手に科学薬品がつくような作業には注意する。

・手足の末梢の怪我に注意する。

強皮症の食事の注意点

①血行障害に対する対策

「レイノー現象」「皮膚の硬化・潰瘍」

→ 血管を広げるためにビタミンEを補給する。

*ビタミンEは抹消血管を広げて血行を促進し、血流を良くします。

・脂溶性ビタミンなので、油で炒めると吸収がよくなる。

・抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンA等と一緒にとると免疫力を高まる。

・ビタミンEを含む油は、ドレッシングやソースとして加熱せずに使用すると良い。

ビタミンEを多く含む食材

植物性・・・アーモンド、サフラワー油、コーン油、落花生、オリーブ油など

動物性・・・うなぎ、たらこ、マーガリン、鶏卵など

参考:「健康食品」の有効性・安全性情報(国立健康・栄養研究所)https://hfnet.nih.go.jp/contents/

②消化器症状に対する対策

消化管の硬化が起こる(特に食道)

「飲み込みにくい」「逆流性食道炎」「下痢・便秘」→ 消化器に負担をかける食事を避ける

✓ 消化に時間がかかる食事

✓ 消化酵素を多く出す必要がある食事

おすすめ:胃に長く留まることなく、たくさんの胃酸が必要ないもの

短:炭水化物 → タンパク質 → 脂質:長い(一般的には3時間以内に排出されます)

・胃酸の分泌を促すカフェインや香辛料を控え目に。

・寝る直前にものを食べない

・少量を頻回に食べる(食事回数を1日4~5回にする)

ちょっと注意したい、脂肪を多く含む食品:

・油で揚げてあるもの

・バターを多く使って作られているもの

・脂質の多い洋菓子

・脂質の多い部位の肉、魚の種類。

・油やドレッシング、マヨネーズなの調味量

その他、消化に負担のかかるもの:

・食物繊維が多いもの

・極端に熱かったり、冷たかったりするもの。

・アルコールや炭酸飲料

・香味の強い野菜

・塩辛いなど濃い味付け

まとめ:胃に優しい食事をする

消化が良い食品や食事を選ぶ。

消化が良くなる食べ方や、調理法をする。

③下痢・便秘に対する対策

慢性の下痢や便秘が続くことがある → 体調を観察しながら、それぞれの症状にあった対応にその都度変える。

食物繊維が有効

不溶性食物繊維:セルロースなど

糞便量を増加させて腸管の蠕動を亢進させて、便秘を改善させる。

有害物質を取り込み、便として体外に排出するのを助ける。

多く含む食品・・・大豆、いんげんなどの豆類、ブロッコリー、ごぼうなどの野菜類、さつまいも、さといもなどのいも類

水溶性食物繊維:グアーガム、ペクチン、オリゴ糖など

胃の中で水分を吸収してゲル状に変わることで、消化管内をゆっくり移動するため、糖質の吸収を抑制し、消化を助ける。

腸の中の水分を吸収して、便が固くなるのを防ぐ。同時に、老廃物を取り込む。

腸粘膜上皮に対する栄養効果(プレバイオティクス

リンパ球などの免疫能をあげる。

多くふくむ食品・・・りんご、バナナなどの果物類、しいたけ、えのきなどのきのこ類、わかめ、こんぶなどの海藻類

乳酸菌など(ヨーグルト、納豆、発酵食品)

④肺・腎臓・心臓に対する対策

「肺が硬くなる」「腎臓の高血圧」「心筋が硬くなる」→ しっかり食べて、食事からエネルギーを確保する。